クラシック 名盤探訪

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初夏の北海道 サロベツ原野・利尻・礼文の旅 その1(サロベツ原野と稚内を巡る)

2009年08月18日 | 歴史・旅(国内)
コース順路:コース満足度★★★★ 6月23日~27日
札幌→士別→朱鞠内湖→幌延→下サロベツ原野自然探勝路→上サロベツ原生花園→日本海オロロンライン→コウホネ沼→ノシャップ岬→氷雪の門→稚内駅

六月の北海道は最高に空気が爽やかな季節、そして利尻・礼文の島では美しい花々が一斉に咲き誇る季節でもある。
そんな時期に訪れた今回の旅、まずはサロベツ原野の広大な眺めと木道の脇に可憐に咲いている花々を紹介したい。
まずは士別駅で列車から降り、予約していたレンタカーを借りる。
サロベツ原野の入り口にあたる幌延町が目的地点なのだが、こういう時でないとめったに寄れない朱鞠内湖へと車を走らせる。
展望台から眺めた朱鞠内湖は神秘的なまでに美しい表情を見せてくれた。
湖畔には全く人出が無く、湖をじっと眺めていると何故かひどく寂しい感じがひしひしと胸に押し寄せてくる。
朱鞠内湖の辺りは厳寒の地らしい、湖畔の後ろにはここで零下41.2℃を記録したという碑が立っている。


二日目も嬉しいことに晴天だったが、風がひどく強い。
ビジターセンターにあるサロベツ原野の全容を示す写真をしばし眺める。
約6700haに及ぶという広大な大湿原に点在する長沼、小沼、パンケ沼、そして利尻富士の美しい姿がとりわけ目をひきつける。
これから歩き始める自然探勝路から原野を眺め渡すと、群生とまではいかないがエゾカンゾウが訪れる人を出迎えるかの様に、あちこちと咲き乱れている。


下サロベツ原野ビジターセンターからパンケ沼園地までの約3Kmの木道を歩き出す。
すぐ近くにある長沼にはコウボネの黄色い花が咲いている。
オゼコウホネかネムロコウホネなのか、見分け方が難しい。


湿原を飛び交う野鳥のさえずりがかき消されてしまうほど強い風の中、1.5Kmほど歩くと濃い群青色の小沼が見えてくる。
空が澄んでいるとこの辺りから見える利尻富士が素晴らしいのだが、あいにく山の周りだけが雲で覆われていて、その姿を見ることが出来ないのが残念。
湿原の中に生えている白樺の木、湿原が乾燥化してくると一番最初に成長するのが白樺だという。
熊笹がかなり茂っているのも乾燥化が進んでいる証拠で、かなり気にかかる状況ではある。


木道の脇に咲いているカキツバタ、野生のせいか色が際立って鮮やかなのが嬉しい。
白い雪洞のように見えるイソツツジの花、立ち止まって見る人の目をとても和ませてくれる。


サロベツ原野に別れを告げて、車は日本海オロロンラインを稚内へ向けてひた走る。
海に目をやると、強風で大荒れの日本海が白い波の飛沫を泡立たせている。
途中コウホネ沼という所で、森繁久弥が詠んだ歌を刻んだ碑を見つける。
「浜茄子の 咲きみだれたる サロベツの 砂丘の涯の 海に立つ富士」、なかなか良い歌だ。


ノシャップ岬に到着する、アイヌ語でノッ・シャムと云い「顎のように突き出たところ」という意味があるという。
ここは夕方に来ると、利尻富士や礼文島が夕日に映えて素晴らしく綺麗らしい。
稚内市が一望できるという稚内公園へ向かう。
空が澄んだ日には、高さ8mの「氷雪の門」の向うに遠く樺太の島影も見えるとのこと。
ここには「九人の乙女の碑」もあり、レリーフに刻まれた樺太郵便局の若き交換手たちの最後の言葉「皆さん、これが最後です、さょうなら、さようなら」の悲しい叫び声を読むと目頭がじーんと熱くなる。
  

稚内駅のホームの端に、JR日本最北端の駅を示す碑らしきものが立っている。
碑には北緯45度25分03秒の文字も刻まれている。
線路の突端をみると「最北端の線路」の看板もあり、この場所は鉄道ファンなら必ず訪れるところだという。
 

湿原と大地の広がりを充分体験することが出来たサロベツ原野、乾燥化が進んでいることがちょっと残念なことではあった。
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この曲この一枚 その2 J.S.バッハ:「フーガの技法」BWV1080

2009年08月09日 | この曲この一枚
  
最晩年のバッハが生涯を通して追求を続けたフーガの作曲法、その到達点がこの作品「フーガの技法」。
1750年7月28日、65歳で静かにこの世を去ったバッハの最後の作品だが、残念ながら未完成のまま終わってしまっている。
楽器の指定はなく、実際に演奏する場合にはどの楽器で演奏するのか問題にはなる。
しかしこの曲は、バッハの心の中でのみ鳴り響く言葉では言い表せない崇高な音の流れがあり、個々の楽器の音色を超えたものがあったに違いない。
あまり演奏している楽器にはこだわらない方が良いかもしれない。
私自身フーガというものは、難しくて良く解らない。
それで、繰り返し展開されていく主題に注目して、その音の流れをひたすら追っかけて聴いていくような聴き方を続けている。
推理小説に出てくる事件や人間関係の絡み合った紐のようなものが、少しづつほどけていくような感じを受けるのが面白い。
これも作品の素晴らしさのなせる業なのだろう。
「フーガの技法」とともにバッハの最晩年の円熟した力量を示す作品、「音楽の捧げもの」を聴いてみるとこれも中身はフーガだらけで、よほどフーガを愛していたバッハが偲ばれる。
この盤を演奏しているドイツの指揮者、カール・リステンパルト(1900-1967)を知ったのはもう45年ほども前になる。
昭和40年の頃だと思うが、当時はレコード一枚が3000円という時代、その時に店頭でノンサッチというレーベルのレコードが1000円で発売されているのを発見。
早速購入したのが、リステンパルト指揮のバッハ:カンタータ第140番「目覚めよと呼ぶ声あり」で、その非常にきびきびした指揮による素晴らしい演奏に感動して、盤が擦り切れるまで聴いたことを今でも覚えている。
そんな彼の指揮によるこの「フーガの技法」の演奏、この曲この一枚として決して外せない、ぜひ耳にして欲しい。
・カール・リステンパルト指揮、ザール放送室内管弦楽団 <ERATO>

この曲この一枚 その1 トーマス・ルイス・ヴィクトリア:「レクイエム」

2009年08月03日 | この曲この一枚
  
作曲家たちが心を込めて作り出した素晴らしい曲、その魅力を最大限に引き出して聴き手に深い感動を与えてくれる演奏、そして優れた録音、そんな愛着極まる「この曲この一枚」を順次取り上げて行きたいと思う。
「五大レクイエムと呼ばれる曲は、モーツアルトヴェルディ、フォーレ、ケルビーニ、そしてベルリオーズのものとされるが、私としてはケルビーニではなく、スペインの生んだルネサンス音楽最大の作曲家の一人ヴィクトリアのレクイエムを挙げたい。」とこのブログで書いたことがある。
古楽というバッハ以前の音楽、特にルネサンス期宗教音楽の中で一つの頂点を築いたトーマス・ルイス・ヴィクトリア(1548-1611)の存在をはずすことは出来ない。
教会音楽という限られた領域内のみで活躍した音楽家だが、パレストリーナなどのイタリア・ルネサンス音楽に比べ、線の太さと熱い感情の高まりを感じさせるスペイン特有の宗教的な熱さが、このレクイエムの随所に聴き取れる。
演奏しているイギリスの声楽団体、タリス・スコラーズの名前の由来だが、16世紀イギリスの作曲家トマス・タリス(1505頃-1585)の音楽を学びきわめる人々の意だという。
トマス・タリスはもちろん、ジョスカン・デ・プレなどのフランドル楽派、パレストリーナ、アレグリ、そしてヴィクトリアなどのルネサンス期の作曲家の作品の演奏を得意としているが、その透明で伸びのある美しい歌声に耳を傾けると、一瞬にして聴くものをステンドグラスの輝く空間へと誘ってくれる。
この曲この一枚として、まずは挙げておきたい一枚。
・ペーター・フィリップス指揮、タリス・スコラーズ <Gimell>