クラシック 名盤探訪

クラシックの名盤紹介・おすすめ散策コース等、趣味の発信の場です。

府中市郷土の森博物館

2008年06月21日 | 和歌(いにしえの歌人)
そこに保存されている貴重な建物、旧府中町役場庁舎を見学しようと、府中市の郷土の森博物館を訪れる。
ここの敷地は広大なもので、東京ドーム4個分の広さがあり、年間34万人の人が訪れるという。
今はあじさい祭りの最中だが、ここの梅園は青梅の吉野郷に次ぐ素晴らしさがあるとのこと。
入ってすぐの並木道を進むと(写真左)、お目当ての旧府中町役場庁舎(写真右)が見えてきた。
大正10年に建てられた洋風建築で、玄関側のドーマーウィンドウの形が印象的である。
建物の状態はきちんと整備されており、市が保存に力を入れていることが良くわかる。
この郷土の森博物館のように相模三川公園も整備して、温故館などもそこに保存したら面白いのにと勝手な想像をする。
 

郷土の森をひと周り後、入り口近くにあった旧府中尋常高等小学校校舎に立ち寄り、昔懐かしい教室や展示品を見学する。
「愛国百人一首」という、あまり見聞きしない歌集が掲示されている所で立ち止まり、その歌を詠む。
たぶん戦時中は、生徒達はこれらの歌を強制的に覚えさせられたのかもしれない。
この「愛国百人一首」、対米開戦の翌年に公表されたのだが、敗戦後は全く省みられなくなったらしい。
歌は万葉の歌聖とも称される柿本人麻呂の厳かな一首から始まる。
  大君は
 神にしませば
 天雲の
 雷の上に
 いほりせるかも

本居宣長の作とは知らなかったが、これも良く知られた歌のひとつで、胸のポケットにひそませ、果敢に散っていった兵士もいたのだという。
  しきしまの
 やまと心を
 人とはば
 朝日ににほふ
 山ざくら花


”八雲立つ” 素戔嗚命(スサノオノミコト)

2007年02月14日 | 和歌(いにしえの歌人)
この歌は日本の和歌の始まりとされ、素戔嗚命(スサノオノミコト)は「和歌の神」としても信仰されている。
八の字が重なるこの歌を詠んでいると、何故かバッハのパッサカリアやフーガ を思い起こさせて面白い。

八雲立つ
出雲八重垣
妻籠に
八重垣作る
その八重垣を


”国のまほろば” 倭建命

2007年01月13日 | 和歌(いにしえの歌人)

倭(やまと)は
国のまほろば
たたなづく青垣
山隠(やまごも)れる
倭(やまと)し美わし

長い東国への遠征の旅の果て、病に倒れた倭建命が故郷大和を偲んだ歌とされている。
この歌にふれると、古代史の地、飛鳥を自転車で回った時の楽しかった想いや、山の辺の道から眺めた美しい穏やかな風景が目に浮かぶ。
前に載せたブログを見る度に、また行きたいという気持ちに駆られる日本の歴史の原点と言っても良い所。


”あかねさす” 額田王

2006年12月12日 | 和歌(いにしえの歌人)
古代史の旅をすると、万葉集の歌に思わぬところでめぐり合う。
この歌に旅先で出会ったわけではないが、詩のリズムがとても音楽的なせいか好きな歌。
詠み人は天武天皇の妃、額田王、日本の代表的な女流万葉歌人。

あかねさす
紫野行き
標野(しめの)行き
野守は見ずや
君が袖振る

「もうひとつの万葉集」李寧煕

さすらい人

2006年09月16日 | 和歌(いにしえの歌人)
風になびく
富士の煙(けぶり)の
空に消えて
ゆくへも知らぬ
わが思ひかな

西行が東国への仏道修行の途上、富士山の勇壮な姿に驚くと共に、漂泊者として噴煙のゆくすえのように頼りない自分の魂を歌ったもの。
その当時富士山には噴煙がたなびいていたのだと思うと何か不思議な気がする。
シューベルトの「さすらい人幻想曲」の旋律が、さっと頭の中をよぎった。

蓮一輪とヒオオギ

2006年08月14日 | 和歌(いにしえの歌人)
ぬばたまの
夜渡る月を
おもしろみ
わがをる袖に
露ぞ置きにける

今日訪れた東高根森林公園で、道端に咲く一輪の鮮やかな蓮の花に出会った。
たった一輪の花との出会いであるが、とても印象に残る素晴らしい出会いである。
残念ながら、脇のヒオオギは咲いていなかったが、ヒオオギ(万葉呼び名、ぬばたま)を詠んだ万葉集の碑(詠み人知らず)が立てられていた。
花を愛した西行を想い浮かべた。

雑歌

2006年07月25日 | 和歌(いにしえの歌人)
世の中は
夢か現か
現とも
夢とも知らず
ありてなければ

これは「古今集」に収められている’詠み人知らず’の歌ですが、西行は弟子に「古今集」を、とりわけ雑歌の部をよく読みなさいと教えたとのこと。
雑歌には、実人生の嘆きや仏教的無常観を歌って深く心にしみいる歌が多いためとのこと。
とりとめもない歌ですが、なぜか心に惹かれる歌だと思います。

西行:好きな歌

2006年07月12日 | 和歌(いにしえの歌人)
西行の歌はすべて好きですが、特に好きなものが次の二首です。
こころなき
身にもあはれは
知られけり
鴫立つ沢の
秋の夕暮れ

この歌が詠まれた大磯は、私が勤めで20年ほどなじんだ町です。
ウォーキングするといろいろな見所があり、その中でこの歌の碑がある「鴫立庵」は、短歌が好きな人には特にお勧めの場所です。
願はくは
花の下にて
春死なん
そのきさらぎの
望月の頃

今年の春、横浜大岡川の川畔で仕事仲間の花見会があり、桜の花のあまりの見事さに思わずこの歌を口ずさんでしまいました。

風蕭蕭として易水寒し

2006年07月10日 | 和歌(いにしえの歌人)
風蕭蕭として易水寒し、壮士ひとたび去ってまた還らず
司馬遷の「史記」の中に出てくる印象的な場面、とにかく理屈ぬきに好きな言葉です。
「秦の始皇帝を討とうという刺客、荊軻の悲壮な決意に心を揺り動かされるのだろうか」。
いつか人里離れた山の中で独りこの詩を浪々と吟じたいものです。