私のレコード・ライブラリーから

私のレコード/CDコレクション紹介

米EMIClassics”Full Dimensional Sound”CD コレクションから(2)

2010-01-20 11:52:34 | 交響曲
 今日も昨日に続き米EMIClassics"Full Dimensional Sound"CDシリーズから写真のウィリアム・スタインバーグが手兵ピッツバーグ交響楽団と録音したブルックナー交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」(米EMI-7243 5 66556 2 1)ほか紹介したいと思う。
 このCDには余白にR.シュトラウスの交響詩「死と変容」作品24(1954年1月録音/モノラル録音)も収録されているがここで注目したいのはメインのブルックナーの録音が「バイノーラル方式(Binaural Recording)」で行われていることである。因みにこれは1956年4月録音なのですでに事実上RCAやデッカなどでは1954年ごろからオリジナル・ステレオでの録音が開始されておりそれほど驚くこともないのだがこの録音の初出当時はモノラルでリリースされており写真のCD化が初のオリジナルの「バイノーラル録音」での発売となったものである。
 「バイノーラル録音」とは簡単に言い換えれば人間の両耳に録音された音声が自然体でリリスナーに伝わる臨場感が味わえる方式である。歴史的には相当古くから実験されていたようであるが現在我々が聴く通常の「ステレオ録音・再生」とは理論上区別されるものである。従ってこのCDにも「ステレオ」の文字はどこにも記載されていない。(事実上ステレオ効果のある音なのだが)つまりステレオ方式は2つ以上のマルチ・チャンネルから録音された音源を2つ以上のスピーカーで再生し固定された音場を聴く事を意味し「バイノーラル方式」は2つの耳でその微妙な時間差による音場の相違を聴き音像を捉えることにあると考えられる。
 今回久しぶりにこのCDを再生してこの録音の素晴らしさを実感した次第でる。ヘッド・フォンを通して聴くとさらにその効果が味わえような気がする。ステレオ初期の時代には試行錯誤しながら様々な試みがなされていたことがよくわかる。
 演奏はスタインバーグらしいテンポの動きがありところどころにティンパニーなどを強調した興味深い「第4番」の演奏である。
 

 

米EMIClassics”Full Dimensional Sound”CD コレクションから(1)

2010-01-19 12:43:43 | 交響曲
 今日は今から十数年前に米EMIから”Full Dimensional Sound”シリーズとして発売された「ヴィンテージ録音」から筆者が気に入っている写真の1枚(米EMI-CDM7243 5 66557 2 0)を紹介したいと思う。
 このCDは米EMI-Capitolオリジナル・セッション録音コレクションからタイトルのとおり「Full Dimennsional Sound」-「多元音響」つまりマスター・テープから独立されたチャンネルで再生された音をデジタル・リマスター化したものである。と言っっても「擬似ステレオ化」したものではなくあくまでもオリジナルのモノラル・サウンドである。
 写真のCDはパリ生まれのアメリカのかつての名指揮者ウラジミール・ゴルシュマン(Vladimir Golschmann/1893~1975)がセント・ルイス交響楽団の首席指揮者時代に同楽団と録音した名盤ーフランク/交響曲ニ短調とショスタコーヴィチ/交響曲第5番ニ短調が収録されている。録音は2曲とも1953年でフランクが2月、ショスタコーヴィチが12月の録音でミズーリ州、セント・ルイス、”Kiel Auditorium”で行われたものである。優秀なモノラル録音で「多元音響」によるデジタル・リマスター化により見事なサウンドに蘇えっている。セント・ルイス交響楽団は1880年創立のアメリカのオーケストラの中でもニューヨーク・フィルハーモニックに次ぐ長い歴史を持つ楽団でこのゴルシュマンの時代にその演奏水準がかなり引き上げられた言われている。このCDを聴いてみるとそのあたりも充分にうなずける1枚でもある。

ルイ・フレモーの名盤、ビゼー/組曲「ローマ」・交響曲ハ長調

2010-01-18 01:52:10 | 交響曲
 今日は北フランスのエール・シュル・ラ・リュス(Aire-sur-la-Lys)出身の名指揮者ルイ・フレモー(Louis Frémaux/1921~ )がバーミンガム市交響楽団の首席指揮者時代(1969-78)に録音したビゼー(George Bizet/1835~1875)初期の2つの名曲をおさめたLP(写真/東芝EMI-EAC80079)を紹介したい。筆者がフレモーの生の演奏に最初に接したのは確か彼が東京都交響楽団の定期に客演来日した1972年のことだったと思う。ベルリオーズの劇的交響曲「ロメオとジュリエット」抜粋やルーセルの「バッカッスとアリアーヌ」第2組曲ほかを聴いた記憶がある。
 写真のLPは1975年にリリースされたものでビゼーが20歳の時に作曲した交響曲ハ長調と33歳ごろの作品組曲「ローマ」の2曲が収録されている。前者の交響曲はビゼーが完成した交響曲作品の唯一のものでパリ音楽院時代のものだがその素朴な美しさが何ともいえない。後者の組曲「ローマ」は滅多に演奏される機会がない作品であるが1866年から68年にかけて作曲された交響的幻想曲「ローマの想い出」に1860年から61年に着想された交響曲「イタリア」の「スケルツオ」の部分を加えてまとめあげられたとされている。2曲ともに名匠フレモーの巧さがいかんなく発揮された演奏で発売当時それほど話題にはあがらなかったと思われるが影に隠れた名演だと思っている。

クルト・ザンデルリンク、レニングラード・フィル時代の名盤

2010-01-17 11:53:44 | 交響曲
 クルト・ザンデルリンク(Kurt Sanderling/1912~ )はたびたび来日しわが国でも読売日本交響楽団の名誉指揮者を務めるなど馴染みの深い指揮者の一人である。今日紹介する彼が1941年から60年にかけてムラヴィンスキーの下でレニングラード・フィルの指揮に一役かっていた時代にドイツ・グラモフォンに録音したLP、チャイコフスキー交響曲第4番ヘ短調作品36(写真/DG-HELIODOR2548 102/1956年録音/モノラル)はその当時の彼をうかがい知る貴重な1枚である。彼はこの録音の2年後の1958年「第1回大阪国際フェスティバル」参加のためこのレニングラード・フィルと初来日を果たしている。
 この演奏は派手さないがずっしりとした響きの中に内側からこみ上げてくる情感がたっぷりと伝わってくる「第4番」である。彼はこの作品を1973年10月に「ドレスデン・シュターツ・カペレ」との来日公演でも東京文化会館で白熱の名演を聴かせこの模様は当時FM東京、「TDKオリジナル・コンサート」でも放送され現在ではCD化もされている。(TDKーOC009)さらにステレオによるスタジオ録音では1960年から17年に渡り首席指揮者を務めその後は名誉指揮者となった当時東独のベルリン交響楽団(2006年よりベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団に改称)とも1979年に「チャイコフスキー後期交響曲集」として「第4番」から「第6番」までのレコーディングを行っている。
 最後にモノラル録音ながら音質は大変良好でジャケット・デザインに使用された絵画も私自身大変気に入っている1枚である。


米ヴァンガード・クラシックスの懐かしい1枚

2010-01-16 10:00:27 | 交響曲
 今日は゜米ヴァンガード・クラシックス(VANGURD CLASSICS)"シリーズから懐かしい1枚、サー・ジョン・バルビローリ(1899~1970)/ハレ管弦楽団のマーラー交響曲第1番ニ長調(写真/米VANGURD/SRV233SD/ステレオ)についてふれてみたいと思う。
 このLPレコードは1964,5年頃アメリカ、「ヴァンガード・エヴリマン・クラシックス(VANGUARD EVERYMAN CLASSICS)」シリーズからリリースされたものである。まだ筆者が高校生の頃最初に購入したマーラーの第1番のレコードであった。録音はステレオ初期で1950年代末から60年頭の頃と思われる。このレーベルにはこの他カール・しゅりーヒトらを筆頭に往年の名指揮者たちの名録音が多数存在ししかも割りと手ごろな価格で入手できコレクターの筆者にとっても大変ありがたかった。またバルビローリものでは同オーケストラと最初のステレオ盤シベリウス交響曲第1番、第5番もカタログに載っていた。
 久しぶりに針をおろし聴いてみたが指揮者バルビローリの情感あふれる感性を改めて感じた次第である。たまには普段あまり針をおろすことがない昔のLPに耳を傾けてみるのも昔の懐かしい記憶が蘇えり結構いいものである。








バレンボイムの鬼気迫る白熱のライヴ!ベルク/歌劇「ヴォツェック」

2010-01-15 02:46:22 | オペラ
 今日は鬼才ダニエル・バレンボイム(Daniel Barenboim/1942~ )が1994年4月、ベルリン国立歌劇場で上演したアルバン・ベルク(Alban Berg/1885~1935)のオペラ「ヴォツェック(Wozzeck)」の鬼気迫るライヴ盤(写真/独テルデック/0630-14108-2/2CD)を紹介したい。
 ベルクの歌劇「ヴォツェック」は彼の無調主義のオペラとして好評を博した初の作品でもあった。3幕15場から構成されるこのオペラの原点は23歳で夭折した自然科学者で医者でもあったゲオルク・ビュヒナー(Georg Büchners/1813~1837)の未完の戯曲「ヴォイツェック(Woyzeck)」にある。ビュヒナーは1821年ライプチヒで実際に起きた殺人事件に関心を持ちこの戯曲に着手したと言われている。オペラのタイトル「ヴォツェック(Wozzeck)」はこの未完の戯曲が発見された際に題名を誤って「Woyzeck」を「Wozzeck」えと表記されたためそれがそのままオペラのタイトルになった。
 このライヴ録音による全曲盤はバレンボイムにとっても初のベルクのオペラ録音でこの作品が持つ抒情性を奥深く表現した名演に仕上がっている。彼はまた1997年11月に同歌劇場公演で来日した際にもこのオペラをこのCD盤のキャストとは一部異なるが上演し好評を博している。このライヴ盤は鬼才バレンボイムのまさに鬼気迫る白熱の名演と言えるであろう。参考までにこのライヴ盤の主要キャストを下記に挙げておきたい。

      ヴォツェック:フランツ・グルントヘーバー(バリトン)
      鼓手長   :マーク・ベーカー(テノール)
      アンドレアス:エントリク・ヴォトリヒ(テノール)
      大尉    :グレアム・クラーク(テノール)
      医者    :ギュンター・フォン・カンネン(バス)
      マリー   :ヴァルトラウト・マイアー(メゾ・ソプラノ) ほか

カラヤンのリムスキー=コルサコフ/交響組曲「シェエラザード」

2010-01-14 01:29:40 | ヘルベルト・フォン・カラヤン
 カラヤンはいわゆる「ロシア五人組」と呼ばれる作曲家の中でもムソルグスキー(Mussorgsky/1839~1881)の組曲「展覧会の絵」はよほど気に入った作品とみえてコンサート・ライヴ録音を除いても3回もレコーディング、コンサートでも来日公演も含め数多くプログラムに取り上げているが対照的にリムスキー=コルサコフ(Rimsky-Korsakov/1844~1908)の傑作、交響組曲「シェエラザード」作品35は写真の1967年1月にベルリン・フィルと録音した1枚のみである。またコンサートでもほとんど取り上げることはなかったと思われる。なぜこれほどの名曲がコンサートで演奏される機会がなかった(?)ことが不思議である。
 この唯一の録音(リムスキー=コルサコフの作品はこれ以外は録音していない)を聴くと音の絵巻物のようなこの大管弦楽作品を彼は実にうまく色彩感覚豊かに表現していることが自然と伝わってくる。そのあたりがカラヤンの巧さであり感性でもあろう。ヴァイオリン・ソロをつとめるコンサート・マスターのミシェル・シュヴァルベの繊細さも限りなく美しい。写真は1995年に「カラヤン選書」としてオリジナルLP・ジャケットデザイン・シリーズで再リリースされた国内盤CD、POCG-3429である。

ベルガンサの魅力が輝くアバドの「カルメン」全曲盤

2010-01-13 09:55:31 | オペラ
 今日はテレサ・ベルガンサの歌唱が魅力的なビゼー(Georges Bizet/1838~1875)の歌劇「カルメン」全曲盤(写真)を取り上げてみたい。この全曲盤3LP/DG-MG8358~60はクラウディオ・アバドが1977年エジンバラ音楽祭で初めて「カルメン」を指揮、ベルガンサもこの時タイトル・ロールの「カルメン」を初めて歌った。このレコードは「音楽祭」と同メンバーによるレコーディングで相前後して行われ発売当時話題を呼んだものである。
 「カルメン」の舞台はスペインのセヴィリヤ地方だがフランス・オペラの傑作でヴォーカル・スコアには原語のフランス語版、ドイツ語版、イタリア語版などが存在するがこの録音で指揮者アバドが使用しているのはフリッツ・エーザー校訂による「アルコーア版/1964年出版のオリジナルである。もちろん台詞は原語のフランス語である。因みにこの版によるレコードで最初に登場したのはアンナ・モッフォがカルメンを歌ったロリン・マゼール指揮(国内盤デンオン)だったと思う。
 さてこのアバドによる演奏だが一つは先に述べたベルガンサの何といっても美しい情感をこめた歌唱にある。そしてドン・ホセを歌うドミンゴ、ミカエラのコトルバスといった豪華歌手陣もそれぞれの役柄にピッタリでこのレコードの魅力を倍加している。歌劇「カルメン」の名盤の一つとしてこれからも輝き続けることは間違いないだろう。なお管弦楽はロンドン交響楽団による演奏である。
 

エミール・ギレリスのベートーヴェン、ピアノ協奏曲

2010-01-12 01:43:54 | 協奏曲
 ロシアのピアノの巨匠エミール・ギレリス(Emil Gilels/1916~1985)はベートヴェンの大家でもあった。晩年はドイツ・グラモフォンにベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集録音を進行中だったが1985年急逝のため第1番・第9番・第22番・第24番・第32番の5曲を残し全集は未完に終わった。一方協奏曲はライヴ録音も含めると数種類の全曲録音がありとりわけ1968年にジョージ・セル/クリーヴランド管弦楽団と入れた全集盤は誉れの高い名盤であるが今日は彼が1950年代に録音した最初の全曲録音(一部モノラル録音)についてふれてみたい。
 彼は当時のソヴィエト連邦の芸術家の中でも西側諸国で自由に演奏活動ができることを許可された最初の人と言われている。そのことから彼の西側諸国での活躍は意外に早く1940年代後半から西ヨーロッパを中心に演奏活動を行いレコーディングも自国の国営メロディア・レーベル(当時)のみならずEMI系やRCA系のレコーディングも数多く行っている。彼が得意とするベートーヴェンの協奏曲の録音もEMI系でまず1954年3月、パリのシャンゼリゼ劇場で第3番ハ短調作品37から開始されている。指揮はアンドレ・クリュイタンス、管弦楽はパリ音楽院管弦楽団であった。(モノラル録音)その後英EMIで1957年4月から5月にかけて第4番ト長調作品58と第5番変ホ長調作品73「皇帝」がロンドンのアビー・ロード・スタジオでレオポルト・ルートヴィッヒ指揮、フィルハーモニア管弦楽団でステレオ録音された。(写真/「第5番」1961年発売国内盤日本コロムビア/OS3006/ステレオ盤)そして最後に第1番ハ長調作品15と第2番変ロ長調作品19がパリ・サル・ワグラムで指揮アンドレ・ヴァンデルノート、パリ音楽院管弦楽団で1957年6月に録音されている。当時のフランスではまだステレオ録音の設備がまだ整っていなかった為モノラル録音で行われた。
 これらの演奏を改めて聴きなおしてみると当時40歳前後の若きギレリスのがっしりとした骨太のベートーヴェンが味わえる。録音が一部モノラルということを除けばむしろ先にあげたセル/クリーヴランド盤のステレオ録音より深みがある演奏かもしれない。CDでは今から15年位前に仏EMIから復刻されたことがあるが現在ではおそらく入手困難と思われる。結構いい演奏なので歴史的名盤として再リリースを期待したいところである。

若きガヴリーロフが弾くプロコフィエフ&ラヴェル

2010-01-11 16:06:06 | 協奏曲
 今日は若きアンドレイ・ガヴリーロフ(Andrei Gavrilov/1955~ )が弾くプロコフィエフとラヴェルの作品を収録したレコード(写真/東芝EMI-EAC71009)を取り上げてみたい。このLPは今から約30年前にリリースされたものである。録音は1977年にロンドンのアビー・ロード・スタジオで行われている。彼は1974年のチャイコフスキー国際コンクールで弱冠19歳の若さで優勝し世界から注目を浴びたピアニストである。このレコードは彼のEMI録音の第2弾となるものでプロコフィエフ/ピアノ協奏曲第1番変ニ長調作品10、ピアノ独奏による舞踊音楽「ロメオとジュリエットから10の小品」作品75から第2番「情景」・第9番「ゆりの花を持った少女たちの踊り」、ラヴェル「左手のためのピアノ協奏曲」、「逝ける王女のためのパヴァーヌ」(ピアノ原曲版)が収められている。2つの協奏曲の管弦楽はロンドン交響楽団、指揮は現在ベルリン・フィルの音楽監督を務める当時はまだ23歳の新鋭ーサイモン・ラトルがあたっている。おそらくラトルにとってこの録音はEMIへの初録音だったかも知れない。いずれにしても二人の新鋭アーティストによるフレッシュな録音であった。
 演奏はさすがロシアが生んだ技巧派ピアニスト、ガヴリーロフだけあり見事なテクニックでこれら二つのコンチェルトを弾きこなしている。プロコフィエフもさることながらラヴェルの「左手」も片手だけでよくもこれほどダイナミックで流動感ある彼の演奏に引き込まれてしまう。指揮者ラトルとの息も合いロンドン響との調和も素晴らしい。