経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

元気な中小企業はここが違う!

2013-03-30 | お知らせ
 昨年末から取り組んでいた新著「元気な中小企業はここが違う!」が、ようやく来月(というか来週ですが)発売になります。
 日常業務+年度後半に集中する各地でのセミナーの合間を縫って書いていたので、ほとんどヘロヘロの状態が続いていましたが、今の自分に書けることは絞れるだけ絞り出したつもりです。ある方に、すっかり出し切ったんでもうネタ切れです、なんて話をしていたら、
 「出し惜しみしてたら、そんなことは読者の方に見抜かれてしまいますよ。それに、一度出しきって空っぽにしたほうが、また新しいものが入ってくるものなんです。」
と、なんとも貴重なアドバイスをいただきましたが、自分としては渾身の一作ですので、是非ご一読をいただけると幸いです。

 今回の本ですが、主題は知財ではなく、「元気な中小企業」です。但し、知財屋である私が書いた本ですから、当然ながら「元気」の実現手段は知財です。そして、これまでずっと考えてきている、知財への取組みは会社の経営にどう役に立つのだろうか、というテーマに対する、自分なりの一つの解でもあります。こういったテーマ、そんなの排他権なんだから役に立つのは当たり前だ、知財トラブルに巻き込まれたら大変だから知財が重要なのは当たり前だ、なんて割り切ってしまえば簡単です。そんなことをウデウデと考えているより、知識を増やし、実務能力を高めることが重要だ、そういうふうに考えることもできるのかもしれません。
 しかし、最近、というか以前からもよく思っているのですが、自分の仕事について、スキルを磨くというだけでなく、「これって何なんだろう?」と執念深く考えていくことも、とても大切なのではないでしょうか。
 自分が仕事で提供しているスキル、会社であれば提供している商品やサービスは、言ってみれば道具や手段です。表面的にはその道具や手段へのニーズに対応することでビジネスは成り立つわけですが、その奥には必ず、何らかのもっと根源的な人のニーズ、社会のニーズがあるはずです。そしてそうした根源的なニーズには、一時的なものもあれば、普遍的なものもあり、そこをしっかりと見定めておくことがとても重要です。
 例えば、10年ちょっと前に携帯コンテンツビジネスが急に盛り上がって多くのベンチャー企業が急成長したものの、あっという間にしぼんでしまいました。i-modeが登場して「何か面白いコンテンツないの?」というニーズが生じたのですが、それは一時的なニーズでしかなかった。5年くらい前には不動産のデューデリや再生などを行う企業が多数急成長したものの、その後、多くの企業が姿を消してしまいました。不良債権処理の進展で市場に出てきた不動産を何とかして、というニーズが生じたわけですが、これも普遍的なものではなかった。もちろん、一時的なものではあっても社会的なニーズなのだから、それに誰かが応えるのはとても大切なことなのですが、普遍的なものと見誤って事業を拡大すると大変なことになってしまいます。
 一方、セミナーでよく紹介させてもらっている、プラスチック消しゴムや修正テープを開発した株式会社シードは、「消す」という普遍的なニーズをベースにしながら、そのニーズに応える道具(手段)は、プラスチック消しゴム→修正テープ→古紙再生装置と柔軟に変化させています。
 そして、継続的に実績を出している、しっかりした経営者とお話をさせていただいて感じることが、そういった経営者の方々は、道具や手段のレベルでのニーズだけでなく、そこからさらに突っ込んで「当社の商品やサービスが求められているのはなんでなんだろう、当社の提供している本質的な価値は何なんだろう?」ということをすごく考えておられるということです。そこを考えていないと、自分達へのニーズがいつ消えてなくなるかわからずとても不安だし、その普遍的なニーズが何らかの形で見えているからこそ、確信・信念をもって事業を進められるわけです。そこを考えていることこそがまさに「経営者」の真髄というか、そこが「マネージメント」と「オペレーション」の違い、「戦略」と「戦術」の違い、といってもよいのではないでしょうか。
 知財という道具(手段)に関して言えば、その道具を使って応えるべき普遍的なニーズは、「作り手の思いを込めた商品やサービスを顧客の手元にスムーズに届けること」であると思います。何だか抽象的でよくわからない話になってきてしまいましたが、まぁそんなことを考えながら書いた本ですので、よろしくお願いします。

※ 本書の詳細は こちら まで。

元気な中小企業はここが違う! (KINZAIバリュー叢書)
クリエーター情報なし
きんざい