○シューベルト 交響曲第9番「グレート」 フリッチャイ/ヘッセン放送交響楽団 1955年11月4日(ライブ)
近年、次々に発売されたフリッチャイのライブ録音、放送録音の中でピカ一の演奏。
スケールが大きく、テンポの緩急の激しい演奏で、フルトヴェングラーをもしのぐのではと思います。
第1楽章ではホルンのゆったりした序奏が印象的、主部では第2主題をゆっくり演奏した後の経過部で急にテンポを早め、「おやっ!」と思う部分がありますが、その後の小結尾(?)で、ぐっとテンポを落とし大きな効果を出しています。また、コーダはこの演奏の大団円。テンポを段階的に落とし最後は壮大に終わります。
第2楽章は演奏時間で見るとフルトヴェングラーに次いで遅い。そして、節目節目でぐっとテンポを落としおり、とても印象的な楽章です。もちろん3、4楽章も素晴らしい演奏です。
私がこの演奏で特に注目したのは1955年の演奏であるということです。フリッチャイは、1954~55年シーズンでアメリカのヒューストン交響楽団の常任指揮者に就任しましたが、わずか8回の定期を指揮しただけで、楽団の運営について楽団側とトラブルになり辞任しています。その後はヨーロッパに戻り、RIAS交響楽団を始め多くのオーケストラに客演しましたが、この時期の録音にはあまりよいものはなかったのです。RIAS交響楽団はフリッチャイが首席指揮者を離れてからレベルが下がったと言われ、1955年2月にフリッチャイと録音したシューマンの「春」もさえない演奏です。また、5月にウィーン交響楽団に客演し、バルトークの第2ピアノ協奏曲やチャイコフスキーの交響曲第5番を指揮していますが、熱気は伝わってくるものの、オーケストラはズタズタという感じです。
そのような訳で、あまり期待していなかったのですが、聴いてみてびっくりしました。こんな最高の演奏だったとは!
フリッチャイが「グレート」を指揮したのは、判明しているだけでベルリン・フィルの定期で2回、ケルン放送交響楽団(ルーア音楽祭)で1回、そして当演奏です。他の演奏は、残念ながら録音が残っていないようです。ベルリン・フィルを指揮した演奏はもっと凄いのだろうと思います。