『捜査一課9係』は9係の面々が個性豊かで彼らのやり取りがまず面白い。そして、その彼らが思い思いに多方面に捜査し最後に収束していくという面白さも大きな特長である。事件も深みや捻りもある。
しかし、ここ数年は、キャラクターをうまく使おうとして事件そのものをひねり過ぎてしまうことも多くなってきている。長期シリーズドラマにおける、マンネリ打開、あるいは、もう一段階上を目指す制作サイドの苦労があるのだろう。
それでも、不満や疑問を感じることはあるが、安定して楽しませてもらっているドラマである。まあ、記事に取り上げる時は、不満が大きい時が多いようである。
で、今回の記事アップの動機も不満や疑問が大きかったからであるが、それとは別の理由もあった。
私は、感じるものが大きかったドラマや記事を書くドラマについては、他の方のドラマレビューサイトを見て、納得したり確認したりしています。
そういったブログの中で、やたら記事(ドラマレビュー)の数が多くて記事アップが早いブログがある。これだけのドラマを観て、しかも記事を書いている……≪いったいどういう生活をしているのだろうか?≫と常々疑問に思っています。
観るドラマの数が半端でないので安定した視聴力(読解力)を持っている方ですが、私と重視する視点が違うので、ドラマの評価は正反対になることが多いのです。
氏が重視するのは、登場人物の役割、例えば主役の刑事、脇役の刑事、上層部がきちんとその役割を果たしているかがである。
私は、犯行の動機、事件の経緯の必然性などを重視し、登場人物がその役割を果たしているかは重視しません(組織の動きに整合性があるかは重視する)。
不思議なことに、氏と私の重視する点の出来が反比例することが多く、評価も正反対になってしまいます。
まあ、それはそれで、ドラマの評価は人それぞれなので文句を言うつもりはありません。(多少、いえ、かなり氏の主張が断定的で上から目線と感じてはいます)
で、今回の「3つの捜査線」ですが、あらすじにも書いてあるように、狭い地域で立て続けに殺人事件が起こり、9係が3つに分かれて捜査を開始する。
で、その結果、容疑者が浮かび上がり容疑者の下へ向かうが、3コンビが鉢合わせするという話。まあ、いつもは同じ事件をバラバラに捜査して、それが一点に収束しているので、別の事件という違いはあるが、いつものパターンと言えなくもない。
さらに、その容疑者はダミーであり、3つの殺人事件は殺人請負組織の犯行であった。実行者と依頼者が第1発見者となりアリバイを偽装したのだった。その上、ダミー容疑者と係長の人情話にまで発展させた。
「かなり頑張った脚本ではあるが、頑張り過ぎてストーリーに破綻してしまったという罠に陥ってしまった」というのが私の評価です(面白いことは面白いが…)。
で、氏のレビューを読むと…案の定というかそれ以上の評価でした。
「際だつ6人の刑事たちが存在し、チームで行動する“9係”でしか成立することがない物語
だと言っても良いでしょう。
それぞれの活躍の場も与えられているし、刑事らしい動きも魅せている。
最終的に“まとめ役”である加納倫太郎が、事件を。。。。
色々なカタチのある今作《9係》ですが。
こういった物語を生みだしたのは、凄いですね。
若干、違和感のある部分もありますが、
今シリーズどころか、全シリーズ上、最高傑作の1つと言って良いかも」
引用した前半部分(ドラマの構成の評価)は私も同意しますが、とても傑作とは思えません。
別に、氏に反対するのが主旨ではありませんが、≪『捜査一課9係』をレビューするブログは少なく、“最高傑作”という評で評価がプラスに傾いてしまうことは避けたい≫という意味で記事を書くに至ったわけです。
細かい点は後述するとして、大きな疑問点は2つ。
1.不合理な依頼殺人の手法
①実行者が第1発見者
依頼者に嫌疑が向かないように、実行者と口裏を合わせて第1発見者を装い、アリバイ工作をする。実行者と依頼者は初対面である事実を強調。
一見、巧妙な手法のようだが、第1発見者には疑いを向けられ、その身元等を調査され足が付く可能性が高い。実行者と被害者とは旧知の仲(同業者、友人)という設定も、破綻が生じそう。
②遺留品提供者の報酬が高額
架空の犯人をでっちあげるため、無関係者の所持品を犯行の遺留品にした。実行者や依頼者への嫌疑をそらすためであるが、3件分としても1000万円というのは高額すぎる。依頼料は一体いくらだったのだろうか?
実行者のリスクは相当高いので、遺留品提供者が1件当たり333万円よりはかなり高額でなければならないはず。
2.倫太郎(渡瀬恒彦)と小谷(蟹江一平)の強引な人情話
介護を担当した老女に会うため、海外逃亡を遅らせた小谷。
「ぼくはずっと、無意味な感情に振り回されてきた。
弱いんです。だから、自殺寸前まで追い込まれたんだろうなあ。
現に僕はホームレスで、人の事なんか考えない。奴らが金持って良い生活してんだよっ!(妬んでいた)
岡本…あのやくざの話に乗ったのだって、弱い自分を殺すためなんです。
弱い自分を殺して、生まれ変わって、今度こそ、強い人間になるって思ったんだ。なのに、なぜ…」
これに対し、倫太郎が、病室で老女が何度も折っていた折り紙を見せ
「あなたは、弱いんじゃない。優しいんです。その優しさが、すずさん(老女)の気持ちにそのまま伝わった。
あなた、強く生きたいと思うんだったら、あなたの中にある優しさをもっともっと大事にするべきなんです。
あなたが弱いとしたら、その優しさを一度は捨てようとしたことです」
と、優しく諭していた。
しかし、小谷は殺人に加担した。直接は手がけなくても、殺人が行われることを容認したのである。
“優しさを捨てた”というレベルではないはず。右京さんなら、つばを飛ばして激高したに違いない。
【その他の疑問点】
・3件の殺人事件を迅速に捜査しなければならなかったので、不自然に情報提供者が9係のメンバーに近寄ってきた
・小谷が逃亡を遅らせてまで会いに行ったという行為に免じて、折り紙なんて回りくどい表現をせずに、老女が笑顔で反応してあげて欲しかった。
・ガラス工場の事務室にいた後姿が美人風な事務の女性が気になったが、単なるエキストラだった。
【ストーリー】番組サイトより
ごく狭い範囲で立て続けに3件の殺人事件が発生した。
第一の事件の被害者はエステ会社の社長・絵里子。財布から現金が抜き取られているので金目当ての犯行と思われたが、倫太郎(渡瀬恒彦)と直樹(井ノ原快彦)はそこから絵里子には似つかわしくないインターネットカフェの割引券を見つけ、不審を抱いた。
第二の事件の被害者はデイトレーダー・西。青柳(吹越満)と矢沢(田口浩正)は現場から1か月前のスーパーのレシートを発見した。掃除は施されているはずなのに、なぜ?
そして第三の事件の被害者は資産家の木崎。どうやら庭石で殴られたらしい。志保(羽田美智子)と村瀬(津田寛治)は現場で、何かがプリントされたガラスの破片を見つけた。
奇妙な遺留品と、怪しいがアリバイのある関係者たち。3組はそれぞれ捜査を進めた。
倫太郎と直樹は割引券の購入者から、小谷(蟹江一平)という男にたどりついた。彼が勤めていた介護サービス会社に赴いた2人は、なんと志保と村瀬、青柳と矢沢と鉢合わせる。彼らもそれぞれのルートで、小谷にたどりついたのだ。
小谷は濡れ衣を着せられて会社を辞めさせられていた。3つの現場の場所と時刻から、彼ひとりでの犯行は可能だ。物証はすべて小谷の犯行を示していたが、確保された彼は無実を訴えた。
やがて事件当日のアリバイが証明され、小谷は釈放される。まさかの誤認逮捕…。ということは、小谷の犯行に見せかけようとした真犯人がいるはず!
そして事件は、倫太郎が奇妙な点を見出したことで、意外な展開を見せはじめる…!
ゲスト:蟹江一平
脚本:徳永富彦
監督:田村孝蔵
しかし、ここ数年は、キャラクターをうまく使おうとして事件そのものをひねり過ぎてしまうことも多くなってきている。長期シリーズドラマにおける、マンネリ打開、あるいは、もう一段階上を目指す制作サイドの苦労があるのだろう。
それでも、不満や疑問を感じることはあるが、安定して楽しませてもらっているドラマである。まあ、記事に取り上げる時は、不満が大きい時が多いようである。
で、今回の記事アップの動機も不満や疑問が大きかったからであるが、それとは別の理由もあった。
私は、感じるものが大きかったドラマや記事を書くドラマについては、他の方のドラマレビューサイトを見て、納得したり確認したりしています。
そういったブログの中で、やたら記事(ドラマレビュー)の数が多くて記事アップが早いブログがある。これだけのドラマを観て、しかも記事を書いている……≪いったいどういう生活をしているのだろうか?≫と常々疑問に思っています。
観るドラマの数が半端でないので安定した視聴力(読解力)を持っている方ですが、私と重視する視点が違うので、ドラマの評価は正反対になることが多いのです。
氏が重視するのは、登場人物の役割、例えば主役の刑事、脇役の刑事、上層部がきちんとその役割を果たしているかがである。
私は、犯行の動機、事件の経緯の必然性などを重視し、登場人物がその役割を果たしているかは重視しません(組織の動きに整合性があるかは重視する)。
不思議なことに、氏と私の重視する点の出来が反比例することが多く、評価も正反対になってしまいます。
まあ、それはそれで、ドラマの評価は人それぞれなので文句を言うつもりはありません。(多少、いえ、かなり氏の主張が断定的で上から目線と感じてはいます)
で、今回の「3つの捜査線」ですが、あらすじにも書いてあるように、狭い地域で立て続けに殺人事件が起こり、9係が3つに分かれて捜査を開始する。
で、その結果、容疑者が浮かび上がり容疑者の下へ向かうが、3コンビが鉢合わせするという話。まあ、いつもは同じ事件をバラバラに捜査して、それが一点に収束しているので、別の事件という違いはあるが、いつものパターンと言えなくもない。
さらに、その容疑者はダミーであり、3つの殺人事件は殺人請負組織の犯行であった。実行者と依頼者が第1発見者となりアリバイを偽装したのだった。その上、ダミー容疑者と係長の人情話にまで発展させた。
「かなり頑張った脚本ではあるが、頑張り過ぎてストーリーに破綻してしまったという罠に陥ってしまった」というのが私の評価です(面白いことは面白いが…)。
で、氏のレビューを読むと…案の定というかそれ以上の評価でした。
「際だつ6人の刑事たちが存在し、チームで行動する“9係”でしか成立することがない物語
だと言っても良いでしょう。
それぞれの活躍の場も与えられているし、刑事らしい動きも魅せている。
最終的に“まとめ役”である加納倫太郎が、事件を。。。。
色々なカタチのある今作《9係》ですが。
こういった物語を生みだしたのは、凄いですね。
若干、違和感のある部分もありますが、
今シリーズどころか、全シリーズ上、最高傑作の1つと言って良いかも」
引用した前半部分(ドラマの構成の評価)は私も同意しますが、とても傑作とは思えません。
別に、氏に反対するのが主旨ではありませんが、≪『捜査一課9係』をレビューするブログは少なく、“最高傑作”という評で評価がプラスに傾いてしまうことは避けたい≫という意味で記事を書くに至ったわけです。
細かい点は後述するとして、大きな疑問点は2つ。
1.不合理な依頼殺人の手法
①実行者が第1発見者
依頼者に嫌疑が向かないように、実行者と口裏を合わせて第1発見者を装い、アリバイ工作をする。実行者と依頼者は初対面である事実を強調。
一見、巧妙な手法のようだが、第1発見者には疑いを向けられ、その身元等を調査され足が付く可能性が高い。実行者と被害者とは旧知の仲(同業者、友人)という設定も、破綻が生じそう。
②遺留品提供者の報酬が高額
架空の犯人をでっちあげるため、無関係者の所持品を犯行の遺留品にした。実行者や依頼者への嫌疑をそらすためであるが、3件分としても1000万円というのは高額すぎる。依頼料は一体いくらだったのだろうか?
実行者のリスクは相当高いので、遺留品提供者が1件当たり333万円よりはかなり高額でなければならないはず。
2.倫太郎(渡瀬恒彦)と小谷(蟹江一平)の強引な人情話
介護を担当した老女に会うため、海外逃亡を遅らせた小谷。
「ぼくはずっと、無意味な感情に振り回されてきた。
弱いんです。だから、自殺寸前まで追い込まれたんだろうなあ。
現に僕はホームレスで、人の事なんか考えない。奴らが金持って良い生活してんだよっ!(妬んでいた)
岡本…あのやくざの話に乗ったのだって、弱い自分を殺すためなんです。
弱い自分を殺して、生まれ変わって、今度こそ、強い人間になるって思ったんだ。なのに、なぜ…」
これに対し、倫太郎が、病室で老女が何度も折っていた折り紙を見せ
「あなたは、弱いんじゃない。優しいんです。その優しさが、すずさん(老女)の気持ちにそのまま伝わった。
あなた、強く生きたいと思うんだったら、あなたの中にある優しさをもっともっと大事にするべきなんです。
あなたが弱いとしたら、その優しさを一度は捨てようとしたことです」
と、優しく諭していた。
しかし、小谷は殺人に加担した。直接は手がけなくても、殺人が行われることを容認したのである。
“優しさを捨てた”というレベルではないはず。右京さんなら、つばを飛ばして激高したに違いない。
【その他の疑問点】
・3件の殺人事件を迅速に捜査しなければならなかったので、不自然に情報提供者が9係のメンバーに近寄ってきた
・小谷が逃亡を遅らせてまで会いに行ったという行為に免じて、折り紙なんて回りくどい表現をせずに、老女が笑顔で反応してあげて欲しかった。
・ガラス工場の事務室にいた後姿が美人風な事務の女性が気になったが、単なるエキストラだった。
【ストーリー】番組サイトより
ごく狭い範囲で立て続けに3件の殺人事件が発生した。
第一の事件の被害者はエステ会社の社長・絵里子。財布から現金が抜き取られているので金目当ての犯行と思われたが、倫太郎(渡瀬恒彦)と直樹(井ノ原快彦)はそこから絵里子には似つかわしくないインターネットカフェの割引券を見つけ、不審を抱いた。
第二の事件の被害者はデイトレーダー・西。青柳(吹越満)と矢沢(田口浩正)は現場から1か月前のスーパーのレシートを発見した。掃除は施されているはずなのに、なぜ?
そして第三の事件の被害者は資産家の木崎。どうやら庭石で殴られたらしい。志保(羽田美智子)と村瀬(津田寛治)は現場で、何かがプリントされたガラスの破片を見つけた。
奇妙な遺留品と、怪しいがアリバイのある関係者たち。3組はそれぞれ捜査を進めた。
倫太郎と直樹は割引券の購入者から、小谷(蟹江一平)という男にたどりついた。彼が勤めていた介護サービス会社に赴いた2人は、なんと志保と村瀬、青柳と矢沢と鉢合わせる。彼らもそれぞれのルートで、小谷にたどりついたのだ。
小谷は濡れ衣を着せられて会社を辞めさせられていた。3つの現場の場所と時刻から、彼ひとりでの犯行は可能だ。物証はすべて小谷の犯行を示していたが、確保された彼は無実を訴えた。
やがて事件当日のアリバイが証明され、小谷は釈放される。まさかの誤認逮捕…。ということは、小谷の犯行に見せかけようとした真犯人がいるはず!
そして事件は、倫太郎が奇妙な点を見出したことで、意外な展開を見せはじめる…!
ゲスト:蟹江一平
脚本:徳永富彦
監督:田村孝蔵