四方源太郎日記(京都府議会議員・綾部市選挙区)

これからの綾部のために、さらなる「挑戦」を!

北陸新幹線、敦賀以西ルートの問題点

2024年08月07日 | 論評・研究

日㈬北陸新幹線の敦賀~新大阪区間についての与党整備検討委員会(与党PT)が開催され、「京都駅の位置図」等が国交省や鉄道運輸機構から与党PTの国会議員に対して報告されたと夕刻に報道があった。

※参考:報告資料「北陸新幹線(敦賀・新大阪間)詳細駅位置・ルート図(案)ご説明資料」

 この図は数日前には新聞等で報道されていたので、内容に関してほとんど新しい情報はなかったが、この程度の薄い進捗状況1年半後の令和7年度末(令和8年3月頃)に事業着手するというスピード感には驚いた。

 

 環境影響評価についても、今は「準備書」公表の段階であると記載されている。

 数ヶ月前、福井県のある国会議員は「すでに環境影響評価の調査は終わっていますよ」と私の投稿に対して誤解を生む情報をコメントしてきた。

 そのコメント以降にも「ある場所でこれからボーリング調査を行います」という「非公表、議員限り」での情報提供が京都府から私には届いた。まだその状態なのに「終わった、終わった」と先に進めようとする姿勢には誠実さが感じられず、不信感を抱いている。

 当時は「自民党の議員同士がネット上でやり合うのはみっともない」と無視したが、その後、東海道新幹線の事故による運休に対しても、あまりに脳天気なコメントをされるので注意した。

 

 京都市内の駅だけでも3案あり、案によっては大規模な用地買収が必要になる。案を確定する前から、買収の目途はすでについているということだろうか?

 京都市内での地下水への影響も「調査の結果影響なし」(下記)と書かれているが、京都市民は「はい、わかりました!お国の皆さんのお好きなように掘ってください」となるのだろうか?

① シールドトンネルは基本的に水を通さない構造のため、トンネル内に地下水を引き込まない。
② 京都市街地の地下水は、浅い層・深い層ともに地下水が面的に流れているため、十分な厚さがある帯水層に対しシールドトンネル(約10m)は点の構造物となり、地下水をせき止めない。


このため、シールドトンネルによる地下水への影響は発生しないと考えている。
なお、京都市街地地下水への影響解析を実施したところ、トンネル設置に伴う地下水位低下域の発生は予測されなかった。

 

 私が一番気になるのは、この計画図では私たちの「命の水源」である由良川の源流地域である南丹市美山町の江和地区を新幹線がトンネルで通ることだ。

 それについては調査がなされているのかの言及もなく、万が一、水量減少や水質汚染があった場合の政府による補償がどうなされるのかについて全く分からない。トンネルの掘削土には大量のヒ素が含まれることが分かっており(以前の国の調査では約3割含有)、その処理方法や残土処分地がどこになるのかも分からない。

 

 一方で今回明確になったのは、当初2.1兆円と言われていた建設費が最大5.3兆円(これもさらに上振れする可能性がある)と2倍以上に跳ね上がったことと、当初15年と言われていた工期が最大30年近くまで延びる(さらに延びる可能性もあり)ということだ。

 2.1兆円の時点で「1.1」だったB/C(費用対効果)5.3兆円で「1.0」を下回らないということはないだろう。国交省が決めている着工条件では「1.0を上回ることが望ましい」となっており、「0.9だからダメ」とはならないかもしれない「0.5でもOK」ともならないだろう。

 

 京都府の負担金額も一切明らかにされていない。JRが貸付料を負担した残額の3分の1を京都府を含めた地元自治体が負担することになるので、JRは事業を進めるのなら、まずは自らどれだけ負担できるのかをハッキリさせるべきだと思う。リニアのようにJRが事業費を全額負担するのなら、その点の話は変わってくるだろう。

 国が「地方交付税で戻しますから」と言っても、私は眉唾だと思っている。そう言うなら、まず最初に地方交付税の明細を明らかにしてもらいたい。

 この北陸新幹線事業には「国益」があるのかもしれないし、駅ができる京都市や京田辺市には「受益」があるのかもしれないが、京都府北部には全く「受益」がないし、むしろ「損害」が出る可能性もある。

 この事業で京都府の予算が厳しくなって、府北部の事業も減らさざるを得ないと言われたら、ただでさえ厳しい府北部の経済を崩壊させ、人口減少にさらに拍車をかけることになるだろう。

 

 私は「大規模事業」や「開発」に反対ではない。敦賀以西を大阪につなぐことも進めてほしいと思っているが、府北部にマイナスしか及ぼさないルート案には賛同できない。

 与党PTの委員がトンネルを掘る美山町や由良川を利用する中丹地区の府民、地下水を懸念する京都市民の声を直接聴きに足を運んだことがあるのだろうか?ルート案が決定されてからこれまでに何年もあった訳で、なぜそれをしなかったのだろうか?それをやっていれば、どういう結論を導き出すべきか、自ずと分かる話だと考える。

 

 自然の流れは自ずと落ち着く場所が決まっている。今は渦巻きの中にあっても、いずれ落ちるべきところに落ちていくのだと思う。

 

 京都府の西脇隆俊知事からは、下記の冷静なコメントが発表された。

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