ジェンダーからみるカンボジア

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メキシコでの女性に対する暴力

2012年08月16日 | 女性の自立

 

国連女性差別撤廃条約(CEAW)が設置している委員会には、個人通報制度という制度と、調査制度というのがあって、委員会が入手した信頼ある情報に基づいて、「「重大または組織的な侵害」が認められる場合に、委員会が独自に当該国を訪問して調査できる権力を持ってる。

この調査制度が使われたは、メキシコの事例しかまだなくって、今回、CEDAWの教科書を書くにあたって、初めてその調査結果を読んでみたわたし。国連文書で93ページ、だらだらと調査の概要と経過が書いてある部分が大多数なのだけれど、信じられない暴力と人権侵害の実態が詳細にわたって書いてあって、なんだかミステリー小説を読んでる気分になってくるのである。

↓いろんなところでサンドイッチを食べる子ども

事件の概要は、メキシコ北部チワワ州シウダ・ファレス付近で、1993年以降、少なくとも320人以上の女性が、誘拐、レ
イプ、殺人の犠牲になっているとの情報を現地のNGO(とNYのNGO)がCEDAW委員会に通報してCEDAW委員会が調査を決定したもの。

NGOからの通報を受けて、2003年10月、CEDAW委員2名がメキシコへ訪問調査を実施して、調査結果を93ページの報告書として作成。

調査結果は、シウダ・ファレス地方は、アメリカ国境の貧困地域で、麻薬、暴力、人身売買、臓器売買などの犯罪多発地域。93年以降の被害者のほとんどが学生や輸出加工業で働く若い女性。誘拐が多くて、帰宅途中に誘拐された女性がほとんど、発見場所は遠くの砂漠とかが多くて、ほとんどの場合は白骨死体で発見。家族からの警察への通報は無視されたのがほとんどで、遺体が発見されても、遺体の一部しか(骨とか)見せてくれない場合が大多数。この、個別のケースがえんえんと紹介されていて、信じられない悲惨な虐殺とか性犯罪・殺人、さらには非人道的な警察の対応もしっかり記録されてて、メキシコも大変だったんだなあと感じるのである。

↓座って食べられない子ども、うろうろしながらほおばる

メキシコで調査が実施された地域では、女性に対する差別が日常的かつ通常のこととされていて、女性に対する暴力を容認する文化。ほかの国と変わらないけれど、事件に対する警察の捜査も不備で、加害者が野放し状態。政府の警察関係の高官へのインタビューでは、「こういう事件はメキシコのどこででもあることだし、アメリカではもっと深刻だ」とかいう、どこかの政府高官みたいな発言まで飛び出してて、あきれ果てるのである。