ケイの読書日記

個人が書く書評

群ようこ「働く女」

2009-03-20 12:47:42 | Weblog
 さまざまな業種につく働く女・10人の物語だが、これはインタビュールポルタージュではない。10篇の短篇小説集。
 その中の7話『けっきょくマジメは損をする? エステティシャン・タマエの場合』が一番印象に残った。

 手抜きの出来ない損な性分でボロボロになっても働くタマエ。モデルがあるかどうかわからないが、こういう性分の人っている。
 一種のワーカーホリック、仕事依存症なんだよね。

 自分で開業しているわけじゃない。ドクターストップがかかったら、すぐ事情を会社に話し仕事をセーブすればいいのに、それをしない。
 評判の悪い人だったらクビになるかもしれないが、一番の売れっ子でマジメにやって腰を痛めたことが会社にも分かるだろうと思う。
 分からなかったらビシッと退社すればいいのだ。
 健康を犠牲にしてまでやらなければならない仕事などない。このままいったら取り返しがつかない事になりそう。
 架空の人間なのに、ついつい肩入れしてしまう。

 ほどほどにやればいい、というのは決して悪いことではない。ある意味、真実。
自分を守り、そして周囲を守る。


 以前読んだノンフィクション作家のルポに、会社に泊まり込む百合子さんという女性の話が載っていた。
 27歳で結婚し寿退社したが、子どもが出来なかったので再び人材教育コンサルタント会社に入社。サービス残業も喜んでこなしていたが、それがもとで離婚。ますます仕事にのめりこみ、ついに会社に寝泊りし24時間勤務状態になる。
 どうみても社長に利用されているだけと思うが、本人は「会社に私が必要なのと同じように、私にも会社が必要。仕事が生きがい」と確信している。
 本当に立派な会社依存症。

 でも、その会社が倒産したら、自分より有能な人が入社してきたら、病気になって出社できなくなったら…会社以外にもう1本精神的柱を作っておかないと、とても危険ではないか…と他人事ながら思う。

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