ひとこと・ふたこと・時どき多言(たこと)

〈ゴマメのばーば〉の、日々訪れる想い・あれこれ

大きな樹の下に立ち止まり、

2023-02-16 08:15:04 | 日記
今日も、雪交じりの風が吹く寒い一日でした。
このところの体調不調もあって散歩には出ていません。
午後になって青い空が覗いていましたので、たっぷり着込んで、ちょっとだけ散歩へ。
刺すような冷たい風が強く吹いていました。
でも、元気を出して歩き始めました。
私の悪いクセで、途中で止めると気分が妙にがさついてしまうのですが、体の芯まで冷え切ってしまったのでは元も子もありません。
散歩は中止。
1キロも歩かずに戻って来ました。
途中、大きな樹の下に立ち止まり、冬の樹木の繊細な枝を、暫し眺めました。

 おおきな木をみると、立ちどまりたくなる。
 芽ぶきのころのおおきな木の下が、きみは好きだ。
 目をあげると、日の光が淡い葉の一枚一枚にとびちってひろがって、
 やがて雫のようにしたたってくるようにおもえる。
 夏には、おおきな木はおおきな影をつくる。
 影のなかにはいってみると、周囲がふいに、カーンと静まりかえるような
 気配にとらえられる。
 おおきな木の冬もいい。
 頬は冷たいが、空気は澄んでいる。
 黙って、みあげる。
 黒く細い枝々が、懸命になって、空を摑もうとしている。
 けれども、灰色の空は、ゆっくりと旋るようにうごいている。
 冷たい風がくるくると、こころのへりをまわって、駆けだしてゆく。
 おおきな木の下に、何があるだろう。何もないのだ。
 何もないけれど、木のおおきさと同じだけの沈黙がある。
(『深呼吸の必要』長田 弘著 ハルキ文庫(角川春樹事務所刊)より)

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