ケイの読書日記

個人が書く書評

小野不由美「残穢」(ざんえ)

2014-06-03 10:29:12 | Weblog
 ホラー小説家の「私」が、読者から来た怪奇現象の手紙を読んでいると、あれ?この話って、どこかで読んだような…と、不思議な感覚におそわれる。
 以前もらった手紙を整理していると、やはりあった。同じような怪異を書いた手紙が。しかも、差出人は別々だが、なんと!同じ住所、同じマンションだった!!
 そこで、「私」は、手紙をくれた久保さんと、そのマンションやその土地一帯の過去を調べ始める。すると…。

 「私」は、小野不由美自身がモデルだろう。「私の夫も小説家で」と、綾辻行人らしき人も登場する。
 どこまでが本当で、どこからがフィクションか分からないが、彼女の仕事の性質上、怪談めいた話が持ち込まれることは、よくあるんだろう。だからこそ、よけいに怖い! いやだなぁ、変な本を借りちゃったなぁと少し後悔したが、読み終える。

 怪異の発端というのは、久保さんが、引っ越ししてきた新しいマンションの一室で、パソコンの前に座って仕事をしようとすると、後ろの部屋で音がする。かすかな、畳の上を箒で掃くような音。風でゆれた帯が、畳をこするような音…。

 過去を遡っていくと、首つり自殺した女とか、ごみ屋敷の住民が変死体で見つかった事件、次々と赤ん坊を産んですぐに殺し、自宅の庭に埋めた嬰児殺しの女、自宅の座敷牢に閉じ込められた若い男、後妻が嫁入り道具に持ってきた掛け軸(凶事の前に、掛け軸に描かれた女の顔がゆがむらしい) とうとう、明治時代の福岡の炭鉱主までたどりつく。

 いやぁ、怪異ってインフルエンザみたいに感染するんだ。しかし、同じ時刻、同じ場所にいても、インフルに感染する人としない人がいる。怪異に悩む人もそう。その人の中の何かが、キャッチしちゃうんだろうね。

 この本の中にも、神主にお祓いしてもらう、坊主にお経を読んでもらう、そうやって、怪奇現象を断ち切ろうとするが…。神主や坊主が自身の能力を信じていれば、効果もあるだろうが、まったく金儲けの事しか考えていない神主や坊主も大勢いるだろうから、無駄じゃない?と思ってしまう。
 だって、狩野英孝も、由緒ある神社の跡取り息子なんでしょ? お祓いの効果、全く無さそう。

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