クラシック 名盤探訪

クラシックの名盤紹介・おすすめ散策コース等、趣味の発信の場です。

とっておきの名盤 その102 ショスタコーヴィチ 「24の前奏曲とフーガ」 作品87

2007年09月25日 | とっておきの名盤「器楽曲」
ショスタコーヴィチの作品群では、共に15曲ある交響曲と弦楽四重奏曲が傑作とされているが、私が好きなのはピアノ曲で、ここで取り上げる「24の前奏曲とフーガ」は、それこそ座右の盤として手元から離せない曲集となっている。
この曲の初演者であるニコラーエワの演奏が素晴らしいのか、曲自体が飛びぬけて良いのか、どちらだと言いきれない程に曲と演奏が渾然とした魅力を醸し出しているからだ。
1950年、ライプチヒでのバッハ没後200年記念音楽祭で行われたピアノコンクールで優勝したのがニコラーエワ、審査員のショスタコーヴィチが、その深い芸術性に感銘して彼女の為にこの曲集を作曲したと言う。
彼女は1952年にこの曲集を初演している。
前奏曲の多彩に変化する音の綾、フーガにおける主題の魅力的な調べなど、聴いていてこれほど飽きが来ず、しかも楽しく思える作品はそうは無い。
彼女は1962年、1987年、1990年の3回この曲を録音しているが、2回目のものが断然素晴らしい。
残念ながら1回目のものは、入手困難でまだ耳にしていないが、3回目のものはエコーが強い録音で、その反響が気になる音の響きは、折角の作曲者のペンを台無しにしている。
ここで取り上げる2回目のもの、その豊かな響きに包まれた旋律の明快な解釈、曲中の多様な書法の中に浮かび上がる彼女のいつくしむような優しさと温かさ、この作曲者と作品に対する出会いをどれだけ大切にしているかが、これだけ伝わってくる演奏は他にあるとも思えない。
とっておきの名盤として、ぜひ座右に置いて欲しい一枚。
・タチアナ・ニコラーエワ<P> <Regis> Previously on Melodia

とっておきの名盤 その101 ショパン 24の前奏曲 作品28

2007年09月18日 | とっておきの名盤「器楽曲」
ショパンの数ある名作の中でも、「24の前奏曲」は特に私の思い入れが強い作品。
まず一つ一つの曲のまとまりが素晴らしい、全体として大きな一つのストーリーを形成していて、全曲を聴き終った後の感じは、感動的な小説を一気に読み終えた様な充実感を覚える。
一つ一つの曲に詩があるのが何とも私の心を魅了させてくれる。
それを一番胸に深く感じさせてくれるのが、ポゴレリチのこの演奏。
1989年、ポゴレリチ31歳、まだ演奏家としては若い時の録音と言われるかも知れないが、聴いていて私にはとてもそうは思えない。
他のピアニストの演奏では思いもつかない様な、中身の深い曲の表現にはとにかく驚かせられる。
第一番のこれから話が始まるよと、聴き手に語りかけてくるピアノの絶妙なタッチ、続く第2番の淡々として語を始める間合いの素晴らしさ、好きな第四番の胸をうつ哀愁に満ちたメロディーの極み、一つ一つを書いているときりが無い。
ポゴレリチが奏でる、最後の第24番の劇的な高揚感に満ちた渾身のピアノの響き、そしてあっという間に全曲を読み通し聴き終わっている自分にふと気がつく。
とにかく他には無い詩的魅力度の素晴らしさに惹かれる、とっておきの名盤として取り上げない訳にはいかない。
2位以下は聴いた後での感銘度が少し落ちる感じになるが、この曲のベスト・ファイヴの盤をあげると、
・イーヴォ・ポゴレリチ <Grammophon>
・クラウディオ・アラウ <PHILIPS>
・サンソン・フランソワ <EMI>
・マルタ・アルゲリッチ <Grammophon>
・アリシア・デ・ラローチャ <DECCA>

東照宮、そして夏の奥日光

2007年09月10日 | 歴史・旅(国内)
コース順路:コース満足度★★★★
東武下今市駅→今市報徳二宮神社→霧降の滝→日光東照宮→二荒山神社→日光千姫物語→中禅寺湖→華厳ノ滝→戦場ヶ原→小田代原→東武下今市駅

8月21,22日の二日間、猛暑の合間をぬって日光への旅を決行、家康公の霊廟はもとより、奥日光に咲く可憐な夏の花々も見るという歴史と自然の小さな旅となった。

新宿からJR乗り入れの東武日光線に乗り、東武下今市駅で下車、燃費の良いプリウスハイブリッド車をレンタル。
この今市で70歳の生涯を閉じた二宮尊徳翁、その墓がある今市報徳二宮神社を訪れる。 
いつもの行事として、まずは拝殿にて旅の安全を神妙に祈る。
帰りの切符の入手の為に寄った、世界遺産日光東照宮の最寄駅となるJR日光駅の造りが面白い。
 

一路車を霧降高原へ走らせる。
名所の「霧降の滝」前で下車、遊歩道を進むとはるか向こうの山並みの間に滝が見える。
展望台から見るの羽衣の滝にも似た「霧降の滝」、霧を降らせるというその急な流れは、なかなか見事な眺めだ。
 

一休みした後、お目当ての東照宮を訪れる。
正面に構える日光東照宮は徳川家康公の霊廟として、二代将軍秀忠により元和二年(1616年)に建立された。
当初は質素なものであったが、三代将軍家光による寛永の大改造により、現在のような豪華絢爛な建造物群となったとのこと。
石鳥居の左手には、高さ約36メートルあるという立派な五重塔がそびえている。
表門には、正面左右に「阿吽-あうん」の仁王像が安置している、昔は仁王門と呼ばれていたらしい。
  

一日中見ていてもあきないことから「日暮らし門」とも呼ばれる陽明門を見上げる。
観光客の歩調に合わせて、時間もかけず通り過ぎてしまったのは残念至極。
三猿の彫刻、子どもに悪いことを「見ザル、言わザル、聞かザル」といって戒めたとのこと。
 

陽明門に入って左側にある建物は神輿舎と呼ばれ、なかに3基の神輿が納められている。
天井画の天女は、日本一の美人の絵といわれているそうだが、真偽は不明。
家康公の神柩(しんきゅう)が納められている奥社宝塔は、建立してから一度も開けられたことがないという。
 

東照宮の向かって右手前にある日光輪王寺、東照宮の中の要所やここを見るのも複雑なコース料金になっていてまことにややこしい。
多くの外人さんも右往左往していて、世界遺産の名には何とも恥ずかしい風景で、何とかしてほしいものだ。
二荒山神社へ向かう道に並ぶ石灯籠が整然と並んでいる。
 

奈良時代の末、関東平野の北方にそびえる二荒山(ふたらさん)、神霊を感じた勝道上人が開いたと伝えられる二荒山神社が、鳥居の奥に立派な佇まい見せている。
今日泊まる旅館、花衣の館_日光千姫物語、風情ある館の造りと個性的なおいしい料理は、なかなかのもの。
 

翌日、いろは坂を延々と上り、車を中禅寺湖へ進める。
湖を手前に、すくっとそびえる男体山の眺めが素晴らしい。
湖畔にある中善寺は時間が無く、外からの拝観のみとなった。
高さ97メートルの華厳ノ滝は、那智ノ滝、袋田ノ滝と並んで、日本の三大名瀑
のひとつになっている。
  

奥日光の赤沼自然情報センターから、戦場ヶ原と小田代原の湿原へ足を踏み入れる。
小田代原へ向かう歩道の周りは、緑あふれる木々に囲まれて気持ち良いことこの上ない。
男体山を背景に、広々とした戦場ヶ原の眺めは開放感があって心が安らぐ。
 

歩道の脇には、たくさんのキオンが花を咲かせている。
ワレモコウに一匹のトンボがとまっている、蜜でも吸っているのだろう。
 

ピンク色のホダキシモツケが美しい。
遊歩道の終わりに近い所で、コオニユリの魅惑的な花が、歩き疲れた私を優しく迎えてくれた。
 

日光の山々を背景に、広く横たわる小田代原の湿原の眺めは、尾瀬とはまた違った趣があって捨てがたいものがある。
 

猛暑を逃れての日光の旅、二日間ではあったが、中身の濃い癒しの時間を与えてくれたことに、感謝、感謝。

とっておきの名盤 その100 プッチーニ 歌劇「ボエーム」

2007年09月04日 | とっておきの名盤「オペラ」
プッチーニの「ボエーム」は本当に好きな曲で、「とっておきの名盤100選」ともなる今回の記事に、この曲この盤を選んだのも好きなればこその一言に尽きる。
プッチーニ自身、自分の書いたオペラのヒロインの中でミミを最も愛していたという。
ミミを愛すべき娘に描こうと、彼は力の限りを尽くしてペンを走らせていて、何とも聴く者の胸を切なくも締め付ける。
ここには歌、歌、歌があり、CDを聴き始めるや、私はいつのまにか歌に溺れ、現実のはるか遠くをさまよっている。
この盤は、まずオペラに真骨頂を発揮するレヴァインの若々しい感性に満ちた指揮ぶりが素晴らしく、その冴え渡った棒はこのオペラに必要なドラマ的な要素を過不足なく示している。
私がこのオペラで特に重要視する叙情的な表現も満足この上ない素晴らしさだ。
さらに主役の二人を歌うスコットとクラウスの何とも見事なこと。
ミミを歌うスコットは私の最も好きなソプラノの歌い手の一人、その役になりきった歌の表現はいつも最高に自然で、聴いているだけでいつの間にかミミの切ない気持ちに引き込まれている自分に気づく。
ロドルフォを歌うクラウスは、声量豊かに歌い上げると言うのではなく、むしろ洗練された気品さえ感じられる歌いぶりが魅力的。
100選目となるとっておきの名盤として、絶対にはずせない一枚。
この曲のベスト・ファイヴを挙げると、
・セラフイン指揮、ローマ聖チェチーリア管弦楽団、テバルデイ<S>、ベルゴンツイ<T>、バスティアニーニ<Br> <DECCA>
・レヴァイン指揮、ナショナルフィルハーモニー管弦楽団、スコット<S>、クラウス<T>、ミルンズ<Br> <EMI>
・ケントナガノ指揮、ロンドン交響楽団、キリテカナワ<S>、リーチ<T>、ティツス<Br> <ERART>
・ペレットーニ指揮、ミラノスカラ座管弦楽団、アルバネーゼ<S>、ジーリ<T>、ポリ<Br> <EMI>
・サンティーニ指揮、トリノイタリア放送管弦楽団、カルテリ<S>、タリアヴィィーニ<T>、タッデイ<Br> <CETRA>
初演を指揮したトスカニーニのCDは別格で、この作品が好きな人のバイブル的存在。
そして、私だけのとっておきの銘盤が、スタインコプフ指揮、アイッペルレ<S>、アンダース<T>、ファッスベンダー<Br> <ANDROMEDA>