クラシック 名盤探訪

クラシックの名盤紹介・おすすめ散策コース等、趣味の発信の場です。

中野を歩く~新井薬師から哲学堂公園へ

2012年06月23日 | ウォーキング
コース順路:コース満足度★★★4月25日
JR中野駅 → 犬屋敷跡の碑 → 新井薬師 → 新井薬師公園 → 北野神社 → 氷川神社 → 蓮花寺 → 哲学堂公園 → 西武新宿線新井薬師駅

駅を出るとすぐに賑やかなサンモール商店街が続く庶民の街・中野を訪れる。
有名なコンサートホール・中野サンプラザのすぐ隣にある中野区役所、その傍にある「犬屋敷跡の碑」は注意深く探さないとまず見逃してしまう。
この場所は説明文によると、「生類憐みの令」で有名な五代将軍徳川綱吉が設けた幕府の野犬保護施設があった処で、犬を囲って飼育したところから「お囲いご用屋敷」と言われ、旧町名「囲町」はこれに由来しているという。
敷地は現在の区役所を中心に30万坪に及び、8万数千頭もの犬がいたというから驚き。
今回のお目当て、庶民の信仰が篤い新井薬師へと向かう。
新井の名はこの地で新たに井戸を掘ったことに由来するが、この寺の井戸水(白龍権現水)は一般の人に開放されていて、多くの人々が飲水として汲みに来るらしい。
この寺は天正4年(1586)に開基され、弘法大師が自ら彫ったという薬師如来と如意輪観音像が本尊になっている。
二代将軍徳川秀忠の五女で後水尾天皇中宮の和子(東福門院)が眼の病気に罹ったとき、この薬師如来に回復祈願したところ、たちまち回復したという謂れがあるし、他には子育てなどにもご利益があるとされている。
  

今は釣り人がのんびりと竿を垂れている新井薬師公園、かつてはこの寺の境内だった所で、八の日の縁日には植木市が開かれ、屋台や見世物小屋が並び多くの人で賑わったらしい。
すぐ先にある新井一円の鎮守・北野神社は、新井薬師と同じく僧行春の創建と伝えられている。
境内には、若者たちが力比べに使ったという力石が奉納されている。
 

次に訪れた氷川神社の由緒を紐解くと、「・・・長元3年(1030)に源頼信が平忠常討伐の際に、武蔵国一宮・大宮氷川神社より勧請し祠を建てたことに始まる。文明9年(1477)には、太田道灌が豊島氏との戦の際にこの神社で戦勝祈願をし、凱旋後に社殿を造営した・・・」とある。
蓮花寺には哲学堂を創った井上円了の墓があり、自分の名前を表現したという井桁の上に円形の石を置いた形がユニーク。
 

哲学堂公園がある地は、鎌倉幕府創業の功臣だった和田義盛が陣屋をかまえた跡といわれ、和田山とも言い伝えられている。
哲学堂は、明治39年(1906)に哲学者で東洋大学の創始者・井上円了が哲学、社会教育の道場として建設したもの。
公園の中を歩くと、四聖堂(孔子、釈迦、ソクラテス、カントを奉っている)、六賢台、宇宙観など、哲学的な名称が付けられた施設が沢山並んでいて興味深い。
歩いている途中に見た狸燈と呼ばれる像の形が面白く、ついカメラのシャッターを切ってしまう。
桜の名所としても有名という事で、4月にもう一度訪れてゆっくと散策したいという気持ちに駆られる。
  

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ、そして吉田秀和氏

2012年06月12日 | 音楽と絵画、iPodなど
5月になって、敬愛する音楽家そして評論家が相次いで亡くなった。
新聞記事で知ったのだが、一人は「・・・20世紀最高の歌手の1人とも呼ばれ、シューベルトの”冬の旅”など、ドイツ歌曲の名演で知られる、ドイツのバリトン歌手、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ氏が、18日、ドイツ南部で死去しました。86歳でした・・・」というもの、そしてもう一人は「・・・クラシック音楽評論の第一人者で、文化勲章受章者、水戸芸術館館長の吉田秀和氏が22日午後9時、急性心不全のため神奈川県鎌倉市の自宅で死去されました。98歳でした・・・」という記事。
これまで多くの音楽の楽しみを与えてくれたお二人に、感謝の気持ちをこめて冥福を祈りたいと思う。

 
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ氏は、ドイツ歌曲ではR.シュトラウスの歌曲が最高の名演だった。
音楽を聴き始めてからしばらくして飽きのようなものが訪れた頃、難曲だと思って避けていたシュトラウスの歌曲を何と魅力的に歌ってくれたことか、今では一番好きな曲になってしまっている。
オペラでは、やはりR.シュトラウスとR.ワーグナーのものが素晴らしい。
「エレクトラ」のオレスト役は知的すぎるところもあるが、役になりきっているし、とうとう観る事ができなかったが、バイロイト音楽祭での「タンホイザー」のヴォルフラム役は、彼抜きでは決して考えられなかったほどだった。
CDを引っ張り出して、「見渡せば」や「夕星の歌」をじっくりと聴きたい気持ちに駆られてしまう。
とっておきの名盤 その107 R.シュトラウス 歌曲集
とっておきの名盤 その76 R.シュトラウス 楽劇「エレクトラ」

  
吉田秀和氏の著作のなかで手元にあってよく読んでいるのは、「私の好きな曲」、「名曲300選」、「世界の指揮者」、「世界のピアニスト」、「音楽を語る」などで、どれも芸術の香りを感じさせる美しい文章がまず素晴らしいし、それ以上に名曲や名演奏家に対する評論が的確なのには驚かされる。
惜しい人が亡くなってしまったとは思うが、98歳という高齢を考えると、”音楽に対する喜び”というものを長年に渡って読者に伝えてくれたという感謝の気持ちを込めて、静かに見送りたいと思う。