英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2024年度NHK杯将棋トーナメント1回戦 西山女流三冠-木村九段 その6

2024-07-03 17:46:18 | 将棋
「その1」「その2」「その3」「その4」「その5」………大概、「その3」ぐらいで疲れてくる……)


 ▲5五角の好所の角打ちに、木村九段は△6八馬。
 この手は▲2五歩△同歩▲2四歩△同銀▲2三歩以下の開き王手と▲7七銀の馬の捕獲を防いだ手だが、直前の△8六角成を自ら否定したような手だ。この△6八馬では△4三歩と▲2五歩以下の攻めが来る前に動いてもらう方が良かった。
 △4三歩以下▲7七銀△同馬▲同角△4四歩▲7一角△6一飛▲4四角成が想定される。先手有利だとは思うが、これからの将棋であろう。
 実戦の△6八馬に西山女流三冠は▲7四歩。最善手は▲7三桂成で、この方が勝ちが早いと思われるが、玉頭に不安がある先手にとっては、後手に桂馬を渡すのはためらいを感じる。歩で攻めて間に合うのなら、その方が良い。
 以下、西山女流三冠は歩を成って、そのと金を敵玉に寄せていく。その間、木村九段は飛車を3三まで移動させ、2筋の歩を伸ばして先手玉にプレッシャーをかける。

 第13図は、そのと金で3一金を取り、後手が△3一同金と応じたところ。
 ここで西山女流三冠の手が止まる。
 先手が勝ちに近づいているのは間違いないが、注意しなければならないのは、①△2七歩成▲同玉に△3九銀などと打たれて、上下挟撃されること。②△3九銀(角)▲同玉△2七歩成とされ、5八の馬と2七のと金による挟撃。③玉が2六や2五までおびき出されて2筋に飛車を回られたり、香を打たれて頓死(頓必至)を食らうこと。
 いずれも、実現は困難だとは思うが、後手玉は穴熊なので「ゼの形」(絶対詰まない状態)」で一発食らう危険性がある。

 ここで西山女流三冠は▲3三角成!
 もし羽生九段が解説していたら「ギョエ~」と叫びそうだ。
 わざわざ角を渡さなくても、▲5三歩成で充分に思えた。(おそらく最善手)
 テレビ画面の評価値(勝率)グラフも少し縮んだ。
 おそらく、▲5三歩成だと△3四銀▲4二と△2七歩成▲同玉△2三飛が嫌だったのではないだろうか。

 以下▲2六歩に△2五歩(変化図5)や△3五馬(変化図6)が相当な迫力。

 △2五歩(変化図5)には、一例として▲1八玉△2六歩▲2八歩(変化図5-2)で大丈夫。

 また、△3五馬(変化図6)にはガッチリ▲1七金と受けておく。さらに重ねて△2五歩と打ってくる手には、そこで▲3一ととする手が間に合う。(△2六歩と取り込まれても▲2八玉と引いて大丈夫。図面省略)

 "大丈夫”と言っても、実戦的にはいろいろ危険。
 ここは、自玉の安全と、寄せのスピードを重視して▲3三角成の方が良いと判断したのだろう。"実戦的好手”と評価できる。
 ▲3三角成に木村九段は△同金と応じたが、△3三同桂の方が良かったかもしれない。一瞬、玉の腹が空くので弱体化が強いように感じるが、▲6一飛には△2一金寄で2二の金との連携が良く、抵抗力が強い。それに、3三の桂が先手玉への足掛かりとなる可能性がある。

 本譜は▲3三角成△同金▲6一飛△2二金▲4二成桂△8四歩と進み、ここで▲3一金!

続く
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新紙幣発行の陰で…

2024-07-03 09:15:33 | 時事
 新紙幣が発行される。
 偽造防止の為に、透かしなどの紙の技法、凸版、凹版、オフセットの組み合わせと極微細の印刷、ホログラム技術、さらに原版の神業職人技……最先端&伝統伎を結集!

 ………でも、デザインは従来のモノの方が好きだな(あくまで個人の感想です)

 で、それと同時に現場は大変!
 両替機、交通関係の発券機、食券販売機、自動販売機などのシステムや機器の関係者
 さらに、それに対応しなければならない機関・会社・個人商店
 銀行などの金融機関も……

 当然、設備費がかかる。
 通常のレストランだと新紙幣対応の食券機に切り替えるのに150万円だとか(不正確です)。
 対応が間に合わないバス路線などは、運転手が両替しなければならないとか……

 新紙幣対応の機器に切り替えるより、キャッシュレスに切り替える方が安価で済むらしい(ただし、システム使用料をずっと支払わなければならないらしい)。
 完全キャッシュレスだと、現金が使えなくなる。

 新紙幣発行→キャッシュレス(紙幣を使わない)
という皮肉な図式が進行している。
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2024年度NHK杯将棋トーナメント1回戦 西山女流三冠-木村九段 その5

2024-07-02 17:33:08 | 将棋
「その1」「その2」「その3」「その4」………大概、「その3」ぐらいで疲れてくる……)

風向きが変わったとはいえ、形勢は互角。

 ここで龍の逃げ方に迷う。
 おそらく最善手は▲5八飛で、次いで▲5四龍。
 西山女流三冠の▲5五飛は後手の飛車の捌き(△6四飛)を防ぎも見た手だが、△8八角と打たれる手があり、やや損だった。
 この△8八角に気が進まないが▲6六銀と投入し、△8六角成にも▲6五角と中央から後手陣に対して支配力を強める方が良かったようだ。本譜は▲5六龍と躱したが、これだと0手で△7七角と打てたことになる。(▲6六銀は気が進まないが……)
 しかし、この後、木村九段も飛車の引き場所を間違えたらしく、後手有利→互角に。
 ただし、時間切迫の中、最善手を追及するのはナンセンスで、勘(大局観)を基に、指し手の方向性を見極めることが肝要。評価値や最善手という要素は、考慮時間がたっぷりある時に意味を成すのであって、時間切迫時は指し手(指し方)の分かりやすさの重要度が高くなる。第一感を信じ、読み進め、貫けることが勝利につながることが多いような気がする。もちろん、相手の読み筋(狙い筋)にもアンテナを張り、読み抜け、錯覚をなくすことも大事なので、30秒の秒読みは大変である。

 そんな均衡状態を崩す手を木村九段が指してしまう。それが、△8六角成。
 直後、▲5五角(第11図)と西山女流三冠が天王山に角を打つ。
 角にとって5五の地点は最も利き数が多い(16マス。隅にいる場合は8マス)。尤も、角は頭が丸いので5五に居ても負われることが多く、一歩譲って4六とか6四に位置して存在感を示すことの方が多い。
 とにかく、第11図の5五の角は光り輝いている。▲2五歩△同歩▲2四歩△同銀▲2三歩△同金▲3二桂成(▲5二桂成)のあき王手の狙いがあり、場合によっては▲7七銀と打ち馬の捕獲。さらに、▲7三桂成や▲7四歩と後手飛車のコビンを攻める手も見ている。その上、先手玉の弱点の3七もカバーしている。

 この角打ちは△8六角成として角の利きをそらしてしまったため生じた。代えて△8八角成とする方が良かった。ただし、△8八角成は▲5五角打に対し△同馬とする手を残したのではなく、△8九馬▲3六馬△9八馬と指す含みらしい。すぐに香を取らずに△8九馬(飛車取り)▲3六飛と後手の攻めの拠点の3六の歩を取り払わせて、△9八馬と香を取る。3八に歩があるので、次に△3三香(△3四香)が厳しいという仕組みなのだろう。
続く
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福井県水産課、23年度補助金請求手続きを怠り4億6千万円を自腹(←福井県民が?)、18年度も3億円

2024-07-01 21:16:41 | 時事
(1日に3記事もアップすることになるとは……)

「福井県職員が補助金4億6000万円の請求手続きせず 漁港修繕事業、県が全額負担の可能性も」『福井新聞 オンライン』2024年6月29日
 2023年度に福井県や県内市町が行った漁港修繕事業を巡り、県水産課の職員が国への補助金請求手続きを期限までにしていなかったため、計約4億6千万円が交付されない可能性があることが6月28日、県への取材で分かった。水産庁と協議を続けているが、交付されない場合、市町分の事業についても、補助金相当額を県が全額負担する。
 漁港修繕事業は国が事業費のおよそ半分を補助し、残りを実施主体の県や市町が負担する仕組みで、補助金請求の手続きは全て県が担っている。


「福井県、手続きミスで国補助金3億円もらえず…2018年度の水産施設整備事業、公表せず」『福井新聞 オンライン』2024年7月1日
福井県が2018年度に高級魚マハタの稚魚生産施設を小浜市内に整備した事業で、福井県水産課の担当者が国への補助金請求手続きを誤り、約3億円の交付を受けられなかったことが6月30日、複数の関係者への取材で分かった。県は事態を公表せず、県議会にも報告していなかった。

 うっかりミスは誰にもあることだが、額が大きすぎる。
 担当職員が失念したとのことだが、上司が完了したのかチェックするはずで、それも怠ったらしい。
 申請を忘れたことに気づいた時の、職員のショックはさぞかし超特大のモノだったろう(漫画で真っ青になる表現の"縦線効果線”が何本あっても足りない……)

 で、今夕のニュースで2018年度も同様のミスがあったと報じられていた。
 上司のチェックなどは全くしておらず、他にも多くの申請漏れがあったのではないだろうか?
 さらに許せないのは、2018年度の《申請漏れ&自腹処理》("自腹”ではないが)がこっそり行われていたこと!
 今回の4億6000万円の補助金申請漏れも、こういう失敗隠しの横行で再発したのである。
 今冬のボーナスは全員カットで良いのではないだろうか!
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複雑な陸上競技のパリ五輪代表選考

2024-07-01 18:28:01 | スポーツ
分かりにくい選考基準だ。

代表資格取得条件は二つ
①参加標準記録を突破
②ワールドランキング(Road to Paris)が規定順位以内。(種目によって異なり、100mの場合は56位以内)

 どちらか一つを満たせばよいが、《各種目、1か国3人》という縛りがあるので、取得条件を満たせば代表に選出されるわけではない。

 資格取得基準は世界共通だが、その基準を満たす選手から誰を選出するのかは、各国に任されているようだ。
 日本の場合は……
《参加標準記録を突破しており、日本選手権で優勝すれば内定決定》(日本選手権までに突破していなくても、選手権で突破し優勝すればよい)
 特例として、前年(2023年)の世界選手権で、入賞していれば、標準記録を突破すれば内定が決定する。
 女子やり投げの北口選手などがそれに該当(110mH・泉谷駿介、男子3000m障害・三浦龍司、女子5000m・田中希実も該当、他にマラソンや競歩の内定者)。
 男子100mのサニブラウンも、5月30日の"ダイヤモンドリーグ”の第6戦ノルウェー大会で9秒99(標準記録は10秒00)のタイムで2位に入り、内定を決めている。(これにより、サニブラウンは日本選手権に出る必要がなくなり、欠場している。まあ、サニブラウンはランキングが上位なので日本選手権で3位以内に入れば、標準記録を突破しなくても代表に選出される可能性は高そう)
 日本選手権で《参加標準記録を突破しており、日本選手権で優勝》の要件を満たして代表が内定したのは……
女子1500m・田中希実(5000メートルと合わせて、2種目での代表内定)
男子400mH・豊田兼
男子走り幅跳び・橋岡優輝
男子110mH・村竹ラシッド
女子100mH・福部真子
女子走り幅跳び・秦澄美鈴選手


 で、複雑なのは、
《標準記録を突破しているが、日本選手権で優勝できなかった選手》
《日本選手権で優勝したけれど、標準記録を突破していない選手(ワールドランキングは資格圏内)》

 まあ、上記の条件を満たす選手が既に内定になっていた選手を含めて3名以内の場合は、すんなり決まるが、4人以上いる場合は複雑である。
 その複雑さが最も顕著なのが、男子100mである。
 日本選手権前の段階では、栁田大輝が最上位で、唯一〝出場圏内”に入っており、東田旺洋、桐生祥秀、和田遼太郎、坂井隆一郎の順。東田以下は五輪県外だが、日本選手権の結果で圏内に浮上する可能性がある。(サニブランが内定しているので、代表は残り2枠)
 《〝出場圏内”選手同士では日本選手権の順位が優先される》という。ワールドランキングの順位が優先されるわけではない

 ワールドランキングの発表は7月3日。100m決勝後の各選手の表情を見る限り、東田は圏内に浮上の可能性大、坂井は圏内に入る可能性がかなりある。栁田も圏内に留まると思われるが、号泣していたという。
 男子100m決勝は大激戦で、
1位 坂井 隆一郎 10.13
2位 東田 旺洋 10.14
3位 栁田 大輝 10.14
4位 デーデー ブルーノ 10.25
5位 桐生 祥秀 10.26
6位 和田 遼 10.26
7位 鈴木 涼太 10.29
8位 山本 匠真 10.31
 という結果。2位と3位のタイム差は0.005秒差。
 栁田が、あと0.005秒早くフィニッシュラインに到着していたら、日本選手権の順位で東田を上回るので、坂井のワールドランキングに関わらず、代表が決定的となっていた。
 0.005秒差で先着した東田はワールドランキング圏内浮上が濃厚で、日本選手権が栁田より上位で、2番手で代表濃厚。
 栁田にとっては、とてつもなく大きい0.005秒差だった。
 優勝した坂井にしても、0.01秒差で1位と3位の差。ワールドランキングが下位の坂井は、優勝しないと五輪圏内に入るのはほぼ無理という状況だった。(優勝しても圏内浮上は"微妙”とも言われている)


 それにしても、複雑すぎる……
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2024年度NHK杯将棋トーナメント1回戦 西山女流三冠-木村九段 その4

2024-07-01 10:38:52 | 将棋
「その1」「その2」「その3」………大概、「その3」ぐらいで疲れてくる……)

 木村九段はここで△3一金と金を逃げたが、この手が問題だった。
 ここは、△6四飛と遊び駒の飛車を世に出すのが急所だった。
 この手に対し、飛車成りを防ぐ▲6五歩は△4四飛と切ってしまうのが決め手となる。何しろ先手の期待の4四の桂と遊び飛車の交換は、単純な駒の価値を逆転させる働きの差がある。しかも、先手は切ってくださいと、一手をかけて▲6五歩とお願いしたことになる。▲6五歩△4四飛に先手は▲同歩と応じるしかなく、そこで△4五桂が痛すぎる!この桂打ちの場所は飛車切りによって生じているのが、先手にはなんとも悔しい。
 そこで△6四飛には先に▲3二桂成と金を取る。
 以下△3二同銀▲3一銀△6九飛成▲4二金(変化図1)と後手玉に絡みつく。

 後手としては穴熊玉が引っ張り出され、守備は銀1枚で、しかも4二に金と絡みつかれ、嫌な展開だ。
 しかし、図で△6四角の王手角取りが好手。これには▲5五角と打ち返す手があるが、△同角▲同飛に再度△6四角(変化図2)と打って、ほぼ後手勝勢。

 変化図2から、先手も▲3二金△同玉▲4三銀△同玉▲4四歩△同玉▲5四金(変化図3)と強引に6四の先手の角を排除する頑張りがあるが、

 △3三玉▲6四金に△2九金▲2七玉(▲2九同玉は△4九龍▲3九合駒△1七桂以下詰み)と足場を作っておいて、△6四龍と手を戻して後手勝勢。
 上記の手順の△3三玉に▲6四金と角を取る前に▲4四角と足掛かりを作っておいて角を取る手も考えられるが、▲4四角には△3四玉と角にプレッシャーを掛けて逃げる手が巧手で、やはり後手勝勢。


 木村九段は変化図1以下の絡みつきの嫌味が気になり、△3一金と金取りを受けたが、その金は浮き駒状態で、▲5一飛成と金当たりの先手で飛車を成り込まれてしまう。上記の変化とでは、彼我の飛車の働き具合のプラスマイナスが大きく、後手"ほぼ勝勢”から"互角”に戻ってしまった。

 大きく棋勢を損じたとは言え、金取りを△4一金打と龍をはじき返した形勢は、まだ互角で、《これでも指せる》という木村九段の判断は間違いとは言い切れない。ただ、彼我の飛車の勢いの差もあり、将棋の流れは悪い。それに、こういう指し方は木村九段らしくないなあ……と。
続く
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