クラシック 名盤探訪

クラシックの名盤紹介・おすすめ散策コース等、趣味の発信の場です。

とっておきの名盤 その144 モーツアルト 「レクイエム」ニ短調 K626

2009年02月05日 | とっておきの名盤「声楽曲」
  
2月も節分の日が過ぎたばかりの身も引き締まる寒いこの頃、信心の少ない私がレクイエムを聴くには、一年でも特にふさわしい時期かもしれない。
過去に多くのレクイエムが作曲されてきたが、三大レクイエムと呼ばれるのは、モーツアルト、ヴェルディ、そしてフォーレによるもの。
更にケルビーニ、ベルリオーズのものも加えて五大レクイエムとも称している。
私としてはケルビーニではなく、スペインの生んだルネサンス音楽最大の作曲家の一人ヴィクトリアのレクイエムを挙げたい。
この曲にはタリス・スコラーズが歌った素晴らしい名盤があり、ぜひ一度は聴いて欲しいと思う。
このベーム指揮によるモーツアルトのレクイエムの盤だが、カール・リヒター指揮による厳しく引き締まった教会風の演奏ではなく、演奏会風というか多くの聴衆を意識したものとなっている。
じっと耳を傾けると、ゆっくりとしたテンポで、モーツアルトが死に対して描いた広大で深々とした響きを、ソリストや合唱団、そしてウィーン・フィルから引き出しているのが良く解る。
モーツアルトとR.シュトラウスの音楽をことのほか愛したベーム、この盤はとっておきの名盤として外すわけにはいかない一枚となっている。
ここに挙げるベストスリーの名盤は、どれも素晴らしく、順位がつけがたいので同列としたい。
・カール・リヒター指揮、ミュンヘンバッハ管弦楽団、ミュンヘンバッハ合唱団、マリア・シュターダー、フランツ・エーダー他 <TELDEC>
・リッカルド・ムーティ指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団、スウェーデン放送合唱団、ストックホルム室内合唱団、パトリシア・パーチエ、ジェイムス・モリス他 <EMI>
・カール・ベーム指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団、エデット・マティス、カール・リーダーブッシュ他 <Grammophon>
番外として音は良くないが、歴史的名盤(「ラクリモーザ」は涙なしに聴けない)を挙げる。
・ブルーノ・ワルター指揮、ニューヨクフィルハーモニック、ウエストミンスター合唱団、イルムガルト・ゼーフリート、ウイリアム・ウォーフィールド他 <CBS>

とっておきの名盤 その117 鮫島有美子 イギリス民謡集「庭の千草」

2008年02月12日 | とっておきの名盤「声楽曲」
前にこのブログの中でも書いたが、鮫島有美子の初アルバム「日本のうた」での、今までの”日本のうた”には無かった実に自然な声、情感溢れる歌い方には本当に目からうろこが落ちる思いがした事をはっきりと覚えている。
それから、彼女の出したアルバムを沢山聴いてきたが、この盤はデビュー盤と並んで特に愛着の強いもの。
沢山ある世界の民謡の中でも、イギリス民謡、特にアイルランド地方の歌が持つ憂いのある淋しげな叙情的なメロディーは、日本の懐かしい故郷そのものの雰囲気があり、私の心の奥底にあるいにしえの想いみたいな物をひどくかきたててくれる。
ロンドンデリーの歌(ダニー・ボーイ)、庭の千草などはその極地を行くメロディーに思える。
出来れば原語で歌って欲しかったけれど、それは贅沢な事としよう。
沢山のCDを出しているけれど、この盤は愛着ある曲が一杯詰っている事もあり、「日本のうた」と並んで”とっておきの名盤”用の棚の中に置かれている。
録音も素晴らしく、オーディオの音質チエックにも度々利用している。
・鮫島有美子<Sp>、田中良和指揮、合唱団OMP <DENON>

とっておきの名盤 その110 J.S.バッハ ミサ曲 ロ短調 BWV232

2007年12月26日 | とっておきの名盤「声楽曲」
12月の声を聞くとバッハの宗教曲が聴きたくなる、曲は問わないが例えば「ミサ曲ロ短調」、それもクレンペラー指揮のもので。
キリスト教の信者でも何でもないのに、年の暮れになると宗教曲を聴きたい神妙な気持ちになるのが何故か不思議。
このミサ曲、バッハの最大作品と評する人がいるほど奥の深いものがある。
決して気楽に聴き流せる音楽ではないが、積極的に聴き入ればいるほど深い答えが返ってくる。
クレンペラー指揮のこの盤、その気宇壮大で力強くしかも深い演奏は、バッハの音楽の深みを真として聴き手に示してくれる。
バッハの音楽に寄せる愛情の大きさというものを、悠揚迫らざるテンポでひたひたと聴き手に訴えかけるクレンペラーの指揮ぶり、この一枚をとっておきの名盤として挙げないわけにはいかない。
あえてこの曲のベスト・スリーを挙げておくと、
・オットー・クレンペラー指揮、ニューフィルハーモニア管弦楽団、BBC合唱団、アグネス・ギーベル<S>、ジャネット・ベイカー<A>、ニコライ・ゲッダ<T>、ヘルマン・プライ<Br> <EMI>
・カール・リヒター指揮、ミュンヘン・バッハ管弦楽団、同合唱団、マリア・シュターダー<S>、ヘルタ・テッパー<A>、エルンスト・ヘフリガー<T>、・ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ<Br> <Archiv>
・カール・ミュンヒンガー指揮、シュトットガルト室内管弦楽団、ウィーン・シングアカデミー合唱団、エリー・アメリング<S>、ヘレン・ワッツ<A>、ヴェルナー・クレン<T>、トム・クラウゼ<B> <DECCA>


とっておきの名盤 その107 R.シュトラウス 歌曲集

2007年11月23日 | とっておきの名盤「声楽曲」
私はR.シュトラウスは歌曲の作曲家として、もっと多くのファンにその作品を愛聴されていても良いのではないかと思っている。
曲のわかり易さ、入りやすさから云って、最も聴かれているシュトラウスの作品群は一連の交響詩だと思う。
楽劇たちはどうなのと言われるかもしれないが、それはさておき、彼の生涯を通して書かれた歌曲たち、小さな花々なのかもしれないが、その密やかともいえる語りに不思議に惹かれる自分を禁じえない。
歌曲の王シューベルトの類稀な旋律、ロマンチックな花を咲かせるシューマンの歌の調べ、それらの魅力を否定するつもりはさらさら無いが、何故かシュトラウスの歌には前者にも増して惹かれる一層の魅力を感じる。
理由をあげよといわれても、とにかく何度聴いても飽きが来ない不思議な魅力を覚えるとしか言いようが無い。
初期の作品群が好きなのだが、特に気に入っている歌を作品順に並べると、「献呈」、「夜」、「万霊節」、「帰郷」、「セレナード」、「いこえ、わが魂」、「明日には!」・・・とロマンチックなタイトルが続いていく。
歌い手は、男性はディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ、女性ならリーザ・デラ・カーザに尽きる。
ここで推すとっておきの名盤は、ディースカウが歌う六枚組みのもの、シュトラウスの歌曲群が殆ど網羅されているし、その内容は申し分の無い素晴らしさで、文句の付けようが無い。
この作曲家の歌曲集のベスト・スリーをあげておくと、
・リーザ・デラ・カーザ、サンドール<Pf> <eurodisc>
・ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ、ジェラルド・ムーア<Pf> <EMI>
・ヒルデ・ギューデン、フリードリッヒ・グルダ<Pf> <LONDON>
番外として、不世出の名歌手ハインリッヒ・シュルスヌスが歌う「献呈」を含む隠れた名盤を挙げたい。
・「歴史的名歌手によるR.シュトラウス歌曲名曲選」 <ACANTA>


とっておきの名盤 その99 モンテヴェルディ 聖母マリアの夕べの祈り(ミサと挽歌)

2007年08月29日 | とっておきの名盤「声楽曲」
モンテヴェルディは17世紀前半に活躍した初期バロックの作曲家で、私の最も敬愛する古楽の作曲家シュッツの次に傾聴する存在。
彼の手になる珠玉のマドリガーレ「アリアンナの嘆き」などは、いまだに理想の盤にめぐり合っていないのが残念で、是非同好の氏のアドバイスがあればと常々思っている程。
「聖母マリアの夕べの祈り」の素晴らしさを知ったのは、故菅野浩和氏の一文によるものだった。
少し長くなるがその文章を載させていただく。
「こんなに深い味を持った、滋味尽きない音楽を、私はそれまでに全く知らなかった。
ずいぶんいろいろな音楽を聴いてきたつもりだったが、これほど感動的な名曲があるのかと、私はその日からこの曲に夢中になった。
それ以来、しばらくの間は、寝てもさめてもこの曲のどこかの部分が耳に鳴り、この曲以外のどんな音楽も虚ろにしか響かない日々が来る日も来る日も続いた。
まさに中毒症状である。
この中毒症状から脱したのは、およそ一ヶ月くらい経ってからだろうか。
だからといってその後の私は、この曲に感動しないというのではなく、やはり相変わらずこの音楽は、私の最も大切な、いわば「魂の音楽」である。
全部の曲を通すと三時間もかかるこの大曲の、終末に置かれている二曲の「マニフィカート」の壮麗さ、深遠さはどうだろう。
「マニフィカート」は古典派時代にいたるまで、何人もの作曲家によっていくつもの名曲が書かれてきた。
しかしこの二曲のマニフィカートの前には、他の総ては色褪せてしまう。」
__菅野浩和著「神の歌 人の歌」より。
この一文を読んで、この曲を聴きたくないと思う人などいる筈も無い。
すぐにこの曲のCDを買い求めたのだが、なかなか自分の気持ちに合う盤にめぐり合う事が出来なかった。
そしてやっと手にすることが出来た理想の演奏が、ここで紹介するこのシュナイト盤だった。
その古雅で叙情的な演奏は、純粋な祈りと人間的な暖かさが満ち満ちていて、聴いている人の魂を何と心底から暖め慰めてくれることか。
とっておきの名盤として取り上げない訳にはいかない一枚。
・ハンス=マルティン・シュナイト指揮、レーゲンスブルク大聖堂少年聖歌隊、エスウッド・スミス<C-T>、パートリッジ<T>、ハンブルク古楽合奏団 <ARCHIV>

とっておきの名盤 その85 モーツアルト 「レクイエム」ニ短調 K626

2007年04月25日 | とっておきの名盤「声楽曲」
天才モーツアルトの最後の作品となったのが、死者のためのミサ曲であるこの曲なのも、とても意味深い。
ピアノの詩人ショパンの葬儀には、彼自身の意向でこの曲が用いられたというし、アメリカ大統領ケネディの追悼ミサの時にも使われている。
宗教にとらわれず、純粋の音楽としてみても深みのある見事な作品で、私の最も好きな曲のひとつでもある。
この盤は、峻厳なバッハの名演奏を数多く残したリヒター指揮によるものだけに、モーツアルトの死に対する深い思いを、その凛とした引き締まった見事な表現で、聴き手の心に真っ直ぐに伝えてくれている。
べームなどのコンサートスタイルの演奏とは一味違った、教会で清清しく歌われた貴重な演奏とでも云えようか。
是非とも耳に残して欲しいとっておきの名盤。
ここに挙げるベストスリーの名盤は、どれも素晴らしく、順位がつけがたいので同列としたい。
・カール・リヒター指揮、ミュンヘンバッハ管弦楽団、ミュンヘンバッハ合唱団、マリア・シュターダー、フランツ・エーダー他 <TELDEC>
・リッカルド・ムーティ指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団、スウェーデン放送合唱団、ストックホルム室内合唱団、パトリシア・パーチエ、ジェイムス・モリス他 <EMI>
・カール・ベーム指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団、エデット・マティス、カール・リーダーブッシュ他 <Grammophon>
番外として音は良くないが、歴史的名盤(「ラクリモーザ」は涙なしに聴けない)を挙げる。
・ブルーノ・ワルター指揮、ニューヨクフィルハーモニック、ウエストミンスター合唱団、イルムガルト・ゼーフリート、ウイリアム・ウォーフィールド他 <CBS>

とっておきの名盤 その77 ハインリヒ・シュッツ オラトリオ「十字架上の七つの言葉」

2007年02月24日 | とっておきの名盤「声楽曲」
古楽と呼ばれるバッハ以前の音楽で、私の敬愛する作曲家を好きな順に並べると、シュッツ、モンテヴェルディ、ヴィクトリア、パレストリーナ、ジョスカン・デ・プレと続いていく。
中でもシュッツの曲は、私にとっては何者にも代えがたい癒しの音楽の原点であり、とりわけ貴重な存在といえる。
作曲のスタイルが本当に自然体であり、特別のことは何もしていないのに、純粋な音楽そのものが聴き手の心の中をすーっと吹き抜ける。
教会音楽なんだけれども、私にはそれほどの宗教色は感じられないのも不思議に思える。
このブログで取り上げているとっておきの名盤は、特別の棚に一括して集めているが、一番左上の最初にまず置かれているのがシュッツのこの盤。
シュッツの名演奏家であるマウエルスベルガー指揮のもと、ドレスデン聖十字架合唱団とソリスト達が純粋かつ敬虔な歌声で、キリストの受難の物語を淡々と歌っていく。
気ぜわしい生活から離れてこの一枚にじっと耳を傾けると、真の芸術の原点は何なのかと言うことを痛いほど感じさせてくれる。
喧騒な世の中だからこそ、是非聴いて欲しいとっておきの一枚と言える。
・ルドルフ・マウエルスベルガー指揮、ドレスデン聖十字架合唱団、ペーター・シュライヤー<T>、テオ・アダム<B> <BERLIN Classics>
全集ものとして素晴らしいのは、
ハインリッヒ・シュッツ宗教合唱曲集 ドレスデン・クロイツ協会合唱団 <BERLIN Classics>
廉価盤で入手できるのが何とも嬉しい限り

とっておきの名盤 その74 マーラー 歌曲集「なき児をしのぶ歌」

2007年02月02日 | とっておきの名盤「声楽曲」
不世出の名歌手フェリアーと名指揮者ワルターは第2次大戦直後の46年に初めて会い、レコード史上に燦然と輝くふたつの名演奏を残した。
既にこのブログでも紹介した交響曲「大地の歌」、そしてこの盤がそれ。
フエリアーは41歳という若さで亡くなった為、活躍した時期は10年程の短い間だった。
しかし、その間に残した録音はどれも彼女の偉大な才能に満ち溢れたもので、これからも真に音楽を愛する人々に聴き継がれていくはず。
私も愛する音楽を聴き続ける限り、出来るだけ彼女の歌声に接して行きたいと思っている。
この盤、ウィーンのかぐわしい響きを引き出すワルターと高貴な歌声であっという間に聴き手を魅了するフエリアーの声は、マーラーにとってまさに理想的な演奏だったに違いない。
マーラーは、この曲の初演(1905年)の後、恋人アルマと結婚し間もなく生まれた二人の娘を相次いで亡くした。
運命の無慈悲さというものをひとしきり感じる。
ぜひ聴いて欲しいとっておきの名盤だし、この曲に関してはこの演奏以外に薦めたい盤は思いもつかない。
・キャスリーン・フェリアー、ブルーノ・ワルター指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 <EMI>

とっておきの名盤 その69 J.S.バッハ マタイ受難曲 BWV244

2006年12月31日 | とっておきの名盤「声楽曲」
 
年を締めくくるにあたり、このブログに載せるとっておきの名盤は、音楽の父バッハの「マタイ受難曲」でありたい。
指揮するのは、この曲が作曲されたバッハゆかりの地ライプツィッヒで学びバッハを得意とするマウエルスベルガー、そして当地の管弦楽団と東ドイツのソリスト達がまさに手中の曲としてこの傑作をいとおしむように演奏してくれているのが嬉しい。
ドレスデン聖十字架合唱団を中心とする合唱団がとりわけ素晴らしく、この地に延々と続いている協会の伝統というものを手に取るように聴く者に伝えてくれる。
第1曲目「来たれ娘たち」の壮麗な響き、コラール「おお頭は血にまみれし」での魂を込めた痛切な叫びなど、バッハが訴えたかった心情を何と見事に表現していることか。
シュライヤーのエヴァンゲリストの傑出した歌いぶりは、あらゆるマタイの盤の中で特出ものであることも記しておきたい。
信者でもなんでもないが、静かな大晦日、じっくりこの受難曲に浸り一年間の罪滅ぼしをするのも悪くは無い。
この名曲の双璧と言っていいとっておきの名盤は次の2点、
・R.マウエルスベルガー指揮、ライプツィッヒゲバントハウス管弦楽団、ドレスデン聖十字架合唱団、ぺーター・シュライヤー<T>、テオ・アダム<Br>、アデーレ・ストルテ<S>、アンネリーゼ・ブルマイスター<A> <BerlinClassic>
・K.ミュンヒンガー指揮、シュトットガルト室内管弦楽団・合唱団、ピーター・ピアーズ<T>、ヘルマン・プライ<Br>、エリー・アメリング<S>、マルガ・へフゲン<A> <DECCA>

とっておきの名盤 その68 ウテ・レンパー Sings クルト・ワイル

2006年12月27日 | とっておきの名盤「声楽曲」
この盤のライナーノートに、「このウテ・レンパーの歌うクルト・ワイルのソングを聴いて、きっと彼の音楽を好きになる人がたくさんいるに違いない」という一文があったが、かくいう私もその一人で一時期この盤を夢中になって聴いたことをよく思い出す。
ヒトラーの足音が響く時代、その暗い政治背景を逃れアメリカに移住したワイル、暗いイメージで歌われてきたのがそれまでのワイルの歌だった。
だがウテ・レンパーの歌は違っていた。
聴く歌の一つ一つが新鮮、取立ての果物を噛み締めるかのような味わいがする。
彼女のはりのあるつややかな声と詞に対する鋭さは尋常なものではない。
この盤の最後にある魅力的な曲「スピーク・ロウ」を聴くとそのことが良くわかる。
聴くほどに味わいが深まる不思議な曲、いや彼女のしたたかとも言っていい歌いぶりに驚かされる。
これまでのワイルの暗いイメージを一新させてくれたとっておきの一枚。
・ウテ・レンパー、ジョン・モーゼリ指揮、RIASベルリン室内アンサンブル <LONDON>

とっておきの名盤 その60 ヘンデル オラトリオ「メサイア」

2006年12月01日 | とっておきの名盤「声楽曲」
あちらこちらでイルミネーションの飾り付けが目立つようになってきたこの頃。
信者ではないが、クリスマスのシーズンになると何故か「メサイア」が聴きたくなる。
手にするのは、リヒター指揮のこの盤。
リヒターはドイツ語による盤を録音していたが、これは英国の独唱者、合唱団、そして管弦楽団によるニ度目のもの。
英国風というか、おおらかで晴れやかな演奏が一番の魅力といっていい。
この曲は、合唱がしっかり聴かせなくては聴き栄えが極端に落ちてしまう。
その点、要の合唱での引き締まったリヒターの指揮ぶりは、信者でもない私の気持ちを清め高めてくれる。
「メサイア」の盤としては、まず第一に薦めたい演奏。
対抗盤として、感銘度は落ちるがクレンペラー指揮のものを挙げる。
・カール・リヒター指揮、ロンドンフィルハーモニック管弦楽団、ヘレン・ドナート<S>、アンナ・レイノルズ<A>、スチュアート・バロウズ<T>、ドナルド・マッキンタイヤー<B> <Grammophon>
・オットー・クレンペラー指揮、フィルハーモニア管弦楽団、エリザベート・シュワルツコップ<S>、グレース・ホフマン<A>、ニコライ・ゲッダ<T>、ジェローム・ハインズ<B> <EMI>

とっておきの名盤 その54 「日本のうた」

2006年11月11日 | とっておきの名盤「声楽曲」
この盤は1984年録音、彼女のデビュー・アルバム。
私が彼女の存在を知ったのは、1979年に歌劇「ローエングリン」を聴きに行ったときのこと、そのエルザの魅力的な歌唱に深く聴き入った思い出がある。
その後、これが発売されたときの評論家や、音楽愛好者の絶賛は大変なものであった。
私もその時、早速この盤を購入して聴いたわけだが、今までの”日本のうた”には無かった実に自然な声、情感溢れる歌い方には本当に目からうろこが落ちる思いがした。
昔懐かしき故郷を音で訪ねる一枚として、日本人なら是非聴いて欲しいものである。
お持ちで無い方は座右に置くべき一枚として、中古CDショップを巡ってでもジャケットのデザインが秀逸なこのオリジナル・アルバムを求めて欲しい。
録音も彼女の声、そしてピアノの音を実に自然な響きで捉えていて、出色な出来である。
・鮫島有美子<Sp>、ヘルムート・ドイチェ<P> <DENON>

とっておきの名盤 その51 ヴェルデイ 「レクイエム」

2006年10月29日 | とっておきの名盤「声楽曲」
1960年、最晩年のライナーがRCA専属の歌手陣を伴い、DECCA専属のウィーン・フィルとの夢の競演を行った一枚。
この演奏は、異様なまでにテンポが遅い。
普通7分30秒~9分30秒程で演奏される第一楽章を何と12分18秒で演奏している。
しかしその遅めのテンポの中で、ライナーは持ち前の厳しさと緊張感を崩すことなく、ヴェルデイの慈しみの旋律をじっくりと歌わせる。
それに応えるかの様に、魂を込めて歌う歌手陣や合唱団のカンタービレに溢れた豊かな表現が素晴らしい。
一時、TVのコマーシャルに使われて有名になった「怒りの日」の激しさも、尋常ではない。
この年の9月に亡くなったビヨルリンクの力強い歌唱、プライスの天にも突き抜けるかの様な透き通った歌声、それをバックアップするウィーンフィルの音色が何とも云えない。
発売当時のジャケットでないのが残念だが、この曲の演奏では抜き出た一枚である。
この曲のベストスリーは、
・フリッツ・ライナー指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、レオンタイン・プライス<S>、ロザリンド・エリアス<A>、ユッシ・ビョルリンク<T>、ジョルジョ・トッツィ<B>、ウィーン楽友協会合唱団 <DECCA>
・ゲオルク・ショルテイ指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、ジョン・サザーランド<S>、マリリン・ホーン<Ms>、ルチアーノ・パヴァロッティ<T>、マルッティ・タルベラ<B>、ウィーン国立オペラ合唱団 <LONDON>
・カルロ・マリア・ジュリーニ指揮、フィルハーモニア管弦楽団、エリザベート・シュワルツコップ<S>、クリスタ・ルートヴィッヒ<Ms>、ニコライ・ゲッタ<T>、ニコライ・ギャウロフ<B> <EMI>

とっておきの名盤 その46 シューベルト 歌曲集「冬の旅」

2006年10月12日 | とっておきの名盤「声楽曲」
「冬の旅」は好きな歌曲集で、コンサートもハンス・ホッターとヘルマン・プライが来日した時、聴いている。
何故かフィッシャー=ディースカウのコンサートには、残念な事に行く機会に恵まれなかった。
フィッシャー=ディースカウはこの歌曲集が好きだったのだろう、何と7回も録音している。
この盤は4回目の録音、声が最盛期であった40代後半の頃のものだ。
とにかく上手い、これ程上手く歌える歌手はもう二度と現れると思えない程だ。
上手いという事と好き嫌いは別の問題なので、これが絶対に良いという訳ではないが、「冬の旅」が聴きたくなるとつい手が伸びてしまうのがこの盤。
録音が非常に良くて、装置のモニター用としてもこの盤を利用している。
この曲のベストスリーは、
・ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ、ジェラルド・ムーア<Pf> 1972年録音 <Grammophon>
・ハンス・ホッター、エリック・ヴェルバ<Pf> <Grammophon>
・ゲルハルト・ヒュッシュ、ハンス・ウド・ミュラー<Pf> <EMI>

とっておきの名盤 その39 R.シュトラウス 「4つの最後の歌」

2006年09月29日 | とっておきの名盤「声楽曲」
とにかく第3曲「眠りにつくとき」の感動的な演奏をどう表現したらよいのだろう。
ゲバントハウスの伝統の重みに満ちた音(特に深みのあるヴァイオリンの独奏の後)をバックに悠揚迫らぬテンポで深々と歌うジエシー・ノーマンの声!
天にも届くばかりの高音の伸びと息の長い情感のこもったその歌声に、私はただただ聴き入るばかりである。
聴いた後の充実した思いは、何ものにも替え難がたい。
これだけでもこの盤は、他のディスクを大きく凌いでしまっている。
この1曲を聴くだけのためにこの盤を購入したとしても、十分に価値のある事と私は思っている。
至福の感動を聴くたびに与えてくれる座右の一枚として、是非お勧めしたい盤である。
あえてこの曲のベストスリーを挙げると、
・ジエシー・ノーマン、クルト・マズア指揮、ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 <PHILIPS>
・エリザベート・シュワルツコップ、ジョージ・セル指揮、ベルリン放送交響楽団 <EMI>
・セーナ・ユリナッチ、マルコム・サージェント指揮、BBC交響楽団 <BBC>