クラシック 名盤探訪

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この曲この一枚 その15 レスピーギ 交響詩「ローマの松」、「ローマの噴水」

2010年08月12日 | この曲この一枚
  

ハンガリー出身の指揮者フリッツ・ライナーの1963年から亡くなるまでの10年間、その任に当たったシカゴ交響楽団との組み合わせによる演奏活動は、後々まで音楽愛好家に語り継がれるほどの素晴らしいものだった。
彼の指揮ぶりは「ヴェスト・ポケット・ビート」といわれ、指揮棒はチョッキのポケットの位置からほとんど動かなかった。
それだけに頼るものがなくなった楽員たちは、恐ろしくなって全神経を集中し、緊張そのものという表情で演奏する。
壮大なクライマックスの瞬間には、鷹のような鋭い目と共に、指揮棒を持った手首をわずか5インチほど下げると、オーケストラは完璧なフォルティッシモで会場全体に鳴りわたったという。
ライナーの指揮ぶりが、「ひきしまった、まったく贅肉のない演奏」をもって最大の特徴といわれる所以がよく分かる。
リムスキー・コルサコフ、ラヴェルなどの作曲家は、管弦楽曲の魔術師と言われるほど楽器の魅力を巧みに引き出して作品を描いたが、レスピーギも負けず劣らずのオーケストラ曲の達人だった。
ローマ三部作と言われる彼の代表作から「ローマの松」と「ローマの噴水」を収めたこの盤は、曲はもちろん素晴らしいわけだが、それ以上にライナーのオーケストラの完璧なまでの掌握ぶりを示す格好の演奏となっている。
ライナーは、シカゴ交響楽団とのレコードをRCAにたくさん残しているはずだが、現在発売されているものはとても数が多いとは言えない。
彼のレコードを全部所有したいほどの愛着に駆られる私にとっては、早く残した録音の全部を発売してくれることを願うばかりだ。
「この曲この一枚」としてまずは聴いてほしいと思うこの盤、言葉が大げさだがライナーの呪いというか、その魔術に陥ること間違いなしの一枚だといえる。
・フリッツ・ライナー指揮、シカゴ交響楽団(1959年録音)<RCA>
とっておきの名盤 その12 「ウィーンナ・ワルツ集」 F・ライナー、シカゴ交響楽団
とっておきの名盤 その51 ヴェルディ「レクイエム」

この曲この一枚 その14 R.シュトラウス 楽劇「エジプトのヘレナ」

2010年08月04日 | この曲この一枚
 
このオペラはつい最近、新国立劇場で観たR・シュトラウスの楽劇「影なき女」を完成した後、幕間劇「インテルメッツォ」をはさんで10年後に書き上げたもの。
これまで二人三脚でやってきたホフマンシュタールによる台本、好みのギリシャ神話の題材、円熟期にあったシュトラウスが4年間没頭の末書き上げた曲ということで、1928年の上演には全ヨーロッパや海外の客まで集まってこれを聴いたという。
6年間に50回演奏されたが、ドイツ・オーストリア以外の国では上演を見なかったというのが不思議で、「サロメ」や「ばらの騎士」が特別列車で客を運ばねばならぬほど成功したのに、この曲では何故そうはいかないのかと首をかしげる人も多かったらしい。
最近上演されたという話を聞かないが、私が聴いた感じでは重苦しい神話のイメージではなく華麗な音楽と親しみのあるメロディーで神話の物語を分かりやすく聴かせるというもので、もっと上演されてもよい位だと思う。
この盤の指揮者ドラテイは1906年ハンガリーのブタペストに生まれ、ブタペスト国立音楽院でコダーイ、バルトークなどの師事を受け、18歳の若さでブタペスト国立歌劇場にデビューし一夜にして名声をあげたという話の持ち主。
ドイツ歌劇場での指揮はもちろん、ロシア・バレエ団の専属指揮者をして回った経験がものを言っており、バレエの指揮が素晴らしい。
とっておきの名盤の「眠れる森の美女」などその新鮮な響きには本当に驚かされる。
この「エジプトのヘレナ」も魅力的な飽きのこない名演で、「影なき女」など他の作品も何故録音してくれなかったのかと愚痴の一つも出てしまうほど。
この曲この一枚として、ぜひ耳にしてほしい盤。
・アンタール・ドラテイ指揮、デトロイト交響楽団、ギネス・ジョーンズ<S>、バーナラ・ヘンドリクス<S>、ダイナ・ブライアント<S>、ヴィラード・ホワイト<Br>他 <LONDON>
とっておきの名盤 その33 チャイコフスキー バレエ音楽「眠りの森の美女」作品66