クラシック 名盤探訪

クラシックの名盤紹介・おすすめ散策コース等、趣味の発信の場です。

とっておきの名盤 その149 J.S.バッハ ブランデンブルグ協奏曲 全6曲

2009年06月06日 | とっておきの名盤「協奏曲」
   
特別の棚に置いている「とっておきの名盤」を紹介するシリーズもこの一枚でとうとう最後になってしまった。
”とっておき”という言葉がずっと続くのはおかしいし、次からどういう形でこのブログを続けていこうかと今悩んでいる。
次回からは「この曲この一枚」という形で、愛着を覚える盤をその都度紹介して行こうと思ってはいるが。
コッホは合唱指揮者として名を成した人だが、特に古典宗教音楽の演奏には深い造詣があり、音楽史の研究でも独特の権威を示した立派な人だった。
1975年(1908年生まれ、67歳)に亡くなっているから、今からもう34年も前になる。
あまり多くの録音を残していないので、この人の盤を持っている人は少ないと思うが、こまめに輸入盤を探して少しでも手に入れて欲しいと思う。
どれも一聴に値する盤ばかりのはず。
ブランデンブルグ協奏曲の名盤についてだが、雑誌「レコード芸術」でよくやっている”名曲名盤300選”で、常に第一位になっているのはリヒター指揮の盤。
たしかに素晴らしい演奏だと思うが、自分の好みに合ったもので何度聴いても飽きの来ない盤となると次の二者の演奏のものになる。
私としては、第一位に挙げたいのはミュンヒンガー指揮の旧盤か、このコッホ指揮のもの。
特に後者の盤は、少し速いテンポと独特の生き生きとしたリズム感が見事で、聴いている者の胸を弾ませてくれることこの上ない。
芯のしっかりとした奥行きの深い音と、滋味のある響きを聴かせてくれるベルリン・クラシックの録音も素晴らしいし、この曲を聴くなら絶対に見逃せない一枚。
ひとまず、この曲のベストファイヴを挙げると、
・カール・ミュンヒンガー指揮、シュトゥットガルト室内管弦楽団(1958年録音) <DECCA>
・ヘルムート・コッホ指揮、ベルリン室内管弦楽団 <Berlin Classics>
・カール・リヒター指揮、ミュンヘン・バッハ管弦楽団 <Archiv>
・オットー・クレンペラー指揮、フィルハーモニア管弦楽団 <EMI>
・シギスヴァルト・クイケン指揮、ラ・プティット・バンド <Deutsche harmonia mundi>

とっておきの名盤 その146 ブラームス ピアノ協奏曲第2番変ロ長調 作品83

2009年03月14日 | とっておきの名盤「協奏曲」
  
バックハウス、ベーム、そしてウィーンフィル、私などはこの組み合わせを見ただけで何かいつもとは違う心の高まりを覚えてしまう。
少しでも音楽を親しむ人なら、これから始まるに違いない”三者の真摯な魂のやり取り、そしてそれらが綾なすいぶし銀の音の響き”に期待の胸を膨らませるはず。
気持ちを高めた後、この盤をプレーヤーに置き、そっとスタートボタンを押す。
しばらくすると、やわらかいホルンが何かを呼びかけるように音を響かせる。
そして何気ないというような風情でピアノが答えを返す。
この出だしの音楽が醸し出す夢のような雰囲気をどう表現したらよいのだろう。
なんという渋いロマンティシズムの響き、これぞブラームスが心に描いた音の響きなのだろう。
バックハウスは、この録音から二年後に八十四歳の生涯を閉じたのだが、ブラームス特有の”人生の侘び寂を極めた調べ”をこれほど見事に表現してくれたことに感謝の気持ちで一杯になる。
この曲は、バックハウスが十九歳の時にデビューを飾った思い出の作品でもあり、その思い入れが入った味の深い演奏には、誰もがなるほどとうなずくのは当然のことといえる。
ベーム、そしてウィーンフィルのサポートも素晴らしいし、私がこの盤をとっておきの名盤に挙げる訳は、このブログを読む人にも充分納得してもらえるものと思う。
この曲のベストファイヴをあげると(但し、上位3枚は同列としたい)。
・ウィルヘルム・バックハウス<P>、カ-ル・ベーム指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 <LONDON>
・マウリツィオ・ポリーニ<P>、クラウディオ・アバド指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>
・ウラディミール・アシュケナージ<P>、ベルナルト・ハイテインク指揮・ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 <LONDON>
・スヴャトスラフ・リヒテル<P>、エーリッヒ・ラインスドルフ指揮、シカゴ交響楽団 <RCA>
・ハンス・リヒター=ハーザー<P>、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 <Disky>

とっておきの名盤 その142 ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品61

2009年01月07日 | とっておきの名盤「協奏曲」
  
ボベスコは”クラシック不滅の巨匠達”という様な本には絶対に載ってこないヴァイオリニストではあるが、チャーミングの極みとか、魂をひきつけるとかの視点からみると、私にとっては絶対にはずせない人の一人。
ベートーヴェンの作品の中でも最も優雅で気品あるメロディーにあふれるこの曲の第一楽章、それを彼女は古き良き時代を匂わせる極端といってもよいくらいの遅いテンポで、何ともあでやかに弾き抜ける。
浮世ばなれした陶酔感、時間も停止したようなこの音の流れは、あわただしい今の世の中ではめったに味わえない貴重なひと時にも思える。
これはもう好き嫌いの問題になってしまうが、私などはまだ小学生の頃だったけれども、昭和30年代のゆったりとした生活空間というか、しっとりとした時間の流れを思い起こさせる彼女の演奏に、ただただ惹かれてしまう。
この一枚、単純な選択だけれども、感覚的に好きなんだという中で選ぶとっておきの一枚としてまずは挙げたい。
もちろんとっておきの名盤の棚の中にきちんと並んでいる。
一緒に入っている小品、ロマンス第ニ番の極めて愛らしい旋律も、彼女は何とエレガンスに弾いていることか。
この曲のベストファイヴは、
・チョン・キョン=ファ<Vn>、クラウス・テンシュテット指揮、ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団 <EMI>
・ローラ・ボベスコ<Vn>、エドガール・ドヌー指揮、ベルギー国立放送新交響楽団 <PHILIPS>
・アイザック・スターン<Vn>、レナード・バーンステイン指揮、ニューヨークフィルハーモニー管弦楽団 <CBS>
・ヘンリック・シェリング<Vn>、シュミット=イッセルシュテット指揮、ロンドン交響楽団 <PHILIPS>
・ダヴィット・オイストラフ<Vn>、アンドレ・クリュイタンス指揮、フランス国立放送局管弦楽団 <EMI>
チョン・キョン=ファ盤は、これぞ魂のこもった演奏の極め付きという一枚であり、これも是非聴いて欲しい。

とっておきの名盤  その134 メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64

2008年09月07日 | とっておきの名盤「協奏曲」
メンデルスゾーンのこの曲、ベートヴェン、ブラームスのそれと並ぶ3大ヴァイオリン協奏曲の一つとして有名だが、私としてはチャイコフスキーとブルッフのものも加えて、5大協奏曲の中の名品と呼んだ方が性に合う。
出だしを初めとして、全編にわたって魅力的な旋律に終始している曲で、スコットランド交響曲もそうだが、メンデルスゾーンの作品の中では特に好きな曲の一つ。
1920年生まれのルーマニアの名花ローラ・ボベスコは、日本の音楽ファンに特に愛されていたヴァイオリニストだった。
といっても、舞台は退いたがまだ健在のはず。
彼女のヴァイオリンを聴いていると、クライスラーやティボーを思い起こさせる良き時代の美音が心の奥底にじっと伝わってくる。
ただロマンティックな演奏というだけでなく、その中に高雅な気品が常に漂っているのがファンにとってはたまらない。
この盤、一緒に入っているサン・サーンスの「序奏とロンド・カプリッチオーソ」も絶品といってよいほど素晴らしい。
ヴァイオリンが好きな人には、特に聴いて欲しい一枚。
この曲のベスト・スリーをあげると、
・ローラ・ボベスコ<Vn>、エドガール・ドヌー指揮、ベルギー国立放送新交響楽団 <PHILIPS>
・ナージャ・サレルノ=ソネンバーク<Vn>、ジェラード・シュウォーツ指揮、ニューヨーク室内交響楽団 <EMI>
・なし

とっておきの名盤 その131 ブラームス ピアノ協奏曲第2番変ロ長調 作品83

2008年07月31日 | とっておきの名盤「協奏曲」
ショパンコンクール第2位、エリザベート王妃コンクール第1位、そしてチャイコフスキーコンクール第1位という輝かしい経歴を持つアシュケナージは、ピアニストとして数々の優れた演奏を我々に残してくれていた。
それがどういう心境の変化からなのか、1970年頃から指揮活動を始め、フィルハーモニア管弦楽団、チェコフィル、そしてN饗の音楽監督等を経て今度はシドニー交響楽団の主席指揮者を努めるという。
私の聴いた限りでは、バレンボイム指揮するCDもそうだが、アシュケナージの場合も、とにかく聴いていて心の奥底にしっくりと来る演奏に、今まで出くわしたことが無い。
私としては、彼はピアニストとしてずっと活躍を続け、ポリーニやアルゲリッチと並んで、とっておきの名盤をどんどん残して欲しかったのにと思ってやまない。
このブラームスの2番は、とにかく素晴らしいとしか言いようのない演奏。
ハイティンク指揮する堂々たるウィーンフィルの音をバックに、アシュケナージは驚異的なピアニズムでその円熟した音楽を、私の目の前に繰り広げてくれる。
そのピアノの音の中に漂うブラームス特有の哀調に満ちた豊かな情感は、駆け出しのピアニストには絶対に表せないものがある。
是非聴いてほしいとっておきの一枚といえる。
この曲のベストファイヴをあげると(但し、上位3枚は同列としたい)。
・ウィルヘルム・バックハウス<P>、カ-ル・ベーム指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 <LONDON>
・マウリツィオ・ポリーニ<P>、クラウディオ・アバド指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>
・ウラディミール・アシュケナージ<P>、ベルナルト・ハイテインク指揮・ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 <LONDON>
・スヴャトスラフ・リヒテル<P>、エーリッヒ・ラインスドルフ指揮、シカゴ交響楽団 <RCA>
・ハンス・リヒター=ハーザー<P>、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 <Disky>

とっておきの名盤 その127 ベートーヴェン ピアノ協奏曲全集

2008年06月12日 | とっておきの名盤「協奏曲」
バックハウスは1884年、大バッハゆかりの地であったドイツ中央部のライプツィヒに生まれ、ドイツ正統派ピアニストの道を確固たる信念を持って歩み続け、その生涯を終えた人であった。
19世紀終わり頃のブゾーニ、ダルベールを経て、シュナーベル、バックハウス、ゼルキン、アラウ、ケンプらに受け継がれてきた”ドイツ派のピアニスト”と呼ばれた演奏家たちの代表格であり、最も辛口の、最も虚飾というものに縁の無い、ただひたむきな質実剛健のピアニストが彼であった。
演奏会では、その姿に辺りを払うような威厳があり、ピアノの前に腰をかけると、即興的に曲目と関連した調の分散和音など弾き始めたという。
彼は、1969年の音楽祭における演奏会で心臓発作に襲われ、その後85歳の生涯を閉じることになるのだが、そこで最後に弾いた曲はシューベルトの即興曲作品142-2であった。
その時の演奏は、「何という感動、そこにはこの世への別れの思いが強くこめられている。」と評され、今でも語り草になっている。
私がバックハウスを知ったのは、雑誌かライナーノートの文章で、彼のことが「鍵盤の獅子王」と表現されていたのに強い印象を覚えてからだった。
ベートーヴェンの32のピアノソナタなどは、余りにも厳格すぎる所があって、素直についていけないものがあるが、彼の良さが総てプラスに働いているこのピアノ協奏曲全集は素晴らしい。
名伴奏で知られるイッセルシュテットの指揮振りとウィーンフィルの魅惑的な音色もとりわけ秀でている。
有名な「皇帝」のベストファイヴを挙げておくと、
・アルトゥール・ルービンシュタイン<P>、ダニエル・バレンボイム指揮、ロンドンフィルハーモニック管弦楽団 <RCA>
・ウイルヘルム・バックハウス<P>、ハンス・シュミット・イッセルシュテット指揮、ウイーンフィルハーモニー管弦楽団 <LONDON>
・ルドルフ・ゼルキン<P>、レナード・バーンスタイン指揮、ニューヨークフィルハーモニック管弦楽団 <CBS>
・フリードリッヒ・グルダ<P>、ホルスト・シュタイン指揮、ウイーンフィルハーモニー管弦楽団 <LONDON>
・ルドルフ・ゼルキン<P>、小沢征爾指揮、ボストン交響楽団 <TELARC>

とっておきの名盤 その118 モーツアルト ピアノ協奏曲第27番変ロ長調 K595

2008年03月12日 | とっておきの名盤「協奏曲」
当時サーの称号を与えられた唯一のピアニストだったクリフォード・カーゾン、彼は無類の録音嫌いで有名だったので、残した録音も余り多くないが、この盤はその中でもモーツアルトの純粋無垢な魂の一面を真正面から聴き手に伝えてくれる貴重な一枚。
好きなこの曲の第2楽章を聴いていると、その粒よりのピアノの音が持つ「透明さ」、「温かみ」の素晴らしさの中に、いつの間にか吸い込まれている自分にふと気が付く。
彼は全く欲が無いことでも有名だった。
レコード録音によって収入を増やすとか、レパートリーを広げて自己満足を広げることも無く、淡々と好きな曲を弾いていた。
彼が得意としたモーツアルト、その中でもこれだけ”無私のモーツアルト”が光る盤は他には無い。
一緒の盤に入っている第20番の第2楽章なども、同じ意味で素晴らしい限り。
とっておきの名盤として欠かせない一枚。
この曲のベスト・スリーをあげておくと、
・ベンジャミン・ブリテン指揮、イギリス室内管弦楽団、クリフォード・カーゾン<P> <LONDON>
・ダニエル・バレンボイム指揮、イギリス室内管弦楽団、ダニエル・バレンボイム<P> <EMI>
・クラウディオ・アバド指揮、ロンドン交響楽団、ルドルフ・ゼルキン<P> <Grammophon>

とっておきの名盤 その115 ブラームス ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品77

2008年01月30日 | とっておきの名盤「協奏曲」
この盤は1948年5月3日のハンブルグでの演奏会録音というから、もう60年ほど前のことになる。
ここで聴かせるヌヴーの感動的な弾きぶりは、たんなる技巧とかありふれた解釈をはるかに超え、ブラームスのこの曲に対する思いと彼女の比類ない魂の表れが、私の胸に強く訴えかける。
フランス生まれ、パリ音楽院で学んだにもかかわらず、ドイツ的な魂の燃焼をひしひしと感じさせ、それが聴くものに何の違和感も感じさせないのが不思議なぐらい。
母親がヴァイオリン教師だったため早くからこの楽器を手にし、7歳の時にはブルッフの第一番を演奏会で弾いたという。
彼女が16歳でヴィエニアフスキー・コンクールで優勝した時、2位の青年は27歳のダヴィット・オイストラフだったというから驚く。
美人薄命の言葉にもれず、彼女は1949年10月にアメリカへ向かう飛行機の墜落事故で30歳の短い生涯を終えてしまう。
数少ない録音の中、これぞとっておきの名盤と心から言える貴重な一枚を遺してくれた彼女、あらためて冥福を祈りたい。
この盤は歴史的名演として神格化された存在だが、もう一枚のとっておきの名盤としてグリュミオーのものもあげておきたい。
この曲のベストファイヴを以下に挙げると、
・ジャネット・ヌヴー、ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮、北ドイツ放送交響楽団 <PHILIPS>
・アルチュール・グリュミオー、サー・コーリン・デーヴィス指揮、フィルハーモニア管弦楽団 <PHILIPS>
・ミシェル・オークレール、ウイレム・ファン・オッテルロー指揮、ウィーン交響楽団 <PHILIPS>
・ダヴィット・オイストラフ、ジョージ・セル指揮、クリーヴランド管弦楽団 <EMI>
・ダヴィット・オイストラフ、オットー・クレンペラー指揮、フランス国立放送局管弦楽団 <EMI>

とっておきの名盤 その113 ピアノ協奏曲第一番ニ短調 作品15

2008年01月16日 | とっておきの名盤「協奏曲」
好きな曲だけに、数少ないとっておきの名盤の中にどうしても落とせない演奏が複数枚入いってしまう。
ゼルキンとセル、この硬派の二人が演奏する若きブラームスの手になる第一番の盤もその一つ。
第一楽章など、その情熱的な出だしから一気に弾き抜けるゼルキンのピアノ、それをしっかりと支えるセルの棒がまことに印象的。
ゼルキンは多くのレパートリーの中でも、この曲を最も得意としており、これはその4回目の録音(1968年)となるもの。
気持ちが落ち込んでいる時など、この曲を耳にすると、元気印のカンフル剤が注入されるみたいで、いつの間にか晴れやかな気持ちになっている自分に気が付く。
この廉価版のジャケットが、オリジナルのものと違うのが残念だが、是非手元に置いておきたい一枚であることは間違いない。
この曲のベスト・ファイブをあげると、
・ウラジミール・アシュケナージ、ベルナルト・ハイティンク指揮、アムステルダムコンセルトヘボウ管弦楽団 <LONDON>
・エミール・ギレリス、オイゲン・ヨッフム指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>
・ルドルフ・ゼルキン、ジョージ・セル指揮、クリーブランド管弦楽団 <CBS>
・ブルーノ・レオナルド・ゲルバー、フランツ=パウル・デッカー指揮 ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団 <SERAPHIM>
・エレーヌ・グリモー、クルト・ザンテルリンク指揮、ベルリンシュターツカペレ <ERATO>

とっておきの名盤 その103 ブラームス ピアノ協奏曲第2番変ロ長調 作品83

2007年10月06日 | とっておきの名盤「協奏曲」
この盤は、ポリーニとアバドによるライヴ録音で、その冒頭からの熱気溢れる演奏は素晴らしいの一言に尽きる。
もう10年も経つ(1997年録音)と言うのに、この盤を聴いた時の風格の極みともいえるポリーニの力量の大きな演奏を、今でも鮮やかに私の脳裏に思い出すことが出来るほどだ。
この曲はブラームスの円熟期の作品だけあって、その音楽の自然な流れと、作曲者の感情の微妙な動きを滲み込ませた曲想は彼だけが表し得たものに違いない。
第3楽章の初め、チエロ独奏の後、侘びと寂にみちた秋の夕暮れを思わせる雰囲気の中、ポリーニのピアノが絶妙なタッチでブラームスの憂いを訴えかける。
そしてアバドの、ベルリンフィルを手中のものにした精妙なオケコントロールで、バックアップするタクトの間合いが何ともいえない効果を引き出している。
とにかくとっておきの名盤として絶対に外せない一枚で、何度聴いても飽きの来ない演奏には、敬意を表すのみ。
この曲のベストファイヴをあげると(但し、上位3枚は同列としたい)。
・ウィルヘルム・バックハウス<P>、カ-ル・ベーム指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 <LONDON>
・マウリツィオ・ポリーニ<P>、クラウディオ・アバド指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>
・ウラディミール・アシュケナージ<P>、ベルナルト・ハイテインク指揮・ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 <LONDON>
・スヴャトスラフ・リヒテル<P>、エーリッヒ・ラインスドルフ指揮、シカゴ交響楽団 <RCA>
・ハンス・リヒター=ハーザー<P>、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 <Disky>



とっておきの名盤 その93 モーツアルト フルートとハープの為の協奏曲ハ長調 K299

2007年06月19日 | とっておきの名盤「協奏曲」
この曲はモーツアルト22歳、1778年四月頃のパリでの作品とされている。
たしかに、フランス貴族好みの優雅な美しさが漂う珠玉の名品と云ってよい。
ここで推奨するこの盤は、ウィーンフィルの名手を表にして、ミュンヒンガーの端正な指揮振りが際立つ見事な演奏で、それこそ掛け値なしのとっておきの一枚といえる。
ウィーンの香りが一面に漂うオーケストラの音をバックに、フルートとハープの典雅な響きが、何とも聴くものの心をエレガンスの極みにさせてくれる。
この曲を聴くには、演奏、録音とも飛びぬけて優れたこの一枚で充分足りるのだが、他の盤も聴いてみたいという方の為に、あえてベストスリーの演奏をあげると、
・ヴェルナー・トリップ<Fl>、フーベルト・イェリネク<Hp>、カール・ミュンヒンガー指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 <LONDON>
・リーザ・ベズノシューク<Fl>、フランシス・ケリー<Hp>、クリストファー・ホグウッド指揮、エンシェント室内管弦楽団 <L'OISEAU-LYRE>
・カールハインツ・ツェラー<Fl>、ニカノール・サバレタ<Hp>、エルンスト・メルツェンドルファー指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>

とっておきの名盤 その89 ブラームス ピアノ協奏曲第1番ニ短調 作品15

2007年05月22日 | とっておきの名盤「協奏曲」
24歳のブラームスの若さと情熱がにじみ出た傑作で、聴くたびに私の心を元気づけてくれる愛すべき作品のひとつ。
とっておきの名盤として、既にアシュケナージ演奏のものをこのブログで紹介しているが、ここにあげるギレリスの盤も決して落とすことの出来ない一枚。
ここでのギレリスは、”鋼鉄のタッチ”などと形容された頃のイメージを完全に脱して、ブラームスの内面的な部分や叙情的な一面を、何と真摯に聴く者に訴えかけてくれている事か。
私が最高のブラームス指揮者として信じてやまないヨッフムの伴奏が、そのまた上を行く素晴らしさというのも嬉しい。
ブラームスの青春の魂ともいえるこの作品の魅力を、伴奏などと言う域を超えた所で、見事に伝えてくれている。
アシュケナージ、ゼルキンの盤と並んで、とっておきの名盤として特別の棚に置いておきたい一枚。
この曲のベスト・ファイブをあげると、
・ウラジミール・アシュケナージ、ベルナルト・ハイティンク指揮、アムステルダムコンセルトヘボウ管弦楽団 <LONDON>
・エミール・ギレリス、オイゲン・ヨッフム指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>
・ルドルフ・ゼルキン、ジョージ・セル指揮、クリーブランド管弦楽団 <CBS>
・ブルーノ・レオナルド・ゲルバー、フランツ=パウル・デッカー指揮 ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団 <SERAPHIM>
・エレーヌ・グリモー、クルト・ザンテルリンク指揮、ベルリンシュターツカペレ <ERATO>

とっておきの名盤 その80 ドヴォルザーク チェロ協奏曲ロ短調 作品104

2007年03月21日 | とっておきの名盤「協奏曲」
この盤を聴く度にいつも胸の中に湧き出てくるのは、1960年代のベルリンフィルは何と素晴らしかったことかという思いだ。
引き締まった弦はもちろんのこと、特にホルン、フルート、オーボエなど、管楽器の群を抜いた響きの見事さは後のベルリンフィルでは絶対に味わうことの出来ないものだった。
第一楽章での望郷の念をこめた懐かしさ極まりない第二主題の旋律を奏でるホルンとそれを引き継ぐフルートの音色など、言葉で言い尽くせない美の高まりが聴くものの胸を締め付ける。
第二楽章での随所に聴かれる神秘的とも云ってよいフルートの響きを聴くたび、私など懐かしさと言うか、癒しというか、上手く表しきれないが、心からの安らぎというものを覚えている自分にふと気づく。
この盤で絶妙なフルートの音色を聴かせてくれる名手は、戦後の代表的名フルート奏者オーレル・ニコレの後を継いだカール・ハインツ・ツェラーで、私の最も好きな奏者の一人だった。
曲の素晴らしさ、名チェリストのロストロポーヴィッチの立派さを書かなければ話がまとまらないのに、書くことはどうしても60年代のベルリンフィルへの思い入れになってしまう。
定番とされている演奏で、今更と言われるかもしれないが、そのフルートの奏でる感動的な響きに耳を浸すだけでも一聴の価値がある名盤、是非とも機会を見て耳を傾けて欲しいと思う。
この曲のベスト・スリーをあげると、
・ムスティスラフ・ロストロポーヴィッチ<Vc>、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 1968年録音<Grammophon>
・ジャクリーヌ・デュプレ<Vc>、ダニエル・バレンボイム指揮、シカゴ交響楽団 <EMI>
・ルートヴィヒ・ヘルシャー<Vc>、ヘルマン・アーベントロート指揮、ライプチヒ放送交響楽団 <Deutsche Shallplatten>

とっておきの名盤 その72 モーツアルト ピアノ協奏曲第9番変ホ長調「ジュノム」K.271

2007年01月25日 | とっておきの名盤「協奏曲」
私の愛読書のひとつに「モーツアルトのいる部屋」という本がある。
著者の井上太郎氏は、中央公論社で宮脇俊三氏とともに「モーツアルト大全集」を企画担当された方で、モーツアルトをこよなく愛してやまない人。
七百曲に近いモーツアルトの作品の一つ一つを生涯の軌跡と併せて丁寧に説いていて、私はこの本からその知られざる名曲の数々をどんなに教えられたことか、本当に感謝の念に耐えない。
この曲は1777年、モーツアルト21歳の若書の傑作で井上氏の本にはこうある。
「この曲はいろいろな点で型破り・・・冒頭からピアノのソロが開始される・・・これ以後のモーツアルトの協奏曲でも一度もない・・・第二楽章が短調なのもこのジャンルの曲では初めて・・・開始のカノンに続く悲痛な弦の嘆きの歌の後、ゆったりと登場するピアノの新しい主題の背後に、運命の厳粛な歩みを思わせる冒頭のカノンが、影のように流れてゆくあたりの素晴らしさは、モーツアルトといえども二度と書けなかったものではなかろうか・・・この曲のフィナーレは聴き手の意表を衝き次々と無限の世界へと誘っていく・・・私の愛してやまない曲である」。
私も全く同感だし、この見事な文章を読んでこの曲を聴きたいと思う人はきっと沢山いるはず。
この盤での78歳のゼルキン、モーツアルトのこの曲にかける思いというものを、全体にゆったりとしたテンポで淡々と聴くものに訴えている。
アバドの伴奏とともに、全く自然体の表現なのがとにかく素晴らしい。
録音も、ふくよかな管の響きと奥の深いピアノの音色の変化を見事に捉えている。
是非聴いて欲しい、とっておきの愛聴盤。
あえてこの曲のベストスリーをあげると、
・ルドルフ・ゼルキン、クラウディオ・アバド指揮、ロンドン交響楽団 <Grammophon>
・リリー・クラウス、ヴィクトル・デザルツエンス指揮、ウィーン国立歌劇場管弦楽団 <不明>
・なし

とっておきの名盤 その64 ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番ハ長調、第2番変ロ長調

2006年12月17日 | とっておきの名盤「協奏曲」
この盤はアルゲリッチ43歳、シノーポリ39歳、若さと覇気に満ちていた1985年の録音。
アルゲリッチのピアノの音の柔らかさ、微妙に変化する音色が何ともいえない魅力を醸し出す、絶妙のバランスで彼女のピアノを支えるオーケストラ、この組み合わせは素晴らしい。
聴いた後の精神的満足感、これ程の充実した思いはなかなか味わえるものではない。
シノーポリ、指揮者としてはこれから円熟を迎えるはずだったが、2001年55歳の突然の死、その訃報には本当に驚かされた。
愛するブルックナーでも立派な指揮をしていたし、一層の活躍を期待していただけに、今でも本当に残念な気持ちで一杯。
その後のアルゲリッチは、アンサンブル曲の録音が多いのが残念、ベートーヴェンの後期ピアノソナタの録音など夢のまた夢か。
この曲のベスト・ファイヴを挙げると、
・マルタ・アルゲリッチ、ジュゼッペ・シノーポリ指揮、フィルハーモニア管弦楽団 <Grammophon>
・ウィルヘルム・バックハウス、ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 <LONDON>
・フリードリッヒ・グルダ、ホルスト・シュタイン指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 <LONDON>
・クラウディオ・アラウ、コーリン・ディヴィス指揮、ドレスデン・シュターツカペレ <PHILIPS>
・なし