クラシック 名盤探訪

クラシックの名盤紹介・おすすめ散策コース等、趣味の発信の場です。

とっておきの名盤 その131 ブラームス ピアノ協奏曲第2番変ロ長調 作品83

2008年07月31日 | とっておきの名盤「協奏曲」
ショパンコンクール第2位、エリザベート王妃コンクール第1位、そしてチャイコフスキーコンクール第1位という輝かしい経歴を持つアシュケナージは、ピアニストとして数々の優れた演奏を我々に残してくれていた。
それがどういう心境の変化からなのか、1970年頃から指揮活動を始め、フィルハーモニア管弦楽団、チェコフィル、そしてN饗の音楽監督等を経て今度はシドニー交響楽団の主席指揮者を努めるという。
私の聴いた限りでは、バレンボイム指揮するCDもそうだが、アシュケナージの場合も、とにかく聴いていて心の奥底にしっくりと来る演奏に、今まで出くわしたことが無い。
私としては、彼はピアニストとしてずっと活躍を続け、ポリーニやアルゲリッチと並んで、とっておきの名盤をどんどん残して欲しかったのにと思ってやまない。
このブラームスの2番は、とにかく素晴らしいとしか言いようのない演奏。
ハイティンク指揮する堂々たるウィーンフィルの音をバックに、アシュケナージは驚異的なピアニズムでその円熟した音楽を、私の目の前に繰り広げてくれる。
そのピアノの音の中に漂うブラームス特有の哀調に満ちた豊かな情感は、駆け出しのピアニストには絶対に表せないものがある。
是非聴いてほしいとっておきの一枚といえる。
この曲のベストファイヴをあげると(但し、上位3枚は同列としたい)。
・ウィルヘルム・バックハウス<P>、カ-ル・ベーム指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 <LONDON>
・マウリツィオ・ポリーニ<P>、クラウディオ・アバド指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>
・ウラディミール・アシュケナージ<P>、ベルナルト・ハイテインク指揮・ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 <LONDON>
・スヴャトスラフ・リヒテル<P>、エーリッヒ・ラインスドルフ指揮、シカゴ交響楽団 <RCA>
・ハンス・リヒター=ハーザー<P>、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 <Disky>

とっておきの名盤 その130 ハンス・クナッパーツブッシュ:ワーグナー名演集

2008年07月26日 | とっておきの名盤「管弦楽曲」
私の最も敬愛する指揮者の一人、クナッパーツブッシュはドイツのエルバーフェルトで代々の蒸留酒工場経営者の息子として生まれたが、成功者の例にたがわず、両親の反対を押し切って音楽家の道を目指した。
ボン大学で哲学を専攻し、勉学のかたわらケルン音楽院でピアノと指揮を学んだが、その音楽院では「最も才能のない学生」として追い出されたという。
後年、リハーサルを嫌い、ぶっつけ本番の指揮をしたりして、オーケストラ員をよく驚かせたという彼の気性がこの逸話でも良くわかる。
若い頃からワーグナーに傾倒し、バイロイト音楽祭でジークフリート・ワーグナーやハンス・リヒターの助手を務め、実地で生の音楽を学んだことは、後の大指揮者として大成する大きな礎になったといえる。
敬愛する評論家宇野功芳氏のクナの人間性に触れた一文が面白い。
「・・・クナの人間性は最も高貴で、同時に最も粗野であり、下品であった。
性格は温かく、また意地が悪かった。
リリー・クラウスがクナッパーツブッシュの話になると、声を震わせてどんなに彼にひどい目にあったかを口にするのが常であったが、高貴さも下品さも、どちらも本当、彼は清濁併せ呑む巨人であり、大芸術家であったのである。・・・」
このCD、録音も含めてワーグナーの曲の演奏に私が求める理想の内容を示してくれている。
まずはその心の底に響く音の素晴らしさ、1956年の録音というのに当時の録音技術が、既に今のものを大きく凌いでいたということに本当に感心させられる。
クナの演奏はもちろん素晴らしく、その演奏の中に見える仰ぎ見るような巨大な造詣、内容の深さ、そして格調の高さと、どれをとっても今の指揮者にはなしえない至高の芸の極致がここには存在する。
とっておきの名盤として是非推奨したい一枚。
・ハンス・クナッパーツブッシュ指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、キルステン・フラグスタート<S>、ジョージ・ロンドン<Br>、ビルギット・ニルソン<S>_楽劇「神々の黄昏」夜明けとジークフリートのラインへの旅、ジークフリートの葬送行進曲_楽劇「パルシファル」母の胸に抱かれている幼子の貴方を見た_楽劇「ワルキューレ」ウォータンの告別と魔の炎の音楽_楽劇「トリスタンとイゾルデ」前奏曲とイゾルデの愛の死 <LONDON>
ワーグナーの管弦楽曲集のベスト・ファイヴもあげておくと、
・ハンス・クナッパーツブッシュ指揮、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 <Westminster>
・フリッツ・ライナー指揮、シカゴ交響楽団 <RCA>
・オットー・クレンペラー指揮、フィルハーモニア管弦楽団 <EMI>
・カール・シューリヒト指揮、バイエルン放送交響楽団 <DENON>
・ジュゼッペ・シノーポリ指揮、ニューヨークフィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>