本と旅とやきもの

内外の近代小説、個人海外旅行、陶磁器の鑑賞について触れていき、ブログ・コミュニティを広げたい。

「ないし」の用法

2008-08-05 09:49:04 | Weblog
 裁判所の文書の中に「平成18年ないし平成20年の賃料の合計額」という文があった。これは、平成18年と19年と20年の3年の賃料の合計額という意味であるが、難癖をつけたい。

「ないし」の用法は選択の接続詞として「または」、「もしくは」、「あるいは」と同じ扱いにすることがある。これらの選択の接続詞は、厳密には用法に違いがある。
「ないし」についていえば、「AないしB」のような二者択一には使わない。使っても誤用とは言えないが、この用法の大きな特徴は範囲を含むことにある。「AないしC」とあれば、AかCではなく、AかBかCかだ。具体的に言えば「三日ないし五日で仕上げる」とは三日間か四日間か五日間で仕上げることである。「原稿用紙10枚ないし20枚でまとめろ」なら10枚から20枚までの範囲のどれかの枚数でまとめることになる。ついでながら「原稿用紙10枚または20枚でまとめろ」とあれば、これは明らかに10枚か20枚かのどちらかの選択である。

 ところが、法律の分野では、範囲を示すだけに止め、選択の接続詞とは無縁にしている。すなわち、「~から~まで」の意味だけだ。それで、冒頭の「平成18年ないし平成20年」は、平成18年から20年までの範囲で、わざわざ平成19年を明記しなくても含まれますよというわけだ。
 しかし、選択の接続詞の印象が強いので「平成18年ないし平成20年の賃料の合計額」は、平成18年から20年までのどれかの年の賃料の合計額と誤認しないとも限らない。

 一般には「平成18年、平成19年および20年の賃料の合計額」あるいは「平成18年から20年までの賃料の合計額」とすればわかりやすい。
 誰にでも紛れのない文を作るのが基本だろう。