2月に設置された知的財産戦略本部の「地方における知財活用促進タスクフォース」に、委員として参加させていただいています。第1回の「中小企業による大企業の知財の活用促進」、第2回の「産学連携における大学の知財の活用促進」に続き、第3回は「地方中小企業による知財の活用促進」がテーマとなりました。
この会議では、中小企業の知財活用について議論する場合、少なくとも2つのレイヤーに分けて考えるべきだ、ということがコンセンサスとなってきましたが、おそらくこの点は議論を整理する上での重要なポイントになるはずです。
中小企業に知財活用を促す施策(もちろん知財活用自体が目的ではないので、知財活用という手段によって中小企業を活性化する施策、が正確なところですが)について議論すると、よく出てくるのが「中小企業が特許を取得しても、使えないことが多い。なぜならば、1件や2件の特許では大手に対抗できないことが多いし、訴訟をするにはコストがかかる。勝訴しても日本では大した損害賠償額は得られないから、こんな状況では特許をとる意味がない」といった意見です。もちろんそういう側面があるのも事実ですが、それが問題の本質であるかのように言われると、個人的には以下の2つの理由から違和感を覚えることが否めません。
1つめは、こうした意見が、特許権は競合他社を排除するために活用できなければ意味がない、という考え方に固執しているということです。
こうした意見では、前提となる中小企業に、自社の独自技術を活かした製品で市場を独占する、いわゆるグローバルニッチトップの中小企業がイメージされていると思いますが、現実に目を移すと、そういった中小企業は全体のほんの一部でしかありません。大多数の中小企業(ここでは規制に依存して生き残る特徴のない中小企業やペーパーカンパニーは除き、広義の「知的財産」に関連する中小企業に限定します)はそうしたモデルで事業を展開するのではなく、地域をベースに様々なニーズに対応したものづくりやサービスの提供に努めているというタイプの企業です。訴訟コストだ、損賠賠償額だと言われてもピンとこず、知的財産なんて当社には関係ない話だ、と感じてしまうことでしょう。
やはりここは、グローバルニッチトップを狙う先鋭的な「海外市場展開型中小企業」と、地域のニーズにしっかり応えて実績を積み上げていく「地域密着型中小企業」に区分して、知財活用のための課題と対策を整理していかないと、特定のレイヤーにしか響かない施策ばかりになってしまいかねません。
2つめは、先に示したような意見では、「知財≒特許」「知財活用≒特許権の行使やライセンス」のように、狭義の「知財」「知財活用」が前提になっているということです。
詳しくは以前に「一番必要なのは『知的財産』の意味の社会的なコンセンサスを形成することではないか」のエントリにも書きましたが、知的財産基本法にも明記されているとおり、特許権などの知的財産権そのものが「知財(知的財産)」ということではなく、その対象になる発明や考案、さらには技術情報や営業情報など、幅広くその企業に蓄積されている独自の知的資産が、活用の対象となる「知財(知的財産)」であるはずです。例えば、属人的なノウハウを見える化して社内で共有することにより社員のレベルアップを図るというように、その企業ならではの強みをうまく引き出して事業に活かせれば、それも立派な「知財活用」です。先日の日刊工業新聞に掲載いただいた「中小企業の底力・特許の力で引き出そう」のコラムも、そうした「知財活用」について述べたものです。
こうした広義の「知的財産」の活用を促進する施策についても考えていかないと、特に前述の「地域密着型中小企業」にも訴求して、知財活用の裾野を広げていくことにはつながらないでしょう。
といったことから、タスクフォースの第3回ではあれこれ意見を述べさせていただきましたが、今後も「地域密着型中小企業」の「広義の知財活用」促進のためのプロジェクトには、積極的に関わらせていただきたいと思っています。
この会議では、中小企業の知財活用について議論する場合、少なくとも2つのレイヤーに分けて考えるべきだ、ということがコンセンサスとなってきましたが、おそらくこの点は議論を整理する上での重要なポイントになるはずです。
中小企業に知財活用を促す施策(もちろん知財活用自体が目的ではないので、知財活用という手段によって中小企業を活性化する施策、が正確なところですが)について議論すると、よく出てくるのが「中小企業が特許を取得しても、使えないことが多い。なぜならば、1件や2件の特許では大手に対抗できないことが多いし、訴訟をするにはコストがかかる。勝訴しても日本では大した損害賠償額は得られないから、こんな状況では特許をとる意味がない」といった意見です。もちろんそういう側面があるのも事実ですが、それが問題の本質であるかのように言われると、個人的には以下の2つの理由から違和感を覚えることが否めません。
1つめは、こうした意見が、特許権は競合他社を排除するために活用できなければ意味がない、という考え方に固執しているということです。
こうした意見では、前提となる中小企業に、自社の独自技術を活かした製品で市場を独占する、いわゆるグローバルニッチトップの中小企業がイメージされていると思いますが、現実に目を移すと、そういった中小企業は全体のほんの一部でしかありません。大多数の中小企業(ここでは規制に依存して生き残る特徴のない中小企業やペーパーカンパニーは除き、広義の「知的財産」に関連する中小企業に限定します)はそうしたモデルで事業を展開するのではなく、地域をベースに様々なニーズに対応したものづくりやサービスの提供に努めているというタイプの企業です。訴訟コストだ、損賠賠償額だと言われてもピンとこず、知的財産なんて当社には関係ない話だ、と感じてしまうことでしょう。
やはりここは、グローバルニッチトップを狙う先鋭的な「海外市場展開型中小企業」と、地域のニーズにしっかり応えて実績を積み上げていく「地域密着型中小企業」に区分して、知財活用のための課題と対策を整理していかないと、特定のレイヤーにしか響かない施策ばかりになってしまいかねません。
2つめは、先に示したような意見では、「知財≒特許」「知財活用≒特許権の行使やライセンス」のように、狭義の「知財」「知財活用」が前提になっているということです。
詳しくは以前に「一番必要なのは『知的財産』の意味の社会的なコンセンサスを形成することではないか」のエントリにも書きましたが、知的財産基本法にも明記されているとおり、特許権などの知的財産権そのものが「知財(知的財産)」ということではなく、その対象になる発明や考案、さらには技術情報や営業情報など、幅広くその企業に蓄積されている独自の知的資産が、活用の対象となる「知財(知的財産)」であるはずです。例えば、属人的なノウハウを見える化して社内で共有することにより社員のレベルアップを図るというように、その企業ならではの強みをうまく引き出して事業に活かせれば、それも立派な「知財活用」です。先日の日刊工業新聞に掲載いただいた「中小企業の底力・特許の力で引き出そう」のコラムも、そうした「知財活用」について述べたものです。
こうした広義の「知的財産」の活用を促進する施策についても考えていかないと、特に前述の「地域密着型中小企業」にも訴求して、知財活用の裾野を広げていくことにはつながらないでしょう。
といったことから、タスクフォースの第3回ではあれこれ意見を述べさせていただきましたが、今後も「地域密着型中小企業」の「広義の知財活用」促進のためのプロジェクトには、積極的に関わらせていただきたいと思っています。