クラシック 名盤探訪

クラシックの名盤紹介・おすすめ散策コース等、趣味の発信の場です。

とっておきの名盤 その130 ハンス・クナッパーツブッシュ:ワーグナー名演集

2008年07月26日 | とっておきの名盤「管弦楽曲」
私の最も敬愛する指揮者の一人、クナッパーツブッシュはドイツのエルバーフェルトで代々の蒸留酒工場経営者の息子として生まれたが、成功者の例にたがわず、両親の反対を押し切って音楽家の道を目指した。
ボン大学で哲学を専攻し、勉学のかたわらケルン音楽院でピアノと指揮を学んだが、その音楽院では「最も才能のない学生」として追い出されたという。
後年、リハーサルを嫌い、ぶっつけ本番の指揮をしたりして、オーケストラ員をよく驚かせたという彼の気性がこの逸話でも良くわかる。
若い頃からワーグナーに傾倒し、バイロイト音楽祭でジークフリート・ワーグナーやハンス・リヒターの助手を務め、実地で生の音楽を学んだことは、後の大指揮者として大成する大きな礎になったといえる。
敬愛する評論家宇野功芳氏のクナの人間性に触れた一文が面白い。
「・・・クナの人間性は最も高貴で、同時に最も粗野であり、下品であった。
性格は温かく、また意地が悪かった。
リリー・クラウスがクナッパーツブッシュの話になると、声を震わせてどんなに彼にひどい目にあったかを口にするのが常であったが、高貴さも下品さも、どちらも本当、彼は清濁併せ呑む巨人であり、大芸術家であったのである。・・・」
このCD、録音も含めてワーグナーの曲の演奏に私が求める理想の内容を示してくれている。
まずはその心の底に響く音の素晴らしさ、1956年の録音というのに当時の録音技術が、既に今のものを大きく凌いでいたということに本当に感心させられる。
クナの演奏はもちろん素晴らしく、その演奏の中に見える仰ぎ見るような巨大な造詣、内容の深さ、そして格調の高さと、どれをとっても今の指揮者にはなしえない至高の芸の極致がここには存在する。
とっておきの名盤として是非推奨したい一枚。
・ハンス・クナッパーツブッシュ指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、キルステン・フラグスタート<S>、ジョージ・ロンドン<Br>、ビルギット・ニルソン<S>_楽劇「神々の黄昏」夜明けとジークフリートのラインへの旅、ジークフリートの葬送行進曲_楽劇「パルシファル」母の胸に抱かれている幼子の貴方を見た_楽劇「ワルキューレ」ウォータンの告別と魔の炎の音楽_楽劇「トリスタンとイゾルデ」前奏曲とイゾルデの愛の死 <LONDON>
ワーグナーの管弦楽曲集のベスト・ファイヴもあげておくと、
・ハンス・クナッパーツブッシュ指揮、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 <Westminster>
・フリッツ・ライナー指揮、シカゴ交響楽団 <RCA>
・オットー・クレンペラー指揮、フィルハーモニア管弦楽団 <EMI>
・カール・シューリヒト指揮、バイエルン放送交響楽団 <DENON>
・ジュゼッペ・シノーポリ指揮、ニューヨークフィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>

とっておきの名盤 その112 ラヴェル バレエ音楽「ダフニスとクロエ」全曲

2008年01月12日 | とっておきの名盤「管弦楽曲」
 
クリュイタンスとパリ音楽院管弦楽団、この組み合わせは洗練された粋な感覚と、透き通った知的センスを最も必要とするフランス音楽の真髄を、我々に最高に伝えてくれる貴重な存在だった。
残念ながら、彼の死後、140年の歴史を誇るこの管弦楽団は解散という憂き目に会ってしまった。
しかし彼らが残してくれたラヴェルの演奏は、今となってはフランス文化の栄光の匂いを真に伝えてくれる最良の遺産となっている。
今、オーケストラの魔術師とも言われたラヴェルが残してくれた最高傑作に違いないこの作品に耳を傾けると、フランス風の香気と艶やかな明るさが微妙に交じり合ったパリの味わいがじっと胸にこみ上げてくる(まだパリに行ったことも無いのに、こんなことを言うのもおこがましいが)。
有名な第3部冒頭の「夜明け」の部分など、デリケートな演奏の中に明るさと強い色彩が入り混じった幅の広い表現が、私の胸にイギリスの画家ターナーの手になる傑作「戦艦テメレール号」の風景(こちらは夕日かも)を強く思い起こさせてくれる。
ベストレコードの中に必ず取り上げられる盤だが、このブログでもとっておきの一枚として外せない一枚。
あえてこの曲のベストスリーを挙げると、
・アンドレ・クリュイタンス指揮、パリ音楽院管弦楽団、ルネ・デュクロ合唱団 <EMI>
・シャルル・ミュンシュ指揮、ボストン交響楽団、ニューイングランド音楽院合唱団 <RCA>
・シャルル・デュトワ指揮、モントリオール交響楽団、同合唱団 <LONDON>


とっておきの名盤 その71 R・シュトラウス 交響詩 「死と浄化」 作品24

2007年01月16日 | とっておきの名盤「管弦楽曲」
ホーレンシュタインは私の敬愛する指揮者の一人で、マーラー、ブルックナー等の作品で中身の濃い立派な演奏を繰り広げてくれた。
1899年ウクライナのキエフに生まれたが、母親はオーストリア人。
六歳の時にはロシアを去り、マーラーの影響がまだ残っていたウィーンで音楽を学び、その後ベルリンでフルトヴェングラーの助手を努めている。
ナチスの迫害を逃れドイツを離れたこともあり、彼ほど世界各地を転々と回り、1973年に亡くなるまで多彩な指揮活動をした指揮者も珍しい。
この盤を録音したのは1970年だから相当晩年の演奏、ゆったりとしたテンポの中、この曲が描く生と死の闘いを意味深い響きと色彩の妙をもって聴き手の心に伝えてくれる。
ホレーンシュタインの貴重なステレオ録音を残してくれたシャンドスレーベルには感謝の念で一杯。
音質、演奏とも中身の濃い盤をいつも提供してくれるこのレーベルの質の高さにはいつも感心させられる。
この曲のベストファイヴの演奏は、
・ヤッシャ・ホーレンシュタイン指揮、ロンドン交響楽団 <Chandos>
・ルドルフ・ケンペ指揮、ドレスデンシュターツカペレ <EMI>
・フリッツ・ライナー指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 <DECCA>
・ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>
・クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 <LONDON>

とっておきの名盤 その63 ワーグナー 管弦楽曲集Ⅰ・Ⅱ

2006年12月14日 | とっておきの名盤「管弦楽曲」
  
これは昔から定盤中の定盤とされる演奏、新鮮味がないアルバムと言われそうだが、「とっておきの名盤、愛聴盤」を厳選して紹介するブログだけにこの盤を落とすわけにはいかない。
最も敬愛する指揮者の一人、クナッパーツブッシュによる1962年、74歳の時の録音。
別格といってよい風格のある演奏で、これぞワーグナーの理想的境地と多くのファンは絶賛、かく云う私もその一人でとにかくその文句のつけようの無い演奏の前にはただ頭をたれるのみ。
一曲目の「ニュルンベルクの名歌手」前奏曲、聴き始めるや古武士を思わせる悠然としたテンポと骨格のしっかりした巨大なスケールの音の響きに圧倒される。
ワーグナーの音はかくあるべきで、伝統の重みは口では語りつくせないし、とにかく聴いてみて実感して欲しい。
オーケストラは私の大好きなミュンヘンフィル、特にフルートを先頭に管楽器の音色はいつもながら何ともいえず魅力的だ。
続く曲も、ワーグナーの代表的な作品の序曲、前奏曲等が網羅されている。
あえてこの曲集のベスト・ファイヴを挙げると、
・ハンス・クナッパーツブッシュ指揮、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 <Westminster>
・フリッツ・ライナー指揮、シカゴ交響楽団 <RCA>
・オットー・クレンペラー指揮、フィルハーモニア管弦楽団 <EMI>
・カール・シューリヒト指揮、バイエルン放送交響楽団 <DENON>
・ジュゼッペ・シノーポリ指揮、ニューヨークフィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>

とっておきの名盤 その49 ベートーヴェン 序曲集

2006年10月20日 | とっておきの名盤「管弦楽曲」
ベートヴェンが作曲した序曲を、クレンペラーが熱を込めて演奏した一枚。
この盤には、歌劇「フィデリオ」の上演の為に作曲された序曲4曲が作曲順に並べられている。
聴き通すうちに、作曲を繰り返したベートヴェンの苦労、努力が聴き手に伝わり、共鳴を覚えると共に、その執念に頭を垂れざるを得ない。
中でも私の愛聴曲でもある、古今の名序曲とされる「レオノーレ序曲第3番」の充実した内容は特別のものだ。
高校3年の頃、バーンステイン指揮のEP盤を、何度も何度も聴いた思い出がある。
その若々しい颯爽とした演奏、中でも大臣の到着を告げるトランペットのファンファーレ、そして有名なフルートの奏でる青春の息吹を伝える第一主題の感動的な調べに、何度も泣かされた思い出は忘れられない。
クレンペラー盤には若者の颯爽さは無い、しかしその独特の深みと個性ある演奏は、若さの欠如を補って余りある。
この盤にはストーリー性があり、聴く者に何かしらの関心を惹かす一枚といえる。
お勧めの盤は、
・オットー・クレンペラー指揮、フィルハーモニア管弦楽団 <EMI>
・レナード・バーンステイン指揮、ニューヨークフィルハーモニック <CBS>

とっておきの名盤 その33 チャイコフスキー バレエ音楽「眠りの森の美女」 作品66

2006年09月12日 | とっておきの名盤「管弦楽曲」
この曲はチャイコフスキーの3大バレエ音楽の中でも、最も交響的な性格を持った作品とされている。
特に第2幕後半の音楽は、チャイコフスキー独特の叙情的な音楽に満ち溢れ、聴くものに何とも魅惑的な安らぎの時間を与えてくれる。
随所にハープに導かれて出てくる「リラの精の主題」の夢幻的な美しさが印象的だ。
この盤を指揮するドラティは、若い頃に実際の舞台で数多くのバレエ音楽を指揮し絶賛を浴びているだけに、何よりもリズム処理がうまいのに驚く。
「バレエ音楽の神様」といわれただけの事はある。
弦、管、そして打楽器などさまざまの楽器が奏でる魅力的な音色、響きにじっくりと浸りたい時は、いつも無意識的にこの盤に手が行ってしまう。
とにかくオーケストラが抜群にうまい、録音も最優秀といえるしこの曲に関しては、この盤がベストと思う。
この盤があまりにも気に入っているので、他の演奏のCDは手元に一切無い程だ。
・アンタル・ドラティ指揮、アムステルダム・コンセルトへボウ管弦楽団

とっておきの名盤 その29 ラヴェル 管弦楽曲集

2006年08月28日 | とっておきの名盤「管弦楽曲」
巨匠ミュンシュは、ベルリオーズをはじめドビュッシー、ラヴェルなどのフランス音楽に特に優れた手腕を発揮した指揮者であった。
そのどれも素晴らしいが、中でもこのラヴェルの管弦楽曲集は私が特に気に入っている一枚である。
ラヴェルの代表的な管弦楽曲を集めた一枚だが、どの曲もミュンシュが得意としていたものばかりでとにかく楽しいひと時を過ごせる。
この盤の「ボレロ」と組曲「マ・メール・ロア」は旋律の良さはもとよりラヴェルの管弦楽法の見事さも相まって、その彩をなす音の響きが私の耳を捉えて離さない。
特にこの2曲でのミュンシュが演出するそのフィナーレの圧倒的な高まりは、この盤の一番の聴き所だ。
・シャルル・ミュンシュ指揮、ボストン交響楽団 <RCA>
お気に入り度は少し落ちるが、他のお勧めの盤としては、
・アンドレ・クリュイタンス指揮、パリ音楽院管弦楽団 <EMI>
・ジャン・マルティノン指揮、パリ管弦楽団 <EMI>

とっておきの名盤 その12 「ウイーンナ・ワルツ集」 F・ライナー指揮、シカゴ交響楽団

2006年08月05日 | とっておきの名盤「管弦楽曲」
3日、エリザベート・シュワルツコップが90歳で亡くなった。
生前、シュワルツコップのファンで来日時のコンサート(たしか「ヴォルフの歌曲リサイタル」だった)にも行ったし、数々のCDでその名歌唱を聴いている。
ご冥福を祈る。
かつて彼女がお気に入りの演奏として、「デザート・アイランドの三枚」を挙げた事があった。
その中の一枚が、このF・ライナー指揮のウインナ・ワルツ集であった。
「ライナー指揮するハンガリー風に演奏されたウインナ・ワルツが、とても魅力的である」という記事に惹かれ、早速購入したのである。
ウイーンナ・ワルツがこれほど新鮮な感じで聴けたことは初めてであったし、私にもお気に入りのCDの一枚となった。
厳格な指揮者ライナーがこんな素敵な遊びをしてくれた事に感謝、感謝である。
そして、この一枚を推奨してくれた故シュワルツコップ氏に感謝!
推奨するウィーンナ・ワルツ集は、
・フリッツ・ライナー指揮、シカゴ交響楽団 <BGM>
・ハンス・クナッパーツブッシュ指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 <DECCA>
・ルドルフ・ケンペ指揮、ドレスデンシュターツカペレ <DENON>