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「移民受け入れで少子高齢化対策」という妄想 - 人口問題を理解していないのは中川少子化相か、メディアか

2012-02-27 | いとすぎから見るこの社会-少子化問題
読売新聞の報道によれば、中川少子化担当相が
少子高齢化対策として移民受け入れを提唱したようだ。

これは記事のミスリードの可能性もかなりあるが、
本当に移民受け入れが少子高齢化対策だと認識しているのなら大問題だ。

有効な少子化対策を実行できていない無策を棚に上げているだけでなく、
根本的に人口問題を理解していない事実が明らかになったことになる。

今後、日本の人口は10万人以上のペースで減ってゆく。
生産年齢人口に至っては毎年50万人以上もの猛烈な勢いである。
それと同数の移民受け入れを行わなければ対策にならない。
毎年10万、100万という単位で移民受入が可能だと本気で思っているのか。

白昼夢のような論理を平気で言ってしまうのであれば、
大臣としては勿論、一有権者としてすら失格であろう。

日本ではまず政界において人口問題を理解していない発言が多いので想定内だが、
改めて理解度の低さを国家的問題として見なければならないのかもしれない。
(そう言えばちきりん女史もこの点を完全に錯覚していたような)


 ↓ 参考

子供手当を巡る政争で露呈した、既存政党の経済政策への無知 - 政策コストを忘れ待機児童問題も放置
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/beb1467aeb4d62825139020966eff00d


人口減少や少子高齢化対策としての移民政策は焼け石に水。
この点を言明されたのがあの藻谷浩介氏である。
(大前研一氏もかなり以前から「間に合わない」とされている)

氏の『デフレの正体』は数々の欠点を持つものの、
今迄エコノミストや評論家が見落としていた貴重な指摘が複数ある。

▽「移民受け入れでは圧倒的にボリュームが不足する」との正論





『デフレの正体 経済は「人口の波」で動く』


移民受け入れが焼け石に水であるので、他にどのような選択肢があるかだが、
藻谷浩介氏も小峰隆夫教授も共通して挙げている施策がある。
女性就業率の向上で労働人口減少を補うことである。
現実的に可能な経済政策としてはこれしかない。
移民受け入れよりも圧倒的に社会的コストは少なくて済む。

▽ 女性労働力の活用でGDPが23%向上するとの試算がある

『人口負荷社会』(小峰隆夫,日本経済新聞出版社)


少子高齢化に対処するには労働力人口の増加と税収増が絶対不可欠だ。
今すぐ出生率が向上したとしても生産年齢人口に影響が出るのは2020年代であり、
それまでは女性労働力を活用する以外に選択肢はない。
我々の中に日本語が堪能で教育程度の高い労働力が隠れているのだから。

面倒でコストのかかる厄介な移民受け入れとは大違いであり、
女性労働者は10万、100万という規模で増やすのが可能である。

ただ税制で所得移転が必要な他、政策のディテールを地道に改善し続ける
高い「民度」が必要なのは今の日本にとって高いハードルかもしれない。


中川少子化相「移民政策を視野」…政府で議論も(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20120223-OYT1T00988.htm
”中川少子化相は23日、読売新聞などとのインタビューで、日本で少子高齢化が進んでいることに関連し、「北欧諸国や米国は移民政策をみんな考えている。そういうものを視野に入れ、国の形を考えていく」と述べ、移民を含めた外国人労働者の受け入れ拡大を目指し、政府内に議論の場を設けることを検討する考えを示した。
 少子化対策だけで日本の人口減少に歯止めをかけるのは難しいとの認識を示したものだ。中川氏は「現状でも多くの外国人が実質移民という形で日本に入っている。どういう形で外国人を受け入れていくか議論しなければいけない時期だ」と語った。”

この記事だけでは中川氏の発言の詳細が分からない。
発言していない内容を書いた誤報もしくは誘導の可能性もあるだろう。

単に「移民受け入れが必要だ」なら間違いではないが、
「移民受け入れは少子高齢化や人口減少への対策に必要だ」は明白な誤りである。
それは火事になってから消火器を買いに走る愚行と大差ない。

はっきり言っておくが、移民政策は経済政策であって人口政策ではない。
地方自治体なら人口政策になり得るが、日本としてはなり得ない。

また、経済政策としてなら高度人材受け入れしか道はない。
高度人材受け入れは数量的制約が大きく、人口減少対策には尚更なり得ない。
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