クラシック 名盤探訪

クラシックの名盤紹介・おすすめ散策コース等、趣味の発信の場です。

ベックリンの絵

2007年02月28日 | 音楽と絵画、iPodなど
1872年、スイスの画家アーノルド・ベックリンが描いた「フィドルを弾く骸骨のいる自画像」という印象的な絵がある。
フィドルという聞きなれない用語を調べてみると、民俗音楽で使われるヴァイオリンの一般的な呼称とある。
この絵を眺めていたら、サンサーンスの交響詩「死の舞踏」やタルティーニの「悪魔のトリル」の一節がふと浮かんできた。


とっておきの名盤 その77 ハインリヒ・シュッツ オラトリオ「十字架上の七つの言葉」

2007年02月24日 | とっておきの名盤「声楽曲」
古楽と呼ばれるバッハ以前の音楽で、私の敬愛する作曲家を好きな順に並べると、シュッツ、モンテヴェルディ、ヴィクトリア、パレストリーナ、ジョスカン・デ・プレと続いていく。
中でもシュッツの曲は、私にとっては何者にも代えがたい癒しの音楽の原点であり、とりわけ貴重な存在といえる。
作曲のスタイルが本当に自然体であり、特別のことは何もしていないのに、純粋な音楽そのものが聴き手の心の中をすーっと吹き抜ける。
教会音楽なんだけれども、私にはそれほどの宗教色は感じられないのも不思議に思える。
このブログで取り上げているとっておきの名盤は、特別の棚に一括して集めているが、一番左上の最初にまず置かれているのがシュッツのこの盤。
シュッツの名演奏家であるマウエルスベルガー指揮のもと、ドレスデン聖十字架合唱団とソリスト達が純粋かつ敬虔な歌声で、キリストの受難の物語を淡々と歌っていく。
気ぜわしい生活から離れてこの一枚にじっと耳を傾けると、真の芸術の原点は何なのかと言うことを痛いほど感じさせてくれる。
喧騒な世の中だからこそ、是非聴いて欲しいとっておきの一枚と言える。
・ルドルフ・マウエルスベルガー指揮、ドレスデン聖十字架合唱団、ペーター・シュライヤー<T>、テオ・アダム<B> <BERLIN Classics>
全集ものとして素晴らしいのは、
ハインリッヒ・シュッツ宗教合唱曲集 ドレスデン・クロイツ協会合唱団 <BERLIN Classics>
廉価盤で入手できるのが何とも嬉しい限り

府中~大国魂神社~神社仏閣めぐり

2007年02月21日 | ウォーキング
コース順路:コース満足度★★★
JR分倍河原駅→新田義貞像→高安寺→→高札場→大国魂神社→安養寺→東京競馬場→京王東府中駅

大和朝廷の時代に武蔵国の国府が置かれた府中あたりの神社仏閣をめぐり、いにしえの時代に思いを馳せる。
ただしコースの最後に広大な東京競馬場を右手に見て、神様ではなくお馬ちゃんにさんざん貢いだことを思い出し、苦笑することしきり。

分倍河原は鎌倉幕府の滅亡を決定づけた歴史的な戦いの舞台となったところ。
駅前の広場に新田義貞公の像が、意気高々に聳え立っている。


この高安寺は由緒によると、足利尊氏が全国に「安国寺」を創建するにあたり、「武蔵国安国寺」として再興したとある。
山門に入るとき、左右に「仁王像」が、出るときに「地蔵尊」と「奪衣婆」の像が置かれていて、その造りが珍しい。
 

散歩でのお昼は、いつもたぬきうどんと決めている。
大国魂神社へ向かう道なりで、創業明治17年吉見家という立て看板を見つける。
たぬきうどんのおいしかったこと、このブログに載せないわけにはいかなくなった。


旧甲州街道と府中街道の交差点の所、江戸時代に要所々々に設けられた高札場がある。


この散歩で一番に訪れたかった大国魂神社にやっと到着する。
武蔵に国府が置かれる500年余り前、この地の守り神として大国魂大神を祀ったのが始まりというから、本当だとすると相当に由緒ある神社だ。
 

同名の寺は全国に少なからずあるようだが、大国魂神社のすぐ裏の安養寺は天台宗の名刹とのこと。


広大な敷地の東京競馬場を右手に見ながら、京王東府中駅をめざし帰途につく。

「もう一つの万葉集」 李寧煕

2007年02月19日 | 読書中
この本が発行されたのが昭和64年8月というから、今から18年も前になる。
韓国語によってまったく異相の万葉歌が浮かび上がるということで、当時かなりのベストセラーとなったもの。
作者の李寧煕女史は1931年生まれで終戦直前まで日本在住、前韓国女流文学人会会長や国会議員などの立派な経歴を持つ方。
ぶらりと立ち寄った古本屋で購入、夜に寝床で読み出したら面白いことこの上ない。
あっという間に時間が過ぎていく。
前のブログでも取り上げた、額田王「あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る」のこの本での解釈に驚く。
従来の解釈;あかねさす 紫野を行き 標野を行って 野守は見ているではありませんか あなたが袖を振るのを
真の意味 ;あかい股(さし)が 紫色の野原を行きます 標野<禁野>を行くのです 野守は見ていないでしょうね 貴方が私のはさみ<両股>をひろげるのを
ここに載せるのを憚るほど、何ともセクシーというか色っぽい。
謎と呼ばれる古代史、まだ真実が明かされていない事もたくさんあるに違いない。
彼女が何冊かの著作を通して日本の古代史に投げかけた衝撃の問い掛けは消えていないどころか、まだ暗闇の中で脈々と生き続けているのではないかとさえ思う。
何故か彼女の著作はすべて廃本になっているが、是非の復刻を望みたい。

とっておきの名盤 その76 R.シュトラウス 楽劇「エレクトラ」

2007年02月17日 | とっておきの名盤「オペラ」
ベームが87歳の誕生日を迎える直前に亡くなったのが1981年だから、もう26年にもなる。
今更ながら、時の経つのは早いものだと、ひとしお感じいるこの頃だ。
ベームは40歳代、ドレスデン国立歌劇場の音楽監督として活躍した頃にR・シュトラウスと親交を深め、「無口な女」や「ダフネ」の初演を行っている。
それだけにこの盤の演奏でも、自然体でありながら要所々々をきちっと締めた立派な演奏を展開している。
私がこの曲の中で最も感動的な思いで良く聴く所は、父殺しの実母とその情夫に対する復讐心で燃えているエレクトラが、死んだと報じられていた弟のオレストと出会う場面だ。
Was willst du fremder Mensch(何の用ですか、見知らぬ人よ)から始まる場面だが、聴く度にその緊張に満ちた対話と音楽は強烈なインパクトで私を打ちのめす。
ボルクとディースカウのやりとりは何と迫真的であることか、しかも真の音楽で満ち満ちている。
何度聴いても素晴らしい感動を与えてくれるこの盤は、是非聴いて欲しいとっておきの一枚。
同列で、この名場面を知るきっかけともなったルートヴィッヒ、ベリー夫妻が歌うR・シュトラウス/オペラ名場面集の魅力的な一枚もあげておきたい。
次点として、ニルソンの歌と録音が優れているショルティ盤をあげる。
・カール・ベーム指揮、シュターツカペレ・ドレスデン、インゲ・ボルク<S>、ジーン・マディラ<Ms>、ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ<Br>、フリッツ・ウール<T> <Grammophon>
・ハインリヒ・ホルライザー指揮、べルリンドイツオペラ管弦楽団、クリスタ・ルートヴィッヒ<Ms>、ワルター・ベリー<Br> <DENON>
・ゲオルグ・ショルテイ指揮、ウィーンフイルハーモニー管弦楽団、ビルギット・ニルソン<S>、レジーナ・レズニック<Ms>、トム・クラウセ<Br>、ゲルハルト・シュトルツェ<T> <LONDON>

”八雲立つ” 素戔嗚命(スサノオノミコト)

2007年02月14日 | 和歌(いにしえの歌人)
この歌は日本の和歌の始まりとされ、素戔嗚命(スサノオノミコト)は「和歌の神」としても信仰されている。
八の字が重なるこの歌を詠んでいると、何故かバッハのパッサカリアやフーガ を思い起こさせて面白い。

八雲立つ
出雲八重垣
妻籠に
八重垣作る
その八重垣を


田園調布から久が原へ

2007年02月10日 | ウォーキング
コース順路:コース満足度★★★★
東横線田園調布駅→宝来公園→多摩川台公園→浅間神社→六郷用水→密蔵院→鵜の木公園→池上線久が原駅

今回のコース、古代の遺跡(5~6世紀前方後円墳)と渋沢栄一により計画的に開発された田園都市の対比が、新旧あい混じってなかなか面白い。

2000年に解体復元された旧田園調布駅、どこかヨーロッパにある小さな家を思わせる造りがなかなかのもの。


駅前から放射状に伸びたイチョウの並木道を歩く。
歩いたのは、突き当りの宝来公園に向かう左側の道。


宝来公園を突っ切り、少し坂を上ると正面に多摩川台公園の入り口がある。
公園の中を道なりに歩いていくと、左側に次々といにしえの古墳が現れる。


すぐ右側は多摩川が流れており、ここから眺める景色は広々としてとても気持ちが良い。
空気がすんだ日は、大山を初めとする丹沢の山々はもちろん、富士山も見えるとのこと。
いにしえの豪族達は、この肥沃な川べりに住み、今歩いている背景となる丘に首長の墓を築いたのだろう。


10基もある古墳群の中で最も大きな亀甲山古墳の手前には、それを示す碑と説明板が設けられている。


古墳展示室が隣接されており、無料なので得をしたような気持ちになり、早速中に入る。
新しい首長の就任を祝う祭祀の模様を示す五体の人形が展示されている。
左側の写真は首長の服装を示したもの、古代の髪型である角髪(みずら)がなんとも可愛い。
右側の写真は棺に置かれた首長を模したもの、帽子や武器も一緒に埋葬されていて当時の模様が良く分かる。
ここの古墳展示室は、非常に分かりやすく展示・説明されていてしかも無料、つとに感謝すべき。
  

公園を出たすぐ先に、立派な造りの神社(浅間神社)がある。
北条正子が出陣した夫、源頼朝の無事を祈願したのが始まりとのこと。
神社の敷地全体が古墳というのも面白い。


中原街道のトンネルをくぐり抜けると、湧き水が注ぐ六郷用水にたどり着く。
透き通った流れの中に鯉がたくさん泳いでいて、のぞくとすぐにどっと集まってくる。


ニ三日前に椅子にぶつけた足の痛みが増し、この後の予定のコースはリタイアする。
しゃれた街並みから古代の眺めに突然タイムスリップする時間的な段差が、散歩する人の意表をつく面白いコース。

「ポートレイト・イン・ジャズ」 ビル・エヴァンス

2007年02月08日 | ジャズ&ヴォーカル
これはビル・エヴァンスの代表的傑作で、ジャズファンなら誰でも持っているだろうし、もし持っていないのなら今すぐレコード店へ足を運ばなければならない。
私もジャズが好きになって、一番最初に買ったのがこの盤。
リバーサイド時代の盤はどれもとにかく素晴らしい。
夭折したベーシストの天才スコット・ラファロに刺激されたせいか、エヴァンスのピアノは官能的というか幻想的というか、とにかく繊細なタッチで絶妙なプレイを繰り広げている。
この盤の「ブルー・イン・グリーン」で見せる二人のインタープレイの傑出ぶりを何といって表現したら良いのだろう。
この盤を聴いた後、ビル・エヴァンスに魅せられてどれだけ彼のCDを買わされたことか。
でも購入して後悔させられた盤が一枚も無かったのが、彼の凄いところ。
なかんずく、ピアノ・トリオが好きな人でこの盤を持っていないと、エセ・ジャズファンと言われても仕方が無い。
ビル・エヴァンス<P>、スコット・ラファロ<b>、ポール・モチアン<ds> <Riverside>

とっておきの名盤 その75 J.S.バッハ 無伴奏チエロ組曲 BWV1007-1012

2007年02月05日 | とっておきの名盤「器楽曲」
フルニエはこの曲を2回録音しており、ここで推奨する盤は1960年に録音した最初のもの。
チェロのプリンスと呼ばれたフルニエは、実に貴賓のある端正な表現でバッハ独特の無限的な旋律を朗々と歌わせる。
6曲ある曲のうち良く聴くのは1番と3番、フルニエの長所が良く出た演奏で、聴く度に音楽的思索がこめられた味わい深い表現に何度引き込まれたことか。
フルニエのバッハの録音は数少ないが、どれも素晴らしい貴重なものばかり。
この曲のベストファイヴを挙げると、
・ピエール・フルニエ<Vc> <ARCHIV>
・ヤーノシュ・シュタルケル <PHILIPS>
・ムスチスラフ・ロストロポーヴィッチ <EMI>
・アンナー・ビルスマ<BVc> <SEON>
長く埋もれていたこの作品をよみがえらせたカザルスの盤は、強靭な説得力を持つ歴史的名盤として特別の意味を持つ。
・パブロ・カザルス <EMI>

とっておきの名盤 その74 マーラー 歌曲集「なき児をしのぶ歌」

2007年02月02日 | とっておきの名盤「声楽曲」
不世出の名歌手フェリアーと名指揮者ワルターは第2次大戦直後の46年に初めて会い、レコード史上に燦然と輝くふたつの名演奏を残した。
既にこのブログでも紹介した交響曲「大地の歌」、そしてこの盤がそれ。
フエリアーは41歳という若さで亡くなった為、活躍した時期は10年程の短い間だった。
しかし、その間に残した録音はどれも彼女の偉大な才能に満ち溢れたもので、これからも真に音楽を愛する人々に聴き継がれていくはず。
私も愛する音楽を聴き続ける限り、出来るだけ彼女の歌声に接して行きたいと思っている。
この盤、ウィーンのかぐわしい響きを引き出すワルターと高貴な歌声であっという間に聴き手を魅了するフエリアーの声は、マーラーにとってまさに理想的な演奏だったに違いない。
マーラーは、この曲の初演(1905年)の後、恋人アルマと結婚し間もなく生まれた二人の娘を相次いで亡くした。
運命の無慈悲さというものをひとしきり感じる。
ぜひ聴いて欲しいとっておきの名盤だし、この曲に関してはこの演奏以外に薦めたい盤は思いもつかない。
・キャスリーン・フェリアー、ブルーノ・ワルター指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 <EMI>