クラシック 名盤探訪

クラシックの名盤紹介・おすすめ散策コース等、趣味の発信の場です。

とっておきの名盤 その115 ブラームス ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品77

2008年01月30日 | とっておきの名盤「協奏曲」
この盤は1948年5月3日のハンブルグでの演奏会録音というから、もう60年ほど前のことになる。
ここで聴かせるヌヴーの感動的な弾きぶりは、たんなる技巧とかありふれた解釈をはるかに超え、ブラームスのこの曲に対する思いと彼女の比類ない魂の表れが、私の胸に強く訴えかける。
フランス生まれ、パリ音楽院で学んだにもかかわらず、ドイツ的な魂の燃焼をひしひしと感じさせ、それが聴くものに何の違和感も感じさせないのが不思議なぐらい。
母親がヴァイオリン教師だったため早くからこの楽器を手にし、7歳の時にはブルッフの第一番を演奏会で弾いたという。
彼女が16歳でヴィエニアフスキー・コンクールで優勝した時、2位の青年は27歳のダヴィット・オイストラフだったというから驚く。
美人薄命の言葉にもれず、彼女は1949年10月にアメリカへ向かう飛行機の墜落事故で30歳の短い生涯を終えてしまう。
数少ない録音の中、これぞとっておきの名盤と心から言える貴重な一枚を遺してくれた彼女、あらためて冥福を祈りたい。
この盤は歴史的名演として神格化された存在だが、もう一枚のとっておきの名盤としてグリュミオーのものもあげておきたい。
この曲のベストファイヴを以下に挙げると、
・ジャネット・ヌヴー、ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮、北ドイツ放送交響楽団 <PHILIPS>
・アルチュール・グリュミオー、サー・コーリン・デーヴィス指揮、フィルハーモニア管弦楽団 <PHILIPS>
・ミシェル・オークレール、ウイレム・ファン・オッテルロー指揮、ウィーン交響楽団 <PHILIPS>
・ダヴィット・オイストラフ、ジョージ・セル指揮、クリーヴランド管弦楽団 <EMI>
・ダヴィット・オイストラフ、オットー・クレンペラー指揮、フランス国立放送局管弦楽団 <EMI>

とっておきの名盤 その114 プッチーニ 歌劇「トゥーランドット」

2008年01月24日 | とっておきの名盤「オペラ」
フランスの指揮者ロンバールは、オケのコンサートよりもオペラ指揮者として非常に名声が高い。
たしかに、劇的な構成の中に繊細さと力強さが入り混じって要求されるこのプッチーニの名作を、終わりまで見事にまとめる力量はたいしたもの。
歌では私の好きな歌手、カレーラスが王子カラフ役でその力強い声を聞かせてくれるのがまず嬉しい。
第一幕の終わりで、リュー役のフレーニが絶妙な声で感動的なアリア「殿様、お聞きくださいまし!」を歌った後、王子役のカレーラスが「泣かないでくれ、リュー!」となだめ、謎解きに挑戦する決意でトゥーランドット!と叫び、ついに銅鑼を打ち鳴らす。
ここの所を歌うカレーラスの盛り上げ方の見事なこと、そしてロンバールのダイナミックな指揮ぶりが私の心の琴線を激しく振るわせる。
トゥーランドット役のカバリエも素晴らしい声を披露する。
第2幕第2場冒頭のアリア「この宮殿に」を歌う彼女の毅然とした声、冷酷な姫の心情が見事に私の胸に伝わってくる。
この曲は、最初から終わりまで珠玉のメロディーが散りばめられており、素晴らしい歌の競演が聴けるラインスドルフ盤とこの盤の二組はとっておきの名盤として是非手元に置いておきたい。
廉価盤のため、ジャケットがオリジナルのものでないのは残念。
あえてこの曲のベスト・ファイブをあげると、
・エーリーッヒ・ラインスドルフ指揮、ローマ歌劇場管弦楽団、ビルギット・ニルソン<S>、レナータ・テバルディ<S>、ユッシ・ビョルリンク<T> <RCA>
・アラン・ロンバール指揮、ストラスブールフィルハーモニック管弦楽団、モンセラ・カバリエ<S>、ミレッラ・フレーニ<S>、ホセ・カレーラス<T> <EMI>
・ズービン・メータ指揮、ロンドンフィルハーモニー管弦楽団、ジョーン・サザーランド<S>、モンセラ・カバリエ<S>、ルチアーノ・パヴァロッティ<T> <LONDON>
・モリナーリ・プラデルリ指揮、ローマ歌劇場管弦楽団、ビルギット・ニルソン<S>、レナータ・スコット<S>、フランコ・コレルリ<T> <EMI>
・ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団、カーチャ・リッチャレッリ<S>、バーバラ・ヘンドリックス<S>、プラシード・ドミンゴ<T> <Grammophon>

中国四大美女

2008年01月21日 | 音楽と絵画、iPodなど
つい先日、東大名誉教授でもあり、日本中国友好協会の会長もされている伊藤敬一先生が、「中国四大美女を語る」というテーマで、古代中国の四人の絶世の美女にまつわる面白い話を聞かせてくれた。
「四大美女」は誰のことかというと、時代順に西施(春秋期)、王昭君(前漢期)、貂蝉(後漢、三国期)、楊貴妃(唐代)を指すらしい。
個々の興味ある話の内容は省略するとして、下の4枚の絵の誰がどの美女なのか、手元にあるとっておきの名盤を聴きながら、あれこれ想像をめぐらせて見るのも面白い。
流す音楽は、マーラーの交響曲「大地の歌」か、プッチーニの歌劇「トゥーランドット」でどうだろう。
    
      

とっておきの名盤 その113 ピアノ協奏曲第一番ニ短調 作品15

2008年01月16日 | とっておきの名盤「協奏曲」
好きな曲だけに、数少ないとっておきの名盤の中にどうしても落とせない演奏が複数枚入いってしまう。
ゼルキンとセル、この硬派の二人が演奏する若きブラームスの手になる第一番の盤もその一つ。
第一楽章など、その情熱的な出だしから一気に弾き抜けるゼルキンのピアノ、それをしっかりと支えるセルの棒がまことに印象的。
ゼルキンは多くのレパートリーの中でも、この曲を最も得意としており、これはその4回目の録音(1968年)となるもの。
気持ちが落ち込んでいる時など、この曲を耳にすると、元気印のカンフル剤が注入されるみたいで、いつの間にか晴れやかな気持ちになっている自分に気が付く。
この廉価版のジャケットが、オリジナルのものと違うのが残念だが、是非手元に置いておきたい一枚であることは間違いない。
この曲のベスト・ファイブをあげると、
・ウラジミール・アシュケナージ、ベルナルト・ハイティンク指揮、アムステルダムコンセルトヘボウ管弦楽団 <LONDON>
・エミール・ギレリス、オイゲン・ヨッフム指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>
・ルドルフ・ゼルキン、ジョージ・セル指揮、クリーブランド管弦楽団 <CBS>
・ブルーノ・レオナルド・ゲルバー、フランツ=パウル・デッカー指揮 ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団 <SERAPHIM>
・エレーヌ・グリモー、クルト・ザンテルリンク指揮、ベルリンシュターツカペレ <ERATO>

とっておきの名盤 その112 ラヴェル バレエ音楽「ダフニスとクロエ」全曲

2008年01月12日 | とっておきの名盤「管弦楽曲」
 
クリュイタンスとパリ音楽院管弦楽団、この組み合わせは洗練された粋な感覚と、透き通った知的センスを最も必要とするフランス音楽の真髄を、我々に最高に伝えてくれる貴重な存在だった。
残念ながら、彼の死後、140年の歴史を誇るこの管弦楽団は解散という憂き目に会ってしまった。
しかし彼らが残してくれたラヴェルの演奏は、今となってはフランス文化の栄光の匂いを真に伝えてくれる最良の遺産となっている。
今、オーケストラの魔術師とも言われたラヴェルが残してくれた最高傑作に違いないこの作品に耳を傾けると、フランス風の香気と艶やかな明るさが微妙に交じり合ったパリの味わいがじっと胸にこみ上げてくる(まだパリに行ったことも無いのに、こんなことを言うのもおこがましいが)。
有名な第3部冒頭の「夜明け」の部分など、デリケートな演奏の中に明るさと強い色彩が入り混じった幅の広い表現が、私の胸にイギリスの画家ターナーの手になる傑作「戦艦テメレール号」の風景(こちらは夕日かも)を強く思い起こさせてくれる。
ベストレコードの中に必ず取り上げられる盤だが、このブログでもとっておきの一枚として外せない一枚。
あえてこの曲のベストスリーを挙げると、
・アンドレ・クリュイタンス指揮、パリ音楽院管弦楽団、ルネ・デュクロ合唱団 <EMI>
・シャルル・ミュンシュ指揮、ボストン交響楽団、ニューイングランド音楽院合唱団 <RCA>
・シャルル・デュトワ指揮、モントリオール交響楽団、同合唱団 <LONDON>


とっておきの名盤 その111 ドヴォルザーク 交響曲第9番ホ短調「新世界より」

2008年01月06日 | とっておきの名盤「交響曲」
「新世界より」、この曲名を目にするだけでも、新しい年を迎えるにあたって、胸の奥底から新鮮な気持ちが湧き上がってくる。
クラシックを聴き始めた時、真っ先に購入したのがこの曲だったし、その時の第2楽章の郷愁の極みをこめた旋律、そして落ち込んだ気持ちをぐっと奮い立たせてくれる第4楽章の出だしの高揚を今でも鮮明に思い出す。
まだ高校生の頃、このケルテス盤を店頭で目にした時、オケがウィーンフィルだったし、ジャケットも魅力的で、のどから手が出るほど欲しかったのに、既に別の演奏のものを購入しているし、同曲のLPを複数買うのは少ない小遣いの中ではとても贅沢に思え、泣く泣く諦めたことが今では懐かしい思い出となっている。
ケルテスの指揮は、ロマンティシズムの極地とも思える豊かな歌をウィーンフィルの魅惑的な音色で固めたもの、そしてハンガリー生まれの彼の血に流れるマジャール気質が、曲の素晴らしさに良い意味で相乗的な効果をもたらしている。
1973年に遊泳中の不慮の事故死で44歳の短い生涯を閉じたケルテス氏に改めて冥福を祈りたい。
定番とされている一枚だが、とっておきの名盤として外せない演奏。
フリッチャイの名盤とは同列としたいが、あえてこの曲のベスト・ファイブを挙げると、
・フエレンツ・フリッチャイ指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>
・イシュトヴァン・ケルテス指揮、ウイーンフィルハーモニー管弦楽団 <DECCA>
・ラファエル・クーベリック指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>
・クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮、クリーブランド管弦楽団 <DECCA>
・ヤッシャ・ホーレンシュタイン指揮、ロイヤルフィルハーモニー管弦楽団 <CHESKY>