英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

パリ五輪雑感 その3 体操男子団体の逆転劇 ~中国のエースは“いい人”だなあ~

2024-07-31 18:11:07 | スポーツ
「その1」「その2」
 この日、早起きして女子バスケットボールの日本-アメリカ戦(記事「その2」)を観ていた。
 そのハーフタイムを利用して、この試合の直前に終了した体操男子団体の決勝戦を終えたばかりの選手たちのインタビューが始まった。
 《えっ?金メダル獲ったんだ》という驚きと、観ようと思っていた録画のネタバレをされてしまった無念さが発生した。まあ、この情報の溢れる世の中で、夜まで結果を知らずに済むことなど、難易度が高すぎるので、《仕方がないなあ》という感情が大部分であった。(まあ、この件については「その4」で書くつもり)

 予選を観た感じでは、優勝の第一候補は中国。日本もかなり実力は高いが、順当にいけば「金メダル中国、銀メダル日本」が濃厚に思えた。
 ただし、団体決勝は各種目演技した3人の得点がすべて反映されるので、鉄棒で落下など大過失があるので、波乱の可能性も低くはない。特に、鉄棒の落下は2度続くことが多い(ひとりの選手が立て続けに落下することも多いし、前の選手の落下の連鎖が起こることも多い)
 結果だけを知っていたので、5種目終了時点で、上記のシナリオが浮かんだ。もしくは、落下による負傷具合が大きく、演技不能の場合もありそうだ。

 兆候はあった。正選手の怪我によって急遽出場となった蘇煒徳が、4種目目の跳馬で大過失で12.766に終わる。通常は14.3~14.7辺りを見込まれるので1.5~2点ぐらいマイナス。ただし、この跳馬では、日本の谷川航も大技に失敗し、D難度が認められず、13.833に終わっていたので、それほどの影響はなかった(谷川選手は15点程度が期待されていた)
 さらに、5種目目の平行棒は日本の得意種目だが、中国はそれの上を行く得意種目で、萱…14.733、岡…14.866、谷川…14.766の高得点を出したにもかかわらず、中国は14.733、15.100、16.000ととんでもない得点を叩き出し(予想はされていた)、最後の鉄棒を残して3.267差に広がっていた。鉄棒は日本が大得意で、中国は得意ではないとは言っても、逆転は困難。(ただし、私は結果だけは知っていた)

 鉄棒の第1演技者は、アンバト鉄棒のスペシャリストの杉野。期待に応える好演技で14.566 の高得点。ここでで1.133差を縮め、第2演技者の岡も綺麗な体線の演技で14.433。
 中国の第2演技者は蘇煒徳。
 《ああ、この選手なんだろうなあ(失敗するのは)》  実況では鉄棒は得意と言われていたが…
 開始早々、片手が鉄棒を掴み損ねかけるが、何とか持ちこたえ、大技「リューキン」に挑む。このリューキンは難易度が高く、橋本大輝選手が落下したシーンを何度か見ている。大事なシーンでは回避することもしばしば。
 ところが、これも何とか成功。しかし、その後の技で鉄棒を掴み損ね、落下!
 気を取り直し、演技再開。さらに、次の放し技(離れ技)に挑む。今度は鉄棒との距離を確保し、確実に鉄棒を掴もうとしたが、鉄棒に対してあまりに真正面からだったので、却ってプロテクターに引っかからず、手が弾かれてしまい……落下。
 落下のマイナス2点と技が完了しなかった為、D得点も得られず……11.600。

 第2演技者だけで、3.133のビハインド。第1演技者でのビハインドもあり、約1点の日本のリードとなってしまった。
 最終演技者の橋本と中国のエース・張博恒はほぼ互角。通常の橋本なら、もう金メダルは間違いなしとなるのだが、今回の橋本は不安定。落下もあり得る……
 でも、結果を知っていたので、ドキドキ感は皆無(笑)

 張は素晴らしい演技で14.733を出したが、届かず銀メダル(橋本も素晴らしい演技で14.566)


 結果を知っていただけに、失敗した蘇煒徳が余計、可哀そうに感じた。
 演技終了後、チームとはやや離れて憔悴の表情でうつむいて座る。
 そこへ張博恒が歩み寄り、「大丈夫だ。よくやったよ」(←想像)
 自分の演技が終わった後も、得点が表示されて銀メダルが確定した後も、何度も何度も蘇に声を掛ける。
 その表情には、落胆も悲しみも怒りも現れない。

 ほんと、いい人だなあ!


【追伸】
 実は、私は萱選手が嫌い。
 失敗してもガッツポーズや気合の声でそれを打ち消している(ごまかしている)ように思えたし、跳馬では大きく横に踏み出しても、もう片足は必死にライン内で踏ん張り、減点を0.1に留めるせこさを感じるし、《失敗しない》と言っても、着地の態勢を低くして(頭部を前方下方に残して)転倒しないようにしているように思えたし……
 ところが、今回、劣勢のチームメイトに、大声で何度も「絶対あきらめるな!」と鼓舞する姿には胸が熱くなった。
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