《イゼルローン要塞を落とせば(自由惑星同盟のモノになれば)、銀河帝国から同盟領への侵攻が困難になり、和平交渉が成立するかもしれない》というヤン・ウェンリーの思いとは裏腹に、帝国への侵攻論の声が大きくなった。
政府への支持率アップ、軍部も功績をさらに上げて軍の重要さや影響力を増したいなどの思惑があるのだろう。
自由惑星同盟 最高評議会
ジョアン・レベロとホワン・ルイは、戦争の拡大や長期化によって、経済危機に陥っており、軍に人材が流出して社会が機能不全に陥っている状況を指摘し、侵攻反対を訴える。
財政委員長 レベロ
「戦死した将兵の遺族者年金やイゼルローン攻略による銀河帝国兵50万人の捕虜を食わせていくにも、相当の予算が必要だ。
これ以上戦争を拡大すれば経済的に破綻をきたす」
「戦争に勝たなければ、明日はないのだ」(反対意見)
「では、戦争そのものをやめるべきだ。
ヤン提督の知略で、我々はイゼルローンを得た。帝国軍は我が同盟に対する侵略の拠点を失った。有利な条件で講和条約を締結する好機ではないか」
「しかし、これは専制政治に対する正義の戦争だ。不経済だからと言って、辞めていいモノだろうか?」(反対意見)
人材資源委員長 ホワン
「本来、社会開発に用いられるべき人材が軍部に偏っていく現状には不安を禁じ得ない。
教育や職業訓練に対する投資が削減される一方だ。労働者の熟練度が低下した証拠に、職場事故が前期と比べて3割も増加している。
現在、軍に徴用されている技術者、輸送及び通信関係者の内から400万人を民間に復帰させてほしい。これは最低限の数字だ」
国防委員長 ヨブ・トリューニヒト
「無理を言わないでほしい。それだけの人数を後方勤務から外されたら、軍組織は瓦解してしまう」
ホワン
「国防委員長はそう言うが、このまま行けば、軍組織より早い時期に、社会と経済が瓦解するだろう」
レベロ
「これ以上、市民に犠牲を強いるのは民主主義の原則にも外れる。彼らは負担に耐えかねているのです」
情報交通委員長 コーネリア・ウィンザー
「大義を理解しようとしない市民の利己主義に迎合する必要はありませんわ。
そもそも、犠牲なくして、大事業が達成された例があるのでしょうか?」
レベロ
「その犠牲が大きすぎるのではないかと、市民は考え始めたのだ、ウィンザー婦人」
ウィンザー
「どれほど犠牲が大きくとも、為すべきことがあります」
レベロ
「それは政治の論理ではない!」
ウィンザー
「私達には崇高な義務があります。銀河帝国を打倒し、その圧政と脅威から、全人類を救う義務が。
安っぽいヒューマニズムに陶酔して、その大義を忘れ果てるのが、果たして大道を歩む態度と言えるでしょうか?」
レベロ
「あなたこそ、安っぽいヒロイズムに陶酔しているのではないのか!」
最高評議会議長 ロイヤル・サンフォード
「また、休憩が必要なようだ。しかし、その前に諸君に見てもらいたい資料がある。
これは我が評議会に対する一般市民の支持率だ。31.9%、決して良くはないな。
一方、こちらが不支持率だ……56.2%
このままでは、来年早々の選挙に勝つことはおぼつかん。和平派と最強硬派に挟撃され、過半数を割ることは目に見えておる。
ところがだ。ある指標に依れば、ここ100日以内に帝国に対し画期的な軍事上の勝利を収めれば、支持率は最低でも15%は上昇するという数字が出ているのです」
レベロ
「どういう意味ですか?あなた方は選挙のために戦争しろと?」
ウィンザー
「議長、軍部からの提案を投票にかけましょう」
レベロ
「待ってくれ。我々にはそんな権利はない。政権の維持を目的として無益な出兵を行うなど、そんな権利を我々は与えられていないっ!」
ウィンザー
「まあ…きれいごとを仰ること」……銀英伝の登場人物の中で、一番ムカついて、嫌いなキャラである。
……賛成8、反対3で侵攻が決定された。
トリューニヒト
「私がこの出兵に反対したことを、明記していただこう」
(トリューニヒトは出兵が失敗することを予見していて、反対した事実で、権力を増大しようと考えた)
ジェシカ・エドワース新人議員(ヤンの戦死した親友の婚約者)
「私は決めたのです。見ないふりはしないことを。聞こえないふりはしないことを。沈黙しないことを。
そのために今、私はここに立っています。
立候補するに当たっては、随分迷いました。ただの教師であった私に、そのような資格はないのではないかと。
でも、決めたのです。そして誓いました。
アスターテ大戦で亡くなり、今はこの世にいない私の婚約者に。
以前、私はこう思っていました……歴史とは埃をかぶった過去のモノだと。
でも、違うのです。歴史とは…今、生きている私たちが創っていくモノなのです。歴史書にその名を遺す人たちだけのモノではなく、今生きている私たち一人ずつが、創り出すべきものなのです。私たちの一歩一歩が未来へと繋がっているのです。
私たちの歴史はこれまで、多くの戦争とともにありました。この先も戦争とともにあるかどうか……それは私たち自身が決めることです。
“これは正義の戦争だ”と声高に言う人がいます。“正義のために命を捨てるのは、崇高な行為だ”と。
けれども、正義とは何か?崇高な行為とは何か?……決めるのは私たち一人ずつです。戦地へ行く家族を見送るあなた、戦地で家族を失ったあなたや私です。
決して、どこか安全な場所に身を置き、自分は何一つ失わず、傷つかない人たちなどに、決めてもらいたくはありません。
私は、権力を持った人たちに、常に問いかけていきたいのです。
《あなたたちはどこにいるのか?》
《兵士たちを死地の送り込んで、あなたたちはどこで、何をしているのか》と!」
政府への支持率アップ、軍部も功績をさらに上げて軍の重要さや影響力を増したいなどの思惑があるのだろう。
自由惑星同盟 最高評議会
ジョアン・レベロとホワン・ルイは、戦争の拡大や長期化によって、経済危機に陥っており、軍に人材が流出して社会が機能不全に陥っている状況を指摘し、侵攻反対を訴える。
財政委員長 レベロ
「戦死した将兵の遺族者年金やイゼルローン攻略による銀河帝国兵50万人の捕虜を食わせていくにも、相当の予算が必要だ。
これ以上戦争を拡大すれば経済的に破綻をきたす」
「戦争に勝たなければ、明日はないのだ」(反対意見)
「では、戦争そのものをやめるべきだ。
ヤン提督の知略で、我々はイゼルローンを得た。帝国軍は我が同盟に対する侵略の拠点を失った。有利な条件で講和条約を締結する好機ではないか」
「しかし、これは専制政治に対する正義の戦争だ。不経済だからと言って、辞めていいモノだろうか?」(反対意見)
人材資源委員長 ホワン
「本来、社会開発に用いられるべき人材が軍部に偏っていく現状には不安を禁じ得ない。
教育や職業訓練に対する投資が削減される一方だ。労働者の熟練度が低下した証拠に、職場事故が前期と比べて3割も増加している。
現在、軍に徴用されている技術者、輸送及び通信関係者の内から400万人を民間に復帰させてほしい。これは最低限の数字だ」
国防委員長 ヨブ・トリューニヒト
「無理を言わないでほしい。それだけの人数を後方勤務から外されたら、軍組織は瓦解してしまう」
ホワン
「国防委員長はそう言うが、このまま行けば、軍組織より早い時期に、社会と経済が瓦解するだろう」
レベロ
「これ以上、市民に犠牲を強いるのは民主主義の原則にも外れる。彼らは負担に耐えかねているのです」
情報交通委員長 コーネリア・ウィンザー
「大義を理解しようとしない市民の利己主義に迎合する必要はありませんわ。
そもそも、犠牲なくして、大事業が達成された例があるのでしょうか?」
レベロ
「その犠牲が大きすぎるのではないかと、市民は考え始めたのだ、ウィンザー婦人」
ウィンザー
「どれほど犠牲が大きくとも、為すべきことがあります」
レベロ
「それは政治の論理ではない!」
ウィンザー
「私達には崇高な義務があります。銀河帝国を打倒し、その圧政と脅威から、全人類を救う義務が。
安っぽいヒューマニズムに陶酔して、その大義を忘れ果てるのが、果たして大道を歩む態度と言えるでしょうか?」
レベロ
「あなたこそ、安っぽいヒロイズムに陶酔しているのではないのか!」
最高評議会議長 ロイヤル・サンフォード
「また、休憩が必要なようだ。しかし、その前に諸君に見てもらいたい資料がある。
これは我が評議会に対する一般市民の支持率だ。31.9%、決して良くはないな。
一方、こちらが不支持率だ……56.2%
このままでは、来年早々の選挙に勝つことはおぼつかん。和平派と最強硬派に挟撃され、過半数を割ることは目に見えておる。
ところがだ。ある指標に依れば、ここ100日以内に帝国に対し画期的な軍事上の勝利を収めれば、支持率は最低でも15%は上昇するという数字が出ているのです」
レベロ
「どういう意味ですか?あなた方は選挙のために戦争しろと?」
ウィンザー
「議長、軍部からの提案を投票にかけましょう」
レベロ
「待ってくれ。我々にはそんな権利はない。政権の維持を目的として無益な出兵を行うなど、そんな権利を我々は与えられていないっ!」
ウィンザー
「まあ…きれいごとを仰ること」……銀英伝の登場人物の中で、一番ムカついて、嫌いなキャラである。
……賛成8、反対3で侵攻が決定された。
トリューニヒト
「私がこの出兵に反対したことを、明記していただこう」
(トリューニヒトは出兵が失敗することを予見していて、反対した事実で、権力を増大しようと考えた)
ジェシカ・エドワース新人議員(ヤンの戦死した親友の婚約者)
「私は決めたのです。見ないふりはしないことを。聞こえないふりはしないことを。沈黙しないことを。
そのために今、私はここに立っています。
立候補するに当たっては、随分迷いました。ただの教師であった私に、そのような資格はないのではないかと。
でも、決めたのです。そして誓いました。
アスターテ大戦で亡くなり、今はこの世にいない私の婚約者に。
以前、私はこう思っていました……歴史とは埃をかぶった過去のモノだと。
でも、違うのです。歴史とは…今、生きている私たちが創っていくモノなのです。歴史書にその名を遺す人たちだけのモノではなく、今生きている私たち一人ずつが、創り出すべきものなのです。私たちの一歩一歩が未来へと繋がっているのです。
私たちの歴史はこれまで、多くの戦争とともにありました。この先も戦争とともにあるかどうか……それは私たち自身が決めることです。
“これは正義の戦争だ”と声高に言う人がいます。“正義のために命を捨てるのは、崇高な行為だ”と。
けれども、正義とは何か?崇高な行為とは何か?……決めるのは私たち一人ずつです。戦地へ行く家族を見送るあなた、戦地で家族を失ったあなたや私です。
決して、どこか安全な場所に身を置き、自分は何一つ失わず、傷つかない人たちなどに、決めてもらいたくはありません。
私は、権力を持った人たちに、常に問いかけていきたいのです。
《あなたたちはどこにいるのか?》
《兵士たちを死地の送り込んで、あなたたちはどこで、何をしているのか》と!」