経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

セミナー等のお知らせ

2011-02-20 | お知らせ
 2~3月に開催されるセミナー等の宣伝です。

2月21日(名古屋) 技術・知的財産を活かした資金調達のあり方
 「知的財産を活かした資金調達の現状と未来」と題して、知的財産と資金調達の関連について総論的なお話しをさせていただきます。このテーマを取り上げると、価値評価などの各論に突っ込み‘木を見て森を見ず’となってしまいがちですので、‘森’の部分に絞ってお話をさせていただく予定です(実は‘木’の話が不得手というのもありますが・・・)。

2月25日(大阪) IPアカデミー
 「知的財産と資金調達,知的財産の価値評価」を担当します。前者の「知的財産と資金調達」がメインになります。こちらも‘森’の部分を中心にお話をさせていただく予定です。

3月1日(東京),3日(大阪) 日本知的財産協会・臨時研修「今なすべき、知財の役割と効率的な知財活動」
 「知財活動の基本的機能と企業経営における役割」を担当します。昨年のネットデジタル研修に続き、企業経営における役割・・・という危ないビックワードにチャレンジさせていただきます。‘7つの知財力’から、知財活動で何ができるかを考えます。

3月5日(東京) 知財戦略コンサルティングシンポジウム2011
 ここ数年恒例のシンポジウムも今年が最終回になります。パネルディスカッション「知財戦略コンサルティングの到達点と今後の展望」で、先進事例のヒアリングを行ってきた立場からコメントをさせていただく予定です。

3月12日(大阪) 日本弁理士会近畿支部 パテントセミナー2011
 大阪パテントセミナー(応用編)第4回で、「中小企業の事例から考える~経営に効く 戦略的知財活動の実践法~」と題して、「経営に効く7つの知財力」のエッセンスを中心にお話しさせていただきます。

3月18日(名古屋) 競争力強化のための知財活用促進セミナー
 基調講演で「‘経営に効く’知的財産の力で企業と地域を元気にする」と題してお話をさせていただいた後に、トークセッションでお2人の経営者にインタビューをさせていただきますので、経営者が知財活動に対してどのように考えておられるのか掘り下げてみたいと思います。

3月24日(横浜) 横浜市知的財産活用セミナー
 基調講演で「経営に効く 戦略的知的財産活動の実践法」と題して講演をさせていただく予定です。来年度からスタートする「横浜知財みらい企業支援事業」の紹介もあります。

要は、持ち手の問題。

2011-02-03 | 企業経営と知的財産
 あるところで議論していたときに考えたことなのですが、これは結構重要なことかもしれないのでちょっと覚書的に。
「知的財産権を保有する企業(保有する知的財産権の価値が高い企業)は、成長性が高く、倒産しにくい」
という説について。この説については、裏付けとなるデータがいくつかあるそうで(例えばコレ)、一定の相関関係が認められるようです。
 ここから、
「知的財産権を保有すれば成長性が高まる、倒産しにくくなる」
という因果関係を立証できれば、「だから知財活動に取り組むことは重要なんですよ」と、定量的な裏付けをもって説明できる。知財業界的には触手を伸ばしたくなる説ですが、現実の事業構造はそんなに単純なものではなく、正直なところ「ホンマかいな」という怪しさが残ります。
 これに対して、次のようなシニカルな説明に説得力があったりします。
「それは、お金のある企業は知的財産権を保有できる、ということの裏返しにすぎない」
すなわち、ヴィトンを持てばお金持ちになれるのではなく、お金持ちだからヴィトンを持てる、という理屈です。こういうシニカルな意見って、もっともらしく聞こえたりもするのですが、この説も実際に生じている現象を逆にして説明しただけで、そこに企業のどういう意志がはたらいているか、という部分が無視されてしまっている。
 そこで、最初の説の原因と結果を逆転させてみたところ、何か本質が見えてきたような気がしました。
「成長性が高い企業、倒産しにくい企業は、知的財産権を保有している(保有する知的財産権の価値が高い)」
すなわち、成長性の高い企業、倒産しにくい企業というのは、一般に、進取の気性があり、時代の変化に柔軟に対応し、社員のモチベーションも高い。そういう企業というのは、自らの強みをしっかりと認識し、アイデンティティが確立しており、その強みやアイデンティティが特許権や商標権といった形で表出しやすくなり、その特許権や商標権がさらに成長性や安定性を支える役割を担う。こういう因果関係なのではないかと。だから、自らの強み、アイデンティティが認識されないままに知的財産権だけを獲得したとしても、それだけで成長性や安定性に結びつくものではない。根っ子にそうした企業の性質があるからこそ、成長性、安定性があるのであって、そういう企業であれば知的財産制度もうまく活用してさらに成長性、安定性を高めやすい。今年度訪問した知財活動に熱心で結果も出している多くの中小企業も、まずは開発重視の積極的な姿勢ありきで、まさにそういった印象でした。

 あまり良い喩えではないかもしれませんが、「スマートフォンを持っている」ことと「仕事ができる」ことに相関関係があったとします(実際は逆だったりするかもしれませんが…)。相関関係があるからといって、「スマートフォンを持てば→仕事ができるようになる」という因果関係があるかどうかはわかりません。ビジネス向けのアプリを使って仕事の効率が上がるからですよ、なんて理屈でスマートフォンを持たせたところ、仕事に身が入らなくなってかえって仕事ができなくなってしまった、なんてことになってしまうかもしれない。
 これを逆に「仕事ができる人は→スマートフォンを持っている」としてみるとどうか。スマートフォンを持つことは、好奇心とかチャレンジ精神の表れであって(今となってはそれほどでもないかもしれませんが)、そういう人だからこそ仕事もできるし、そういう人がスマートフォンを持つと仕事にもバンバン活かして武器になり得る。本質は、持ち手の意識や性質にあるのかと。

 こうやって考えてみると、知的財産制度を利用したことのない中小企業を支援する際には、「知的財産権を取得すると収益が向上しますよ」というシナリオではなく、「知的財産権を取得するような企業体質を目指しましょう」というところから入っていくことが必要なのではないかと思います。その企業体質とは、自律、能動的、柔軟、とかいったイメージのものです。先月まで、愛媛県の西条市で、木戸弁理士にもご協力をいただいて西条知財塾というプロジェクトに取り組んでいたのですが、全6回のセミナーで、出願のハウツーとかを扱うのではなく、最終回には参加者の皆様に自社の事業計画書(その中に知財活動の目標も織り込む)を作成してプレゼンをしていただく、という構成で進めました。このプログラムの基となる思想も結局は同じことだったのか、なんて振り返っている次第です。