2022 備忘録

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メモ007 建築デザイナーと建築家

2021年10月08日 | ひとりごと
偏った意見であることを承知の上で自分へのメモです。

ひところ「デザイーズXX」などというのが流行り、建築でもデザイナーズマンションなるものが登場した。
居住空間の設計をする人を建築デザイナーと呼ぶとして建築士という称号もあるし、建築家という呼称もある。
法規上建築設計監理業務を許可されているのは建築士なのだがこれは建築技術者の資格であってデザイン行為までは評価されていない。
また「建築家」というのも本来尊敬の念を伴って使われるべき言葉だがこちらもその定義が極めて曖昧だ。

住宅分野の限って建築家の有り様を考えたい。
住宅は産業施設や医療福祉施設、また行政施設とは異なり個人、少数の同居する家族のためのものであり所有者と使用者が一致するとうことも他の建築と大きく違うところだ。
そして建築に関して専門的知識を持たないものと海千山千の施工業者とのBtoC取引でもある。
この状況の中で消費者たる建築主の権利の保護ができるのは建設会社や不動産業者に属さない建築士、すなわち建築家しかいないであろう。

もちろん住宅メーカーや工務店にも建築士は所属しているし、制度上は建築士でなくとも建築士事務所は開設できるから建築士事務所所属の建築士という立場である。
ただし当然仕事の目的は所属する組織の利益追求の一手段であるからそのための忖度や偏った判断が求められるのは言うまでもない。
典型が姉歯事件である。以後住宅メーカーでも様々な不正事案が露呈した。

しかし独立している建築士だからといって全て当てになるわけではない。
建築家に設計を依頼することをためらっているいくつかの原因がある。
1.好き勝手な家を作られないだろうか、こちらの希望を聞いてくれるだろうかという不安
2.そのために予算オーバーしないか。
3.TVで広告を売っているようなメーカーと違って経営規模が小さすぎる。将来に渡ってメンテが受けられるだろうか
等々、耳の痛い話も聞こえてくる。
実際全国規模でフランチャイズチェーンを組織している企業はこの点をたくみについて建築家にはデザインに専念してもらいコストコントロールは工務店側ですると広告上でも公言している。

すべての建築家にとってこれらは克服しなくてはならない課題だ。
そもそも建築デザイナーや住宅メーカー工務店の建築士と何が違うか、日頃の行いでこれを示さなければならない。
表面的なデザインは似たようなものでも実は似て非なるもので先に述べたとおり建築主から依頼を受け建築主の権利保護を業務の中心にできる立場と所属する組織の利益追求が目的という立場は決定的に違う。

建築家の立ち位置は極めて脆弱であることは事実である。
しかしこの世界に覚悟を決めて飛び込んできたはずである。ないないづくしの中でとにかく住宅設計に執着して精進している仲間をたくさん知っている。
バーチャル空間で世界中の建築を見ることができるようになった。しかし建築家はネットサーフィンをしているわけではない。
学校教育の時代の基礎知識からから師事した建築家のこと私淑した建築家のことを絶えず研究し更に様々な知識を整理し自分のものにしてきたはずだ。
一時の流行に左右されず常に未来を見据え設計をしているはずだ。建築主以上の知見をより良い方向に導く責任を追っている。

建築デザインを求めに応じ誰にでも売る商売をしているのを建築デザイナーとすれば
建築主の権利保護、更には周辺環境との調和も視野に入れ、近隣関係を醸成する配慮まですることができれば建築家と呼んで良いと思う。



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