クラシック 名盤探訪

クラシックの名盤紹介・おすすめ散策コース等、趣味の発信の場です。

この曲この一枚 その35 ヴィルヘルム・ケンプ Beethoven:ピアノ・ソナタ全集(全32曲)

2015年07月26日 | この曲この一枚
 

 

現代の人々にとって、ケンプ(1895~1991)はだんだんと忘れ去られた存在になってしまった。
今手元にある彼が残してくれたベートーヴェンのピアノソナタ全32曲の全集、どの曲からでもよいのだが、どれか一枚をプレーヤーにかけた瞬間から、とても魅惑的で新鮮ともいえる音楽の泉がこんこんと湧き出てきて、私の周りを温かく包んでくれる。
「音楽ってこんなものだよ!」というような囁きを真摯に与えてくれる演奏、ケンプを忘れてはいけない、あらめてそんな気持ちにさせてくれる演奏だと思う。
「アラウが晩年に残してくれたソナタの数々とともに、この全集も絶対に手元に置いてほしい」、そんな思いをこのブログを見た人に伝えたいと思っている。
ヴィルヘルム・ケンプ<P> Ludwig van Beethoven: Die Klaviersonaten <Grammophon>

河村尚子 ピアノ・リサイタル

2014年07月26日 | この曲この一枚


6月28日(土)楽しみにしていた河村尚子ピアノ・リサイタルに出かける。
曲目は、ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第9番で始まり、シューベルト、ショパンのリスト編曲によるもの、ショパン:バラード第1番、そして最後は、ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」という多彩なプログラム。
演奏は、期待を裏切らない素晴らしいものだった。
彼女は、音の響きの美しさを大切にしていて、ショパンなどは、その繊細な音の流れに聴き入るばかり。
「展覧会の絵」は、プロムナードの足取りからして胸の高まりを感じさせる。
彼女は身重のようだったが、ファンとしてこれからもずっと今のような活躍を続けて欲しいと願うばかり。

この曲この一枚 その34 メナヘム・プレスラー Beethoven, Schubert, chopin を弾く

2014年02月08日 | この曲この一枚
 

最近注目していたメナヘム・プレスラーが、素晴らしいCDを出してくれた。
何はともあれ、まずは本当に素晴らしい演奏を聴かせてくれてありがとうと言いたい。
まずはべートーヴェンのピアノ・ソナタ第31番変イ長調 作品110、最高の精神的な高みを感じさせる第一楽章の理想的な表現には言葉では表しきれないものがある。
最も好きなピアノソナタの一つだけに嬉しいの一言に尽きる。
次はシューベルトのピアノ・ソナタ第21番変ロ長調 D960、彼の最晩年の作品だけに曲そのものの素晴らしさは当然あるのだが、やはりここまでシューベルトの思いを深く伝えてくれるその演奏の素晴らしさを讃えたい。
そしてショパンの夜想曲第21番嬰ハ短調 遺作、これはアンコールで弾かれたのだろうと思うが、聴く者の心を癒してくれる暖かさが素晴らしいい。
それぞれの曲のベスト・スリーを上げておく。
べートーヴェン:ピアノ・ソナタ第31番変イ長調 作品110
・クラウディオ・アラウ <PHILIPS>
・ルドルフ・ゼルキン <Grammophon>
・メナヘム・プレスラー <BIS>
シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調 D960
・マリア・ジョアオ・ピリス <ERART>
・メナヘム・プレスラー <BIS>
・スヴャトスラフ・リヒテル <Victor>
・ワルター・クリーン <VOX>

この曲この一枚 その33 R.Strauss 楽劇「影なき女」 ~ ケンぺ指揮(Munchen1954)

2014年01月10日 | この曲この一枚
 

ルドルフ・ケンぺは、カラヤンと並んでR.Straussを最も得意とする指揮者だった。
いや、むしろカラヤンを超えてシュトラウスの管弦楽曲はもちろんオペラでも最高の演奏を聴かせてくれたと言って良い。
1976年に66歳で亡くなっているから、もう過去の人といてもよいのだが、オケの鳴らし方はもちろん、歌い手の能力を引っ張り出して歌そのものをじっくりと聴かせてくれる演奏は、いまだに私にとって忘れることのできない語り草になっている。
楽劇「影なき女」は私が最も愛するオペラの一つで、カラヤンの1964年ウィーン・シュターツオペラのライヴをよく聴いていたが、新宿ディスク・ユニオンで見つけたケンぺ指揮のもの(好きなレーベル・WALHALL)は、本当に目っけ物で今はカラヤンのものと、とっかえひっかえ聴いている。
歌い手ではリザネックの皇后役が一番素晴らしく、M.シェヒ、そして男性陣も水準以上の歌を聴かせてくれているのが嬉しい。
この曲この一枚として、ケンぺの「影なき女」は、取り上げずにはいられない。
以下にこの曲のベスト演奏を上げておきたい。
・カラヤン指揮、ウィーン・シュターツオペラ、W.ベリー、C.ルートヴィッヒ<1964Live Grammophon>
・ケンぺ指揮、バイエルン国立歌劇場、J.メッテルニヒ、M.シェヒ、H.ホップフ、L.リザネック<1954Live WALHALL>
・ベーム指揮、ウィーン・シュターツオペラ、W.ベリー、B.ニルソン<1977Live Grammophon>
・ベーム指揮、ウィーンフィルハーモニー、P,シェフラー、C.ゴルツ<1955DECCA>

この曲この一枚 その32 ショパン ピアノ・ソナタ(全曲) ~ ダン・タイソン

2013年02月12日 | この曲この一枚
 

早いもので、1980年10月にダン・タイソンが、第10回ショパン・コンクールで東洋人初の優勝を遂げてからもう32年になる。
彼は1958年ヴェトナムのハノイ生まれだが、研鑽を積んだのは留学先のモスクワ音楽院が主であった。
コンクールではマズルカ賞、ポロネーズ賞、コンチエルト賞も同時に獲得しているので、彼がアジアを超越した国際的なピアニストであることを十分に証明したことは間違いない。
残念なことに、当時、西欧の有名なピアニストばかりに注目していた私は、彼のことを全く無視していたのは痛恨の極みだったと言える。
そして今、このCDを耳にしたのだが、聴こえてくる音楽はまさにショパンそのもの、長年追っかけていたショパンの極みの音だった。
とにかく、これほど美しい歌に満ちた音の響きと叙情的な音の流れを聴かせてくれるピアニストだったとは思っても見ないことだった。
いまさらながらだが、しばらくは彼の演奏に注目し、そして追っかけて行きたいなという気持ちに駆られている。
まずは「この曲この一枚」のこの盤に、しばし耳を傾けて欲しいと思う。
ダン・タイソン<P> <Victor>
ほかにこれはと思う盤はないのだが、手元にある推奨盤をあげてみる。
・イーヴォ・ポゴレりチ<P>:ショパン・リサイタル「ピアノ・ソナタ第2番ほか」<Grammophon>
・サンソン・フランソワ<P>:ピアノソナタ第2番、第3番 <EMI>

この曲この一枚 その31 ショパン 24の前奏曲 作品28

2013年01月09日 | この曲この一枚
 

ショパンは最も好きな作曲家の一人だが、彼の傑作と言われる作品の中でもこの曲は特に素晴らしいものの一つ。
随分といろんなピアニストの演奏を聴いてきたが、ポリーニの最新録音盤は70歳という年齢が示す円熟の技なのか、重みというか深さの質の点で、ずば抜けて優れていると思う。
ポゴレりチやアラウと並ぶ名盤が出てきたのは、嬉しいの一言につきる。
この曲のベスト・ファイヴの中に割って入る一枚と言える。
マウリツィオ・ポリーニ<P> <Grammophon> 
これまでのベスト・ファイヴを一応あげておく。
・イーヴォ・ポゴレリチ <Grammophon>
・クラウディオ・アラウ <PHILIPS>
・サンソン・フランソワ <EMI>
・マルタ・アルゲリッチ <Grammophon>
・アリシア・デ・ラローチャ <DECCA>
とっておきの名盤 その101 ショパン 24の前奏曲 作品28 イーヴォ・ポゴレリチ<P>
とっておきの名盤 その73 ベートーヴェン ピアノソナタ第21番ハ長調「ワルトシュタイン」作品53
とっておきの名盤 その136 ショパン 12の練習曲 作品10 作品25

この曲この一枚 その30  ハイドン オラトリオ「天地創造」 

2012年09月27日 | この曲この一枚
 


すでに掲載したドイツ・レクイエムやブランデンブルグ協奏曲の記事でこの指揮者の素晴らしさは既に述べているので、ここではあえて紹介するのはやめにしておく。
ただ私にとって最も遠い存在の作曲家、ハイドンの作品を身近に聴かせてくれたのは喜ばしい。
「最も遠い存在」という意味は、ハイドンの有名な作品も含めて名演と言われる演奏を聴いてさえ、一度もそれらの曲に親しみを覚えたことがないということ。
たまに聴いても面白みがなくて、曲の途中でCDを止めてしまうのが常。
今回、コッホ指揮のこの「天地創造」の演奏を聴いているうち、曲の最後まで音楽が鳴り続けたということは特筆に値する。
ほかの指揮者の演奏では到底聴けるとは思えない深いその響きは、ハイドンの曲とは思えないほどのもので、このCDを「この曲この一枚」として挙げない訳にはいかい。
そしてハイドンが、私にとってもう少し近い存在になったかもしれないということを嬉しく思う。
・ヘルムート・コッホ指揮、ベルリン放送交響楽団、ベルリン放送合唱団、レギーナ・ヴェルナー<S>、ペーター・シュライヤー<T>、テオ・アダム<B> <DeutscheSchallPlatten>
この曲この一枚 その26 ブラームス ドイツ・レクイエム 作品45
とっておきの名盤 その149 J.S.バッハ ブランデンブルグ協奏曲 全6曲

この曲この一枚 その29 黒人霊歌集 ~ バーバラ・ヘンドリックス

2012年07月29日 | この曲この一枚
 
 
ヘンドリックスの紹介文を読むと、「アメリカ合衆国出身の声楽家。真珠にもたとえられる透明感あるリリック・ソプラノとして、オペラや演奏会で活躍する傍ら、人権活動などの社会奉仕でも著名である」とある。
そんな彼女の歌声がぴったりと聴く者の心を捉えて離さないのが、この「黒人霊歌集」のアルバム。
「時には母のない子供のように」、「誰も私の悩みを知らない」、「ジェリコの戦い」、そして「深い川」などどれをとっても素晴らしい。
清澄な、天から降るような歌声の持ち主と、よく彼女の声は言われるが、このアルバムもそのことを良く証明している。
とても蒸し暑い日が続くが、「この曲この一枚」と言ってよいこの一枚に耳を傾けるのも悪くはない。
・バーバラ・ヘンドリックス<S> 、ドミートリ・アレクセーエフ<P> <EMI>

この曲この一枚 その28 ワーグナー 歌劇「さまよえるオランダ人」

2012年04月20日 | この曲この一枚
 
コンヴィチュニーに対する指揮者としてのキーワードを拾うと、質実剛健のベート-ヴェン、骨太のロマン主義、正攻法の気迫、などという言葉が並んでいる。
彼は根っからのドイツ生まれでゲルマン魂の権化のような演奏をする人と思っていたら、実際は1901年チェコのモラヴィア地方フルネックという村の生まれだった。
ライプツィヒ音楽院を卒業後、当時フルトヴェングラーが常任指揮者をしていたゲヴァントハウス管弦楽団のヴィオラ奏者に任命され、ワルター、クレンペラー、ワインガルトナー、クライバーなどの名指揮者にも接する機会を持ったという。
その後指揮者として活躍する機会を得、1949年には世界最古の伝統を持つライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の常任指揮者に就任し、1962年に亡くなるまでその地位にあった。
この歌劇「さまよえるオランダ人」の盤は評論家の人達にはあまり評価されていないようだが、私にとってはそれこそ「正統派の至芸を網羅」というキーワードに値する演奏とも思えるもので、ベーム、カラヤン、ショルテイなどの盤をはるかに超える魅力があると言わざるを得ない。
男性陣(ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ、ゴットロープ・フリック)の底力のある歌唱、そして臨場感あふれる録音は特に素晴らしいし、この曲が好きな人、そしてコンヴィチュニーの魅力を知らない人はぜひ聴いて欲しい「この曲この一枚」だと思う。
・フランツ・コンヴィチュニー指揮、ベルリン国立歌劇場管弦楽団、合唱団、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ<Br>、マリアンネ・シェヒ<S> 、ルドルフ・ショック<T>、ゴットロープ・フリック<B>、ジークリンデ・ワーグナー<A>、フリッツ・ヴンダーリヒ<T> <ETERNA>

この曲この一枚 その27  モーツァルト 歌劇「フィガロの結婚」 K492 

2012年01月11日 | この曲この一枚
 
ベーム指揮の「フィガロの結婚」というと、まず第一に挙げられるのがドイツ・グラモフォン盤だが、私としては一層惹かれるのがこの1955年録音の旧盤。
曲全体に漂うほのかなウィーンの香りが最大の魅力なのだが、粒ぞろいのキャストにも惹かれるところが大。
スザンナを歌うシュトライヒの天来の美声と相まった確実な技巧と完璧な発声は、一世を風靡した名歌手マリア・イヴォーギン、エルナ・ベルガーを師としたところから来ているのか、その情緒あふれる表現には聴き惚れるばかり。
ベームに認められて、1955年にウィーン国立歌劇場に迎えられたというルートヴィッヒの若々しいケルビーノの歌声も魅力大。
フィガロを歌うワルター・ベリーはレポレロ、パパゲーノなども得意としていて、モーツアルトのスペシャリストとして広い人気を得ているし、襟を正したくなるような気品あふれる伯爵夫人のユリナッチも素晴らしい。
とにかくこの盤を聴き出すと、モノラル録音ということなど不満のかけらにもならないのが不思議で、褒め言葉ばかりが出て来てしまう。
モーツアルト・ファンならぜひ聴いて欲しい”この曲この一枚”として、この盤をあげないわけにはいかない。
・カール・ベーム指揮、ウィーン交響楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団、パウル・シェフラー<Br>、セーナ・ユリナッチ<S> 、ワルター・ベリー<Br>、リタ・シュトライヒ<S>、クリスタ・ルートヴィッヒ<S> <Guild>
とっておきの名盤 その50 モーツァルト 歌劇「フィガロの結婚」K492

この曲この一枚 その26 ブラームス ドイツ・レクイエム 作品45 

2011年11月28日 | この曲この一枚
  
この曲はもちろん宗教曲分野の傑作なのだが、それを意識して正面から向き合って聴くと結構疲れてしまう。
心に響く曲の感じ方というものがあるのに、聴き方によっては、その感じ方をみすみす見過ごしてしまうということがあるのではないか。
宗教曲、特にレクイエムとかキリストとか、そういう事にこだわらず、まずは「この曲が与えてくれる”慰め”というか”心の安らぎ”にとにかく体全体を預ける」、そんな聴き方をするのがこの曲には一番良いように思う。
そうすれば、つぶやくような言葉で始まる第一楽章の曲の流れに、不思議なほど抵抗感を感じずにすんなりと入って行ける。
ヘルムート・コッホ指揮するブランデンブルグ協奏曲のページを読んで頂ければ、彼の素晴らしさがとても良く分かるのだが、それ以上にこの曲は合唱王と呼ばれた彼の優れた面を示す良い演奏となっている。
ほかの演奏だと7楽章もある曲の長さに辟易してしまうのだが、それを感じさせないコッホの指揮ぶりには、ただただ頭が下がってしまう。
いつもながら、ドイツ・シャルブラッテンの録音がベルリン・キリスト教会に鳴り響いた奥深い響きを見事に再現しているのも嬉しい。
・ヘルムート・コッホ指揮、ベルリン放送交響楽団、ベルリン放送合唱団、アンナ・トモア=シントウ<S>、ギュンター・ライプ<Br> <DeutscheSchallPlatten>
とっておきの名盤 その149 J.S.バッハ ブランデンブルグ協奏曲 全6曲

この曲この一枚 その25 エリノア・スティーバーの魅力(2):イン・コンサート(1956~1958)

2011年10月06日 | この曲この一枚
 
1958年10月10日にカーネギーホールで行ったエレノア・スティーバーのリサイタル、大好きな彼女の歌唱が思ったよりも良い音で収録されているこのCDは、私にとってはとても貴重なもの。
ピアノ伴奏なのが残念だが、R.シュトラウスの楽劇「影のない女」第一幕と二幕からの二つの場面を歌う彼女が特に素晴らしい。
「作曲者が求める曲の表現はまさしくこれだったんだ」と素直にその良さを聴く者に感じさせるのは難しいが、それをすんなりとやってのけるのに感心する。
歌った後の観衆の拍手も録音されているが、これが素晴らしい称賛の拍手でもって彼女の演奏を称えているのが嬉しい。
ヴェルディ「エルナーニ」のアリアで感じることは、彼女がリサイタルという場でアリア一曲を歌うことが「ひとつのシーンを持ちこたえて舞台そのものを感じさせるということ」・・・これはそう誰にでも出来ることではないと思う。
アンコールでのプッチーニに寄せる観衆の拍手は感動そのものの表現だし、とにかく「この曲この一枚」としてぜひ耳にしてほしいアルバム。
・エリノア・スティーバー<S>、エドウィン・ビルチリッフエ<P> <VAIA>
この曲この一枚 その12 エリノア・スティーバーの魅力(いくつかのアルバムから)
とっておきの名盤 その67 プッチーニ 歌劇「蝶々夫人」
とっておきの名盤 その8 ワーグナー 歌劇「ローエングリン」

この曲この一枚 その24 フレデリック・ディーリアス 管絃楽曲集<「楽園への道」ほか>

2011年07月25日 | この曲この一枚
 

イギリスの音楽のイメージを口で説明するのは難しい。
それこそ、イギリスの代表的な作曲家の曲を何度も聴きこんでいるうちに、自然と耳というか心の中に入ってくるものだと思う。
それに一番相応しい作曲家となると、このディーリアス以外に頭の中に浮かんでこない。
このCDの説明書にあるディーリアスの紹介は、何とも素っ気ない。
「1862年1月29日英ヨークシャー州のブラットフォードに生まれ、1934年6月10日パリ近郊のグレ=シュル=ロワンで没したイギリスの異色作曲家」としか書いていない。
もう少し調べてみると、彼はイギリスに生まれはしたが、両親はドイツ人であり、24歳から2年間ライプチヒ音楽院で学んでいる。
26歳以降はフランスに定住し、他国に住むことはなかった。
晩年は病により失明し、長く苦しんだ末に亡くなる・・という、気の毒なものだった。
それなのに彼の音楽から流れてくる草原の香り、爽やかな風、そんな自然の雰囲気はどこから来るのだろう。
たぶん子供の頃にイギリスの自然にたっぷりと親しんだ経験、そんな思い出が体にしみこんでいたからに違いないと思う。
このCDに入っている曲は、田園詩曲、春はじめての郭公を聞いて、楽園への道、「イルメリン」前奏曲、「フェニモアとゲルダ」間奏曲の5曲だが、どれも素晴らしい。
バルビローリは、イタリア人を父に、フランス人を母に持って1899年にロンドンで生まれている。
彼も血はイギリス人ではないが、イギリス音楽は得意中の得意で、このディーリアスの演奏も何とも言えないほどの素晴らしい情緒を醸し出している。
彼は68年にディーリアスの曲をEMIに再録音しているが、私としては断然、この55年の演奏に惹かれる。
今年の夏の暑さを忘れさせてくれるこの演奏、「この曲この1枚」としてぜひ聴いて欲しいと思う。
・ジョン・バルビローリ指揮、ハレ管弦楽団(1955年録音) <PRT>
とっておきの名盤 その86 マーラー 交響曲第9番ニ長調


この曲この一枚 その23 マックス・ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調 作品26

2011年06月22日 | この曲この一枚
 

マックス・ブルッフ(1838-1920)は当時ドイツ各地で指揮者・作曲家として活躍し、最高の名声を誇っていた音楽家の一人とされている。
手持ちのブルッフの作品はこの曲とスコットランド幻想曲の2曲のみだが、どちらも聴く者の心を強く惹きつける魅力的な作品で飽きさせることが無い。
古今の5大ヴァイオリン協奏曲と言われているのは、ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームス、チャイコフスキー、そしてこのブルッフの作品で、なかでも憂いある雰囲気と甘美な旋律を聴かせてくれるという点ではメン・チャイと比較しても決して引けを取らない曲だろうと思う。
それに輪をかけて、この曲を演奏するハイフェッツの素晴らしさを何と言って表現したらよいのか、言葉がなかなか出てこない。
ヤッシャ・ハイフェッツは1901年2月に、リトアニアのバルト海沿岸の古都ヴィルナに生まれ、1987年12月にロスアンジェルスで86歳の生涯を閉じている。
サラサーテ、ヴィエニアフスキ、そしてヴュータンなど、世紀のヴァイオリニスに接したことのある指揮者トスカニーニが「彼こそは、私の知る最高のヴァイオリニストである」と最大級の賛辞を贈ったというエピソードが残されているのが嬉しい。
この曲この一枚として、ぜひ耳を傾けてほしいアルバムだが、さらに嬉しいのは同じブルッフ作曲の「スコットランド幻想曲(ヴァイオリンと管弦楽のための)」作品46が演奏されていること。
一度旅したいと思っているスコットランドの雰囲気が最高に感じられるその曲想には特に惹かれる気持ちが強い。
メンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」もとても好きな曲なので、「スコットランド幻想曲」のハイフェッツの演奏ともどもぜひ聴いて欲しいと思う。
とっておきの名盤 その7 メンデルスゾーン 交響曲第3番イ短調「スコットランド」
・ヤッシャ・ハイフェッツ<Vn>、サー・マルコム・サージェント指揮、ロンドン新交響楽団(1962年録音)<RCA>

この曲この一枚 その22 R.シュトラウス 歌曲集 ~ ヒルデ・ギューデン

2011年05月17日 | この曲この一枚
 
ヒルデ・ギューデンがこんなにもR.シュトラウスの歌曲を魅力的に歌うとは思ってもいなかった。
というか、彼女を記念する盤がまとめて発売されるということが無かったので、この歌を耳にする機会に出会うのが難しかったからなのかもしれない。
この盤は「フリードリッヒ・グルダの芸術」と題して、LONDONからグルダを記念して発売されたシリーズのうちの一枚だった。
この盤を手にした時、思わぬところでギューデンの歌を聴けるという嬉しい気持ちに駆られたことを思い出す。
グルダもギューデンもウィーン生まれでウィーンで活躍したから、きっと協演する機会にも恵まれ、そんな中からこんな素晴らしいレコードが実現したのだと思う。
1956年の録音でしかもモノラルだが、音は大変すばらしい。
グルダのピアノは一曲目からウィーンの響きを存分に聴かせるし、ギューデンの声はR.シュトラウスの意図というか作曲家の思いを十分に伝えてくれる。
1917年生まれの彼女は、活躍の場はウィーン国立歌劇場が主で、舞台上の容姿の美しさは最高だったという。
名誉ある「カンマーゼンガー(宮廷歌手)」の称号も受け、1988年に71歳の華やかな生涯を閉じている。
R.シュトラウスの歌曲の素晴らしさを心から伝えてくれる歌手は少ないし、グルダの伴奏というのも魅力、そういう意味でこのCDは本当に貴重な一枚であり、この曲この一枚として絶対にはずせない盤と言える。 
・R.シュトラウス「歌曲集」:ヒルデ・ギューデン<S>、フリードリッヒ・グルダ<Pf> <LONDON>
とっておきの名盤 その107 R.シュトラウス歌曲集<ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ>
とっておきの名盤 その34 R.シュトラウス歌曲集<リーザ・デラ・カーザ>