経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

スペシャルそば入

2009-03-21 | 知財一般
 今年度の特許庁の事業として取り組んできた中小企業の知財活動支援者向けの冊子「ココがポイント!知財戦略コンサルティング~中小企業経営に役立つ10の視点」の報告会を兼ねたセミナーが、先週の広島をもって終了しました。この種のセミナーというと、①専門家の講演、②社長の講演、③3名くらいの社長にご登壇いただいたパネルディスカッション、というのがよくあるパターンですが、今回は②と③に替えて‘トークセッション’というスタイルを導入してみました。②については、知財の専門家ではない社長に知財関連のセミナーの講演準備をしていただくのは大変手間になる、③については各社の話がどうしても途切れてしまって1社についての統一的な考え方が伺えない、という問題点があると考え、それらを解消する方策として新しいスタイルを考えてみました。具体的には、今回の冊子のインタビューを受けていただいた社長と、社長にインタビューを行った専門家の2名が登壇し、モデレータを加えて社長から知財活動に関する考え方を詳しくお聞きするというものです。どの会場でも白熱したトークとなり、参加者の皆様のアンケートでもよいご評価をいただくことができました。何事も前例踏襲で流しておくのではなく、過去の問題点をしっかり認識して改善を試みることが大切だ、と改めて思ったい次第です。
 さて、その最終回の広島ですが、㈱ナベルの永井社長のお話が非常に刺激的でした。事業における真の競争力の源は、特許の法律的な効果ではなく、特許を取得できるようなオリジナリティの存在にある。ある製品について生じる様々な課題に対応していくことができるのは、その製品を生み出したオリジナリティのある者であり、コピーはコピーでしかない(だいぶ意訳してますので、詳しくは来月中頃に特許庁ホームページでダウンロード可能になる予定の「ココがポイント!知財戦略コンサルティング~中小企業経営に役立つ10の視点」をご確認下さい)。言い換えれば、特許というのは、「オリジナリティが証明されること」に大きな意味があるということです。
 このことは、たぶん我々サービス業においても同じことが言えるんだと思います。新しい知財サービスは、どこかの研修で身につけるような性質のものではなく、自ら生み出したものでないと真の競争力には繋がらない、という意味で。

事業家と評論家の分水嶺

2009-03-15 | 企業経営と知的財産
 昨日の知財戦略コンサルティングシンポジウムについて。今年も400名以上の方にご参加いただいたようで、皆様にはおそらく様々な感想をお持ちいただいたことかと思います。
 そうした中で、知財戦略コンサルティングというとよく耳にする、典型的なネガティブな2つの意見についての私見を。

(その1) 結局やることは普通の知財業務と一緒じゃないか。
(その2) このくらいのコンサルでお金がとれるとは思えない。

 その1ですが、企業の抱える課題に知財活動という手段で対応していくのだから、道具が変わるわけではないのはある意味当然です。違ってくるのは、道具をどう使うかという考え方の部分になってくると思います。
 その2については、「そんなんではお金がとれないからダメだよ」っていう意見は、まぁそれでいいです。これはある種の‘新規事業’なので、あんなの業として成り立たないと思う人が多いのは当然のことでしょう。皆がこれはいい、商売になる、と思うようなものなら、とっくに立ち上がっているはずですから。事業は「意志→投資」から始まるものなので、今はその「意志」のある人が「投資」をしている段階です(特に本プロジェクトの受講生の方は多くの時間を投資されたことと思います)。「金になる知財コンサルノウハウ」という知的財産を誰かがポコッと生み出して、皆にライセンスしてくれるような性質のものではない。リスクがある投資だから、回収できるかどうかもわかりません。だから、あんな投資は回収できないよ、って批評されたりもするでしょう。でも、そこに何かの未来が見えると思うならば、私にはできると思って投資するのが事業家であり、そこが評論家との分水嶺です。但し、事業家たるもの、闇雲に投資するのではなく、成功のキーを探ることに努めるとともに、リスクをマネージメントして生存していかなければいけません。
 では、成功のキーはどこにあるのか。それはやはり、「成果を上げること」しかないと思います。木戸弁理士が「コンサル部分の対価を要求するのは成果を示せるようになってから」と発言されていましたが、まさにその通りであり、成果を示せるようになることが先でしょう。
 この成果ということを考えた場合、「知財の成果」ではなく「事業の成果」を上げようとすると、知財をどうこうするだけではなかなか目に見えた成果は上がってこないのは事実だと思います。そうすると、知財の問題だけを取り上げてコンサルをするのではなく、事業として何らかの課題(事業再生、新規事業立上げ、海外進出etc.)に取り組んでいるところに1ピースとして知財コンサルが参加し、事業としての成果を共有する。そういう方向に進んでいかなければならないのではないか。そういう意味では、「知財コンサル」を掲げて今回のようなシンポジウムを行うことと矛盾してしまうのですが、今の段階ではその存在を可視化して発信するというプロセスも重要です。また、今年度の関東のプロジェクトで受講者のウィングを広げたことも、狭義の知財を1ピースに抑えていくという趣旨によるものと捉えています。
 とりあえずはそんなところで。

お客様の未来

2009-03-06 | 企業経営と知的財産
 以前のエントリでご紹介させていただいた「中小企業経営に役立つ知財活動支援セミナー」が先週から始まっています。本日は福岡のセミナーを担当させていただきました。(内容についてのご評価はご参加いただいた皆様からいただくものなのでさておき)当事者から言うのも何ではありますが、いわゆる知財関連のセミナーとしてはかなり斬新なもののではないかと思っています。

 さて、本日のトークセッションの締めでエルムの宮原社長からいただいたメッセージです。私も思わずメモをとってしまいましたが(以下、正確な再現ではなく私の解釈入りですが)、ビジネスにおいて何よりも大切なことは「顧客志向」である。大事なことは顧客にメリットがあるかどうかであって、顧客にメリットがあれば提供者のリターンもそれだけ大きくなる。そこで、「お客様は神様」と言ってしまいそうなところだけれど、そこにまた落とし穴がある。お客様というのは、今欲しいものを欲しがるものであり、それに振り回されていてはダメ。お客様の未来まで考えられる者こそが、真のプロフェッショナルである
 セミナーで配布している「ココがポイント!知財戦略コンサルティング ~中小企業経営に役立つ10の視点」の作成に取り組んだ今年度の「地域における知財戦略支援人材の育成事業」のマニュアルワーキンググループでは、知財活動というものが顧客である中小企業にとってどういうメリットのあるものであるか、というところをもう一度考え直す、というところが大きなテーマでした。まさに、そこに一つの解を示していただいたようなメッセージです。