経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

今年は‘非効率化’で。

2011-01-14 | その他
 毎年、年の最初にはいろいろ思うところを書いてきたので(20102009,2008,2007)、さて今年は何を書こかいな、なんて思っているうちに全く筆が進まず、月半ばとなってしまいました。

 昨年末に同業の友人数人とあった時に、「最近どういう方針でやってますか」みたいなことを尋ねられたのですが、「求められていることをする、ってところですか」なんて答えていました。昨年の初めには「価値を顕在化させるビジネスモデルを持たなければならない」なんてエラそうに書きながら言(書)行不一致も甚だしいですが、特に昨年後半くらいからそういう心境になっています。これは、取り扱う業務の性質や、個人で動くのか組織で動くのかによって違ってくると思うのですが、知財サービスというのは基本的に顧客からフィーをいただいて成り立つものだから、提供者側の戦略やビジネスモデル云々が表に出てくると、そこに提供者と顧客の利益が対峙しているように見えてしまいやすい。もちろんWin-Winであればいいのだけれども、知財サービスの成果というのは短期的には測りにくいものだし、そんなに簡単には結果が出ません。
 ビジネス感覚を持つべしとか、戦略的に考えるべしとかいうときに、それは顧客のビジネスについてのことなのか、それとも自らのビジネスについてのことなのか。知財人が‘ビジネス’を学ぶのは、顧客のビジネスのためなのか、自らのビジネスのためなのか。企業内にいればこうした矛盾は生じないのですが、業として知財を扱う場合には曖昧になってしまいがちです。これは知財に限ったことではなく、Win-Winとなるように顧客のビジネスと自らのビジネスを高次で融合させていけばいいわけですが、そこは言うは易し行うは難しで、自らのビジネスを考えているうちに、どうしても顧客のビジネスを自分の都合のいいように解釈してしまいやすい。
 繰り返しになりますが、これは個人で動くのか組織で動くのかによって異なるものであり、組織であればそれでも高次のWin-Winを追及しなければならない、それがビジネスというものなのですが、個人で動くのであれば、自らのビジネス云々はあまり考えず「求められる」方向に動くことによって、新たに生み出せるものがあるのではないか。多分に感覚的なものでうまく表現できないのですが、そんなところから出てきた「求められることをする」です。

 話は変わりますが、今週の日経ビジネスの特集が「‘非効率経営’の時代」でした。企業は効率化を追及することで戦ってきたが、‘効率化’の追及は結局のところ‘同質化’に結びつき、利益なき繁忙を生むだけで(『ビジネスで一番、大切なこと 消費者のこころを学ぶ授業』も同旨)、むしろ‘非効率化’にこそ‘差異化’の鍵がある。中国、アジアの成長が凄い、日本はダメだ、っていうけれども、いずれそれらの国々だって成長が限界に達し、低成長時代を迎えることになる。日本は先回りして、その先にある高次の経済に向かえばよい、って話です。これだけだと何のことかわからないかと思いますが、できれば今週号の特集のご一読をお勧めします(たとえば、昔懐かしいパナソニックの系列販売店が最近業績を伸ばしている、といった事例が紹介されています)。『お金の流れが変わった! (PHP新書)』を読んで暗い気分になってたところに、ちょっと光が見えた気がしました。そういえば、イチローさんのメッセージにも、「ムダなことを考えて、ムダなことをしないと、伸びません。」(『イチロー 262のメッセージ』No.51)とありました。‘非効率化’そのものが価値を生むわけではありませんが、‘非効率化’が新しい何かにつながる鍵になるのかもしれません。


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4 コメント

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Unknown (katayama)
2011-01-15 10:09:11
非効率に見えてとても効率的なこともあって、当社は年間50回以上も無料セミナーを開催しています。専門スタッフも抱えてとても「非効率」。でも元々ニッチマーケットにいるので顧客の顔も見えるし、相手からも当社のことがよく分かってもらえます。営業担当者が10回通っても駄目な顧客でも、一回セミナーに来て貰えれば(当社に追加コストなし)次回訪問時は「お宅とも付き合わないといけないなあ」となる効率性です。
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非効率化 (つかさ)
2011-01-15 16:59:58
「非効率化にこそ差別化の鍵がある」との言葉、強く同意します。
地方で小事務所を経営している立場では、東京で大企業案件を大量にさばいている事務所のように効率的な案件処理ができるはずもないので、クライアントごとにあれこれと対応を変えざるを得ません。
確かに非効率なのですが、非効率で少々おせっかいなサービスを提供するためには、大企業の出願案件を大量にこなすよりも高度の見識が必要であると私は考えており、それが競争力の源泉になると思っています。
新年早々、わが意を得たり、という感じです。土生先生、本年もよろしくお願いします。
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Unknown (土生)
2011-01-15 18:21:06
katayama様
コメント有難うございます。
貴社の場合、無料セミナーだけに限らず、専門商社を謳いながら、顧問の先生がいて研究をしたり、虫に拘るメンバーが商品開発にも取り組んでいたりと、まさに日経ビジネスに載っていたような‘非効率化’による‘差異化’に当たるのではないでしょうか。
おそらく非効率化と効率化というのは二者択一の問題ではなく、例えばバックオフィスを非効率化すればよいというものではないし、差異化につながるような部分、特に顧客や社会との接点になる部分には、目先の効率にとらわれることなく、ムダに見えることにも汗をかいてみるべし、ってところではないかと思います。
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Unknown (土生)
2011-01-15 18:28:56
つかさ先生
コメント有難うございます。
日経ビジネスの記事の中に、広島を拠点にするパン屋のアンデルセンの話が出ているのですが、同社では新入社員に麦を作るための農地を‘開墾’させる研修をやっているらしいです。そうやって、パンに対する思い、スピリッツを植え付けると。地方(特に歴史的にも何らかの特徴がある地域)を回らせていただいて感じることは、そういうスピリッツが競争力の源になっている例が多いのではないかということです。東京で仕事をしていると「地域を盛り上げよう」というスピリッツをクライアントと共有するようなことはまずありませんが、そういうところも地方でしか生まれない底力なのかもしれません。
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