経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

格好いいユーザインターフェイス

2008-08-31 | 知財業界
 以前に紹介した「アップルとグーグル」で、「アップルの行ってきたこと」を次のように定義しています。
 まだまだわかりにくい数歩先のテクノロジーを、質の高いソフトウェアや、わかりやすいユーザインターフェイスを通して、誰もが使える形で提供すること。
 グーグルについても基本的には同じで、
 そのままではなかなか使いづらい世界中の情報を整理し、、質の高いソフトウェアや、わかりやすいユーザインターフェイスを通して、誰もが使える形で提供すること。
となるそうです。
 翻って知財業界を見ると、果たしてこうした方向での努力がなされてきているでしょうか。知財の専門家に求められる方向性は、専門知識をさらに深堀りすることだけでなく、ユーザインターフェイスという視点があってよいのではないかと思います。
 個人的には、①企業評価に必要な知財に関する情報をどのように伝えていくかという金融業界とのインターフェイス、②特許に馴染みのないソフトウェア業界において特許の意義や取組方法を経営サイドや事業サイドとどのように考えていくかというソフトウェア特許に関するインターフェイス、③効果的な知財戦略を推進するために知財部門以外の関係者にも知財で何ができるかという基本知識を共有してもらう知財専門ではない関係者とのインターフェイス、といったところに取り組んできていますが、言うは易し行うは難し。「わかりやすいユーザインターフェイスを通して、誰もが使える形で提供する」ということは、少なくともビジネスパーソンを対象にする世界において、特許制度などをカラー刷りでマンガチックに表現すればいいというものではありません(そのあたりをこの業界では誤解していることが多いように感じますが)。アップルの製品でもそうですが、そこはユーザが「格好いい」と感じられるようなスタイルで提供できないとダメなんです。たぶん。

アップルとグーグル 日本に迫るネット革命の覇者
小川 浩,林 信行
インプレスR&D

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資金繰りの怖さ

2008-08-13 | その他
 いろいろ噂はあったようですが、不動産流動化大手で東証一部上場のアーバンコーポレーションが本当に倒産してしまったのには驚きました。前期までの業績がこれですから、P/Lだけ見るととても倒産する企業には思えません。
 アーバンの急成長を支えたのは、低収益の不動産を仕入れてリニューアルし、バリューアップして売却するというビジネスモデルでした。この不動産の仕入資金を借入に頼っていたところ、不動産市場が急速に冷え込んでしまい、リニューアル物件の売却が困難になってしまった。そこへ借入の返済が重なり、金融機関は不動産向けの融資を抑制していて借り替えも難しく、資金繰りが行き詰ってしまった、という話のようです。前期までの急成長・高収益も、不動産市場と金融市場の変調にはなすすべなしです。
 知財には直接関係ない業態ではありますが、事業の性質に応じてどのような資金調達を選択するかがどれだけ重要かがよくわかる事例ですので、財務の勉強をされている方は詳しい記事を読むと勉強になると思います。研究開発費等の知財を生み出す活動もハイリスクであることが多いので、返さなければならない資金(銀行借入等)に依存することは望ましいことではありません。

「勝負強さ」とは何か

2008-08-12 | プロフェッショナル
 一気に盛り上がりを見せてきた北京オリンピックですが、あれだけの真剣勝負を見るといろいろ考えさせられてしまいます。例えば、

 勝負強さ、とは何なのか。
 敗者はどうやってその事実を受け止めているのか。
 どうしても人によって差がある「華」は、どこから生まれるのか。

 この中でもプロフェッショナルの端くれにいる者としてやはり気になるのが、「勝負強さ」とは何かということです。そこに「根性」の一言で済まさない法則を見出さないことには、それを吸収することはできません。
 そこで女子バレー初戦のアメリカ戦ですが、いい試合をしていたのですが、セット最後の5点くらいをいつもあっという間に相手に取られてしまっていました。最後の場面では、一番調子のよかった選手、一番プレッシャーに強そうな選手、チームのエースの順にトスを回したけれど、どれもブロックでシャットアウトか大きくふかしてしまう。アタッカーが決めるには、ブロックのないところに打つか、ブロックに当ててコート外に出すか、どちらもだめならリバウンドを拾いやすいようにブロックに当てるしかなく、そのどれかを冷静に選択していかなければいけないわけで、20点くらいまでは日本チームもそうやって点を重ねてきたものの、最後の詰めのアタックはただ打っているだけのように見えてしまいました。要するに、勝負強さを決める要因は、勝敗を決する場面で思考を放棄せずにやるべきことを貫けるか、というところにあるのではないでしょうか。
 そんなことを考えながら北島康介のインタビューを聞いていると、後半の見事な泳ぎの場面では「自分の泳ぎ、自分の泳ぎ」とだけ考えていたそうです。やはり、厳しい場面でもやるべきことをやりつづけこと、それが勝負強さを分けるポイントのようです。

知的財産による資金調達

2008-08-05 | 知的財産と金融
 ↑のお題にて某誌の原稿を執筆中、苦戦しています。「知財ファイナンス」というと、知的財産の証券化、知的財産権担保、知的財産信託・・・(他にはあまりないか)、と羅列して説明していくのが一般的ですが、どれもあまり広がりを見せていない中で、今さら同じようなスキーム説明の原稿を書いてもパッとしない感じですし。そこで今やってみようとしているのが、「知的財産」から書くのではなく、「資金調達」から書くというアプローチです。
 資金調達を行う事業会社にとって、大事なことはいかに必要な資金を調達するかということであって、「知的財産」でファイナンスをすることが目的ではありません。ところが、「知財ファイナンス」の切り口で原稿を書こうとすると、「知的財産でこういうふうに資金調達のストラクチャーが組めますよ」という流れになってしまいやすいですが、それはストラクチャーで儲けたい業者の論理であって、ユーザであるところの事業会社の視点からのアプローチではありません。そのあたりの視点を切り替えて、
資金調達とはこういう場面で行われ、こういう方法があるけれど、その際に知的財産が関連するとすればこんな感じ
といった原稿をまとめたいと思っているのですが、切り口を変えてまとめるというのはなかなか大変です。iPhoneを横にするとペロっと画面が横向きに切り替わるように、ホイホイと書けるといいんですが・・・書くのに行き詰ってくると指示代名詞や擬態語がやたら増えてきてしまいます。