経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

意志やスピリッツの大切さ

2013-05-28 | 書籍を読む
 本日は最近読んだ本のレビューを。ビジネス街の書店に入ると入口付近に山積みされている『経営センスの論理』を読みましたが、これが大変面白い。前作の「ストーリーとしての~」は読んでいないのですが、ロジカルな戦略以上に、ストーリーや意志が大切であることが強調されています。
 特に、経営者は「~せざるを得ない」なんて言ってはいけない、と指摘されているところにはハッとさせられます。海外展開であれば、「北米にいかざるを得ないから」いやいや出ていくのではなく、「素晴らしい商品ができたのだからアメリカ人にも使わせてあげよう」とウキウキしながら、自分の意志で出ていくからこそ物が売れる。全くその通りだと思います。拙著『元気な中小企業はここが違う!』にも、「特許を取って『我が社の製品は最先端だ』と自信を持ち、『ぜひ使ってみてください、自信をもっておススメできます!』と顧客に訴え、顧客の心を動かすことで物が売れる」といったことを書きましたが、僭越ながら、相通じるものを感じた次第です。
 戦略にこだわり、理屈っぽく頭を使いすぎてしまうと、大切な意志やスピリッツといった部分を見落としてしまいがちです。
 特に外部から企業を分析的に見る立場にいる人間は、そういう部分が見えにくくなってしまいやすいので、ロジカルな経営戦略論だけでなく、こういった「経営センスの論理」に触れておくことも大切であると思います。
 かつてあるベンチャー企業の役員を務めていた頃に、役員会で次年度の事業計画をあれこれと話し合い、数値の予測が難しく埒が明かなくなってきたときに、ある役員の方が、「経営とは、意志の問題だ。数字を積み上げて、できそうかどうかの確率を分析するのが我々の仕事ではない。事業計画とは、これだけはやるのだ、という我々の意志を示すべきものだ」、と言われたことを久しぶりに思い出しました。
 経営の一部である知財マネジメントについても、その取組みによって何をしたいかという、ストーリーや意志が大切。もちろんそのストーリーは「~せざるを得ない」ではなく、「~したい、~するのだ」という前向きの意志に基づくものであるべきです。
 
経営センスの論理 (新潮新書)
クリエーター情報なし
新潮社

愛される存在・応援される存在

2013-05-04 | 書籍を読む
 連休中ということで、本日は軽く読める本のご紹介です(といっても、今さら感のある少々昔のベストセラーですが)。
 拙著(元気な中小企業はここが違う!)がKindle化されたのを機に、マイiPad miniにKindleアプリをインストール、電子書籍を何か読んでみたくなったので、Kindleストア・ベストセラーランキングの上位にあった「夢をかなえるゾウ」を購入しました。この種の本(「チーズはどこへ消えた?」etc.)はあまり面白く感じた試しがないのですが、なにせKindle版だと400円ですから・・・
 とまぁ期待薄だったところが、予想に反してこれが非常に面白い。昨晩ほぼ徹夜で読み切ってしまいました。
 そして、強く共感いたしました。個人と企業の違いこそあれ、拙著で伝えようとしていたことと、すごく共通点が多いなと(ストーリーの作り方やユーモアのレベル、そして売れ行きは遠く足元にも及びませんが...)。
 要するに、成功した人や企業を見ると、我々はすぐにその人や企業のどこが凄いのだろうと、成功者自身に目を向けて成功の要因を探してしまいがちだけど、その人や企業が成功した要因はその人や企業自身の実力だけにあるわけではなく(もちろんそれに相応しい実力が備わっていることが大前提ですが)、その人や企業が周囲から愛される存在・応援される存在であるがゆえに、周りのパワーも引き寄せ、そのパワーも活かして、普通であれば届かないようなところにまで到達できている。おそらくそこが、大事なポイントです。そして、その人や企業が実力を備えていくプロセスが、義務的で、受け身で、息苦しい根性や我慢の世界ではなく、もっと前向きで、やりたいから、楽しいから、誇らしいからやっている、そこも見落としてはいけないポイントの一つなんだと思います。成功している人や企業は、厳しいこと・しんどいことに耐え抜ける特別な才能を備えているというわけではなく、むしろそういった厳しくしんどいように見えることでも、そのこと自体が楽しいから、前向きに、誇りをもってやれている。だから、普通では考えられないような努力を続けることも可能なのだと。なんかちょっと、肩の力が抜けて、気が楽になるような話です。いろいろやってみてんねんけど、どうもパッとせんなぁ、的な状態にある人には特におススメです。
 それから、知財屋稼業を続けていると、ついつい相手を攻撃することばかりに意識がむかい、眉間に皺を寄せたままになってしまいがちなので、ちょっとは心しておかないと。愛される知財、応援される知財、ってところも。

夢をかなえるゾウ
クリエーター情報なし
飛鳥新社