クラシック 名盤探訪

クラシックの名盤紹介・おすすめ散策コース等、趣味の発信の場です。

とっておきの名盤 その58 モーツアルト ピアノ協奏曲第26番ニ長調「戴冠式」 KV537

2006年11月23日 | とっておきの名盤「協奏曲」
かつてグルダ、バドウラ=スコダ、デームスの3人は、ウィーン三羽烏と呼ばれていた。
その後、生ぬるい伝統的な演奏には飽き足らず、その中から真っ先に飛び出したのはグルダだった。
モーツアルトのソナタでのユニークな解釈など、評論家を賑わしたのが思い出深い。
この盤は、これも信念を持って画然たる指揮をするアーノンクールとの組み合わせ、面白くないはずが無い。
昔からこの曲、特に第一楽章が好きでいろいろの演奏を聴いてきたが、中々これはという名盤に巡り合う事が無かった。
それだけに、この盤を聴いたときの両者の新鮮な解釈に驚くと共に、やっと名盤に巡りあえた喜びはひとしおのものがあった。
特に第一楽章はその際たるもので、随所に渡ってモーツアルトの美しい旋律が、絶妙な強弱のアクセントを利かせて聴き手に不意打ちの時めきを味あわせてくれる。
聴きはじめてから少し後に始まる弦の掛け合いの箇所などは美しさの極み。
その中をグルダのピアノが絶妙のタッチで縦横無尽に走り回る楽しげな具合が何ともいえない。
目の前でモーツアルト自身が弾いている様な錯覚を覚えるほど。
これに限っては他の盤を推す気にはなれないし、それこそ絶対のお勧めの一枚。
ピアノそしてバックの音も実に自然で、音楽そのものを感じさせる録音の優秀さも際立っている。
・フリードリッヒ・グルダ<Pf>、ニコラウス・アーノンクール指揮、アムステルダム・コンセルトへボウ管弦楽団 <TELDEC>

とっておきの名盤 その52 ブラームス ヴァイオリン協奏曲ニ長調

2006年11月02日 | とっておきの名盤「協奏曲」
グリュミオーが演奏したこの一枚は、隠れた名盤だ。
通常、ヌヴーの歴史的演奏がまず取り上げられ、グリュミオーの一枚が話に乗ることはほとんど無い。
しかし、この演奏に耳を傾けるや否や、デーヴィス指揮するオーケストラの堂々とした出だしの広がり、そのブラームス特有の憂いに満ちた名旋律が、しみじみと私の胸を打つ。
その後の絶妙なヴァイオリンの出だし、とにかくひたすら歌わせるグリュミオーの表現が、思った以上にブラームスの叙情的な曲調に合っている。
お勧めの一枚である。
ヌヴーの一枚は、今や神格化されている名演で、別格的な存在。
30歳の若さを飛行機事故で散らしたヌヴーに、今更ながら哀悼の意を捧げたい。
この曲のベストファイヴを以下に挙げる、
・アルチュール・グリュミオー、サー・コーリン・デーヴィス指揮、フィルハーモニア管弦楽団 <PHILIPS>
・ジャネット・ヌヴー、ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮、北ドイツ放送交響楽団 <PHILIPS>
・ミシェル・オークレール、ウイレム・ファン・オッテルロー指揮、ウィーン交響楽団 <PHILIPS>
・ダヴィット・オイストラフ、ジョージ・セル指揮、クリーヴランド管弦楽団 <EMI>
・ダヴィット・オイストラフ、オットー・クレンペラー指揮、フランス国立放送局管弦楽団 <EMI>

とっておきの名盤 その45 ベートヴェン ピアノ協奏曲第5番変ホ長調「皇帝」作品73

2006年10月09日 | とっておきの名盤「協奏曲」
この曲を録音した時、88歳だったという巨匠ルービンシュタインの年齢にまず驚くというか、畏敬の念を覚える。
伴奏を務めたバレンボイムは、まだ若干33歳だった。
若い時は、ただただ楽しくピアノを弾けば良いという様な演奏であったが、年を重ねてルービンシュタインの演奏は一変した。
悟りといっても良い高みの境地を極め、遅めのテンポで魂を込めて弾くピアノの響きは慈愛に満ち、まさに王道を往く表現に到達した。
まことの音楽とは何かということを、真正面から教えてくれる貴重な一枚だ。
この曲のベストファイヴを挙げると、
・アルトゥール・ルービンシュタイン、ダニエル・バレンボイム指揮、ロンドンフィルハーモニック管弦楽団 <RCA>
・ウイルヘルム・バックハウス、ハンス・シュミット・イッセルシュテット指揮、ウイーンフィルハーモニー管弦楽団 <LONDON>
・ルドルフ・ゼルキン、レナード・バーンスタイン指揮、ニューヨークフィルハーモニック管弦楽団 <CBS>
・フリードリッヒ・グルダ、ホルスト・シュタイン指揮、ウイーンフィルハーモニー管弦楽団 <LONDON>
・ルドルフ・ゼルキン、小沢征爾指揮、ボストン交響楽団 <TELARC>

とっておきの名盤 その41 ショパン ピアノ協奏曲第1番ホ短調/ リスト ピアノ協奏曲第1番変ホ長調

2006年10月02日 | とっておきの名盤「協奏曲」
この盤は1968年、アルゲリッチが26歳の時の録音。
ショパン・コンクール1位入賞が1965年だから、3年後の意気溌剌とした時の演奏だ。
そして指揮するアバドが35歳だったから、全てに良い意味で新鮮さに満ち溢れた演奏である。
曲もショパンの20歳の時の作品だから、両者の若々しい演奏は100%プラスに働いている。
リストの演奏は、ショパン以上に輪をかけて素晴らしい。
弾力性と直観力に満ちた女性とは思えぬダイナミックな表現は、この曲のスケールの大きさを一層引き立てている。
リストのこのアルゲリッチ盤を超える演奏を、私はまだ他に聴き得ていない。
・マルタ・アルゲリッチ、クラウディオ・アバド指揮、ロンドン交響楽団 <Grammophon>
・クリスティアン・ツイマーマン(ピアノ&指揮)、ポーランド祝祭管弦楽団 <Grammophon>
自国の作曲家ショパンの第1番を演奏するツイマーマンの盤は、唯一アルゲリッチ盤に匹敵する見事な演奏だ。

とっておきの名盤 その38 J.S.バッハ ブランデンブルグ協奏曲第5番ニ長調

2006年09月27日 | とっておきの名盤「協奏曲」
たくさんのバッハの曲の中で、真っ先に好きになったのがこの曲。
高校3年の頃だったと思うが、この曲ばかり何度も飽きもせず聴いた記憶がある。
今でもバッハの曲の中で特に好きな曲は何かと聞かれたら、まずその答えの中に必ず入る一曲だ。
ミュンヒンガーはこの曲が好きだったらしく3度にわたって録音しているが、お気に入りのこの盤は2度目の1958年録音のもの。
その演奏は、曲全体を独特の弾力的なリズムで推進し、バッハの力強い音楽的生命力を聴き手にひしひしと感じさせる。
イルムガルト・レヒナーが奏するハープシコードがとても魅力的で、全曲にわたって躍動するその音を聴いているだけでも充実したひと時を過ごせる。
録音も十分に満足できるレベルだ。
詳しい説明は省略するが、この盤に一緒に入っている3番、4番も特筆に価する演奏だと思う。
この曲のベストファイヴを挙げると、
・カール・ミュンヒンガー指揮、シュトゥットガルト室内管弦楽団(1958年録音) <DECCA>
・ヘルムート・コッホ指揮、ベルリン室内管弦楽団 <Berlin Classics>
・カール・リヒター指揮、ミュンヘン・バッハ管弦楽団 <Archiv>
・オットー・クレンペラー指揮、フィルハーモニア管弦楽団 <EMI>
・シギスヴァルト・クイケン指揮、ラ・プティット・バンド <Deutsche harmonia mundi>

とっておきの名盤 その37 ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品61

2006年09月19日 | とっておきの名盤「協奏曲」
この一枚は、キョン=ファが結婚、出産という女性にとって人生の一大事を経た直後の1989年、アムステルダムで行った演奏会のライヴ録音である。
それだけにこの曲に対する意気込みは凄く、出だしのアインガングからして精神的に高められた真摯な弾きぶりで、聴くものも身が引き締まる思いで一杯になる。
有名な第ニ主題の歌わせ方も魂のこもったもので、その魅力的なメロディーをぐっと引き立たせ、聴くものの心を一層なごやかな気持ちにさせる。
このような状態がこの楽章の最後まで続くのだから、彼女の復帰にかける思いは相当なものだったのだろう。
とっておきの名盤といって良い、聴くものの胸を打つ演奏の一枚である。
テンシュテットの雄渾な伴奏も、キョン=ファの目指すベクトルにあった表現となっていて素晴らしい相乗効果を醸し出している。
この曲のベストファイヴは、
・チョン・キョン=ファ、クラウス・テンシュテット指揮、ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団 <EMI>
・ローラ・ボベスコ、エドガール・ドヌー指揮、ベルギー国立放送新交響楽団 <PHILIPS>
・アイザック・スターン、レナード・バーンステイン指揮、ニューヨークフィルハーモニー管弦楽団 <CBS>
・ヘンリック・シェリング、シュミット=イッセルシュテット指揮、ロンドン交響楽団 <PHILIPS>
・ダヴィット・オイストラフ、アンドレ・クリュイタンス指揮、フランス国立放送局管弦楽団 <EMI>
ボベスコ盤は愛聴盤という観点から私自身の思い入れが強い一枚であり、これも是非聴いて欲しい。

とっておきの名盤 その28 ブラームス ピアノ協奏曲第1番ニ短調 作品15

2006年08月26日 | とっておきの名盤「協奏曲」
私はこの曲が好きで、現在手元にある12枚のCDの中から気の向いた盤をとっかえひっかえ聴いている。
24歳のブラームスの若さと情熱がにじみ出ていて、スピーカーの前に向かう度に聴いている者を勇気づけてくれる傑作である。
曲が良いせいか名盤が多く、どれを聴いても充実のひと時をすごせる。
このブログで紹介している「とっておきの名盤」は、特別の愛聴盤ということで別の棚に収納している150枚程のCDの中から順次選び出して掲載している。
その棚の中には、ここで挙げたベスト・ファイブの上位3枚の盤が入っている。
中でもアアシュケナージの盤は、よく聴く一枚である。
難曲といわれるこの曲を、程よいテンポと余裕のテクニックで弾きこなすアシュケナージ、伴奏の名手ハイティンクの指揮と伝統のオーケストラの音、幅広いレンジの芯の入った響きを聴かせる録音、3拍子そろった名盤といってよい。
この曲のベスト・ファイブは、
・ウラジミール・アシュケナージ、ベルナルト・ハイティンク指揮、アムステルダムコンセルトヘボウ管弦楽団 <LONDON>
・エミール・ギレリス、オイゲン・ヨッフム指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>
・ルドルフ・ゼルキン、ジョージ・セル指揮、クリーブランド管弦楽団 <CBS>
・ブルーノ・レオナルド・ゲルバー、フランツ=パウル・デッカー指揮 ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団 <SERAPHIM>
・エレーヌ・グリモー、クルト・ザンテルリンク指揮、ベルリンシュターツカペレ <ERATO>

とっておきの名盤 その22 モーツアルト フルート協奏曲第1番ト長調&第2番ニ長調

2006年08月14日 | とっておきの名盤「協奏曲」
名フルート奏者、ペーター・ルーカス・グラーフの名が聞かれなくなって久しい。
1929年生まれだから、とっくに引退して悠々自適の生活を送っているのかもしれない。
とにかく素晴らしい演奏を繰り広げてくれた奏者であった。
このモーツアルトの協奏曲は彼の最高の演奏であり、未だにこれをしのぐ盤は現れていない。
グラーフのフルートが透き通るような音色で、モーツアルトの魅力的な旋律を次から次と奏でてくれる。
聴いているだけで、こんなに気持ちが晴れやかになる盤も珍しい。
廃盤になっているかもしれないが、すぐにでも再発してその素晴らしさを多くの人に分けて欲しいものである。
この曲は、私にとってはこの一枚で十分である。
・ペーター・ルーカス・グラーフ、レッパード指揮、イギリス室内管弦楽団 <Claves>

とっておきの名盤 その19 ヴィオッテイ ヴァイオリン協奏曲第22番イ短調

2006年08月10日 | とっておきの名盤「協奏曲」
ヴィオッティは、モーツアルトの一年前に生まれているイタリアのヴァイオリニスト、作曲者。
彼の一番有名なこの曲は、ベートーヴェンにも影響を与えたといわれているが、一聴した途端すぐにその親しみある優美な旋律が私の耳を延々と追いかける感じで、なかなかの良い曲である。
日本にファンが多かったヴァイオリニスト、ローラ・ボベスコはいろいろな曲を録音しているが、中でもこの盤がベストのものだと思う。
彼女のヴァイオリンが、エレガントに延々と優美な旋律を奏でる第一楽章は、特に楽しく聴ける。
この盤は、とっておきの一枚に是非挙げたい「名盤」というより「愛聴盤」と言った方がよい。
録音も良い。
この曲のベスト・スリーは、
・ローラ・ボベスコ、クルト・レーデル指揮、ライン・パラティナ国立管弦楽団 <PHILIPS>
・アルチュール・グリュミオー、デ・ワールト指揮、アムステルダムコンセルトボウ管弦楽団 <PHILIPS>
・なし

とっておきの名盤 その15 チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番変ロ短調 作品23

2006年08月08日 | とっておきの名盤「協奏曲」
イーヴォ・ポゴレリッチは、ショパンコンクールの3次予選で落とされた時、審査員のマルタ・アルゲリッチが怒って辞任したという、いわくつきの論争で名声を高めた異色のピアニストである。
たしかに、アルゲリッチが推したその豊かな音楽性は、彼が演奏したどの盤からでも十分に窺いしれる。
この盤で聴かれる演奏は、強靭性を帯びた響き、精緻な技術、チャイコフスキー独特の旋律に対する豊かな表現力で私の耳に強く訴えかける。
ピアノとクラウディオ・アバド指揮する管弦楽が、対等に自己主張を繰り広げ多彩な音楽を繰り広げている。
この盤の録音も素晴らしく、私はこの曲の有名な出だしの所をオーディオ装置のチエック用に利用している。
この曲のべスト・スリーは。
・イーヴォ・ポゴレリッチ、アバド指揮、ロンドン交響楽団 <Grammophon>
・スヴィヤトスラフ・リヒテル、カラヤン指揮、ウィーン交響楽団 <Grammophon>
・マルタ・アルゲリッチ、キリル・コンドラシン指揮、バイエルン放送交響楽団 <PHILIPS>