利き手
浮世にあって浮き足立ったまま
ままならぬ二足歩行で
抜き足も差し足も
抜き差しならず
右も左もわからぬうちに
前にならえ
右向け右
スキップであろうがステップであろうが
足並みを揃えることに
異議申し立てる左利きは
右中心の世に鏡文字で
徹底抗戦の意志をしたためる
生来の利き手に
導かれた基本姿勢を
真に受けて構築された精神の
左舷前方を泳いできたけれど
足に藻が絡みつき
浮世に溺れ
救助隊の浮き輪につかまり
一命を取り留め
取り留めのない会話を交わした
救助隊員と恋に落ち
二年後に結婚
三年後には娘をもうけた
浮世に浮かぶ雲の群れと
団地の四階ベランダにはためく
洗いたての洗濯物
網戸から風に乗って柔軟剤のにおい
右利きの娘はもう五才になる
浮世にあって浮き足立ったまま
ままならぬ二足歩行で
抜き足も差し足も
抜き差しならず
右も左もわからぬうちに
前にならえ
右向け右
スキップであろうがステップであろうが
足並みを揃えることに
異議申し立てる左利きは
右中心の世に鏡文字で
徹底抗戦の意志をしたためる
生来の利き手に
導かれた基本姿勢を
真に受けて構築された精神の
左舷前方を泳いできたけれど
足に藻が絡みつき
浮世に溺れ
救助隊の浮き輪につかまり
一命を取り留め
取り留めのない会話を交わした
救助隊員と恋に落ち
二年後に結婚
三年後には娘をもうけた
浮世に浮かぶ雲の群れと
団地の四階ベランダにはためく
洗いたての洗濯物
網戸から風に乗って柔軟剤のにおい
右利きの娘はもう五才になる