クラシック 名盤探訪

クラシックの名盤紹介・おすすめ散策コース等、趣味の発信の場です。

とっておきの名盤 その110 J.S.バッハ ミサ曲 ロ短調 BWV232

2007年12月26日 | とっておきの名盤「声楽曲」
12月の声を聞くとバッハの宗教曲が聴きたくなる、曲は問わないが例えば「ミサ曲ロ短調」、それもクレンペラー指揮のもので。
キリスト教の信者でも何でもないのに、年の暮れになると宗教曲を聴きたい神妙な気持ちになるのが何故か不思議。
このミサ曲、バッハの最大作品と評する人がいるほど奥の深いものがある。
決して気楽に聴き流せる音楽ではないが、積極的に聴き入ればいるほど深い答えが返ってくる。
クレンペラー指揮のこの盤、その気宇壮大で力強くしかも深い演奏は、バッハの音楽の深みを真として聴き手に示してくれる。
バッハの音楽に寄せる愛情の大きさというものを、悠揚迫らざるテンポでひたひたと聴き手に訴えかけるクレンペラーの指揮ぶり、この一枚をとっておきの名盤として挙げないわけにはいかない。
あえてこの曲のベスト・スリーを挙げておくと、
・オットー・クレンペラー指揮、ニューフィルハーモニア管弦楽団、BBC合唱団、アグネス・ギーベル<S>、ジャネット・ベイカー<A>、ニコライ・ゲッダ<T>、ヘルマン・プライ<Br> <EMI>
・カール・リヒター指揮、ミュンヘン・バッハ管弦楽団、同合唱団、マリア・シュターダー<S>、ヘルタ・テッパー<A>、エルンスト・ヘフリガー<T>、・ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ<Br> <Archiv>
・カール・ミュンヒンガー指揮、シュトットガルト室内管弦楽団、ウィーン・シングアカデミー合唱団、エリー・アメリング<S>、ヘレン・ワッツ<A>、ヴェルナー・クレン<T>、トム・クラウゼ<B> <DECCA>


中島みゆき コンサートツアー2007

2007年12月21日 | 中島みゆき
 
12月18日(火)、楽しみにしていた中島みゆきのコンサートツアー、何とか切符が取れ、期待に胸を膨らませつつ東京国際フォーラムへ。
多くの観衆にまぎれながら会場へ入った途端、収容人員が5000人程という巨大さにびっくり、施設はきれいで音も良さそうだがロビーはかなりだだっ広い。
観客を眺めてみると、結構平均年齢が高そう(私もその中の一人だが)。

肝心のセットリストをあげると、
・御機嫌如何
・一人で生まれて来たのだから
・あなたでなければ
・一期一会
・with
・ホームにて
・命の別名
・ララバイSINGER~アザミ嬢のララバイ
・宙船
・昔から雨が降ってくる
・唇をかみしめて
・ファイト!
・誕生
・I Love You、答えてくれ
・ボディ・トーク
・重き荷を負いて
<↓アンコール>
・本日、未熟者
・地上の星
・背広の下のロックンロール

「御機嫌如何」に始まり、素晴らしい曲の数々が続く、そしてどれも中身の濃い良い曲ばかり。
震えるような高音から、迫力ある低音まで、その詩を生かした彼女の歌はライヴでこそ一層映える。
「命の別名」での声を振り絞って歌う命という言葉、聴き手の胸に何と深く沁み入ることか。
「宙船」は、最初の宮下文一さんのドスのきいた声と、2コーラス目からの彼女の力強くて迫力ある歌いが印象的。
「ファイト!」、ライヴでこそ生きる彼女の迫真の語り、これがこんなに素晴らしい曲だったとは!
「重き荷を負いて」の胸を刺すような詩の重みが聴き手の心を振るわせる、彼女が退いた後もずっとアンコールの拍手が鳴り止まない。
最後の「背広の下のロックンロール」では、みんなスタンディングで手拍子をしてのすごい盛り上がり。
彼女とファンの心が一緒になった素晴らしいフィナーレに、とにかく感動!
ロビーで、最新アルバム「I Love You, 答えてくれ」を購入、これは中身の濃い詩と歌が一杯詰った近来の傑作だと思う。
今の感動を少しでも外に逃さないようにと、何故かうつむき加減の姿勢で、きらめくイルミネーションの中を東京駅へ。
今思うこと、癒しそして励ましの詩と歌、巫女を思わせるような彼女の装い、崇めるような観衆のしぐさ、古代における卑弥呼の存在はこうだったのかという想いがふと胸をよぎる。


壱岐・対馬の旅

2007年12月12日 | 歴史・旅(国内)
コース順路:コース満足度★★★★★
福岡空港→南蔵院→門司港レトロ→関門トンネル人道→博多港→厳原の港→上見坂公園→万松院→お船江→郷ノ浦の港→猿岩→月読神社→左京鼻→はらぼけ地蔵→原の辻遺→唐津の港跡→虹の松原→佐賀空港

古代における大陸と日本の交通の要所であった壱岐・対馬、そしてウニと焼酎、前々からの一度旅したいという思いが、11月中旬にやっと実現した。

ツアーはコース内容が欲張りで、すぐには島に行かず、福岡空港から関門海峡を目指す。
まずは、篠栗八十八ヶ所の総本寺である第一番札所[南蔵院]を訪れる。
ここにある涅槃像、ブロンズ製のものとしては世界最大で、ニューヨークの自由の女神を横にした大きさとほぼ同じとのこと。
この後、バスは門司港レトロへ到着、広々とした港を見渡す。
右手の建物は旧門司税関。
 

ひときわ目立つ高層建物は黒川紀章氏設計によるマンション で、上は「門司港レトロ展望室」になっている。
旧門司三井倶楽部は、三井物産がVIPの接待や宿泊のために建てた木造2階建ての社交クラブで、アインシュタイン夫妻も泊まったという。
  

門司港駅のすぐ近くにある九州鉄道記念館を訪れる。
中には明治時代に活躍した昔懐かしい客車が復元されている。
 

下関と門司をつなぐ関門トンネル人道を歩く。
400m程進むと県境の線が引かれており、海底の境界線だと思うと何か不思議な感じだ。
 

博多港からジエットフォイルに乗って対馬、厳原の港へ。
港に着くと美人のガイドさんと、日本ではこの島だけに住むというツシマヤマネコ(国の天然記念物)が丁重に我々を出迎えてくれた。
厳原は対馬藩の城下町にふさわしく、石垣塀(積み石の方法は韓国のものと同じらしい)があちこちに見られる。
 

上見坂公園から眺める浅茅湾は格別の風景だ。
日本の代表的溺れ谷・浅茅湾が箱庭のように広がる。
宗家20代義成が、父義智の冥福を祈って1615年に建立した万松院、菩提寺として特別な崇敬を受けてきた寺。
 

緩やかな階段を上っていくと、代々の藩主がずらっと並んでいる墓所へたどり着く。
写真右は、徳川家綱と綱吉の時代、政治・文化に隆盛を極めた宗善真公の墓所。
 

お船江と呼ばれる対馬藩の船着場の跡は、当時の盛んな交易が偲ばれる。
フエリー「ちくし」に乗り壱岐へ向かう。
席は広々としたフロアー、横になり寝そべって行けるので楽なことこの上ない。
昔、良く乗った青函連絡船の三等席をふと思い出した。
 

一時間ほどの壱岐への船旅、郷ノ浦の港は穏やかだ。
すぐ近くのホテルに到着、夕食の海鮮料理は新鮮でとにかく美味しい。
翌日、猿岩と名のついた岩がある観光スポットへ向かう。
猿が遙か彼方を見つめている様で、見ていてなんとなくユーモラス。
 

日本神道発祥の地とされる月読神社、神秘的な雰囲気を漂わせた佇まいだ。
京都の月読神社は、487年にここから分霊されたものだという。
壱岐は麦焼酎発祥の地でもあり、お土産にと、工場でいろいろな焼酎を味見させてくれる。
 

左京鼻と呼ばれる、玄界灘に面して切り立つ断崖から荒々しい海を眺める。
海中からは、細い柱を束ねたような奇岩が突き出している。
厳しい波風にも負けずダルマ菊の花が一面に群生している。
  

いつまでもいつまでも、この断崖にじっと立って玄界灘の荒波を見つめていたい、そして遙か彼方の大陸に行ってみたい、昔の人々はそんな気持ちをきっと持ったに違いない。
 

海女で有名な八幡浦の海中に祀られている六対の地蔵、腹部を自然石で丸くえぐられていることから、はらぼけ地蔵と呼ばれている。
魏志倭人伝に記された一支国の王都として注目されている「原の辻遺跡」を訪れる。
 

展示館には、ここから出土された数多くの土器、占朴に使った鹿の骨や人面を模した石器など多数展示されている。
 

壱岐・対馬に後ろ髪を引かれる思いとはうらはらに、フェリーは一路、唐津の港へ向かっている。
日本三大松原のひとつ、虹の松原を抜けると、その先は唐津の港が一望出来る浜辺へと続く。
 

一度だけでは見きれないほど、歴史と自然が一杯詰った壱岐・対馬、もう一度じっくりと訪れたい気持ちが懇々と湧き出る味わい深い旅であった。
「対馬の歴史と朝鮮通信使の足跡を巡る旅」


とっておきの名盤 その109 キョン・チョンファ "スーヴェニール"

2007年12月04日 | とっておきの名盤「室内楽曲」
ヴァイオリンの小品集といえども、取り上げるのは通俗的な内容に流れない珠玉の作品の数々、そして決して手を抜かずに意味深い真摯な演奏を聴かせるキョン・チョンファのとっておきの一枚。
彼女の演奏を聴いていて、ふと頭をかすめるのが韓国の伝統芸能であるパンソリ。
常に威敵の進入・支配に悩まされ、そして耐え忍んだ辛い歴史を持つ韓国人独特の心情”恨(ハン)”なしには、パンソリの歌唱の真髄は極められないとも云われている。
彼女の魂を振るわせるヴァイオリンの響きは”恨”、まさにパンソリの歌唱そのものの様に思える程だ。
脱線してしまうが、パンソリを知るには、4年ほど前の映画「風の丘を越えて」という作品を見るのが一番。
韓国では5人にひとりが見たと言われるほどの大ヒット作らしいが、パンソリを極める悲劇の女主人公をテーマにしたドラマで、唱者ひとりと鼓手ひとりが繰り広げる、いわば一人オペラに近い音楽(パンソリ)がとても良く理解できる。
何はともあれ、是非聴いてほしいとっておきの一枚。
・チョン・キョンファ<Vn>、イタマール・ゴーラン<P> <EMI>