ジェンダーからみるカンボジア

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「国連移住労働者とその家族の権利保護条約」に関するセミナー

2012年03月21日 | 女性の自立

 

 

「全ての移住労働者及びその家族の構成員の権利の保護に関する国際条約」をカンボジアが批准するように政府に働きかけるためのセミナーが、国連人権委員会とUNWOMEN、女性省と内務省の共催で開催されたので、顔出し。

↓150名くらいが参加してのセミナー

この移住労働者に関する条約は、わたしのように日本からカンボジアに移住して生活している労働者の権利保護のための国際取り決め。季節労働者も対象としていて、さらには労働者の家族の権利の保護も対象。つまり、わたしの子どもも対象になる大切な国際条約なのだ。

(以下、条約から引用)

第29条 移住労働者の子どもはすべて、 名前、 出生の登録及び国籍に対する権利を有する。 
第30条 移住労働者の子どもはすべて、 関係締約国の国民と平等な取扱いに基づき教育を受ける権利を有す
  る。 公立の就学前教育施設又は学校で教育を受ける権利は、 雇用地国における両親の在留又は雇用に関す
  る違法な状況もしくは子どもの在留の違法性を理由として、 拒否又は制限されない。 

第45条 1 移住労働者の家族構成員は、 雇用地国において、 次の各号に定める事項に関し、 その国民と同
  様の待遇を受ける。 
  (a) 教育的機関及び施設を利用すること。 但し、 当該機関及び施設の入学 (場) 要件及びその他の規則に
    従うことを条件とする。 
  (b) 職業紹介及び職業訓練機関並びに役務の利用。 但し、 参加要件を満たされている場合に限る。 
  (c) 社会的及び保健的役務の利用。 但し、 各制度への参加要件が満たされている場合に限る。 
  (d) 文化的生活に参加すること。 
2 雇用地国は、 適当な場合は出身国と協力し、 地域の学校制度、 特に地域言語の教育について、 移住労働
  者の子どもの統合の助長を目的とする政策を追求する。 
3 雇用地国は、 移住労働者の子どものためにその母語及び文化の教育のため便宜を計るよう努力しなけれ
  ばならず、 このことに関しては、 出身地国は、 適当なときはいつでも、 これに協力しなければならない。 
4 雇用地国は、 必要であれば出身地国の協力を得て、 移住労働者の子どもに対する母語教育のための特別
  計画を用意することができる。 

 

 

同条約は、2003年に施行されたのだけれど、アジアではまだフィリピンしか批准していないらしい。カンボジアはすでに署名はしていて、今回セミナーでは、批准に向けた政府内での手続きをプッシュしたいという国連の強い意向があるのだ。

さらに、国連人権条約のなかでは、とっても長い条約のひとつだそう。というのも、詳細にわたって、正規労働者と非正規労働者(不法移住とか)も対象にしているし、労働者の家族も対象。さらには、移住の過程すべてを対象としていて、国を出る前から受入国での労働従事時期まですべてを対象。英語では、two to tangoという用語がジェンダーでもよくつかわれるんだけれど、この条約も労働者の送り出し国と受入国の両方が協力しないといけないので(あるいは複数国)、実際の施行においてもいろいろな「想定外」の困難が予想されるのだ。

カンボジアでは、連日新聞紙上をにぎわす労働者問題。つい最近では、マレーシアから亡骸が輸送されてきた若い女性の事件が記憶に新しいけれど、2011年10月にフンセン首相がマレーシアへの家庭内労働者の移住を禁止したことが象徴するように、女性の労働移住は大きな社会問題なのだ。