クラシック 名盤探訪

クラシックの名盤紹介・おすすめ散策コース等、趣味の発信の場です。

伊勢原~関東ふれあいの道~太田道灌公

2008年05月16日 | ウォーキング
コース順路:コース満足度★★★★
小田急伊勢原駅(バス)→長福寺→関東ふれあいの道→三之宮比々多神社→上糟屋神社→太田道灌の首塚→洞昌院→(バス)小田急伊勢原駅

昔ながらの里山の風景をたっぷりと味わえるとても素敵な散歩コースを発見、いろいろな野草も観察できる親しみ深いコースでもある。
自宅から伊勢原駅までは小田急一本で気楽に行けるので、季節が変わったらまた行きたいと思っている。

伊勢原駅からは、スタート地点となるバス停桜坂まで直行。
東名の下を潜り抜け、すこし先の杉木立の石段を上がっていくと静かなたたずまいの長福寺がある。
観音堂の中には十一面観世音菩薩像が安置されているが、堂の扉をみだりに開くと目がつぶれるという言い伝えがあるので、覗くのは止めにする。
階段下は「関東ふれあいの道」、比々多神社へは1キロの道のりだ。
 

この道、子供の頃を思い出す懐かしい里山の風景がたっぷりと味わえる素晴らしい道で、脇に目に入る野草の花々も優しく旅人を慰めてくれる様に思える。
春の野草の中でもよく目に入るカタバミ(写真左)や、ハルジオン(写真右)があちらこちらに咲いている。
 

三之宮比々多神社は、醍醐天皇の御代に全国主要神社の名簿『延喜式神名帳』が作られ、相模國13座の1延喜式内社として國幣(朝廷より賜る幣帛)を奉るところとなった由緒ある神社。
厳かな気持ちでいつもの2礼2拍手1拝の後、とっておきの願い事をする。
 

一休みの後、新たな気持ちで太田道灌ゆかりの場所へと足を進める。
平安時代末に荘園が営まれ、藤原北家良方流の一族が定住して糟屋氏(かすやし)を名乗り、その鎮守と伝えられる上糟屋神社に到着する。
近くの道の角にある七人塚、これは太田道灌が主君である上杉定正に謀反の疑いを掛けられて暗殺された時、これを防ごうとして討ち死にした家臣7名の墓と伝えられ、もとは上糟屋神社の境内にあったらしい。
 

1486年7月、定正の居館である糟屋館に招かれた道灌は、入浴後、湯屋から出たところを定正の臣・曽我兵庫に襲われたという。
その大田道灌の首を葬ったといわれる首塚、洞昌院のすぐ脇にある。
洞昌院は曹洞宗の立派な造りの寺で、見事な庭の脇には道灌公の霊廟も建てられている。
 

懐かしい里山の風景を望んだ後、由緒ある三之宮比々多神社での参拝、そして太田道灌公の無念の最後を偲ぶという、とても感慨の深い散歩となった。

とっておきの名盤 その125 プッチーニ 歌劇「トゥーランドット」

2008年05月10日 | とっておきの名盤「オペラ」
プッチーニの白鳥の歌となったこの曲、好きな作曲者だけにどれも素晴らしい曲ばかりを残しているが、「ボエーム」と並んで最も私の心を捉えて離さないもの。
このブログで推奨するこの盤、抜粋盤でしかもドイツ語による演奏と聞くと、それだけで敬遠する方もいるかも知れない。
しかしこの盤を一度でも耳にすると、そのようなことは総て余計な危惧だったということが良くわかると思う。
ドイツ語版だけに、聴いていて時々ワーグナーのオペラを聴いているような錯覚を覚えるかもしれないが、ドラマティックなストーリを持つこの曲の演奏にはかえってそれがプラスに働いている。
そしてオペラを最も得意とするジュゼッペ・パターネの指揮が、それ以上に素晴らしい。
ドラマの内容に沿って音楽を巧みに盛り上げる技術と、最高の職人的技がなせる曲のツボを掴んだ指揮ぶりには、とにかく痺れるの一言。
ベルリン・クラシックの、いぶし銀に包まれた独特の録音がシュターツカペレ・ドレスデンの伝統ある音色を生かしきっているのも良い。
リュー役を歌うローテンベルガーの、可憐ともいえる情のこもった声には特に心を奪われる。
曲のエッセンスを絞り込んでいるだけに、とにかく聴き始めると、あっという間に最後まで聴き続けしまうこと請け合いのこの盤、とっておきの名盤として推奨しないわけには行かない。
この一枚、都内輸入盤大手のレコード店に行けば、きっと手に入ると思う。
・ジュゼッペ・パターネ指揮、シュターツカペレ・ドレスデン、イングリッド・ビヨーナー<S>、ルードヴィッヒ・シュピエス<T>、アンネリーゼ・ローテンベルガー<S> <BERLIN Classics>

矢川緑地から谷保天満宮へ ~ 清流と共に歩く

2008年05月05日 | ウォーキング
コース順路:コース満足度★★★★★
JR西国立駅→矢川緑地保全地域→矢川いこいの広場→ママ下湧水→南養寺→くにたち郷土文化館→城山公園→谷保天満宮→JR谷保駅

立川段丘から湧き出る水が湿地帯を形成する矢川緑地保全地域、清流矢川の源流となるこの地域からスタート、この透き通るような清流を友として終点の谷保天満宮までの快適な散歩道が続く。
このブログを読んだ人なら、一度は歩いて欲しいとっておきの散歩道。

西国立駅からほどなく歩くと、最初の目的地である矢川緑地保全地域に到着する。
立川段丘面に残された湿地は東京近郊では珍しく、東京都の保全地域にも指定されている。
入り口からすぐの木道を歩くと、もう周りは自然が一杯で、ふと尾瀬の旅が懐かしく思い出される。
この保全地域は、雑木林はもちろん水生生物のための湿地帯や入江もきちんと整備されている。
 

緑地からの清流沿いに咲いている野草や花を見ながら進むと、市民の憩いの場となっている矢川いこいの広場が見えてくる。
すぐ前に流れる矢川の清流を見ながら、家族でゆっくりとくつろげる快適な広場になっている。
矢川沿いの快適な散歩を続けていくと、五智如来を奉ったお堂が目に入る。
この如来は大日如来の別称で、横に立てられた説明板によると、「江戸時代、八王子在住の越後の人がこの地(四軒在家)に移住し、郷土で信仰していた五智如来を祀ったのが始まりとあり、この如来は仏教で言う五種類の智(大円鏡智、妙親察智、平等性智、成所作智、法界体性智)を備えた仏様で、昭和の前期まで夕方になると五智如来の前に灯明、線香供花が絶えなかった。」とある。
 

先に進むと、8m前後の丘陵の下に「ママ下湧水」と呼ばれる豊富な湧水地がある。
がけのことを、地方名で「まま」と呼ぶことからこの名が付いたらしい。
昭和62年の渇水年にも、都内で唯一涸れなかったのがこの湧水という。
清流を離れて少し進むと、禅宗の寺らしい清楚な庭を持つ臨済宗・南養寺にたどり着く。
  

庭にある大きな弁財天の像が、何か艶めかしい。
すぐ脇には、「くにたち郷土文化館」があり、市内の遺跡・出土品や民衆の暮らしなどを解りやすく展示している。
 

谷保天満宮のお祭りの時に使用される獅子舞の衣装、とにかくその恐い顔つきと鼻の穴が大きいのにびっくりさせられる。
ハケ(段丘)下散策路を進むと、鎌倉時代初期の豪族三田氏の城館跡で、今は城山公園となっている鬱蒼とした森に到着、一角に古代民家もあり、しばし軒先で休憩する。
 

湯島、亀戸と並ぶ都内三大天神のひとつで、天神社では東日本で一番古いとされる谷保天満宮に到着する。
地元の人々から通称”やぼてん”と呼ばれている神社で、野暮天の語源ともなっている。
広い境内には数匹の矮鶏(ちゃぼ)がいて、訪れている人に綺麗な羽根を披露している。
 

このコース、梅や桜の時期も素晴らしいらしいが、爽やかな新緑の季節に訪れるのも、また別の趣があってとても良いと思う。

とっておきの名盤 その124 ベートーヴェン ディアベッリ変奏曲 作品120

2008年05月01日 | とっておきの名盤「器楽曲」
19世紀の大ピアニストであったビューローは、50数分を要するこのベートーヴェンの晩年の大作を次のように称賛している。
「彼の天才の凝縮であると共に、音楽の全世界の要約であり、音楽的な構想と想像力のあらゆる展開が、そして最も高尚深遠な思想から最も奔放な諧謔までが、最も雄弁に語られている。
それは尽きることのない泉に等しく、われわれに限りない栄養を与えてくれる。.,,,,」
何とも抽象的で哲学的ともいえる大げさな表現だが、この言葉を聴いて、一度はこの曲を聴いてみたくなるのは私だけではないと思う。
この曲を見事に演奏してくれるピアニストは、”最も正統的なドイツ音楽の継承者”であるアラウを差し置いて、今の私には誰も他に考えられない。
このアラウのドイツ音楽の精神は、リストの高弟であったベルリンの名教師マルティン・クラウゼの徹底的な薫陶によって育まれたものらしい。
そしてリストはベートーヴェンの弟子であるツェルニーに師事しているから、まさしくアラウは”正統的なドイツ音楽の継承者”の位置にあるといえる。
この盤は円熟の極みに達したアラウ82歳の時の録音のもの、遅めのテンポながらこの長大な曲を最後まで飽かすことなく聴かせてくれる力量には、とにかく感服するしかない。
とっておきの名盤としてはずすことの出来ない一枚。
・クラウディオ・アラウ<P> <PHILIPS>