2月も節分の日が過ぎたばかりの身も引き締まる寒いこの頃、信心の少ない私がレクイエムを聴くには、一年でも特にふさわしい時期かもしれない。
過去に多くのレクイエムが作曲されてきたが、三大レクイエムと呼ばれるのは、モーツアルト、ヴェルディ、そしてフォーレによるもの。
更にケルビーニ、ベルリオーズのものも加えて五大レクイエムとも称している。
私としてはケルビーニではなく、スペインの生んだルネサンス音楽最大の作曲家の一人ヴィクトリアのレクイエムを挙げたい。
この曲にはタリス・スコラーズが歌った素晴らしい名盤があり、ぜひ一度は聴いて欲しいと思う。
このベーム指揮によるモーツアルトのレクイエムの盤だが、カール・リヒター指揮による厳しく引き締まった教会風の演奏ではなく、演奏会風というか多くの聴衆を意識したものとなっている。
じっと耳を傾けると、ゆっくりとしたテンポで、モーツアルトが死に対して描いた広大で深々とした響きを、ソリストや合唱団、そしてウィーン・フィルから引き出しているのが良く解る。
モーツアルトとR.シュトラウスの音楽をことのほか愛したベーム、この盤はとっておきの名盤として外すわけにはいかない一枚となっている。
ここに挙げるベストスリーの名盤は、どれも素晴らしく、順位がつけがたいので同列としたい。
・カール・リヒター指揮、ミュンヘンバッハ管弦楽団、ミュンヘンバッハ合唱団、マリア・シュターダー、フランツ・エーダー他 <TELDEC>
・リッカルド・ムーティ指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団、スウェーデン放送合唱団、ストックホルム室内合唱団、パトリシア・パーチエ、ジェイムス・モリス他 <EMI>
・カール・ベーム指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団、エデット・マティス、カール・リーダーブッシュ他 <Grammophon>
番外として音は良くないが、歴史的名盤(「ラクリモーザ」は涙なしに聴けない)を挙げる。
・ブルーノ・ワルター指揮、ニューヨクフィルハーモニック、ウエストミンスター合唱団、イルムガルト・ゼーフリート、ウイリアム・ウォーフィールド他 <CBS>