本と旅とやきもの

内外の近代小説、個人海外旅行、陶磁器の鑑賞について触れていき、ブログ・コミュニティを広げたい。

江戸人の素養

2007-02-17 10:50:31 | Weblog
 節分から二週間過ぎた。出し遅れの話題だが、あの夜いつもの飲み屋に顔を出すと「太巻き、食べますか」と言われた。関西だけではなく、その以西は節分の文化を共有しているらしい。恵方を向いて、太巻きを黙して食べると無病息災というおまじない。東日本に縁なき習慣ですねぇ。

 太巻きと言えば、いなりずしとセットにしたものを「助六」と呼ぶ。今日のスーパーのチラシにもあった。歌舞伎は物語に脈絡がないからあまり好きではないが、「助六由縁江戸桜」は観た。助六の惚れた遊女の名が揚巻ですね。
 いなりずしに使う油揚げの「揚げ」と太巻きの「巻き」をくっ付けて「揚巻」、それに惚れていたので「助六」なんですね。粋な命名ですな。

 儒教の基本書は四書五経ですね。四書は大学、中庸、論語、孟子ですが、これに面白い話がある。宝暦6年(1756年)に林大学頭の屋敷から失火して大火となったそうです。この人、歴代幕府の漢学者、つまり儒教の権威ですな。そこで落書があった。
「大学が孟子わけなき火を出して ちんじ中庸論語道断」
孟子わけは申し訳、ちんじ中庸は珍事中夭(思いがけない災難)、論語道断は言語道断のひっかけというわけ。

「助六」にしてもこの落書にしても、江戸人の素養は半端ではありませんねぇ。