今日も、雪交じりの風が吹く寒い一日でした。
このところの体調不調もあって散歩には出ていません。
午後になって青い空が覗いていましたので、たっぷり着込んで、ちょっとだけ散歩へ。
刺すような冷たい風が強く吹いていました。
でも、元気を出して歩き始めました。
私の悪いクセで、途中で止めると気分が妙にがさついてしまうのですが、体の芯まで冷え切ってしまったのでは元も子もありません。
散歩は中止。
1キロも歩かずに戻って来ました。
途中、大きな樹の下に立ち止まり、冬の樹木の繊細な枝を、暫し眺めました。
おおきな木をみると、立ちどまりたくなる。
芽ぶきのころのおおきな木の下が、きみは好きだ。
目をあげると、日の光が淡い葉の一枚一枚にとびちってひろがって、
やがて雫のようにしたたってくるようにおもえる。
夏には、おおきな木はおおきな影をつくる。
影のなかにはいってみると、周囲がふいに、カーンと静まりかえるような
気配にとらえられる。
おおきな木の冬もいい。
頬は冷たいが、空気は澄んでいる。
黙って、みあげる。
黒く細い枝々が、懸命になって、空を摑もうとしている。
けれども、灰色の空は、ゆっくりと旋るようにうごいている。
冷たい風がくるくると、こころのへりをまわって、駆けだしてゆく。
おおきな木の下に、何があるだろう。何もないのだ。
何もないけれど、木のおおきさと同じだけの沈黙がある。
(『深呼吸の必要』長田 弘著 ハルキ文庫(角川春樹事務所刊)より)
このところの体調不調もあって散歩には出ていません。
午後になって青い空が覗いていましたので、たっぷり着込んで、ちょっとだけ散歩へ。
刺すような冷たい風が強く吹いていました。
でも、元気を出して歩き始めました。
私の悪いクセで、途中で止めると気分が妙にがさついてしまうのですが、体の芯まで冷え切ってしまったのでは元も子もありません。
散歩は中止。
1キロも歩かずに戻って来ました。
途中、大きな樹の下に立ち止まり、冬の樹木の繊細な枝を、暫し眺めました。
おおきな木をみると、立ちどまりたくなる。
芽ぶきのころのおおきな木の下が、きみは好きだ。
目をあげると、日の光が淡い葉の一枚一枚にとびちってひろがって、
やがて雫のようにしたたってくるようにおもえる。
夏には、おおきな木はおおきな影をつくる。
影のなかにはいってみると、周囲がふいに、カーンと静まりかえるような
気配にとらえられる。
おおきな木の冬もいい。
頬は冷たいが、空気は澄んでいる。
黙って、みあげる。
黒く細い枝々が、懸命になって、空を摑もうとしている。
けれども、灰色の空は、ゆっくりと旋るようにうごいている。
冷たい風がくるくると、こころのへりをまわって、駆けだしてゆく。
おおきな木の下に、何があるだろう。何もないのだ。
何もないけれど、木のおおきさと同じだけの沈黙がある。
(『深呼吸の必要』長田 弘著 ハルキ文庫(角川春樹事務所刊)より)