県民会館で、演劇鑑賞会の民藝「泰山木の木の下で」がありました。
小さな汽船が行き来する瀬戸内海の小さな島。白い大きな花をつける泰山木。その木の下で質素に暮らすハナばあさんは、貧しいながらも9人の子供を産み、戦争中に優良多子家庭として表彰されました。しかし3人の子は戦死、残る6人の子までも、広島の原爆で亡くしていました。思えば、殺されるために産んだようなものだ。
悲しい体験をもつハナは、戦後、人助けのつもりで、頼まれるとひそかに子供をおろしてやっていたのです。
早春のある日、木下刑事がハナを堕胎罪で逮捕しにやってくる。
この刑事も、広島で、被爆し、子供が障害児で、「奇形児」と地域の人に言われている悲しい体験をしている。
83歳の日色ともえさん演じるハナばあちゃんは、セリフが聞こえづらいとかがあったが、とてもかわいかった。
ポルトガルギターとマンドリンと歌の生演奏と美しい泰山木の舞台も素敵でした。
ハナからの堕胎の薬を飲まなかった夫婦が光太郎という健康な子を授かる。まさに彼が、未来の希望であった。
ハナが病で倒れ、死の床にいる時、刑事をやめ、子供を島で妻と一緒に育てることを選択した刑事と光太郎の母は、ハナを看取る。
被爆しただけでなく、生き残った人々の白血病の恐怖、子供を持つかの選択など悲しい体験が、体験談よりも演劇の力でひしひしと伝わってきた。心に残る素晴らしい演劇でした。
亡くなった夫や子供たちが天国からハナに呼びかける。「僕たちのような悲しい体験をしないうちに、天国においで!」
今、世界では、地球を5回以上も破壊する15000発もの核がある。
ハナたちのような悲しい体験を、世界中のすべての人々や私も、子も孫たちもしないように、早く政府は、核兵器禁止条約に加わること、締約国会議にオブザーバー参加することを求めていきたい。