クラシック 名盤探訪

クラシックの名盤紹介・おすすめ散策コース等、趣味の発信の場です。

とっておきの名盤 その94 J・シュトラウス 喜歌劇「こうもり」

2007年06月29日 | とっておきの名盤「オペラ」
この曲の名盤の話が出る時、真っ先に取り上げられるのが、このクライバーの演奏。
定盤とされているので、今更と言う話になるが、厳選されたとっておきの名盤のみを紹介しているこのブログに、この盤を載せない訳にはいかない。
クライバーはこの曲がよほど好きだったらしく、まさしくJ・シュトラウスに全身全霊乗り移って躍動感ある指揮をしているように思える。
フレーズの一つ一つが、とにかく心底から歌って踊っていて、タクトを振るのが楽しくてしょうがないと言う感じ。
聴いている私自身、つい踊りだしたいような気持ちになってしまう。
これほど、聴く人を幸せにさせる演奏は稀で、クライバーの数ある名盤の中でも飛びぬけた秀演のひとつではないだろうか。
アデーレ役は、私の大好きな歌手の一人であるルチア・ポップ。
とてもチャーミングな表情たっぷりな歌いぶりは、聴いているだけで楽しい限り。
ロザリンデ役のユリア・ヴァラデイは、名歌手フィッシャー・ディースカウの奥さんでもあり、その整った歌い振りは気品に満ちていて、この役にぴったりとはまっている。
アイゼンシュタイン役のヘルマン・プライの歌も、美声を生かした見事なもの。
この三人が歌う第一幕の四曲目の三重唱など、素晴らしい歌の共演となっていて、あっという間に時間が過ぎ去っていくのが、聴き手にとっては何とも惜しい限りだ。
こんな楽しいひと時を与えてくれるこの盤を、ここでとっておきの名盤としてあげることが出来、嬉しい思いで一杯。
あえて、この曲のベストスリーをあげておくと、
・カルロス・クライバー指揮、バイエルン国立管弦楽団、ヘルマン・プライ<Br>、ユリア・バラデイ<S>、ルネ・コロ<T>、ルチア・ポップ<S> <Grammophon>
・ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、フィルハーモニア管弦楽団、ニコライ・ゲッタT>、エリザベート・シュワルツコップ<S>、ヘルムート・クレプス<T>、リタ・シュトライヒ<S> <EMI>
・カール・ベーム指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、エバーハルト・ヴェヒター<Br>、グンドラ・ヤノヴィッツ<S>、ヴァルデマール・クメント<T>、レナーテ・ホルム<S> <LONDON>

晴れの尾瀬に感動!

2007年06月23日 | 歴史・旅(国内)
コース順路:コース満足度★★★★★
尾瀬戸倉→鳩待峠→山ノ鼻→牛首分岐→ヨッピ吊橋→東電小屋(一泊目)→竜宮→見晴→沼尻平→尾瀬沼ヒュッテ(二泊目)→大江湿原→三平峠→一之瀬→大清水→尾瀬戸倉(日帰り温泉)

前からとても楽しみにしていた6月15日から三日間の尾瀬の旅、去年の大雨の旅とは打って変わって、二日目から素晴らしい天気に恵まれ、中身の濃い、実りある旅となった。

素晴らしい旅となる願いに胸をはずませて、朝8時新宿発の高速バス尾瀬号に乗車、一路尾瀬戸倉を目指す。
バスで約4時間、様様に変化する外の景色を眺めているうち、いつのまにか尾瀬戸倉に到着、全然時間の長さを感じなかったのは何とも不思議だ。
すぐの連絡バスで鳩待峠に向かう。
ここから尾瀬ヶ原スタート地点となる山ノ鼻へは、約1時間程の新緑に囲まれた気持ちの良い歩きが楽しめる。

山ノ鼻では、まずすぐ脇にある研究見本園を一周する。
晴れ晴れとした、そのさわやかな眺めは、何とも目に清清しい。
目を落とすと、ミツガシワの可憐な花が水辺に咲いている。
 

尾瀬ヶ原のメインコースへ戻り、牛首分岐を目指し足を進める。
後ろを振り返ると、その眺めは頂上に雲を頂いた至仏山と長く続く木道の対比が印象的。
牛首分岐から左側の木道に曲がりヨッピ吊橋を目指す、広大な尾瀬ヶ原の中に延々と木道が続く。
 

所々に出現する池糖の脇を通る際に聞こえる、ヤマアオガエルのコロコロという鳴き声が実に面白い。
ヨッピ吊橋を渡り、15分ほど歩くともう今夜泊まる東電小屋が目の先だ。
 

次の日、朝早く起きて空模様を見ると一面の青空、昔の人々が願いをかけて奉った天照大御の有難さを、実感することしきり。
竜宮の分岐路へ向かう途中、足元に咲く尾瀬の花の美しさに感嘆、写真はリュウキンカ(左側)とチングルマ(右側)。
 

池糖を手前に、遙にそびえる至仏山の眺めは素晴らしいの一言。
道脇にかなりの数のヒメシャクナゲが群生している。
 

ワタスゲは時期的にまだ早く数が少ないが、ニッコウキスゲの季節になると全盛期となり、陽を受けると踊るように輝く姿を見せてくれる。
この辺りから見る至仏山の姿はとても美しい。
 

見晴十字路は、去年の尾瀬の旅で泊まった弥四郎小屋がある所。
手前の休憩場所で、朝に東電小屋で作ってもらった昼食用のおにぎり弁当をほおばる。
ここから尾瀬沼を目指し山道に入るが、左側を眺めると至仏山と燧ケ岳のちょうど中間にある景鶴山の特徴のある山並みが見える。
見晴から沼尻平までは、緩やかな登りの山道が続くが、木々の中から聞こえるウグイス、ホトトギスやカッコウの鳴き声がとても耳に快い。
約2時間半程の山道をやっと抜けると、小さな湿原が目にぱっと開ける。
もうその先は、尾瀬沼だ。
 

尾瀬沼を左に見て今日の宿泊先、尾瀬沼ヒュッテを目指す。
この辺は尾瀬ヶ原より高地なので、今回の旅で一番楽しみにしていた水芭蕉が新鮮でとても美しい。
群生する水芭蕉のその見事な眺めは、何度見ても飽きが来ない。
 

浅湖湿原に出ると、尾瀬沼の眺めが穏やかな雰囲気で心がとても和らぐ。
大江湿原の尾瀬沼側に出て背景を眺めると、燧ケ岳が青空に映えて素晴らしい。
 

尾瀬沼を手前にしての燧ケ岳の眺めも、一風の絵葉書の様。
やっと、今日の宿泊先の尾瀬沼ヒュッテに到着する。
 

夕食の後、湖畔へ出て日没を見る。
あっという間の日の入りで、デジカメのシャッターチャンスが中々難しい。
夜の星空は素晴らしいらしいが、疲れていたせいか、つい見過ごしてしまった。
翌朝、大江湿原で名物の「三本のからまつ」を見る。
良く見ると、左側に小さな松が二本あり、ビジターセンターの説明員の話だと厳密には「五本のからまつ」だと笑っていた。
 

日が当たると見事に花を開くタテヤマリンドウ、ショウジョウバカマ(写真右)のピンク色の花の姿は、花火がぱっと開いたよう。
 

楽しかった尾瀬の散策も終わりに近づき、三平峠を超えて大清水への帰路の道をたどる。
岩清水のあたりで、視野が急に開け遠くには富士山も見える見事な眺めに感動することしきり。
道脇の紅紫色の花が美しいムラサキヤシオツツジの木も、通る人の心を和ませてくれる。
 

空を見上げると、快晴なのに太陽が傘をかぶった様になっていて、周りには七色の虹が輝いている。
楽しかった尾瀬の旅を祝福してくれている様で、とても嬉しい気持ちになる。


大清水からは尾瀬戸倉に戻り、楽しみにしていた日帰り温泉に胸を弾ませる。
高速バス停すぐ前にある「玉泉」という旅館、美肌の湯とうたった温泉は、ぬめぬめとした肌触りの良い湯でとても気持ちが良い。
三日間の旅の疲れがいっぺんに吹き飛んでしまった感じ、充実した今回の旅に感謝の気持ちを捧げつつ帰宅の高速バスに乗る。
尾瀬の魅力を言葉で表現し尽くすのは難しい、またすぐに訪れたい気持ちになるのが何とも不思議な所だ。
できれば今度は、10月初旬の秋の尾瀬に行きたいなと思っている。
雨の尾瀬

とっておきの名盤 その93 モーツアルト フルートとハープの為の協奏曲ハ長調 K299

2007年06月19日 | とっておきの名盤「協奏曲」
この曲はモーツアルト22歳、1778年四月頃のパリでの作品とされている。
たしかに、フランス貴族好みの優雅な美しさが漂う珠玉の名品と云ってよい。
ここで推奨するこの盤は、ウィーンフィルの名手を表にして、ミュンヒンガーの端正な指揮振りが際立つ見事な演奏で、それこそ掛け値なしのとっておきの一枚といえる。
ウィーンの香りが一面に漂うオーケストラの音をバックに、フルートとハープの典雅な響きが、何とも聴くものの心をエレガンスの極みにさせてくれる。
この曲を聴くには、演奏、録音とも飛びぬけて優れたこの一枚で充分足りるのだが、他の盤も聴いてみたいという方の為に、あえてベストスリーの演奏をあげると、
・ヴェルナー・トリップ<Fl>、フーベルト・イェリネク<Hp>、カール・ミュンヒンガー指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 <LONDON>
・リーザ・ベズノシューク<Fl>、フランシス・ケリー<Hp>、クリストファー・ホグウッド指揮、エンシェント室内管弦楽団 <L'OISEAU-LYRE>
・カールハインツ・ツェラー<Fl>、ニカノール・サバレタ<Hp>、エルンスト・メルツェンドルファー指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>

とっておきの名盤 その92 チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」ロ短調 作品74

2007年06月13日 | とっておきの名盤「交響曲」
チャイコフスキーの作品、特に「悲愴」を最も得意としたカラヤンは、何と生涯にこの曲を7回も録音している。
とっておきの名盤として推奨するのは、5度目の録音となったベルリンフィルとの1971年演奏のもの。
この盤での、録音も含めたそのヴィヴィットな雰囲気は、中でも最もライヴに近い演奏ではないかと思う。
カラヤンのこの曲に対する思い入れはかなりのもの、最初の楽章から終わりまで主情の強い振幅の大きな演奏で、チャイコフスキーの良い意味でのセンチメンタリズムを極めている。
「悲愴」交響曲だからこそ許される、とっておきの演奏でもあり、名盤でもある。
この曲のベストファイヴをあげると、
・レナード・バーンステイン指揮、ニューヨークフィルハーモニー管弦楽団、1986年録音 <Grammophon>
・ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団、1971年録音 <SERAPHIM>
・フェレンツ・フリッチャイ指揮、ベルリン放送交響楽団 <Grammophon>
・エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮、レニングラードフィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>
・ヘルマン・アーベントロート指揮、ライプツィヒ放送交響楽団 <Dutsche Schallplatten>
この盤と同列とするバーンステインの盤は、カラヤン以上に主情的な名演奏で、既にこのブログでも取り上げている。

八王子 神社仏閣めぐり

2007年06月09日 | ウォーキング
コース順路:コース満足度★★
JR八王子駅→八幡八雲神社→妙薬寺→極楽寺→禅東院→法蓮寺・本立寺→金剛院→信松院→JR八王子駅

今回は、八王子市の名所旧跡めぐりを試みたつもりが、はからずも神社仏閣ばかりのちょっと片寄ったウォーキングとなってしまった。
しかし、中世に関東の武者所として活躍した横山党の存在や、八王子千人同心の事を詳しく知ることが出来たのは、なかなか意義深い経験ではある。

八王子駅の横山町のある出口を出、まずは八幡八雲神社を目指す。
神社の造りを良く見ると、八幡と八雲のふたつの神社を合祀していることが良くわかる。
八幡神社は、横山党の始祖である小野義孝が勧請したと言われており、境内にはこの付近を根拠地とした横山党の横山神社も祀られている。


妙薬寺と言うから、病気を治す妙薬でもあるのかと思ったら、そんな事でも無いらしい。
平安時代末期から鎌倉時代にかけて、八王子一帯を基盤に活躍した横山党は、武蔵七党の中でも最大の勢力を誇ったという。
境内には、横山塔と呼ばれる横山氏の供養塔があり、この周辺も横山党の根拠地だったと伝えられている。
今でも、街の中に横山町、元横山町の地名が残っている。


極楽寺と言うから、この寺にお参りを続けていると極楽往生が可能なのかもしれない。
滝山城主の大石定重が開基となって創建した浄土宗の寺らしい。


すぐ先の禅東院を訪れる。
キムチが好きな私には、親しみを感じずにはいられない、「とうがらし地蔵」という面白い名前の地蔵様が祀られている。


千人同心ゆかりの寺と言われる法蓮寺・本立寺を訪れたが、頭が下がる思いのする二人の墓が、ひっそりとした場所に置かれてあった。
千人同心の組頭でもあり、窮民の救済に私財を投じ、医者・書道家としても活躍した立派な慈善家でもあった、並木以寧という人の墓。
もうひとつは、千人同心の千人頭で、北海道開拓にも従事した原胤敦の墓。


次に訪れた金剛院の境内には、蓮の花の大きな鉢がずらっと並べてある。
開花の時期に訪れたら見事なものだと思いつつ、賽銭箱の前でなにやら願い事を唱える。


最後に訪れた信松院は、武田家滅亡の際、逃れた武田信玄の四女松姫が、剃髪して一族の菩提を弔ったのが始まりとされるらしい。


松姫の墓はお寺の裏側にあるが、門前には逃亡時の姿を模した、松姫の可憐な像が置かれてあった。


神社仏閣ばかりを散歩すると、抹香くさくなるかも知れないが、知られざる歴史の由緒・由来を身をもって知ることが出来、なかなか面白いものだと思いつつ八王子の駅を目指す。

とっておきの名盤 その91 吉野直子 アラベスク ハープ・リサイタル

2007年06月02日 | とっておきの名盤「器楽曲」
このとっておきの名盤は、日本が誇る世界的ハープ奏者、吉野直子のデビューアルバム。
時の経つのは速いもので、録音されたのが1987年だから、もう20年にもなる。
彼女の活躍を調べてみると、最も権威があるとされる、イスラエル国際ハープ・コンクールで優勝したのが1985年で、その時の彼女は17歳だったというから、そのデビュー振りからして華々しい。
その後の活躍も、世界的指揮者のもと、欧米の一流オーケストラと共演を重ねているから、とにかく立派の一言に尽きる。
このアルバムは、オリジナルのハープのための作品と編曲ものが半々で、聴く者にとっては、バランス良く楽しめる内容になっている。
演奏は単に楽しめるだけと言うものではなく、その音楽に対する芸術的センスがとにかく素晴らしい。
技術的裏づけと、その骨組みがしっかりとしたハープの響きは、作曲者が訴えようとしている作品の一番大事な魂の部分を、聴く者に見事に伝えてくれている。
タイトルとなっている「アラベスク」はもちろん、「愛の夢第3番」も魅力的、オリジナル・ハープ曲のサルツェード作曲「古代様式の主題による変奏曲」では、ハープの様々な魅力を120%味合わせてくれる。
この盤は、何度聴いても新鮮で飽きが来ないし、録音も優秀で難点の付けようも無い、お勧めの一枚。
・吉野直子<Hp> <CBCSONY>