英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『軍師官兵衛』 第17話「見捨てられた城」

2014-04-28 15:24:57 | ドラマ・映画
いろいろ見せ場が多い回だったが、
詰め込みすぎて、どんどんシーンが流れていき、
印象に残らなかった
………


①上月城を見捨てろという信長
②援軍を送れないという状況を嘆く官兵衛
③策を弄して上月城に潜入、尼子勝久と鹿介の別離
④勝久の自害と鹿介の最期
⑤迷い多き殿・政職、迷う
⑥半兵衛、「ただ最良の策を考え、今やれることを実行するのが軍師」と、泣き言をいう官兵衛を諭す
⑦官兵衛、やるべきことはやる(毛利を調略し揺さぶる)
⑧織田信忠の陣での反省会で仙千代が、神吉藤太夫の降伏を受け入れたうえ、逃げられてしまった荒木村重を非難する
⑨「同じ外様同士、頑張ろう」と村重を励ます光秀
⑩白々しい宇喜多直家を信用せず、撤退する毛利軍
⑪毛利撤退、見捨てられた志方城主・左京進「我らは播磨男子、意地を貫け、良いかぁ!」の0.1秒後、白装束、自害。
⑫左京進の子供らに、又兵衛、「黒田家ホームドラマ」を伝授
⑬「天下泰平」「新しき世を作る」ためと誓い合う秀吉と官兵衛
⑭仙千代の告げ口を受けた信長から「呼び出し」をくらい、青ざめる村重
⑮お紺の死

 ざっと、これだけのシーンがあった。
 これだけ詰め込むくらいなら、先週の不要なシーンをカットして、④ぐらいまでと差し替えた方が良いのではないだろうか。
 しかも、②では官兵衛の嘆きを④では愚痴をと、官兵衛の未熟さを露呈させるので、それが気になって、今後に影響を与えるであろうシーン(⑤⑨⑭⑮)が頭に残らない。(③の「官兵衛殿、ここまでよくやってくださった」「来世で云々」も要らない)
 
④などは官兵衛が義を重んじるのを強調させるため
「目の前の兵を見殺しにしては、織田家は失うことしかございません」
「利用するだけ利用して、捨てるおつもりかっ!」
と叫けび「横須賀小六らにたしなめられる
 しかし「軍師」を強調するなら、そろそろ、「たしなめられる」のではなく、「たしなめる」側になってほしい。

 笑ってしまったのは⑩。ドリフのコントのような志方城の秒殺。
 最後の方だけは、左京進を綺麗に散らせたかったのかもしれないが、ここまでずっと彼を貶めていて虫のいい話である。左京進には申し訳ないが、逃げ惑って「官兵衛の言うことを聞いて。織田に付けばよかったぁ」と叫ばせてほしかった。


 さて、今回、悩んでしまったのは、「上月を見捨てよ」という信長の決断
 ドラマの上では
信長「700を救うために5万と戦い兵を失う。何の理がある?」
秀吉「失うのは兵ではございませぬ。播磨での織田の信用にございます」
信長「今大事なのは、織田の信用ではない。毛利を倒し、新たな世を作ることだ。もはや上月はいらぬ、上月を見捨てよ」

 この会話で「700の兵より5万と戦って失う兵の数」「播磨での信用より天下統一」という信長の合理性を述べているが、秀吉の「兵より信用が大事」という方が正しいように思える。「大事なのは新たな世を作ることだ」という信長の言葉は、秀吉の訴えに対する答えにはなっていない。平清盛(松山ケンイチ)が乗り移ったのか、と思ってしまった。

 腑に落ちないので、軍師でもなく、武将でもなく、歴史学者ではない私ではあるが頭を絞ってみた

上記の会話の最後に
「上月城を救うなど、そんな面倒くさいこと、誰がする?」
という信長の言葉が省略されていたのだ。
 そう、面倒くさかったのだ。
 面倒くさいと言うと言葉が悪いが、「リスクが大きい」という意味である。
 5万の毛利軍と戦うには、秀吉、村重の兵に加え、あと3万の兵を投入しなければならない。三木城や神吉城など播磨の反抗勢力の制圧は急を要するものではなく問題はないであろう。
 問題なのは、それだけの大軍を播磨の西の奥まで移動するのは大変(移動時間、兵糧)だということ。援軍が到着する前に、たった700の兵しかいない上月城が陥落する可能性の方が高い。そんなリスクを犯すのは馬鹿馬鹿しい。……乞う信長は判断したのではないだろうか。

 今回、信長が上月城を見捨てたことは、「信長の非情さ」を示す効果はあったが、これでは信長が単なる「非情で我儘な男」になってしまう。上記の私の想像の真偽はともかく、「信長の深い思慮」を濃姫との会話で披露してほしかった。それでこそ、今大河ドラマの「解説役・濃姫」の存在価値である。


【ついでの疑問】
・官兵衛が毛利軍に行った調略って、具体的にどうしたんだろう?
 4人が『孫子』を暗唱(合唱)してごまかしたような気が………

・官兵衛らが上月城に潜入し、鹿介らと対面し、
 「逃げましょう!場外の手筈は整えてあります。あきらめるのは、まだ早うございます!」
 と進言した時、≪そうだ、あきらめるな≫と思ったが、
 「動けぬ兵たちを置いて、わしらだけ逃げるわけにはまいらん」
 えっ、兵たちは存命だったのか?
 だったら……「目の前の兵を見殺しにしては、織田家は失うことしかございません」と秀吉に訴えたあの言葉は、いったい………



【ストーリー】番組サイトより
 官兵衛と秀吉は、毛利の大群に包囲された上月城を救おうとするが、信長の厳命により見捨てることを余儀なくされる。官兵衛は城に潜入し、断腸の思いで鹿介に別れを告げる。信長のあまりの非情さに、村重や政職は動揺する。
 一方、宇喜多直家の動きを警戒した毛利方の小早川隆景は、撤退を決断。光の兄・左京進の志方城も見捨てられてしまう。孤立無援の状態となった左京進は、切腹した。その後、秀吉は平井山に本陣を移し、三木城攻めに取り掛かった。

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6 コメント

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軍師信長 (かみしろ)
2014-04-29 18:29:31
竹中さんが黒田さんに諭した軍師の心得、
「嫌われたり憎まれたりしてその事で殺されても合理的なことをするのが軍師」
というような内容の台詞があったと思いますが、信長は合理的なあまり人間の心情にはあまりに疎かった、のではないでしょうか。類まれな魅力と能力を兼ね備えていたが、合理的でないことはまったくわからず、忖度もせず怒りをぶつけた。
泥を被るべき参謀が信長にはいなかった、というより、信長には参謀という存在を受け入れることはできなかったのでしょう。

「目の前の兵を見殺し」
云々ですが、あの戦はまだ半ば以上「織田と毛利の信用争い」なのですね。
いや、史実がどうだか知らないのですが。
織田についた方も毛利についた方も、まだ揺らいでいる勢力は幾つもある。
その状況で、毛利ももっと味方を増やしたい。しかし、織田方に味方した勢力をひねり潰してしまうと、迷っていられる時期が終わったと感じ、覚悟を決められる可能性が高い。なのでひねり潰さずに兵糧攻めにしたのでしょう。
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独自性と先進性 ()
2014-04-29 21:05:42
かみしろさん、こんばんは。

>泥を被るべき参謀が信長にはいなかった、というより、信長には参謀という存在を受け入れることはできなかったのでしょう。

 ええ、独自性と先進性が信長の強さなのでしょうが、強さだけが前面に出てしまい、補佐する役がいなかったのが、後の本能寺につながるわけですね。
 小姓はいたのですが。

>織田方に味方した勢力をひねり潰してしまうと、迷っていられる時期が終わったと感じ、覚悟を決められる可能性が高い。なのでひねり潰さずに兵糧攻めにしたのでしょう。

 なるほどの見識です。
 ただ、私がこだわったのは、「目の前の兵」=「上月城に立て籠もっている兵」を見殺しには出来ないと秀吉に迫ったのに、鹿介に、同じ目の前の兵を前にして、「(置き去りにして)逃げましょう」と言ったことを揶揄したわけです。

 同じことが毛利の小早川にも。
 「織田は播磨での信用を失ったわ!」と勝ち誇ったのに、撤退し三木城などを見捨てしまい、同じように信用を失ってしまいました。こちらは脚本の作為だと思いますが、官兵衛の言動は脚本家のミスだと思います。
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現代における戦国時代ドラマの建前と本音 (かみしろ)
2014-04-30 09:16:51
なるほど、わかりました。
私はその辺はもう「そういうもの」として見るようになっているのでひっかからないのですが、戦国時代の人間を現代の基準で「いい人」に描こうとすると、どうしても無理がでてくるんですよ。
戦国時代の世間の信用というのは、精々が「大義名分」で体裁が整っていればいい。インターネットもなければテレビも電話もラジオもない「弱肉強食」の時代であればそれで十分だった。
もし本当に現代基準でさえ「いい人」が頭首をやっていたら、とっくにそのグループはなくなっている時代です。黒田さん自身も「自分のグループの存続」の為に大儀を守らせようとしているのであって、それが建前であることは本来竹中さんに今更教えられる様なことではあり得ない。
という前提で私は見ているので、いい人描写が嘘くさくなったり矛盾が生じたりするのはもういいや、となっている。
何故そうなっているかというと、まだまだ史実の認識が甘く、やもするとドラマと現実を混同してしまうという危惧があるからです。
それがなければ、完全にフィクションとして見られるのでしょうが、歴史物は中々難しい。

コンビニ本(数十万円の報酬で一冊かかせる)ようなのだと、吉川三国志の「ちょうせん」を実在の人物のように書いているものまである。コーエーの無双シリーズとか大河ドラマとかには「フィクションだから史実だと思うなよ」とでかでかと表記して欲しいと真剣に思います。
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言い訳と追及理由 ()
2014-04-30 10:46:15
かみしろさん、なるほどです。

>私はその辺はもう「そういうもの」として見るようになっているのでひっかからないのですが、戦国時代の人間を現代の基準で「いい人」に描こうとすると、どうしても無理がでてくるんですよ。

 そうですね。そう思うのですが、“突っ込み気質(放電)”ということで、ご理解ください。
 まあ、一応、「軽い突込み」という意識で【ついでの疑問】と題していると言い訳しておきます。
 主人公の言動の矛盾は描写時間が長いので、重要分岐要素がぼやけてしまうので、追及したくなりました。
返信する
バーゲンセール(笑) (こてくん)
2014-04-30 13:46:49
>⑮


えっ、そんなにシーンがありましたか・・・・(絶句)

・・・・『だし』妊娠のシーンが・・・・
(⑭内のシーンですが・笑)

一体どれだけ詰め込んでいるんだよぉ~~~~。
とわたしも思いました。

・・・・で

4月、海から宇喜多直家軍7,000と雑賀衆の兵が、
別府(べふ)の阿閉城に攻め込んできた際には
孝高が救援し1,000の兵で防ぎ退ける。

という上月城落城前の、
阿閉城(別府(べふ)城)の戦いが何故か
入っていないというお粗末ぶりでもあります。
(笑)

史実無視しちゃダメでしょ。折角官兵衛さんが
活躍した舞台があるのに・・・・。

・・・・。毛利軍が三方から攻めるようなシーンを
大河ドラマ内でも披露してるのですから、
せめてナレーションだけでも、出してやらないと
・・・・(笑)

そういう意味では先週は欠陥品を
見せつけられた、そんな回でもあります。

>・官兵衛が毛利軍に行った調略って、具体的にどうしたんだろう?

多分、宇喜多直家の事を更に疑わせる調略でしょう。
もっとも、ドラマ内の小早川さんと吉川さんは
元々すでに疑ってかかっている風ですけど・・・・。

先週の回は、とてもまとめづらい回でした。
が、左京進の遺児の数は史実通りなんだ!!
と驚愕した回でもありました。

ではではっ。

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Unknown ()
2014-04-30 16:42:45
こてくん、こんにちは。

>・・・・『だし』妊娠のシーンが・・・・
>(⑭内のシーンですが・笑)

 ややっ、スイカを隠していたわけではなかったのですね。(桐谷さんは、ミスキャストのような気がするのですが)

>という上月城落城前の、阿閉城(別府(べふ)城)の戦いが何故か入っていないというお粗末ぶりでもあります。(笑)

 「上月城落城前」というのがミソですね。でないと、上月城を断念して羽柴軍が合流するまで、何もしていなかったことになります。

>史実無視しちゃダメでしょ。折角官兵衛さんが活躍した舞台があるのに・・・・。

 そうなんですか。官兵衛はずっと上月城にかかりきりだったのかと思っていました。

>そういう意味では先週は欠陥品を見せつけられた、そんな回でもあります。

 前回はスカスカ、今回は詰め込みすぎ、主人公もパッとしない……やや持ち直した感のあった今年の大河、また低空飛行になりました。

>多分、宇喜多直家の事を更に疑わせる調略でしょう。もっとも、ドラマ内の小早川さんと吉川さんは元々すでに疑ってかかっている風ですけど・・・・。

 そうなんですよ。『孫子』云々は要らないし…
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