経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

赤字は悪か

2006-09-27 | 新聞・雑誌記事を読む
 本日の日経に、大学発ベンチャーの成長が鈍化している、との記事が掲載されています。その主な根拠は、経常損益が黒字企業の比率が前年より減少したとのことですが、スタートアップのベンチャーについて、赤字黒字云々で議論することはどうにも理解できません。

 ベンチャーキャピタルにいた頃にも、投資を決定する会議で「赤字じゃないの」と言われ、熱くなって反論したことがよくありました。ベンチャー企業の損益を見る上で大事なことは、今の時点で赤字か黒字かということではなく、
◆ その損益がどの程度信頼できるものか
◆ 損益がどういう傾向にあるのか
◆ 経営者が現在の損益をどのように認識しているのか
ということだと思います。ある企業は、前期に数億円単位の経常赤字が出ていましたが、数値の信頼度は高く、月次決算が翌月初早々には部門別に予実対比まで集計され、翌月半ばには社長が分析結果と対策を投資家に報告するという体制が出来上がっていました。さらに、経常赤字は毎月縮小傾向に向かっており、こういうタイムリーに状況を把握して随時方向性の修正を加えていく企業は、成功する確率が高いのは間違いないだろうと考えました(実際、そこから数年で株式公開に到りました。)。

 赤字とはいっても、その原因は様々です。例えば、市場ニーズの高まりに対応するために大型の先行投資を行った場合、研究開発費や減価償却費の負担で赤字になることだってあります。こういった赤字は、「成長鈍化」とは全く逆の意味を持ちます。逆に、黒字企業が増えるということは、投資の余地がなくなってきた=成長鈍化、である可能性のほうが高いのではないでしょうか。成長性の変化率が高く、企業体力に比して投資負担が重くなるベンチャー企業について、赤字か黒字かで傾向を把握しようとするのは、なんともナンセンスであるように思いますが。


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