経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

知財は面白い。

2012-02-23 | 知財一般
 毎年最初のエントリには「年頭にあたり、今年は~を」みたいなことを書いていましたが、今年は全国あちこち巡回しているうちに花粉のムズムズを感じる季節となってしまいました。遅ればせながら、最近よく感じていることを一つ。
 中小企業の知財は面白い。
 元々、自分は金融出身で知財の本流ではなく、ベンチャーキャピタリストとしてのニッチトップを狙って知財のスキルを身につけるといったスタートだったので、知財そのものに対しては「たかが特許、されど特許」とか、ややシニカルな見方をしてきたように思います。それが、中小企業をテーマにいろいろ活動をしている中で、この切り口は本当に面白いと思うようになってきました。だからもう一度書きます。

 中小企業の知財は面白い。

 何が面白いかというと、中小企業が知財というところに注目して何らかのアクションをとる、具体的には特許でも、意匠でも、商標でも、何らかの知財権を得ようと思って出願するということは、「ユニークでありたい」という意志の表れ、と捉えることができるからです。つまり、中小企業をひと括りにして見てしまうと、立場が弱くて受身である、だから弱きを助く的なイメージでいろいろな助成制度・政策支援があったりしますが、ここに知財というスクリーニングをかけてみると、その中から、ユニークでありたいという前向きな意志をもった企業が浮かび上がってくるわけです。
 昨年ASEANのワークショップに参加した後に書きましたが、ASEAN主要国でのローカル企業の年間の特許出願件数は数百件~1,000件強に対して、日本の中小企業の特許出願件数は年間3~4万件。これだけのアイデアが全国各地で生まれ、少なくとも主観的には「私が世界で最初に考えた」と思って手を挙げている。その時に行政の方にお聞きした話ですが、全国のどこにいても特許を出願できるように、公的機関の支援窓口等のインフラが整っていることに、韓国の知財関係者が驚いていたとのことです。これはおそらく、世界でも他の国にはない(あるとしたらドイツくらいか)、日本ならではのユニークさです。技術のシーズという見方をすればそういうことでもあるのですが、それ以上に、「俺たちは言われたことやってればいいのよ」といった受け身の姿勢ではなく、そこにはユニークでありたい、自分で何かを作っていくんだという意志が、全国各地にたくさん存在しているということです。これまで日本を引っ張ってきた大企業の事業モデルに限界が見えてくるなか、今度はこちらが牽引役を担う番なのではないでしょうか。
 そして、その知財の活かし方というのは、マクロでみたときにゼロサムであっては意味がない。権利を振りかざしてA社からB社にお金を動かすだけでは新しい価値の創造、マクロの経済の成長にはつながらないわけで、中小企業から出てくるシーズ、そしてユニークでありたいという意志を、価値の創造、すなわち新しいビジネスに結びつけること。かつて米国が、シリコンバレーに新しい価値の源泉を見出し、その価値をビジネスに、経済成長に結びつけるシリコンバレーモデルを構築したように、日本もこの中小企業のもつアイデアや意志を、日本ならではのモデルで孵化させていくことができないか。知財は、アイデアと意志のスクリーニングツールであるとともに、新しいビジネスを作る核にもなり得るものです。・・・なんて考えると、これはなかなか面白いではないですか。