本と旅とやきもの

内外の近代小説、個人海外旅行、陶磁器の鑑賞について触れていき、ブログ・コミュニティを広げたい。

塹壕を冠した病名

2007-05-03 09:06:32 | Weblog
 小説に「父親を塹壕足炎で失っていた」という一文があった。「塹壕足炎」なる知らない言葉が気になった。感覚的には、レマルク原作の「西部戦線異状なし」の塹壕シーンが頭に浮かぶ。調べてみると、やはりぬかるんだ塹壕にいた兵士たちの症状だった。  
 trench footというそうで、冷気と湿気と圧迫で血行不良になった足が炎症を起こして腐るらしい。凍傷とは違うようだ。
 最前線では、互いに塹壕陣地から射撃し合うわけだから、頭を出せば弾に当たる。じっと泥水に浸かっていれば足がいかれる。どっちにしても悲惨ですな。
 ドイツ軍がロシアに敗北したのもこのトレンチフットが一因とか。バジルの戦いでは米兵もこれにやられたそうだ。
 ナポレオンが冬将軍に敗れたというけど、冬将軍の仕掛けた足下の炎症に自滅したのでしょうね。

 英和辞書にはtrench mouthなる語もある。こちらは塹壕口腔炎。やはり塹壕内で多く罹った兵士の症状のようだ。また、国語辞書には塹壕熱が出ていた。第一次大戦で大流行したらしい。これはリケッチャ症の一種で、シラミが媒体の発疹チフスに近い疾患とある。塹壕とは関係ないように思うが、英訳はtrench feverだ。とにかく、塹壕がつくからには戦争が起因ということですかね。  
 戦争では、戦死より戦闘と無関係な傷病死が多かったといわれるが、なに、突き詰めるとすべて戦争による死ですわ。

 本の言葉ひとつで勉強になりました。