クラシック 名盤探訪

クラシックの名盤紹介・おすすめ散策コース等、趣味の発信の場です。

とっておきの名盤 その150 ブルックナー 交響曲第8番ハ短調  

2010年05月05日 | とっておきの名盤「交響曲」
  
長年にわたって聴き続けてきた特別な盤、そんなとっておきの名盤の紹介も”その149”で終わりを告げていたが、どうしてもその仲間に加えたい新たな一枚が出てきたのは嬉しい。
大好きなブルックナーの8番、それも初稿(1887年の第一稿)を現役バリバリの女流指揮者シモーネ・ヤングが指揮したもの。
初稿はブルックナーの生前には演奏された記録がないので、それをCDで容易に聴けるのだから、今は作曲者には申し訳ないとしか言いようがない。
指揮をしているシモーネ・ヤングは、1961年のオーストラリア・シドニー生まれというからまだ49歳の若さだ。
しかしその演奏は、このブログでも紹介してきた名盤と比べても何の遜色もない素晴らしいもの。
好きな第3楽章での繊細に表情付けられた美しい主題の調べ、そして女流指揮者の演奏とは思えないクライマックスでの重厚な響きなど、全編にわたって偽りのない音楽そのものを聴かせてくれる。
初稿という魅力に加え、175年以上にわたってハンザ都市の響きをになっているハンブルグのオーケストラの力量も大いにこの盤の魅力を引き立たせている。
とにかく聴いてみると、当方があえてとっておきの名盤に加える訳が理解できると思う。
ぜひ聴いてみて欲しい一枚。
・シモーネ・ヤング指揮、ハンブルグ・フィルハーモニー管弦楽団 <OEHMS>
・ルドルフ・ケンペ指揮、チューリッヒ・トーンハーレ管弦楽団 <SOMM> 
・オトマール・スウィトナー指揮、シュターツカペレ・ベルリン <Berlin Classics>
・ハンス・クナッパーツブッシュ指揮、ミュンヘン・フイルハーモニー管弦楽団 <Westminster>
・カール・シューリヒト指揮、ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団 <EMI>
・カルロ・マリア・ジュリーニ指揮、ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>
知られざる銘盤として、
・ホーレンシュタイン指揮、ウイーン・プロムジカ管弦楽団、1950年代の演奏<VOX>

とっておきの名盤 その147 ブルックナー 交響曲第8番 ハ短調

2009年04月06日 | とっておきの名盤「交響曲」
  
この曲のとっておきの名盤をこのブログで取り上げるのは、もう6回目になる。
私にとっても、数あるクラシックの曲の中で一番好きな曲を挙げよと言われたら、最初にあげるのはこの曲。
とっておきの名盤の棚のなかで一番枚数が多いのもこの曲だし、全部のCDの棚の中でも最も数を占めているのもこの曲。
第3楽章が最高に素晴らしく、よく”アダージョ”で称される真の癒しの音楽に、何度心を慰められたことか数え切れない。
ところでこのクナの8番、スケールの巨大さ、落ち着きと風格、彫りの深い表情、そして渋い味わいなど、どれをとっても最高の演奏を繰り広げてくれている。
特に第四楽章のコーダなどは、ブルックナーを聴く最高の醍醐味を聴くものに心底から与えてくれる。
演奏芸術の奇跡として、フルトヴェングラーの第9と並んで挙げられるものかもしれない。
演奏の素晴らしさとはうらはらに、クナが聴衆に対してよそよそしい態度をとったことは有名で、オペラなどではカーテンコールに答えることなどめったに無かったらしい。
あるコンサートでは、ブルックナーの巨大な最終音が鳴り響いた後、感動で静まり返った聴衆に向かって「終わりましたよ」と囁いて、次の瞬間そそくさと舞台を去っていったという。
面白い逸話を沢山残したクナの職人気質に私など愛着を覚えるし、こういう演奏家にもう一度めぐり合いたいと思う人が結構いるのではないだろうか。
この曲のとっておきの名盤をあげると以下の様になるが、ブルックナー、そして8番を愛する人は全部持つべき。
.ルドルフ・ケンペ指揮、チューリッヒ・トーンハーレ管弦楽団 <SOMM> 
.オトマール・スウィトナー指揮、シュターツカペレ・ベルリン <Berlin Classics>
.ハンス・クナッパーツブッシュ指揮、ミュンヘン・フイルハーモニー管弦楽団 <Westminster>
.カール・シューリヒト指揮、ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団 <EMI>
.カルロ・マリア・ジュリーニ指揮、ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>
知られざる銘盤として、
・ホーレンシュタイン指揮、ウイーン・プロムジカ管弦楽団、1950年代の演奏<VOX>

とっておきの名盤 その140 ベートーヴェン 交響曲第9番ニ短調「合唱」

2008年12月10日 | とっておきの名盤「交響曲」
  
12月に入って、今年も一度はじっくりと第9に浸りたい時期になってきた。
第9といえばフルトヴェングラーのこの盤、余りにも有名で「今更何で取り上げるの。」と言われるかもしれない。
これまでこのブログに取り上げてきた数々のアルバム、それらは私自身聴いていて心の底から感銘を受けそして愛聴しているもので、単に評論家が特別に推薦しているとか、良く売れているとかというような盤ではない。
その意味でこの第9も、私自身の”とっておきの名盤”として絶対に外すことの出来ないものだし、多くの人にぜひ聴いて欲しい一枚。
フルトヴェングラーの第9のライヴ録音、これまでに12種類も市販されてきたが来年2月には更にもう一種類発売されるという。
ファンの後押しが無ければ、これほどの数の発売は無かったと思うし、フルトヴェングラー自身がどれほどベートーヴェンを崇敬していたかの証だと思う。
私自身は、1951年7月29日にバイロイト音楽祭で演奏されたこの盤で充分満足しきっているので、他のライヴ録音はほとんど聴いていない。
余り無責任なことは言えないが、いわゆるフルトヴェングラー党の一員でもないし、ただただ素晴らしい演奏をという意味で、年末の静かな夜にこの一枚を聴きたいと思っている。
この曲のベスト・ファイブの盤をあげると、
・シュミット・イッセルシュテット指揮、ウイーンフィルハーモニー管弦楽団 <DECCA>
・フルトヴェングラー指揮、バイロイト祝祭管弦楽団 <EMI>
・チエリビダッケ指揮、ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団 <EMI>
・ブルーノ・ワルター指揮、コロンビア交響楽団 <CBS>
・クレンペラー指揮、フィルハーモニア管弦楽団 <EMI>

とっておきの名盤 その139 ブルックナー 交響曲第9番ニ短調

2008年10月28日 | とっておきの名盤「交響曲」
  
復元した最終楽章が付いているという珍しさから、この盤を取り上げているわけではない。
その理由は、ただただアイヒホルン指揮するブルックナーの音楽の奥深い悠揚迫らざる表現の素晴らしさに尽きる。
テンポは少しゆっくりしているが、その音楽は非常に自然で、ブルックナーが晩年に思いを寄せた一つ一つの旋律が聴くものに温かく伝わってくる。
第一楽章の息の長いコーダの盛り上がりなど、ため息が思わず出るほど素晴らしいものがあるし、第3楽章などはすこぶる瞑想的な音楽が続くが、聴いていて少しも飽きが来ない。
アイヒホルンの、ブルックナーの音楽に寄せる強い愛情のなせる業かもしれない。
この演奏を聴いていると、アイヒホルンが、リンツ・ブルックナー管弦楽団の桂冠指揮者に任ぜられたのも当然と思える。
ブルックナー・ファンなら是非聴いて欲しいとっておきの一枚。
この曲のべスト・ファイヴをあげると、
・ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 1966年録音 <Grammophon>
・クルト・アイヒホルン指揮、リンツ・ブルックナー管弦楽団 <Camerata>
・カール・シューリヒト指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 <EMI>
・ヨーゼフ・カイルベルト指揮、ハンブルグ国立管弦楽団 <TELDEC>
・ラファエル・クーベリック指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 <不明>
カラヤンとアイヒホルン盤の2枚は同列としたい。
番外として、知る人ぞ知る名ブルックナー指揮者であるホーレンシュタイン盤をあげておく。
・ヤッシャ・ホーレンシュタイン指揮、ウィーン交響楽団 <VOX>

とっておきの名盤 その137 ベートーヴェン 交響曲第5番ハ短調「運命」 作品67

2008年10月04日 | とっておきの名盤「交響曲」
  
ベートヴェンの「運命」、超がつくほどの有名曲だけにCDの数も多い。
この盤、オーソドックスな名演奏を聴きたいという人にはお薦めの一枚。
クレンペラーの3度目になる1959年録音のものだが、ちまたに数ある「運命」の盤の中でも、遅めのテンポで堂々とフィナーレの高まりに向かってひた走る正統的なその演奏は群を抜いている。
クレンペラーはどちらかと言うと理性的な音の展開をする指揮者なので、古典派の範疇に入るモーツアルトやベートーヴェンの演奏には適している。
ファンが多いフルトヴェングラーのベートーヴェン、私などは最終楽章のフィナーレで猛烈なアッチェレランドをかけるやり方などには余りついていけない。
好みの問題なので、あまり押し付けがましいことは言えないのだけれども。
このブログで紹介してきたとっておきの名盤、残り少ない数になってしまったが、是非聴いてほしい一枚ではある。
この曲のベストファイヴの演奏を挙げる。
上位3枚は同列としたい。
・カルロス・クライバー指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>
・オットー・クレンペラー指揮、フィルハーモニア管弦楽団 <EMI>
・宇野功芳指揮、アンサンブルSakura <FONTEC>
・ハンス・クナッパーツブッシュ指揮、ヘッセン放送交響楽団、1962年 <TAHRA>
・ウイルヘルム・フルトヴェングラー指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団、1947年 <Grammophon>

とっておきの名盤 その135 ブルックナー 交響曲第7番 ホ長調

2008年09月12日 | とっておきの名盤「交響曲」
  
曲の素晴らしさを、持っているCDの枚数で推し量るのも変な話だが、家にあるCDの枚数を数えてみたら一番多いのはブルックナーの8番で50枚ほどある。
次に同じ作曲家の9番と7番、それにプッチーニの「ボエーム」が30枚を超える数で順位を争っている。
これらの曲、何度聴いても飽きないばかりか、聴くほどにその良さがいろいろな形で私の心に伝わってくる。
数ある7番の演奏の中でも一番惹かれるのはベームの盤と並んで、このマタチッチのもの。
彼の懐の深い指揮ぶりはもちろんだが、チェコフィルのいぶし銀のような弦楽器の音色を見事に捉えた録音の素晴らしさは、一層この盤の魅力を私の胸に伝えてくれる。
マタチッチは1899年にクロアチアのスシャークという街に生まれたが、当時はオーストリア帝国領で、彼は最初ウィーン少年合唱団の一員として音楽教育を受けたという。
昔TVで見たマタチッチのごつい表情からは、ちょっと想像も付かない話だが。
この曲のベストファイヴをあげると、
・カール・ベーム指揮、ウィーンフィルハモニ-管弦楽団 <Grammophon>
・ロヴロ・フォン・マタチッチ指揮、チエコフィルハーモニー管弦楽団 <Supraphon>
・ジュゼッペ・シノーポリ指揮、ドレスデン国立管弦楽団 <Grammophon>
・クルト・マズア指揮、ライプチヒゲバントハウス管弦楽団 <RCA>
・クルト・ザンテルリンク指揮、シュトットガルト放送交響楽団 <Hanssler>

とっておきの名盤 その129 ブラームス 交響曲第4番 ホ短調 作品98

2008年06月26日 | とっておきの名盤「交響曲」
このブログで紹介している「とっておきの名盤」も、残りが10数枚になってしまった。
特別の棚に置いている愛聴盤、一つ一つの盤について作曲家のこと、演奏家のこと、そして特別な思い出など、それこそ気のおもむくままに書いてきたが、あと少しで終わると思うと、時々ふと淋しい気持ちになる。 
とっておきの名盤がある程度限られるのは当然で、これが延々と続くのではとっておきでなくなってしまうし、一区切りの後をどういう風に続けていこうかと、今いろいろと頭を悩ましている。
それはさておき、ファンからカリスマ的指揮者と崇め奉られていたカルロス・クライバーが亡くなって、はや4年になる。
私がこのブログの中で取り上げてきた名盤とその演奏者のほとんども、時間的にどんどん過去のものとなっていく。
しかし聴き返すたびに、私の心に甦る時々の新鮮な感銘は決して変わることは無い。
この演奏もそのひとつで、ブラームス独特の憂いそして漂う旋律を、ウィーンフィルにこれほど細部までしなやかに歌わせた例はそうあるものではないと思う。
評論家ではないので、これ以上うまく表現できないが、とにかくクライバーの残した特別の名盤といってよい。
この曲のベストファイヴを挙げておくと、
・ブルーノ・ワルター指揮、コロンビア交響楽団(マックルーア・リミックス盤)<CBSSONY>
・カルロス・クライバー指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>
・カール・シューリヒト指揮、バイエルン放送交響楽団 <DENON>
・レナード・バーンステイン指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>
・ヘルマン・アーベントロート指揮、ライプツィヒ放送交響楽団 <Deutsche Schallplatten>

とっておきの名盤 その128 マーラー 交響曲第1番ニ長調「巨人」

2008年06月16日 | とっておきの名盤「交響曲」
1983年というからもう25年も前になるが、ワルター指揮の一連の名演がデジタル化された際のCDは、LP発売時の録音プロデューサーであったジョンマックルーアが自らの手で22年ぶりにリミックスしたものだった。
これらのリミックス盤は、どれも素晴らしい音でよみがえり、私などもその音を耳にしただけで、ただただその音の良さに魅入られ聴き続けたものだった。
この盤も、前にこのブログで取り上げた「英雄」と並ぶ名録音で、そのときの文章を借りると、この「巨人」のCDも、マックルーアのリミックス盤でなければならないのである。
そして長年愛読している雑誌「レコード芸術」のリーダース・チョイス(読者が選ぶ名盤)というコーナーの第一回目に選ばれたのがこの曲で、ダントツの一位がこの演奏だった。
さすがに作曲者マーラーの愛弟子であったワルターの演奏だけあって、初めから終わりまで文句のつけようが無い完璧な演奏といってよいのかもしれない。
ワルターと手紙などで親交のあった宇野功芳氏の彼についての「甘美で魅惑的な表現に、堂々とした造型と迫力を結びつけ、完成された表現を獲得した」と言う文章、この盤に対する最高の賛辞としても使わせて欲しい様な表現だ。
この盤、とっておきの名盤として特別の棚にしっかりと置かれている。
あえてこの曲のベスト・スリーをあげると、
・ブルーノ・ワルター指揮、コロンビア交響楽団 <CBS>
・レナード・バーンスタイン指揮、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 <Grammophon>
・なし

とっておきの名盤 その126 マーラー 交響曲「大地の歌」

2008年06月05日 | とっておきの名盤「交響曲」
若干22歳の時、マーラーの推薦でプラハのドイツ歌劇場の指揮者に就任したクレンペラー、マーラーの作品の演奏を得意とされている所以だが、彼の一連の交響曲の録音を耳にすると、私には出来不出来がかなり激しいように思える。
名盤紹介の雑誌などで素晴らしいとされている七番や九番の演奏を聴いた時など、その気の抜けたビールを味わっているような指揮ぶりに失望し、すぐにその盤を中古レコード屋に売り飛ばしたことを良く覚えている。
一方第2番と4番、そしてこの「大地の歌」などは、何故かすこぶる魅力ある演奏となっている。
歌が入っている交響曲を指揮するクレンペラーに、歌い手を触発する何かがあるのかもしれない。
ワルター盤のフエリアーの神がかり的な熱唱と比べても、ヴンダーリッヒの張り詰めた「酒の歌」の歌いぶり、そしてルートヴィッヒの叙情に満ち溢れた「告別の歌」の表現には、とにかく聴き手を感動させる何かがある。
とっておきの名盤として外すことの出来ない一枚。
この曲のベストファイヴは、
・ブルーノ・ワルター指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、キャスリン・フェリアー(コントラルト)、ユリウス・パツァーク(テノール) <DECCA>
・オットー・クレンペラー指揮、フィルハーモニア管弦楽団/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団、クリスタ・ルートヴィッヒ(メゾ・ソプラノ)、フリッツ・ヴンダーリッヒ(テノール) <EMI>
・レナード・バーンスタイン指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)、ジェームス・キング(テノール) <LONDON>
・ヤッシャ・ホーレンシュタイン指揮、BBC北部交響楽団、アルフレダ・ホジソン(アルト)、ジョン・ミッチンソン(テノール) <BBC>
・ブルーノ・ワルター指揮、ニューヨークフィルハーモニック、ミルドレッド・ミラー(メゾ・ソプラノ)、エルンスト・ヘフリガー(テノール) <CBSSONY>
唯一クレンペラー盤がワルター盤の高みに近づいている

とっておきの名盤 その123 ブルックナー 交響曲第8番 ハ短調

2008年04月26日 | とっておきの名盤「交響曲」
特別好きな曲なので、とっておきの名盤を置いている棚の中でも一番多くの席を占めているのが、この曲のレコード。
これまでその中のいくつかをこのブログで取り上げて来たが、今回のジュリーニの盤、彼の歌への思いが曲の隅々にまで行き渡ったもので、その細部まで美しく歌われるブルックナーの珠玉のメロディーが、何と私の胸に深く響くことか。
ウイーン・フィルの奥深い響きと絶妙な色彩の変化が、さらにその素晴らしさを一層高めている。
ジュリーニは84歳で引退するまで、その真摯な演奏を通して、音楽は総て”歌”から発していることを身をもって教え、そして示し続けた人だった。
オペラだけでなく、彼が指揮した全ての交響曲も素晴らしい歌が満ち溢れていた。
前にブログで取り上げたマーラーの9番しかり、そしてこの演奏の意味深い歌の調べは、とりわけ聴く者の胸を打つ。
この曲のとっておきの名盤は当然どれも高いレベルで素晴らしいが、あえて感銘深い順に並べると、
.ルドルフ・ケンペ指揮、チューリッヒ・トーンハーレ管弦楽団 <SOMM> 
.オトマール・スウィトナー指揮、シュターツカペレ・ベルリン <Berlin Classics>
.ハンス・クナッパーツブッシュ指揮、ミュンヘン・フイルハーモニー管弦楽団 <Westminster>
.カール・シューリヒト指揮、ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団 <EMI>
.カルロ・マリア・ジュリーニ指揮、ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>
知られざる銘盤として、
・ホーレンシュタイン指揮、ウイーン・プロムジカ管弦楽団、1950年代の演奏<VOX>

とっておきの名盤 その120 マーラー 交響曲第9番ニ長調

2008年03月22日 | とっておきの名盤「交響曲」
この盤は1938年1月のライヴ録音だからもう70年も前のことになる。
しかし、この曲の初録音であり、しかも初演をしたワルター自身の演奏と言う意味で非常に貴重なもの、ワルターとウィーンフィルの戦前最後となる演奏でもあった。
この曲は4つの楽章からなるが、いつも聴くのは最初と終わりの楽章のみという変則的な聴き方をしている。
とくに、マーラー特有の退廃的な美というか、その嘆きに満ちた歌、歌、歌に溢れる第1楽章は、とりわけ「死」と言うものの恐れを強く感じさせる楽章であり、そのこの世のものとは思えぬ悲痛な魂の叫びは、聴く者の心を深い情念の世界に落とし入れる。
マーラーの交響曲は総て「死」をテーマにしていると言われているが、私にこの曲ほどそれを強く感じさせるものは無い。
ワルターのこの演奏、聴くたびにこの曲が持つ深い意味を私に強く感じさせてくれる演奏であり、録音の良し悪しなど二の次で、とにかく感動することの素晴らしさを真正面から訴えかけてくれる。
録音(1938年)は古いが、彼がナチに追われウイーンを去る直前に積年の思いで演奏したこのライヴ録音、いろんな意味で特別な一枚と言える。
あえてこの曲のベスト・ファイヴをあげると、
・ブルーノ・ワルター指揮、ウイーンフィルハーモニー管弦楽団 <EMI>
・カルロ・マリア・ジュリーニ指揮、シカゴ交響楽団 <Grammophon>
・ジョン・バルビローリ指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 <EMI>
・レナード・バーンステイン指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>
・クルト・ザンテルリンク指揮、ベルリン交響楽団 <Deutsche Schallplatten>

とっておきの名盤 その111 ドヴォルザーク 交響曲第9番ホ短調「新世界より」

2008年01月06日 | とっておきの名盤「交響曲」
「新世界より」、この曲名を目にするだけでも、新しい年を迎えるにあたって、胸の奥底から新鮮な気持ちが湧き上がってくる。
クラシックを聴き始めた時、真っ先に購入したのがこの曲だったし、その時の第2楽章の郷愁の極みをこめた旋律、そして落ち込んだ気持ちをぐっと奮い立たせてくれる第4楽章の出だしの高揚を今でも鮮明に思い出す。
まだ高校生の頃、このケルテス盤を店頭で目にした時、オケがウィーンフィルだったし、ジャケットも魅力的で、のどから手が出るほど欲しかったのに、既に別の演奏のものを購入しているし、同曲のLPを複数買うのは少ない小遣いの中ではとても贅沢に思え、泣く泣く諦めたことが今では懐かしい思い出となっている。
ケルテスの指揮は、ロマンティシズムの極地とも思える豊かな歌をウィーンフィルの魅惑的な音色で固めたもの、そしてハンガリー生まれの彼の血に流れるマジャール気質が、曲の素晴らしさに良い意味で相乗的な効果をもたらしている。
1973年に遊泳中の不慮の事故死で44歳の短い生涯を閉じたケルテス氏に改めて冥福を祈りたい。
定番とされている一枚だが、とっておきの名盤として外せない演奏。
フリッチャイの名盤とは同列としたいが、あえてこの曲のベスト・ファイブを挙げると、
・フエレンツ・フリッチャイ指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>
・イシュトヴァン・ケルテス指揮、ウイーンフィルハーモニー管弦楽団 <DECCA>
・ラファエル・クーベリック指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>
・クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮、クリーブランド管弦楽団 <DECCA>
・ヤッシャ・ホーレンシュタイン指揮、ロイヤルフィルハーモニー管弦楽団 <CHESKY>


とっておきの名盤 その108 ブルックナー 交響曲第8番 ハ短調

2007年11月29日 | とっておきの名盤「交響曲」
SP盤が全盛だった時代に、世界の五大指揮者と言われていたのが、ワインガルトナー、メンゲルベルク、トスカニーニ、ワルターそしてフルトヴェングラーというそうそうたる面々だった。
この中に、ブルックナーの名指揮者だったクナッパーツブッシュやシューリヒトの名前が聞かれなかったのは残念。
もっともこの時代、ブルックナーの曲はSP盤には長すぎるので、商業主義の対象から彼らは外されていたのかも知れない。
LPの時代になって、この曲の名盤として一躍脚光を浴びたのがシューリヒトの盤、彼独特の速いテンポの中でしっかりと歌うブルックナーの旋律が何とも印象的だ。
是非座右の盤として、クナ盤と並んで何度となく聴いてほしい一枚。
好きな曲だけに、私の特別の棚にある「とっておきの名盤」の中には、六種類ものこの曲の名盤が鎮座している。
それらのCDを以下にあげておくと、
.ルドルフ・ケンペ指揮、チューリッヒ・トーンハーレ管弦楽団 <SOMM> 
.オトマール・スウィトナー指揮、シュターツカペレ・ベルリン <Berlin Classics>
.ハンス・クナッパーツブッシュ指揮、ミュンヘン・フイルハーモニー管弦楽団 <Westminster>
.カール・シューリヒト指揮、ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団 <EMI>
.カルロ・マリア・ジュリーニ指揮、ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>
知られざる銘盤として、
・ホーレンシュタイン指揮、ウイーン・プロムジカ管弦楽団、1950年代の演奏<VOX>


とっておきの名盤 その104 ベートヴェン 交響曲第3番変ホ長調 作品55 「英雄」

2007年10月12日 | とっておきの名盤「交響曲」
これは、ウラニア盤の「英雄」として、往年のフルトヴェングラー・ファンから必携の幻の名盤として特に騒がれていたもの。
演奏については、私が今更どうこう言っても始まらないが、スタジオ録音とは異なり彼独特のライヴの激しさが前面に出た凄絶な演奏とだけは言っておきたい。
放送録音がソースだったので、音も鑑賞には充分堪え得る。
とっておきの名盤として外せない一枚で、このブログから落とすわけにはいかない。
ワルター指揮のものとこの一枚は同列として扱いたいが、あえてこの曲のベストファイヴをあげると、
・ブルーノ・ワルター指揮、コロンビア交響楽団(マックルーア・リミックス盤)<CBSSONY>
・ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 1944年録音(ユニコーン原盤)<EMI>
・セルジュ・チエリビダッケ指揮、ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団 <EMI>
・オットー・クレンペラー指揮、フィルハーモニア管弦楽団 <EMI>
・ルドルフ・ケンペ指揮、ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団 <EMI>


とっておきの名盤 その98 ブルックナー 交響曲第8番ハ短調

2007年08月19日 | とっておきの名盤「交響曲」
オトマール・スウィトナー氏の存在をを知ったのは、1971年以来のN饗での度々の客演指揮だった。
1922年生まれだから、当時50代の働き盛り。
自国の作曲家モーツアルトで聴かせる、自然体の表現に感心させられたのを今でも良く覚えている。
60代後半から健康上の理由で第一線を退いたので、最近の活躍が聞かれないのが残念。
このブルックナーも実に自然体の表現で、聴いていて違和感と言うものが全く感じられない。
普段スコアを見て聴くことは余り無いのだが、ブルックナーの曲を聴く時だけは違う。
好きな第3楽章などにちりばめられた、彼が魂を振り絞って書いただろう自然への憧れとも思える珠玉の旋律の数々、それをどのように聴く者に感じさせてくれるのか。
スコアを見ながら、その思いの感触が心の中にどんどん広がっていくのが、楽しみだからなのかもしれない。
スウィトナー指揮のこの盤、第3楽章の始まりから50節までの、やるせなさ、はかなさの極みとも思える表現、それ以降の吹きすさぶ荒涼とした雰囲気の中に浮かぶ孤独な魂の叫び、言葉が抽象的になってしまい何とももどかしい限りだが、これほど私の心を揺り動かし続ける演奏を他には知らない。
この珠玉とも思える素晴らしい演奏、とっておきの名盤として、何はともあれこのブログに載せなければならない一枚。
いつものベスト・ファイヴをあげておくと、
.ルドルフ・ケンペ指揮、チューリッヒ・トーンハーレ管弦楽団 <SOMM> 
.オトマール・スウィトナー指揮、シュターツカペレ・ベルリン <Berlin Classics>
.ハンス・クナッパーツブッシュ指揮、ミュンヘン・フイルハーモニー管弦楽団 <Westminster>
.カール・シューリヒト指揮、ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団 <EMI>
.カルロ・マリア・ジュリーニ指揮、ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>
知られざる銘盤として、
・ホーレンシュタイン指揮、ウイーン・プロムジカ管弦楽団、1950年代の演奏<VOX>