昨日来、特許法抜本改正のニュースが各所でとり上げられています。「勉強することがまた増えるから勘弁してよ」とか「『発明の利用を図る』って今の特許法1条にも書いてあるじゃん」なんて茶々を入れたくなったりしますが、特許庁の「知的財産の更なる活用の在り方に関する調査研究委員会」という委員会でいろいろ議論をさせていただいてわかったのですが、特に実施許諾に関する現行制度については実ビジネスへの影響が大きい問題を抱えており、制度の思想・目的から抜本的な検討が必要なのだと思います。
一方で、「財務基盤の弱いベンチャー企業が研究開発資金を確保できるよう、特許の出願段階で、それを担保に融資を受けられる支援制度の創設」というところについては、あまり実ビジネスには結び付かないなぁ、という印象です。「技術系のベンチャーが開発資金を調達したい→信用力が劣り担保もないので融資を受けられない→知財を担保に!」と10数年前から同じことが言われ続けていますが、一向に状況が変わらないのは、この論理展開が的を射ていないからです。担保の有無以前に問題は信用力の部分にあり、資金調達と知的財産を考える上でポイントになるのは、知的財産そのものに価値があるかどうかということではなく、知財活動によって信用力が強化されているかというところにあると思います(即効性がないので辛抱のいる話ですが)。ヘンリー・チェスブロウの「オープンビジネスモデル」には、「テクノロジー自体には固有の価値はない。テクノロジーを市場に投入するためのビジネスモデルが価値を決定する。同じテクノロジーであってもビジネスモデルが異なれば、提供される価値は異なる」と述べられています(54p.)。しからば与信判断において重要なのは、知財そのものの価値があるかないかではなく、その知財を活かしたビジネスモデルが収益に結び付いていくかどうか(その中で知的財産権がビジネスモデルを効果的に支えているか-ここでいう知的財産権は勿論‘ビジネスモデル特許’という意味ではなく、キヤノンの消耗品で稼ぐビジネスモデルを守るのに必要なインクカートリッジの特許、とかいう意味です)、というところにあると思います。話が少しそれてしまいましたが、まぁ法制度は法制度として、できることはやっておいたほうがよいのでしょう。
<<お知らせ>>
2月17日の横浜市知的財産セミナーで「知的財産に着目した中小企業向け融資のあり方」について講演します(参加無料)。上述のような観点からお話をさせていただく予定です。
一方で、「財務基盤の弱いベンチャー企業が研究開発資金を確保できるよう、特許の出願段階で、それを担保に融資を受けられる支援制度の創設」というところについては、あまり実ビジネスには結び付かないなぁ、という印象です。「技術系のベンチャーが開発資金を調達したい→信用力が劣り担保もないので融資を受けられない→知財を担保に!」と10数年前から同じことが言われ続けていますが、一向に状況が変わらないのは、この論理展開が的を射ていないからです。担保の有無以前に問題は信用力の部分にあり、資金調達と知的財産を考える上でポイントになるのは、知的財産そのものに価値があるかどうかということではなく、知財活動によって信用力が強化されているかというところにあると思います(即効性がないので辛抱のいる話ですが)。ヘンリー・チェスブロウの「オープンビジネスモデル」には、「テクノロジー自体には固有の価値はない。テクノロジーを市場に投入するためのビジネスモデルが価値を決定する。同じテクノロジーであってもビジネスモデルが異なれば、提供される価値は異なる」と述べられています(54p.)。しからば与信判断において重要なのは、知財そのものの価値があるかないかではなく、その知財を活かしたビジネスモデルが収益に結び付いていくかどうか(その中で知的財産権がビジネスモデルを効果的に支えているか-ここでいう知的財産権は勿論‘ビジネスモデル特許’という意味ではなく、キヤノンの消耗品で稼ぐビジネスモデルを守るのに必要なインクカートリッジの特許、とかいう意味です)、というところにあると思います。話が少しそれてしまいましたが、まぁ法制度は法制度として、できることはやっておいたほうがよいのでしょう。
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