クラシック 名盤探訪

クラシックの名盤紹介・おすすめ散策コース等、趣味の発信の場です。

とっておきの名盤 その86 マーラー 交響曲第9番ニ長調

2007年04月29日 | とっておきの名盤「交響曲」
この曲は本当に好きな曲で、お気に入りのものも含め手元にある盤を数えると12種類にもなる。
中でも、前にこのブログで取り上げたジュリーニのものと、今回のバルビローリ盤が群を抜いた素晴らしい演奏を繰り広げている。
そしてこの盤には、63年1月にバルビローリがベルリンフィルに客演した際、感動した団員全員のたっての希望で、この曲が録音されたと言う有名な逸話が残っている。
この演奏にじっと耳を傾けていると、バルビローリは大げさに構えた指揮振りをしていないし、マーラーの畢生の思いをかけたこの音楽を、むしろ在るがままに響かせ、自然の流れに身をまかせているかの様に思える。
しかしその中に、バルビローリの暖かな人間性が何とひしひしと息づいていることか。
いつも言うが、60年代のベルリンフィルの弦と管の魅力的な音の響きがその思いを一層強くしているのかもしれない。
何度聴いても飽きが来ないし、むしろ聴けば聴くほど感動がつのるこの盤は、とっておきの名盤として絶対に落とすことの出来ない一枚。
この盤とジュリーニ盤は同列としたいが、あえてベストスリーを挙げると、
・カルロ・マリア・ジュリーニ指揮、シカゴ交響楽団 <Grammophon>
・ジョン・バルビローリ指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 <EMI>
・レナード・バーンステイン指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>
番外編:録音(1938年)は古いが、ナチに追われウイーンを去る直前に、積年の思いで演奏したこのライヴ録音は特別。
・ブルーノ・ワルター指揮、ウイーンフィルハーモニー管弦楽団 <EMI>

とっておきの名盤 その85 モーツアルト 「レクイエム」ニ短調 K626

2007年04月25日 | とっておきの名盤「声楽曲」
天才モーツアルトの最後の作品となったのが、死者のためのミサ曲であるこの曲なのも、とても意味深い。
ピアノの詩人ショパンの葬儀には、彼自身の意向でこの曲が用いられたというし、アメリカ大統領ケネディの追悼ミサの時にも使われている。
宗教にとらわれず、純粋の音楽としてみても深みのある見事な作品で、私の最も好きな曲のひとつでもある。
この盤は、峻厳なバッハの名演奏を数多く残したリヒター指揮によるものだけに、モーツアルトの死に対する深い思いを、その凛とした引き締まった見事な表現で、聴き手の心に真っ直ぐに伝えてくれている。
べームなどのコンサートスタイルの演奏とは一味違った、教会で清清しく歌われた貴重な演奏とでも云えようか。
是非とも耳に残して欲しいとっておきの名盤。
ここに挙げるベストスリーの名盤は、どれも素晴らしく、順位がつけがたいので同列としたい。
・カール・リヒター指揮、ミュンヘンバッハ管弦楽団、ミュンヘンバッハ合唱団、マリア・シュターダー、フランツ・エーダー他 <TELDEC>
・リッカルド・ムーティ指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団、スウェーデン放送合唱団、ストックホルム室内合唱団、パトリシア・パーチエ、ジェイムス・モリス他 <EMI>
・カール・ベーム指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団、エデット・マティス、カール・リーダーブッシュ他 <Grammophon>
番外として音は良くないが、歴史的名盤(「ラクリモーザ」は涙なしに聴けない)を挙げる。
・ブルーノ・ワルター指揮、ニューヨクフィルハーモニック、ウエストミンスター合唱団、イルムガルト・ゼーフリート、ウイリアム・ウォーフィールド他 <CBS>

とっておきの名盤 その84 プッチーニ 歌劇「トゥーランドット」

2007年04月21日 | とっておきの名盤「オペラ」
プッチーニは、ワーグナーやR・シュトラウスと並ぶ私の最も好きなオペラ作曲家の一人。
溺愛している「ボエーム」と同じほどに愛聴するこの「トゥーランドット」は、プッチーニの白鳥の歌となった最後の名作。
異国情緒あふれた舞台作りの中に、珠玉のような歌が散りばめられていて、聴き手に最初から終わりまでひと時も飽きさせないプッチーニの手腕には完璧に脱帽。
それだけに、主役3人には素晴らしい声の共演を望むのは私一人だけではあるまい。
この盤でトゥーランドット姫を歌うのは、偉大なワーグナー歌手でもあった名ソプラノのニルソン。
この役のデビュー録音だったが、その役に要求される冷たさと高貴な佇まいがぴったりで、後にはまり役となったのもうなずける。
王子カラフ役のビョルリンクは最晩年の頃だったが、声の衰えは全く無く、その完璧とまでいえる歌いぶりに圧倒される。
リューを歌うテバルディの若々しい声は何とも魅力的。
この盤の録音は1960年だから、1922年生まれの彼女にとっては歌い盛り、愛するプッチーニのこの役が、いとおしくてしょうがなかったに違いない。
ラインスドルフは、全く過去に埋もれた指揮者になってしまっていて、名前がほとんど聞かれないのがとても残念。
ウィーン生まれで、ワルターやトスカニーニの助手を務めたこともある舞台経験豊かな指揮者。
どちらかというと職人気質が強いが、優れたオーケストラ・トレーナーとして名を馳せただけあって、このプッチーニの遺作を素晴らしい響きで埋めてくれている。
好きな曲だけに推奨したい名盤はたくさんあるが、まずはこの盤をとっておきの名盤として挙げたい。
この曲のベスト・ファイブをあげると、
・エーリーッヒ・ラインスドルフ指揮、ローマ歌劇場管弦楽団、ビルギット・ニルソン<S>、レナータ・テバルディ<S>、ユッシ・ビョルリンク<T> <RCA>
・アラン・ロンバール指揮、ストラスブールフィルハーモニック管弦楽団、モンセラ・カバリエ<S>、ミレッラ・フレーニ<S>、ホセ・カレーラス<T> <EMI>
・ズービン・メータ指揮、ロンドンフィルハーモニー管弦楽団、ジョーン・サザーランド<S>、モンセラ・カバリエ<S>、ルチアーノ・パヴァロッティ<T> <LONDON>
・モリナーリ・プラデルリ指揮、ローマ歌劇場管弦楽団、ビルギット・ニルソン<S>、レナータ・スコット<S>、フランコ・コレルリ<T> <EMI>
・ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、カーチャ・リッチャレッリ<S>、ジミー・ヘンドリックス<S>、プラシード・ドミンゴ<T> <Grammophon>
ロンバール指揮の盤は、指揮、歌ともに素晴らしく、後にブログにも取り上げる予定だが、ラインスドルフの盤と同列としたい。

とっておきの名盤 その83 ベートーヴェン 後期3大ピアノソナタ(第30番~32番)集

2007年04月18日 | とっておきの名盤「器楽曲」
バッハの平均率ピアノ曲集を旧約聖書にたとえるなら、ベート-ヴェンのピアノソナタは新約聖書と呼ばれている。
その32曲のピアノソナタの中でも、最後の3曲は精神的な深みが特に際立った味わいのある傑作群といってよい。
特に第30番ホ長調(作品109)は中でもとりわけ好きな曲で、前にこのブログでもとっておきの名盤としてアラウ演奏のものを取り上げている。
このゼルキンの盤はどちらかというと、好好爺のおじさんが、お気に入りの曲を弾くのが楽しくてしょうがないというような演奏。
全体的に明るいが、随所のフレーズに地味深い趣が散りばめられていて、聴いていて時々はっとさせられる。
深みのあるアラウの演奏とは趣が違うが、別の意味で強く惹かれるものがある。
ゼルキンは1991年に88歳の高齢で亡くなったが、若い頃からの長い録音活動の中でも、年をとるにつれてより味わいの深い演奏をしてくれる名ピアニストの一人だった。
この盤は1987年の演奏だが、ライブ録音とは思えないほどの鮮明さだ。
是非多くの人に聴いて欲しいとっておきの名盤。
これらの曲のベストファイブの名盤をあげると
・クラウディオ・アラウ(第30番)<PHILIPS>
・クラウディオ・アラウ(第31番)<PHILIPS>
・ルドルフ・ゼルキン <Grammophon>
・エミール・ギレリス <Grammoph9on>
・ウィルヘルム・ケンプ <Grammophon>
・ウィルヘルム・バックハウス <DECCA>
アラウの盤を第一位とするが、タッチの差でゼルキンの盤も推奨したい。

とっておきの名盤 その82 モーツアルト 弦楽四重奏曲第21番~第23番「プロシャ王第1番~第3番」

2007年04月15日 | とっておきの名盤「室内楽曲」
モーツアルト最晩年の神品ともいえるこれら3曲の作品は、実に透明度の高い澄み切った音の世界を展開する。
その1曲目の出だしなど、さりげなく流れていく抑制美に溢れた旋律を聴き始めると、その神秘的ともいえる音の世界に、スーッと吸い込まれていくような錯覚にとらわれる。
中でも第3番は、モーツアルトが残した弦楽四重奏曲の最後となる作品だけに、特に素晴らしい。
その無駄を省いたシンプルで磨きぬかれた音の響きは、死を間近に迎える天才だけがなしうる世界と言える。
アルバン・ベルク四重奏団は、達人の作ともいえるこの傑作を、まれに見る透き通った弦の響きで聴かせてくれる。
とっておきの名盤として推奨できる唯一の演奏。
・アルバン・ベルク四重奏団 <TELDEC>

京王井の頭線西永福駅から大宮八幡宮へ、善福寺川に沿ってJR中央線荻窪駅へ

2007年04月08日 | ウォーキング
コース順路:コース満足度★★★★
京王井の頭線西永福駅→大宮八幡宮→和田掘公園→松ノ木遺跡→熊野神社→大田黒記念公園→JR中央線荻窪駅

武蔵野の面影を残す木立を眺めながら、爽やかな川沿いの散策を楽しめるお勧めのコース。

西永福駅を降りると、杉並区内屈指の古大社である大宮八幡宮はすぐ目の前だ。
大きなしめ縄で飾られた神門(写真左)の奥には立派な本殿が見える。
神門の脇には見事なこぶしの花を咲かせた大木があり(写真右)、われを忘れて見とれること仕切り。
  

本殿は総檜権現造りの見事なもの。
これだけ立派な神社を訪れたのはめったに無く、得をしたようで思わず笑みがこぼれてしまった。


すぐ裏の和田堀公園の池は野鳥の天国で、大勢のバードウオッチングの人達がカメラを構えて、カワセミの到来を待っていた。


少し先に松ノ木遺跡があり、古墳時代後期の復元住居と竪穴住居跡が公開されている。


善福寺川の流れに沿って、遊歩道が延々と続く。
桜、コブシ、ハナミズキ、サザンカなど、シーズンの折々に応じて、散歩している人々の目を楽しめることこの上ない。


遊歩道を離れ、荻窪駅に向かう途中に大田黒記念公園がある。
私の若い頃、クラシック音楽の評論をよく読ませていただいた音楽評論家の大田黒元雄氏の屋敷跡だ。
まだ良く知られていなかったドビュッシーやストラヴィンスキーの音楽を、真っ先に日本に紹介した事でも知られている。


大田黒元雄氏を偲びながら荻窪駅へ向かう、途中ふと見つけた「ささま書店」という古本屋に立ち寄る。
古本の取り揃えガ充実していて、ふだん探していてもなかなか見つからなかった本を発見し、すぐに購入する。
知らない街を散歩していると、思わぬことで良い思いをする。
これだからウォーキングはやめられない。

楽器を楽しむ

2007年04月05日 | 音楽と絵画、iPodなど
楽器を楽しんでいる若い男の子や女性を題材とする絵は多い。
CDのカバーなどにもよく使われるので、きっとこれらの絵をどこかで見ていると思う。


16世紀イタリアの画家カラヴァッチョの手になる「リュートを弾く若者」。
じっと見ていると、若者が爪弾く流麗な旋律の断片が聴こえて来る


私の最も好きな画家フェルメール(17世紀オランダ)の「ヴァージナルの前に座る女」。
ヴァージナルという名前の由来については、この楽器を愛した処女(ヴァージン)の王女エリザベスⅠ世にちなんでつけられたという。
この楽器はどんな音がするのか一度聴いてみたい気がする。


マネ(19世紀フランス)の「笛吹く少年」。
この絵を見ると、高校の美術の教科書でページ一杯に大きく載っていたことをすぐ思い出す。


19世紀フランス、ルノアールの「ギターをもつスペインの若い女性」。
フラメンコを奏でているとは思えないし、スペインの民謡でも弾いているのだろうか。

とっておきの名盤 その81 ブルックナー交響曲第6番イ長調

2007年04月01日 | とっておきの名盤「交響曲」
1994年、86歳の高齢で亡くなったアイヒホルンの最後の録音となったのが、今回とりあげるこのとっておきの名盤。
この秘すれば花というような愛すべき曲を、奇を衒うことも無く、淡々と朴訥とも思えるほどに、素朴で純な演奏を繰り広げていく。
それこそ、自然の中に子供のような気持ちで純粋に生きたブルックナーの曲には、真にふさわしい。
第6番はあまり目立たない曲だが、その最初の二つの楽章の素晴らしさ、特にその叙情的な部分を耳にすると、私などこの曲のイメージを路傍の花に託したくなる。
道端に咲くスミレの花とも勿忘草とも評すれば良いだろうか。
たしかにこの曲は、最後の3大交響曲への道を切り開く重要な作品といっても良いと私は思う。
巨匠と呼ばれる多くの名指揮者がこの曲を演奏している中で、あまり知られた指揮者とは言えないアイヒホルンのものを何故選ぶのかと聞かれても、その純粋さ朴訥さが私の心をつかんで離さないからとしか言いようが無い。
好きな7番や8番などを離れて、たまにはブルックナーのほかの曲をという時に、無意識に手にしているのがこの盤、耳にすればするほど心の奥底から気持ちが和らいでいる自分に気付く。
この曲のベスト・ファイヴの名盤をあげると、
・クルト・アイヒホルン指揮、リンツ・ブルックナー管弦楽団 <Camerata>
・フエルディナント・ライトナー指揮、バスラー交響楽団 <ACCORD>
・オイゲン・ヨッフム指揮、バイエルン放送交響楽団 <Grammophon>
・ウォルフガング・サヴァリッシュ指揮、バイエルン国立管弦楽団<Orfeo>
・セルジュ・チェリビダッケ指揮、ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団 <EMI>