クラシック 名盤探訪

クラシックの名盤紹介・おすすめ散策コース等、趣味の発信の場です。

とっておきの名盤 その151 R.シュトラウス 楽劇「バラの騎士」

2010年07月07日 | とっておきの名盤「オペラ」
  

私が「とっておきの名盤」として特別な棚に置いているアルバムは、何度聴いても飽きの来ない演奏の素晴らしさがまず第一であり、録音の優秀さや曲の組み合わせが良ければ尚更素晴らしいというもの。
最近そのお眼鏡にかなう一枚を手にしたのだが、それがこのバーンスタインとウィーンフィルによるR.シュトラウス:楽劇「バラの騎士」のアルバム。
バーンスタインはR・シュトラウスの曲をほとんどと言ってよいほど録音しておらず、唯一この演奏ぐらいしか私には思い出せない。
相性が良くなかったとは思えないし、ユダヤ系の生まれである彼にとっては、思想的な問題があって(シュトラウスは第二次世界大戦後、ナチスに協力した疑いで連合国の裁判にかけられたが、最終的に無罪)、シュトラウスの曲の演奏に消極的だったのか、本当のところはその理由がよく分からない。
賞賛の仕方がありきたりのものになってしまうが、とにかくこの演奏は素晴らしいの一言に尽きる。
音の響きそのものが19世紀末の退廃したと言うより、むしろ良い意味での爛熟した雰囲気をこれほど聴く者に直接感じさせる演奏も珍しい。
歌手陣にかつてのルートヴィヒとベリー夫妻、それにギネス・ジョーンズ、ルチアポップと好きな歌手が並んでいる上、ドミンゴが一幕で甘い歌を聴かせる歌手の役をやっているのも嬉しい。
作曲者というか曲、指揮者、オーケストラ、そして歌手陣、おまけに録音の五拍子が見事に調和して聴く者に楽しいひと時を与えてくれる盤はそうあるものではない。
お勧めの一枚と言ってよい。
・カール・ベーム指揮、ドレスデン国立管弦楽団、ドレスデン国立歌劇場合唱団、マリアンネ・シェヒ<S>、クルト・ベーメ<B>、イルムガルト・ゼーフリート<S>、リタ・シュトライヒ<S>他 <Grammophon>
・レナード・バーンスタイン指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団、クリスタ・ルートヴィヒ<Ms>、ギネス・ジョーンズ<S>、ルチア・ポップ<S>、ワルター・ベリー<Br>他 <CBS>
・ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団、リーザ・デラ・カーザ<S>、オットー・エーデルマン<B>、セーナ・ユリナッチ<S>、ヒルデ・ギュ-デン<S>他 <Grammophon>
・カール・ベーム指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団、クリスタ・ルートヴィヒ<Ms>、テオ・アダム<B>、タチァナ・トロヤノス<S>、エディット・マチス<S>他 <Grammophon>
・ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団、アンナ・トモワ=シントウ<S>、クルト・モル<B>、アグネス・バルツァ<Ms>、ジャネット・ベリー<S>他 <Grammophon>
この曲この一枚 その5 R.Strauss:「オペラ名場面集」

とっておきの名盤 その148 プッチーニ 歌劇「ボエーム」

2009年05月02日 | とっておきの名盤「オペラ」
  
私の最も好きなオペラの一つである「ボエーム」、その魅力をどこから書こうかなと先程からしきりと考えている。
まずはこの曲の構成だが、交響曲の四楽章の配置をそのままオペラに適用して、絶妙な音楽効果を引き出しているのが見事。
第一幕は屋根裏部屋(アレグロ)、第ニ幕はクリスマス・イヴの喧騒としたパリの街(スケルツォ)、第三幕は物静かな冬景色(アダージョ)、そして第四幕は再び屋根裏部屋(アレグロ)となっている。
これら四つの楽章というかそれぞれの幕が、プッチーニ特有のとびきり美しいメロディーに彩られると共に、音楽と一体になったドラマの自然な流れが素晴らしい。
特に好きなのが第三幕、ミミが涙ながらにロドルフォの友人マルチェルロに別れをもらすところの切ないほどの哀しい音楽、ミミとロドルフォの別れの二重唱の合間に友人マルチェロと恋人ムゼッタがはげしく言い合う四重唱の素晴らしさ、何時何度聴いてもその音楽の見事さに唖然としてしまうほど。
この場面を聴く為に、理想の演奏を求めてどれだけCDを購入したことか、我ながらあきれてしまう。
セラフィン指揮のこの盤、1959年の録音だが音も今もって新鮮だし、もちろん演奏も当然素晴らしく文句のつけようがない。
お針子ミミを歌うテバルディの情感に満ちた歌、詩人ロドルフォを歌うベルゴンツィのリリカルな美声、そして友人マルチェロ演ずるバスティアニーニの奥行きの深い歌声とどれをとっても魅力に満ちている。
「ボエーム」を聴くならまず第一に聴いて欲しいとっておきの名盤で、とにかく手にとって欲しい一枚。
この曲のベスト・ファイヴを挙げておくと、
・セラフイン指揮、ローマ聖チェチーリア管弦楽団、テバルデイ<S>、ベルゴンツイ<T>、バスティアニーニ<Br> <DECCA>
・レヴァイン指揮、ナショナルフィルハーモニー管弦楽団、スコット<S>、クラウス<T>、ミルンズ<Br> <EMI>
・ケントナガノ指揮、ロンドン交響楽団、キリテカナワ<S>、リーチ<T>、ティツス<Br> <ERART>
・ペレットーニ指揮、ミラノスカラ座管弦楽団、アルバネーゼ<S>、ジーリ<T>、ポリ<Br> <EMI>
・サンティーニ指揮、トリノイタリア放送管弦楽団、カルテリ<S>、タリアヴィーニ<T>、タッデイ<Br> <CETRA>
初演を指揮したトスカニーニのCDは別格で、この作品が好きな人のバイブル的存在。
そして、私だけのとっておきの銘盤が、
スタインコプフ指揮、アイッペルレ<S>、アンダース<T>、ファッスベンダー<Br> <ANDROMEDA>

とっておきの名盤 その145 ワーグナー 楽劇「ジークフリート」

2009年02月14日 | とっておきの名盤「オペラ」
  
1955年にカイルベルトが指揮したバイロイト音楽祭の「ニーベルンゲンの指輪」、それがステレオで録音されていたというニュースにはワーグナー・ファンを始め、多くの音楽ファンが驚いた。
この録音が英テスタメントから発売され、日本では2006年に「神々の黄昏」を除く三作でレコード・アカデミー賞を受賞したのは記憶に新しい。
私としては四部作の中でも、この「ジークフリート」が一番出来が良かったと思っている。
カイルベルトの一気呵成に聴かせる覇気ある指揮のなか、最盛期のヴィントガッセン、ホッター、そしてヴァルナイがその素晴らしい声の魅力をたっぷりと聴かせてくれている。
まさに「バイロイト音楽祭の黄金期の記録」といってよい。
前にこのブログで紹介したフラグスタートとスヴァンホルムの熱唱が聴ける「ジークフリート」と並んで、とにかく外すことが出来ないとっておきの演奏といえる。
カイルベルトは1953年にバイロイトで「ローエングリン」も指揮をしていたが、これがロマンの極みとも言う歌を聴かせてくれる素晴らしい演奏で、とっておきの名盤の中でも最愛の一枚となっている。
ブルックナーでも6番と9番で、無骨ではあるがなかなか魅力的な演奏を聴かせてくれたカイルベルトは、私の好きな指揮者のなかの一人でもある。
・ヨーゼフ・カイルベルト指揮、バイロイト祝祭管弦楽団、ヴォルフガング・ヴィントガッセン<T>、アストリッド・ヴァルナイ<S>、ハンス・ホッター<Bs> <TESTAMENT>

とっておきの名盤 その141 ワーグナー 楽劇「ジークフリート」第3幕第3場

2008年12月27日 | とっておきの名盤「オペラ」
  
もう30年近くも前になると思うが、最初に購入したこの演奏の盤は25cmの東芝赤盤レコードと呼ばれたものだった。
「ジークフリート」の中でも特に素晴らしい場面ということもあるが、とにかく毎日の様に聴きこんだことを思い出す。
盤が擦り切れるほどという言い回しが一番ふさわしいかもしれない。
20世紀最大のワーグナー歌手といわれたフラグスタートの録音の中でも、フルヴェンの「トリスタン」などをさし置いて、とにかく飛びぬけて聴いた一枚だった。
その後CD化されて購入し直したものは、EMIが編集した4枚組みの「指輪」のアルバムの中に組み込まれている。
今となっては古い録音となってしまったが、聴きなおしてみても、フラグスタートの声、その量はもちろん清澄な美しさには驚嘆させられる。
悠揚として迫らざる表現と劇的な場面でのスケールの大きさ、そして舞台での高貴な容姿はニルソンでさえも及ばなかったかも知れない。
ぜひ聴いて欲しいとっておきの一枚で、輸入盤を求めれば必ず手に入ると思う。
「ジークフリート」全曲盤では、カイルベルトの1955年のバイロイトの演奏が素晴らしい。
・キルステン・フラグスタート<S>、セット・スヴァンホルム<T>、ジョルジュ・セバスティアン指揮、フィルハーモニア管弦楽団 <EMI>

とっておきの名盤  その132 ワーグナー 舞台神聖祝典劇「パルシファル」

2008年08月04日 | とっておきの名盤「オペラ」
ワーグナーの死の前年に完成した舞台神聖祝典劇「パルシファル」は、彼にとってとりわけ神聖な曲であり、最高の音を出すべく自分が設計建築したバイロイト祝祭劇場以外での上演を禁止したほどであった。
クナッパーツブッシュの、この「パルシファル」に対する心酔ぶりは「クンドリーの本質」という大学での卒業論文を書いているほど若い頃から深く、1951年に戦後再開されたバイロイトでこの曲を指揮して以来、トラブルによる53年の中断を除き64年までずっと振り続けた。
当時の著名な音楽評論家ニューマンが英国の「サンデータイムズ」に載せた、51年の演奏に対する興味深い一文がある。
「・・・今回の上演の音楽の面に関しては、私はほとんど話す気になれない。
それほど魅惑的、かつまた胸の振り裂けるような思いをさせられたほど美しいものであった。
私がかつて見聞してきた”パルシファル”の中でも、これは最高のものであるばかりでなく、我が人生における三つか四つの、最も感動的な精神的体験の一つであった。
クナッパーツブッシュが指揮する管弦楽の演奏の絶妙さは、筆舌に尽くしがたい。・・・」
11年後の62年度バイロイト・ライヴはレコード史上に残る名録音で、バイロイトの奥深い音響の特長を見事に捉えたものであり、歌手陣のワーグナーの音楽の真髄に迫った歌いぶりも特別のものがある。
悠揚迫らぬクナの音楽の流れの運びも最高だし、ホッター意外には考えられない重要な役どころのグルネマンツの深みのある歌、ロンドン演ずる聖槍と聖杯を守る王アンフォルタス、そして素晴らしい魅惑的な歌を披露するダリスのクンドリー役がとりわけ素晴らしい。
これこそ真の不滅の名盤、歴史的名盤であり、これなくしては私のとっておきの名盤たちの本当の価値はありえない。
これほど何度聴いても飽きない、聴くたびに感動が増す曲はそうあるものでもなく、他にあげるとしたらブルックナーの8番とプッチーニの「ボエーム」、それからR.シュトラウスの「影なき女」ぐらいかもしれない。
・ハンス・クナッパーツブッシュ指揮、バイロイト祝祭管弦楽団・合唱団、ジェス・トーマス<T>、ハンス・ホッター<BS>、ジョージ・ロンドン<Br>、グスタフ・ナイトリンガー<Br>、アイリーン・ダリス<S> (62年録音) <PHILIPS>

とっておきの名盤 その125 プッチーニ 歌劇「トゥーランドット」

2008年05月10日 | とっておきの名盤「オペラ」
プッチーニの白鳥の歌となったこの曲、好きな作曲者だけにどれも素晴らしい曲ばかりを残しているが、「ボエーム」と並んで最も私の心を捉えて離さないもの。
このブログで推奨するこの盤、抜粋盤でしかもドイツ語による演奏と聞くと、それだけで敬遠する方もいるかも知れない。
しかしこの盤を一度でも耳にすると、そのようなことは総て余計な危惧だったということが良くわかると思う。
ドイツ語版だけに、聴いていて時々ワーグナーのオペラを聴いているような錯覚を覚えるかもしれないが、ドラマティックなストーリを持つこの曲の演奏にはかえってそれがプラスに働いている。
そしてオペラを最も得意とするジュゼッペ・パターネの指揮が、それ以上に素晴らしい。
ドラマの内容に沿って音楽を巧みに盛り上げる技術と、最高の職人的技がなせる曲のツボを掴んだ指揮ぶりには、とにかく痺れるの一言。
ベルリン・クラシックの、いぶし銀に包まれた独特の録音がシュターツカペレ・ドレスデンの伝統ある音色を生かしきっているのも良い。
リュー役を歌うローテンベルガーの、可憐ともいえる情のこもった声には特に心を奪われる。
曲のエッセンスを絞り込んでいるだけに、とにかく聴き始めると、あっという間に最後まで聴き続けしまうこと請け合いのこの盤、とっておきの名盤として推奨しないわけには行かない。
この一枚、都内輸入盤大手のレコード店に行けば、きっと手に入ると思う。
・ジュゼッペ・パターネ指揮、シュターツカペレ・ドレスデン、イングリッド・ビヨーナー<S>、ルードヴィッヒ・シュピエス<T>、アンネリーゼ・ローテンベルガー<S> <BERLIN Classics>

とっておきの名盤 その121 プッチーニ 歌劇「トスカ」

2008年04月04日 | とっておきの名盤「オペラ」
この盤は、昔からこの曲の極め付きの名盤とされているもの。
その素晴らしさの第一に挙げたいのは、「トスカ」の演奏に要求される劇的緊張と透明な流暢さを併せ持ったサバータの指揮ぶり。
アメリカに去ったトスカニーニの後をついでスカラ座の指揮台に立ち、その栄光の時代をもたらした力量は大指揮者の名に恥じない。
病魔に襲われて倒れた為、残した録音の数が少ないのが惜しまれる。
第二はスカルピア役を歌うゴッピの卓越した歌いぶり、その破滅的なドラマの進行に沿って千変万化する悪魔的なまでの表現を何といって評したら良いのか。
そして、トスカの心理的描写を歌い上げるカラスの役柄に対する完璧なまでの自己投入ぶりもゴッピに引けをとらないものがある。
私自身、カラスは余り好きな歌い手ではないのだが、この盤の彼女だけは素晴らしいと言うしかない。
ディ・ステファノのカヴァラドッシ役、彼の持ち味の甘い声が災いして少々物足りないのが残念。
この歴史的名盤、前にこのブログでも取り上げた「ボエーム」、「トウ-ランドット」と並んで、私のとっておきの名盤の棚にしっかりと置かれている。
あえて、この曲のベスト・スリーの盤をあげると、
・ヴィクトル・デ・サバタ指揮、ミラノ・スカラ座管弦楽団、マリア・カラス<S>、ジュゼッペ・ディ・ステファノ<T>、ティト・ゴッピ<Br> <EMI>
・ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ベルリンフィルハーマニ管弦楽団、カーティア・リッチャレッリ<S>、ホセ・カレーラス<T>、ルッジェロ・ライモンディ<Bs> <Grammophon>
・ジェームス・レヴァイン指揮、フィルハーモニア管弦楽団、レナータ・スコット<S>、プラシード・ドミンゴ<T>、レナード・ブルゾン<Br> <EMI>

とっておきの名盤 その114 プッチーニ 歌劇「トゥーランドット」

2008年01月24日 | とっておきの名盤「オペラ」
フランスの指揮者ロンバールは、オケのコンサートよりもオペラ指揮者として非常に名声が高い。
たしかに、劇的な構成の中に繊細さと力強さが入り混じって要求されるこのプッチーニの名作を、終わりまで見事にまとめる力量はたいしたもの。
歌では私の好きな歌手、カレーラスが王子カラフ役でその力強い声を聞かせてくれるのがまず嬉しい。
第一幕の終わりで、リュー役のフレーニが絶妙な声で感動的なアリア「殿様、お聞きくださいまし!」を歌った後、王子役のカレーラスが「泣かないでくれ、リュー!」となだめ、謎解きに挑戦する決意でトゥーランドット!と叫び、ついに銅鑼を打ち鳴らす。
ここの所を歌うカレーラスの盛り上げ方の見事なこと、そしてロンバールのダイナミックな指揮ぶりが私の心の琴線を激しく振るわせる。
トゥーランドット役のカバリエも素晴らしい声を披露する。
第2幕第2場冒頭のアリア「この宮殿に」を歌う彼女の毅然とした声、冷酷な姫の心情が見事に私の胸に伝わってくる。
この曲は、最初から終わりまで珠玉のメロディーが散りばめられており、素晴らしい歌の競演が聴けるラインスドルフ盤とこの盤の二組はとっておきの名盤として是非手元に置いておきたい。
廉価盤のため、ジャケットがオリジナルのものでないのは残念。
あえてこの曲のベスト・ファイブをあげると、
・エーリーッヒ・ラインスドルフ指揮、ローマ歌劇場管弦楽団、ビルギット・ニルソン<S>、レナータ・テバルディ<S>、ユッシ・ビョルリンク<T> <RCA>
・アラン・ロンバール指揮、ストラスブールフィルハーモニック管弦楽団、モンセラ・カバリエ<S>、ミレッラ・フレーニ<S>、ホセ・カレーラス<T> <EMI>
・ズービン・メータ指揮、ロンドンフィルハーモニー管弦楽団、ジョーン・サザーランド<S>、モンセラ・カバリエ<S>、ルチアーノ・パヴァロッティ<T> <LONDON>
・モリナーリ・プラデルリ指揮、ローマ歌劇場管弦楽団、ビルギット・ニルソン<S>、レナータ・スコット<S>、フランコ・コレルリ<T> <EMI>
・ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、カーチャ・リッチャレッリ<S>、バーバラ・ヘンドリックス<S>、プラシード・ドミンゴ<T> <Grammophon>

とっておきの名盤 その106 R.シュトラウス 楽劇「ばらの騎士」 

2007年11月05日 | とっておきの名盤「オペラ」
 

一昔前は、カラヤンの旧盤と共にこの盤が「ばらの騎士」ファンをニ分していた。
私は魅惑的な音色で魅了する録音の良さも含め、ベーム盤の贔屓だった。
この曲が初演されたのは1911年のドレスデン、作曲家と親交があったベームが指揮するこの盤は、まさしくその伝統を引き継いだ直伝の演奏と言うことになる。
元帥夫人が長々と歌う想いの深い独白や、オックス男爵の歌の背景に奏でられるワルツなどを聴いていると、モーツアルトの「フィガロの結婚」、そしてJ・シュトラウスのウィーン情緒豊かなワルツを思い浮かべるのも、この曲に親しみを覚える一因かもしれない。
若い頃に最初に手にしたこの曲のレコードは、第二幕「ばらの献呈」の場のジャケットの美女に惹かれて購入したベーム指揮の抜粋盤(写真右)だった。
そして盤が擦り切れるほど聴き込んだ思い出は、今でも忘れられない。
第二幕のゾフイーとオクタヴィアンの二重唱や、終幕の三重唄の魅惑的な音楽にどれほどのめり込んだか、とにかく語り尽くせないものがある。
歌手陣は、元帥夫人のシェヒが若干物足りないのを除けば、他は文句の言いようが無いほどの素晴らしさだ。
とっておきの名盤としてどうしても落とせない一枚。
あえてこの曲のベストファイヴをあげると、
・カール・ベーム指揮、ドレスデン国立管弦楽団、ドレスデン国立歌劇場合唱団、マリアンネ・シェヒ<S>、クルト・ベーメ<B>、イルムガルト・ゼーフリート<S>、リタ・シュトライヒ<S>他 <Grammophon>
・レナード・バーンスタイン指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団、クリスタ・ルートヴィヒ<Ms>、ギネス・ジョーンズ<S>、ルチア・ポップ<S>、ワルター・ベリー<Br>他 <CBS>
・ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団、リーザ・デラ・カーザ<S>、オットー・エーデルマン<B>、セーナ・ユリナッチ<S>、ヒルデ・ギュ-デン<S>他 <Grammophon>
・カール・ベーム指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団、クリスタ・ルートヴィヒ<Ms>、テオ・アダム<B>、タチァナ・トロヤノス<S>、エディット・マチス<S>他 <Grammophon>
・ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団、アンナ・トモワ=シントウ<S>、クルト・モル<B>、アグネス・バルツァ<Ms>、ジャネット・ベリー<S>他 <Grammophon>

とっておきの名盤 その100 プッチーニ 歌劇「ボエーム」

2007年09月04日 | とっておきの名盤「オペラ」
プッチーニの「ボエーム」は本当に好きな曲で、「とっておきの名盤100選」ともなる今回の記事に、この曲この盤を選んだのも好きなればこその一言に尽きる。
プッチーニ自身、自分の書いたオペラのヒロインの中でミミを最も愛していたという。
ミミを愛すべき娘に描こうと、彼は力の限りを尽くしてペンを走らせていて、何とも聴く者の胸を切なくも締め付ける。
ここには歌、歌、歌があり、CDを聴き始めるや、私はいつのまにか歌に溺れ、現実のはるか遠くをさまよっている。
この盤は、まずオペラに真骨頂を発揮するレヴァインの若々しい感性に満ちた指揮ぶりが素晴らしく、その冴え渡った棒はこのオペラに必要なドラマ的な要素を過不足なく示している。
私がこのオペラで特に重要視する叙情的な表現も満足この上ない素晴らしさだ。
さらに主役の二人を歌うスコットとクラウスの何とも見事なこと。
ミミを歌うスコットは私の最も好きなソプラノの歌い手の一人、その役になりきった歌の表現はいつも最高に自然で、聴いているだけでいつの間にかミミの切ない気持ちに引き込まれている自分に気づく。
ロドルフォを歌うクラウスは、声量豊かに歌い上げると言うのではなく、むしろ洗練された気品さえ感じられる歌いぶりが魅力的。
100選目となるとっておきの名盤として、絶対にはずせない一枚。
この曲のベスト・ファイヴを挙げると、
・セラフイン指揮、ローマ聖チェチーリア管弦楽団、テバルデイ<S>、ベルゴンツイ<T>、バスティアニーニ<Br> <DECCA>
・レヴァイン指揮、ナショナルフィルハーモニー管弦楽団、スコット<S>、クラウス<T>、ミルンズ<Br> <EMI>
・ケントナガノ指揮、ロンドン交響楽団、キリテカナワ<S>、リーチ<T>、ティツス<Br> <ERART>
・ペレットーニ指揮、ミラノスカラ座管弦楽団、アルバネーゼ<S>、ジーリ<T>、ポリ<Br> <EMI>
・サンティーニ指揮、トリノイタリア放送管弦楽団、カルテリ<S>、タリアヴィィーニ<T>、タッデイ<Br> <CETRA>
初演を指揮したトスカニーニのCDは別格で、この作品が好きな人のバイブル的存在。
そして、私だけのとっておきの銘盤が、スタインコプフ指揮、アイッペルレ<S>、アンダース<T>、ファッスベンダー<Br> <ANDROMEDA>

とっておきの名盤 その96 モーツアルト 歌劇「魔笛」K620

2007年08月04日 | とっておきの名盤「オペラ」
ベームが最も得意とする作曲家は、モーツアルトとR.シュトラウスの二人。
特にモーツアルトに対する敬愛の念は、人一倍のものがある。
モーツアルトの交響曲全集や管楽器の為の協奏曲全集、そして名の知られたオペラの全てなど多くの録音を残している。
この「魔笛」の演奏も立派の一言につきるが、まずは男性陣の充実した歌の素晴らしさに特に惹かれる。
不世出の名テノールといわれるヴンダーリッヒの歌声が何とも魅力的だし、パパゲーノの軽妙な役回りを見事に歌いきるF.ディースカウや、弁者の語りを深みのある声で表現するH.ホッターの歌も素晴らしい。
ベームがこの曲のメルヘン的な一面だけではなく、晩年のモーツアルトの哲学的な思想までを見事に具現した演奏として、是非耳にすべきとっておきの名盤と言える。
この曲のベスト・スリーをあげておくと、
・カール・ベーム指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、フリッツ・ヴンダーリッヒ<T>、イヴリン・リアー<S>、ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ<Br>、リザ・オットー<S> <Grammophon>
・オトマール・スウィトナー指揮、ドレスデン・シュターツカペレ、ペーター・シュライヤー<T>、ヘレン・ドナート<S>、ギュンター・ライプ<Br>、レナーテ・ホフ<S> <DENON>
・ジョージ・セル指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、レオポルド・シモノー<T>、リザ・デラ・カーザ<S>、ワルター・ベリー<Br>、グラツィエラ・シュッティ<S> <Gala>


とっておきの名盤 その94 J・シュトラウス 喜歌劇「こうもり」

2007年06月29日 | とっておきの名盤「オペラ」
この曲の名盤の話が出る時、真っ先に取り上げられるのが、このクライバーの演奏。
定盤とされているので、今更と言う話になるが、厳選されたとっておきの名盤のみを紹介しているこのブログに、この盤を載せない訳にはいかない。
クライバーはこの曲がよほど好きだったらしく、まさしくJ・シュトラウスに全身全霊乗り移って躍動感ある指揮をしているように思える。
フレーズの一つ一つが、とにかく心底から歌って踊っていて、タクトを振るのが楽しくてしょうがないと言う感じ。
聴いている私自身、つい踊りだしたいような気持ちになってしまう。
これほど、聴く人を幸せにさせる演奏は稀で、クライバーの数ある名盤の中でも飛びぬけた秀演のひとつではないだろうか。
アデーレ役は、私の大好きな歌手の一人であるルチア・ポップ。
とてもチャーミングな表情たっぷりな歌いぶりは、聴いているだけで楽しい限り。
ロザリンデ役のユリア・ヴァラデイは、名歌手フィッシャー・ディースカウの奥さんでもあり、その整った歌い振りは気品に満ちていて、この役にぴったりとはまっている。
アイゼンシュタイン役のヘルマン・プライの歌も、美声を生かした見事なもの。
この三人が歌う第一幕の四曲目の三重唱など、素晴らしい歌の共演となっていて、あっという間に時間が過ぎ去っていくのが、聴き手にとっては何とも惜しい限りだ。
こんな楽しいひと時を与えてくれるこの盤を、ここでとっておきの名盤としてあげることが出来、嬉しい思いで一杯。
あえて、この曲のベストスリーをあげておくと、
・カルロス・クライバー指揮、バイエルン国立管弦楽団、ヘルマン・プライ<Br>、ユリア・バラデイ<S>、ルネ・コロ<T>、ルチア・ポップ<S> <Grammophon>
・ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、フィルハーモニア管弦楽団、ニコライ・ゲッタT>、エリザベート・シュワルツコップ<S>、ヘルムート・クレプス<T>、リタ・シュトライヒ<S> <EMI>
・カール・ベーム指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、エバーハルト・ヴェヒター<Br>、グンドラ・ヤノヴィッツ<S>、ヴァルデマール・クメント<T>、レナーテ・ホルム<S> <LONDON>

とっておきの名盤 その90 ワーグナー 楽劇「ワルキューレ」第一幕

2007年05月26日 | とっておきの名盤「オペラ」
巨匠クナッパーツブッシュが残した、貴重ともいえる唯一の「指輪」のスタジオ録音が、ここで取りあげるこの一枚。
長大な「指輪」全曲のなかでも、「ワルキューレ」第一幕は最もメロディックでロマンティックな名場面とされている。
巨匠クナは、スタジオ録音の良さもあるが、実に中身の濃い生々しい音でもって、この愛の場面の素晴らしさと言うものを、聴き手に骨の髄まで味合わせてくれる。
他の演奏とは次元の違う、彫りの深い動機の抉りや情感の生々しさは、ワーグナーを知り尽くしたこの指揮者でなくては表しきれないもの。
主役を歌う二人の歌も素晴らしい。
ジークリンデの「Der Manner Sippe」から始まる切々とした訴え、それをあの神々しい声で歌うフラグスタートの素晴らしさを、何と表現したら良いのだろう。
ジークムントの「Wintersturme wichen 冬の嵐は去り」の青春の吐露そのものの歌、それを高々と歌い上げるスヴァンホルムの若々しい声も見事なもの。
この盤を持たずには、絶対にクナ・ファンとは言えないし、とっておきの名盤としても落とすことが出来ない一枚。
曲が充実しているだけに、「ワルキューレ」第一幕のみの盤は、これまでに結構の数が発売されているが、その中からベストスリーをあげると、
・ハンス・クナッパーツブッシュ指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、キルステン・フラグスタート<S>、セット・スヴァンホルム<T>、アーノルド・ヴァン・ミル<B> <LONDON>
・ハンス・シュミット-イッセルシュミット指揮、北ドイツ放送交響楽団、ビルギット・ニルソン<S>、セット・スヴァンホルム<T>、ヨーゼフ・グラインドル<B> <ANDROMEDA>
・フェルデナント・ライトナー指揮、ヴィュルテンベルク州立管弦楽団、マリア・ミュラー<S>、ヴォルフガング・ヴィントガッセン<T>、ヨーゼフ・グラインドル<B> <Grammophon>

とっておきの名盤 その84 プッチーニ 歌劇「トゥーランドット」

2007年04月21日 | とっておきの名盤「オペラ」
プッチーニは、ワーグナーやR・シュトラウスと並ぶ私の最も好きなオペラ作曲家の一人。
溺愛している「ボエーム」と同じほどに愛聴するこの「トゥーランドット」は、プッチーニの白鳥の歌となった最後の名作。
異国情緒あふれた舞台作りの中に、珠玉のような歌が散りばめられていて、聴き手に最初から終わりまでひと時も飽きさせないプッチーニの手腕には完璧に脱帽。
それだけに、主役3人には素晴らしい声の共演を望むのは私一人だけではあるまい。
この盤でトゥーランドット姫を歌うのは、偉大なワーグナー歌手でもあった名ソプラノのニルソン。
この役のデビュー録音だったが、その役に要求される冷たさと高貴な佇まいがぴったりで、後にはまり役となったのもうなずける。
王子カラフ役のビョルリンクは最晩年の頃だったが、声の衰えは全く無く、その完璧とまでいえる歌いぶりに圧倒される。
リューを歌うテバルディの若々しい声は何とも魅力的。
この盤の録音は1960年だから、1922年生まれの彼女にとっては歌い盛り、愛するプッチーニのこの役が、いとおしくてしょうがなかったに違いない。
ラインスドルフは、全く過去に埋もれた指揮者になってしまっていて、名前がほとんど聞かれないのがとても残念。
ウィーン生まれで、ワルターやトスカニーニの助手を務めたこともある舞台経験豊かな指揮者。
どちらかというと職人気質が強いが、優れたオーケストラ・トレーナーとして名を馳せただけあって、このプッチーニの遺作を素晴らしい響きで埋めてくれている。
好きな曲だけに推奨したい名盤はたくさんあるが、まずはこの盤をとっておきの名盤として挙げたい。
この曲のベスト・ファイブをあげると、
・エーリーッヒ・ラインスドルフ指揮、ローマ歌劇場管弦楽団、ビルギット・ニルソン<S>、レナータ・テバルディ<S>、ユッシ・ビョルリンク<T> <RCA>
・アラン・ロンバール指揮、ストラスブールフィルハーモニック管弦楽団、モンセラ・カバリエ<S>、ミレッラ・フレーニ<S>、ホセ・カレーラス<T> <EMI>
・ズービン・メータ指揮、ロンドンフィルハーモニー管弦楽団、ジョーン・サザーランド<S>、モンセラ・カバリエ<S>、ルチアーノ・パヴァロッティ<T> <LONDON>
・モリナーリ・プラデルリ指揮、ローマ歌劇場管弦楽団、ビルギット・ニルソン<S>、レナータ・スコット<S>、フランコ・コレルリ<T> <EMI>
・ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、カーチャ・リッチャレッリ<S>、ジミー・ヘンドリックス<S>、プラシード・ドミンゴ<T> <Grammophon>
ロンバール指揮の盤は、指揮、歌ともに素晴らしく、後にブログにも取り上げる予定だが、ラインスドルフの盤と同列としたい。

とっておきの名盤 その76 R.シュトラウス 楽劇「エレクトラ」

2007年02月17日 | とっておきの名盤「オペラ」
ベームが87歳の誕生日を迎える直前に亡くなったのが1981年だから、もう26年にもなる。
今更ながら、時の経つのは早いものだと、ひとしお感じいるこの頃だ。
ベームは40歳代、ドレスデン国立歌劇場の音楽監督として活躍した頃にR・シュトラウスと親交を深め、「無口な女」や「ダフネ」の初演を行っている。
それだけにこの盤の演奏でも、自然体でありながら要所々々をきちっと締めた立派な演奏を展開している。
私がこの曲の中で最も感動的な思いで良く聴く所は、父殺しの実母とその情夫に対する復讐心で燃えているエレクトラが、死んだと報じられていた弟のオレストと出会う場面だ。
Was willst du fremder Mensch(何の用ですか、見知らぬ人よ)から始まる場面だが、聴く度にその緊張に満ちた対話と音楽は強烈なインパクトで私を打ちのめす。
ボルクとディースカウのやりとりは何と迫真的であることか、しかも真の音楽で満ち満ちている。
何度聴いても素晴らしい感動を与えてくれるこの盤は、是非聴いて欲しいとっておきの一枚。
同列で、この名場面を知るきっかけともなったルートヴィッヒ、ベリー夫妻が歌うR・シュトラウス/オペラ名場面集の魅力的な一枚もあげておきたい。
次点として、ニルソンの歌と録音が優れているショルティ盤をあげる。
・カール・ベーム指揮、シュターツカペレ・ドレスデン、インゲ・ボルク<S>、ジーン・マディラ<Ms>、ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ<Br>、フリッツ・ウール<T> <Grammophon>
・ハインリヒ・ホルライザー指揮、べルリンドイツオペラ管弦楽団、クリスタ・ルートヴィッヒ<Ms>、ワルター・ベリー<Br> <DENON>
・ゲオルグ・ショルテイ指揮、ウィーンフイルハーモニー管弦楽団、ビルギット・ニルソン<S>、レジーナ・レズニック<Ms>、トム・クラウセ<Br>、ゲルハルト・シュトルツェ<T> <LONDON>