今年が「民藝運動の父」とも呼ばれる柳宗悦の没後50周年であることにぜんぜん気がつかないでいたのは、迂闊でしたねと言われてもしょうがない。
それだけに、6月15日に四谷の韓国大使館・韓国文化院で記念公開講座「柳宗悦に学ぶ_日韓文化交流の礎」が催されるのを聞かされた時はとても嬉しかった。
この公開講座、基調講演が韓国大使も努められた小倉和夫、座談会の司会が松井健、そして講師が李進煕、水尾比呂志、姜 尚中(以上敬称略)という”柳宗悦を語る”についてみんな一家言といっても良い専門的な覚えと意見を持つ人ばかり。
入場無料と言うのもうれしいし、会場が満員で入れなくては大変と早めに家を出る。
韓国大使館の建物がモダンなデザインなのに驚きつつ中に入ると、一階では「柳宗悦 朝鮮とその藝術」展が開催されている。
時間が有ったので覗いてみると、柳宗悦が愛した朝鮮時代の陶磁器や工芸品などと、高名な声楽家であった兼子夫人との生涯の軌跡のパネルや宗悦自身のアルバム写真が展示されていて、講座の前の前知識としては大いに役に立つものだった。
柳宗悦の人となりを簡単にまとめておくと、「・・・明治22年(1889)~昭和36年(1961)。民藝運動の提唱者、そして宗教哲学者。濱田庄司や河井寛次郎との交流をはかりながら民藝の普及につとめ、 日本民藝館を創設。柳宗悦全集全22巻など・・・」とある。
講座の会場では、紀伊国屋書店製作の「柳宗悦 美信一如」が上映されたが、柳宗悦の生涯・思想・暮らしの中に美を求めた想いなどがきちんと描かれたとても良いものだった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/26/f7caa8b5d9d3c60def29dc0c7c297599.jpg)
講座での各氏の発言は、自分の人となりと柳宗悦との出会い、そして学んだことや想いなどを熱心に話してくれるとても有意義なものであった。
李進煕氏は生前の柳宗悦と会っていないとのことだが、学生の頃に神田の本屋で「朝鮮とその藝術」の序文を立ち読みし、目からうろこの落ちる思いをしたとまず話された。
アルバイト代月4千円の時代、大枚五百円をはたいてその本を買い求めたとのこと。
学んだことは、美術を通して民族の心を知ろうとした柳のものの考え方、それは歴史学においても考古学においても通じるものであり、それがなければ本当の美術や学問にならないんだと言うことを痛感したと話していたと思う。
水尾比呂志氏が話されたことで、「・・・柳宗悦が愛した木喰仏の美というもの、口許に微笑を浮かべた不思議な美しさは藝術と宗教とが深く編みなされている世界の具現であり、李朝陶磁と同じ啓示を現してくれるものだった・・・」と言う言葉が印象的だった。
木喰上人もその作品の木喰仏のことも全く知らなかったし、先の短い年金生活者には勉強することが多すぎると冗談のひとつも口に出したい様な気持ちになってしまった。
朝鮮茶碗の一種で室町時代以来、茶人に最も珍重されたという井戸茶碗の話がちょっと出たが、時間の関係であまり詳しい話に触れられなかったのは残念。
姜 尚中氏が話した中で面白かったのは、子守唄は普通二拍子なのだが、全国で三拍子のものが27あり、そのうち25が熊本人吉球磨地方のものなのだと言われたこと。
私が思うに、この地方に移住した朝鮮の人々が、故郷の三拍子アリランの調べに寄せて子守唄を歌い聴かせているうちに、その土地に根付いたのではないだろうか。
日韓500万人/年の交流があると言う今、今回の講座で学んだ柳宗悦の想いが少しでも聞くものの身についたとても有意義なひと時ではなかったのかと思う。
柳宗悦が中心となって設立した日本民藝館、前に一度訪れているのだが、まだ彼のことを良く知らない時だったので、近々にまたぜひ訪れようと思っている。
松井健氏の愛読書と言う「民藝40年」岩波文庫を、せっかちなことに早速買い求めてしまった。
写真に載せた茶碗は初めての韓国の旅で買い求めたものだが、どこの寺でだったかどうしても思い出せないでいる。
1500円ほどの安価な器だったが、わび・さびの雰囲気が感じられて今では私の最愛の茶碗となっている。
これでお茶を飲むと不思議と奥行きのある味がするし、暮らしの中の美を追い求めた柳宗悦の気持ちがとてもよく分かる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/0c/1f9f3a84107fbbeba5685e57e21d4497.jpg)
駒場野公園と美術館めぐり
日本人の忘れ物~五木寛之
それだけに、6月15日に四谷の韓国大使館・韓国文化院で記念公開講座「柳宗悦に学ぶ_日韓文化交流の礎」が催されるのを聞かされた時はとても嬉しかった。
この公開講座、基調講演が韓国大使も努められた小倉和夫、座談会の司会が松井健、そして講師が李進煕、水尾比呂志、姜 尚中(以上敬称略)という”柳宗悦を語る”についてみんな一家言といっても良い専門的な覚えと意見を持つ人ばかり。
入場無料と言うのもうれしいし、会場が満員で入れなくては大変と早めに家を出る。
韓国大使館の建物がモダンなデザインなのに驚きつつ中に入ると、一階では「柳宗悦 朝鮮とその藝術」展が開催されている。
時間が有ったので覗いてみると、柳宗悦が愛した朝鮮時代の陶磁器や工芸品などと、高名な声楽家であった兼子夫人との生涯の軌跡のパネルや宗悦自身のアルバム写真が展示されていて、講座の前の前知識としては大いに役に立つものだった。
柳宗悦の人となりを簡単にまとめておくと、「・・・明治22年(1889)~昭和36年(1961)。民藝運動の提唱者、そして宗教哲学者。濱田庄司や河井寛次郎との交流をはかりながら民藝の普及につとめ、 日本民藝館を創設。柳宗悦全集全22巻など・・・」とある。
講座の会場では、紀伊国屋書店製作の「柳宗悦 美信一如」が上映されたが、柳宗悦の生涯・思想・暮らしの中に美を求めた想いなどがきちんと描かれたとても良いものだった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/14/c8/ae53cff1b757b5462d4fc3b7caf4831f.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/f5/00d83a77eeea99efe4bc019d0ab7e2ad.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/26/f7caa8b5d9d3c60def29dc0c7c297599.jpg)
講座での各氏の発言は、自分の人となりと柳宗悦との出会い、そして学んだことや想いなどを熱心に話してくれるとても有意義なものであった。
李進煕氏は生前の柳宗悦と会っていないとのことだが、学生の頃に神田の本屋で「朝鮮とその藝術」の序文を立ち読みし、目からうろこの落ちる思いをしたとまず話された。
アルバイト代月4千円の時代、大枚五百円をはたいてその本を買い求めたとのこと。
学んだことは、美術を通して民族の心を知ろうとした柳のものの考え方、それは歴史学においても考古学においても通じるものであり、それがなければ本当の美術や学問にならないんだと言うことを痛感したと話していたと思う。
水尾比呂志氏が話されたことで、「・・・柳宗悦が愛した木喰仏の美というもの、口許に微笑を浮かべた不思議な美しさは藝術と宗教とが深く編みなされている世界の具現であり、李朝陶磁と同じ啓示を現してくれるものだった・・・」と言う言葉が印象的だった。
木喰上人もその作品の木喰仏のことも全く知らなかったし、先の短い年金生活者には勉強することが多すぎると冗談のひとつも口に出したい様な気持ちになってしまった。
朝鮮茶碗の一種で室町時代以来、茶人に最も珍重されたという井戸茶碗の話がちょっと出たが、時間の関係であまり詳しい話に触れられなかったのは残念。
姜 尚中氏が話した中で面白かったのは、子守唄は普通二拍子なのだが、全国で三拍子のものが27あり、そのうち25が熊本人吉球磨地方のものなのだと言われたこと。
私が思うに、この地方に移住した朝鮮の人々が、故郷の三拍子アリランの調べに寄せて子守唄を歌い聴かせているうちに、その土地に根付いたのではないだろうか。
日韓500万人/年の交流があると言う今、今回の講座で学んだ柳宗悦の想いが少しでも聞くものの身についたとても有意義なひと時ではなかったのかと思う。
柳宗悦が中心となって設立した日本民藝館、前に一度訪れているのだが、まだ彼のことを良く知らない時だったので、近々にまたぜひ訪れようと思っている。
松井健氏の愛読書と言う「民藝40年」岩波文庫を、せっかちなことに早速買い求めてしまった。
写真に載せた茶碗は初めての韓国の旅で買い求めたものだが、どこの寺でだったかどうしても思い出せないでいる。
1500円ほどの安価な器だったが、わび・さびの雰囲気が感じられて今では私の最愛の茶碗となっている。
これでお茶を飲むと不思議と奥行きのある味がするし、暮らしの中の美を追い求めた柳宗悦の気持ちがとてもよく分かる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/73/cdd39edcf90966f531eda890826c1ba5.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/0c/1f9f3a84107fbbeba5685e57e21d4497.jpg)
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日本人の忘れ物~五木寛之
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/98/8bea449eaae86c1547fc158a8131e819.png)